『カムカムエヴリバディ』
モネ(&菅波)ロスに加え、イントロダクションやヒロインのキャスティングに魅力を感じられないまま、朝の準備中にながら観していたら…。 またハマっちゃったよ、沼に! 稔の沼にー! 戦前の学生らしい崇高な雰囲気、いやみのない高潔さ。方言までイケメンに聞こえる、こんな俳優がジャニーズにいたなんてまったく知りませんでした。…と思ったら、『パーフェクトワールド』の晴人役だったのですね。光と影をいっぺんに感じさせる義足の青年役を好演していて、とても印象に残っていたのですが、ジャニーズだとは知りませんでした。 そら安子も惚れるよね…。 しかし時代が時代です。お家柄の違いという以上に、安子と稔の将来には不安しかありません。次のヒロインが安子の娘ということは明かされているので、『おひさま』のように、稔が戦地へ赴く前にわずかばかりの結婚生活を送る可能性はあるのかもしれませんが…。まさか父親は勇だったりして? それともまったくの他人? さらに疑問なのは、なぜ安子がるいを残してアメリカへ渡るのかということです。展開がまったく読めません。 半年で3人の人生を描くためか展開がスピーディですが、そこまで気になりません。15分があっという間に過ぎていきます。 PR
『婚姻届に判を捺しただけですが』
『逃げ恥』ブーム以降、契約婚を題材にした漫画がドッと増えましたが、有象無象の1話無料作品を読んでみて「なかなか面白い」と感じ、続きを購入したのはこの作品だけ。 契約婚という設定自体が非現実的のためどんな漫画でも導入部は強引なのですが、その先へ読み手を惹きつけるものといえばやっぱりキャラの魅力かなと。 私生活はズボラだけれど、祖母や猫を愛し、仕事に奮闘する明葉は人間味があります。だんだん柊に惹かれていく描写も、また離婚後、その想いがすっかり冷めているところもリアルです。 一方の柊も、イケメンなのはお約束として、義姉への一途な恋を隠すため偽装結婚するというちょっとキモキャラな「外し」感が絶妙です。また、明葉の前で見せる子犬のようなかわいらしさには彼女同様不意打ちされてしまいました。原作では再会した明葉に義姉から移った想いをぶつけようとしていますが…どうなるやら。 原作を読んだ時から「いずれドラマ化されそうだな」と期待していたので、とても楽しみにしていました。 『逃げ恥』と同じ枠のため、演出は似通っています。ただ脚本はやはり野木亜紀子に一日の長があるな、と。基本原作に沿っていますが、『逃げ恥』はクールな原作をさらに面白く脚色していましたから。 キャスティングはいいと思います。清野菜名も坂口健太郎もイメージに合っています。ただ菅波先生と同じようなキャラだったのがね…。しかも清野菜名の妊娠が報道されたので、走ったり階段を駆け上ったりするシーンではなんだか気になっちゃいました。柊一家の配役も面白いです。原作ではそこまで似ていないこともない兄弟が、それぞれ父親似・母親似だったのだな…と感心しました。 原作はまだ終わっていないので、原作ともどもどんな着地点になるのかなと楽しみに視聴します。 『日本沈没-希望のひと-』 小松左京原作も読んでいませんし、昔の映画もドラマも観たことがありません。タイトルが表すとおり、「日本が沈没する」物語なのだと思いますが、ここ最近『半沢直樹』のような爽快感をウリにしてきたドラマ枠で、このような重厚なテーマを扱うのはひさしぶりのような気がします。『運命の人』や『官僚たちの夏』に近い雰囲気です。…と思ったらやはり同じ脚本家でした。 ですから、ちょっとした『半沢』風味は余分でした(会議で高橋努が小栗旬に追及され世良教授の指示で海底調査中にわざと倒れたと告白する場面)。官僚たちが集まる会議の雰囲気も軽いです。ウェンツなんてとても官僚に見えんし…。 小栗旬や松山ケンイチは底知れない深みを出していますし、いかにも学会では相手にされなさそうな変人教授の香川照之もいいチョイスです。國村隼の存在感もさすがです(最後には田所と協力して日本を救ってほしい)。フィクサー感たっぷりな副総理と、広告塔扱いにされていそうな若手総理の大逆転にもこれからに期待が持てます。 だからこそ、チョイチョイ惜しい…。 そもそも、日本は本当に沈没してしまうのか? ただでさえ、絶え間なく自然災害に見舞われ、コロナにも攻撃されて元気のない今の日本に、希望が持てないラストはちょっと堪えそうです。かといって沈没しなかったら原作だいなしだし…いったいどうなるのだろう…。 『おかえりモネ』(終) 最近はそうでもなくなっていますが、朝ドラといえば「女性の一代記」。子ども時代から始まって、夢を見つけて、苦労しつつもその夢を叶えて、恋したり結婚したり出産したり、そして最終回は老年になって人生を回顧する…そんなイメージです。そこまでいかなくても、やはり「何かのために生きてきた、これからもきっと」という決意とともに、幕を閉じます。 『モネ』は果たして、その王道を歩んだのか、はずれていたのか。 物語で描かれたモネは震災時の中3から26歳くらいまで。気象予報士という夢は叶えましたが、最終回でもまだ気仙沼で利益は上げられていません。(おそらくコロナが終息して)菅波とようやく2年半ぶりに再会した…という場面で終わります。それだけなら王道とも言えますが、その道筋は実に不安定でした。モネの行動はつねに震災という過去の記憶に縛られてきました。「誰かのために」「島のために」。それは結局自分のため、そしてその思いは決して間違いではないと気づき、「きれいごと」と言われてもひるまず、「何もできなかった」と思ったあの日の自分に戻ってたまるか、そんな固い決意をできる強さを身につけました。震災の時何があったかようやく告白した未知に、「私がゆるし続ける」と彼女の気持ちをまるごと受け止めたモネ。ようやくつながったモネと未知の心。ゆるすこと、受け入れること、手を当てること、わかりたいと思うこと。思えばこの物語のテーマは、ずっと一貫していました。「震災」という大きな出来事は背景にありますが、「復興」や「立ち直り」といったその事象に特定されたテーマでは普遍的な共鳴は呼び起こせない。水が山から川へ、そして海へたどり着き、また空へと循環するように、人と人の縁、心同士もまた、めぐりめぐってつながっていくということを、教えてくれたのです。 「離れていてもつながっている」、それはまた思うように行き来できず触れ合えない今のコロナ禍を生きる人間にも伝わるものがありました。 そもそも、震災もコロナもまだ「終息」はしていません。 そんな状況で、「大団円」は描けません。 自分の意思で未知は大学へ行き、亮は「俺の船だ!」と誇らしげに笑った。しかし、これはまだ最初の一歩。彼女らの人生はこれからも続きます。モネも含めて、未来へ続く道はこれから自分たちで作っていくのです。 それは若者も大人も変わりません。あの日から立ち止まったままだった新次は、美波の死亡届に判を捺すことを決意しました。一方、耕治は「自分が救われたと感じたくないから」と、亮の出航を見届けませんでした。あの日のことすべてが解決したわけではない。それでも、海ではなく陸でイチゴを育てることに生きがいを見出した新次、銀行から海へ働き先を変えた耕治。彼ら大人もまた、新しい未来をそれぞれ選んでいきました。 この物語にきっと「終わり」はない。 未来は無限に広がっている。空のように海のように。 人の思い、つながり。そして自然。記憶。抗えない運命のようなもの。それらすべてを包み込みながら、風が吹き抜けていきました。毎日しみじみと、心を染めていきました。ひといろずつ丁寧に塗り重ねられて、最後には大きな絵画が完成されていました。 こんな朝ドラもあっていいと思います。もう一度最初から観返してみたいです。海から山へ、もう一度立ち返って風を感じてみたいです。
『ムショぼけ』
北村有起哉主演…と聞いて、観ないわけにはいかない。 キャスティングが絶妙です。木下ほうかのいやらしさは絶妙ですし、由美姉さん(あ、今は映薫なのか)やら九条ジョーやら、脇役の芸人もいい味を出しています。九条ジョーは芸一筋かと思いきや、意外に器用ですね。 妄想の板尾も役にぴったりで、存在感があります。今は四六時中陣内を苦しめる悪役ですが、彼がムショぼけから醒める時、きっと笑って見送ってくれるのでしょう。 原作が作者の実体験というのは素直に笑っていいのかわかりませんが、ドラマとしてはよくできています。何といっても北村有起哉のやさぐれ感が最高。東京出身とは思えないほど尼崎弁が自然で、芸人相手の早いテンポの会話にも違和感がありません。 AmazonのCMで現実の奥さんと共演している時の色気はどこに行った、と不思議になるほど、どんな役にもなりきれる俳優さんだからこそ、こなせる役柄なのかなと思います。 『SUPER RICH』 江口のりこ主演…と聞いて、観ないわけにはいかない。こんなドラマが多い今季です。 大金持ちの女社長がパートナーに騙され会社の金を持ち逃げされ、一文無しになって出直す…という序盤の展開。金持ちらしく庶民の暮らしに無知なところはあっても、傲慢さはまるでなく、部下や学生にさえ謝罪も感謝も素直に表し、あくまでフラットな姿勢で接します。成金でなく、生まれながらの本当のお金持ちとはそういうものかもしれません。そんな彼女だからこそ、社員たちは誰も彼女と彼女の会社を見捨てることなく、窮地に立たされてもなお存続の道を探して奔走します。 2話の最後で、メディア社の実質乗っ取りを拒否し、イチから出直しをすることにしたらしいスリースターブックス。彼女と仲間たちに加え、インターンの学生もそこに集まっているようです。このインターンたちが物語においてどういう役割を与えられているのか、まだ今ひとつつかめていません。生まれながらの貧乏という衛と異なる出自の春野(そしておそらく宮村と境遇が似ているのだろう)を登場させるのはわかりますが、リリカたちは今後どう動かされていくのでしょう。現実の学生はどれだけ優秀であろうと、絶対にあんな言いたいことを全部口にはしないだろうし、あそこまで性格を尖らせる必要があるのか疑問です(しかも志田未来は実際20代後半の既婚者ですし…)。これからの展開で、社会を知らない若者と化学反応が生まれていくのでしょうか。 少し脚本が粗いかなという気はしますが、金持ち⇔一文無し展開で女性が主人公というのはめずらしいと思いますし、その難しいキャラを江口のりこが実にいやみなく演じているので、これからの展開に期待が持てます。
『ボイスⅡ 110緊急指令室』
まさか透ちゃんまで死ぬとは思わなかったよ…。 大樹が洗脳されてしまう展開は心痛みましたし、透が退場してからはなんだかショックでその後の展開があまり頭に入ってきませんでした。トラウマから解放されないまま死んでしまって、ぜんぜん良いことなかったじゃん、透…。 今回は真犯人が早々に登場していましたし、裏切り者が片桐だったのも当初から意味ありげだったので予想どおりでしたし(しかも自爆してしまうし)、重藤が久遠に協力する動機もちょっと弱いように感じましたし、緊迫した現場でも真木よう子の滑舌(とおっぱい)が気になるし、物語に入り込めない部分が多くありました。 最後に趣里がチラ見せされ、第3部への布石と言われていますが、うーん。やっぱり観てしまうかも…。透に代わる代役次第かな。 『おかえりモネ』(承前) モネが気仙沼に帰ってきました。とりあえずコミュニティFMのお天気コーナーという役割をもらいましたが、「地元のため」になっているかと言えば、まだまだ壁は多く、本人の目指すところからは程遠い。そんな模索中のモネに亮は「きれいごと」と言い放つ。黙って受け止めたモネですが、亮の真意はあきらかではありません。 義務のように地元で生活している亮からすれば、島を出たいと登米に行き、そして好きな仕事をしたいと東京に行き、テレビに出て人気者になって、そしてまた自分の思いのまま帰ってきたモネに対し、嫉妬心に似た反感を憶えてしまうのかもしれません。下世話なところで言えば、結婚を保留できるくらいの愛情しかない菅波より自分の存在は下なのかという怒りと、その時のことを忘れたかのように未知との仲を詮索しようとする態度も気に入らなかったのかもしれません。竜巻の後の片づけの場面でも新次がいなかったのが気になります(単に中の人のスケジュールの都合かもしれませんが…)。亮と新次は和解できたのか、次のステップへ歩みだせているのか…。姉や亮に対し複雑な思いを抱えている未知の真意もまだ読めません。 みんながみんないろんなことを抱えすぎていて、本当にすべて解決できるのか気になります。 いや、人生なんて未解決の事象の連続です。心はその時その場で起きること出逢う人に揺り動かされ、正しい答えなんか用意されていない。自分で考え、自分で導き出すしかない。それが誰かにとっての間違いだったとしても、自分が正しいと思う道を進むしかない。誰かのためでない、自分のため。モネも亮も未知も仲間たちも、みんな若者。悩みはこれからもつきません。大人だって、民宿再開と牡蠣棚復旧に悩む亜哉子も、昇進するも単身赴任で喜べない耕治も、皆悩みの中にいます。人生の終局に立っている龍己だけが、誰にも左右されず自分の答えを持っているように思います。 きっと物語が終わっても、その先モネたちは悩み、模索し続けるのだと思う。 けれどドラマとしては、何らかのあかるい道筋を見せてくれる最後であってほしいと思います。
『おかえりモネ』(承前)
まったくもって無防備でした。 かの「おいで」砲に匹敵する新たな伝説に出逢うことになろうとは…。 「どうしたの」 その破壊力ときたら…!!! ようやく、ふたりが物理的に触れ合う時が訪れました。サヤカさんではありませんが、じれったいふたりでした。 「付き合ってください」「はい」なんて言葉は必要ないものなのですね。まったく無粋な人間でした。 相手のことを知りたい。わかりたい。人と人とが結ばれる、スタートはいつもそこから。 それでも相手のことを百パーセント理解するなんて不可能だから、不安になったり怖くなったりするけれど、それでも知りたい。出逢う前のことも含めて、相手の喜びも悲しみも全部共有したい。だからもっと一緒にいたいし話したいし触れ合いたい。それが恋。そして相手の心を受け止める、それが愛。 「わかりたい」という菅波の寛容と、「わかってんでしょ」という一方通行の亮。対照的なふたりの言葉が、それぞれの想いを表現していました。 亮が疑似恋愛に擬態させた苦しみをモネが受け止めたとしても、それで彼は救われはしない。島を出て、揺れ動いていた自分の足元を固めることができたモネにはわかっていました。本当に亮が苦しみから脱却するには、大好きな人を失った怖さから立ち直ること、誰かのためでなく自分のために生きること、その道を見つけること。その逃げ場所はモネではない。 彼の帰る気仙沼には、妻の死亡届と、そして息子と向き合う決意をした新次が待っています。彼ら親子が面と向かって話すその時、ふたりはあの日からようやく一歩を踏み出せるのかもしれません。 そしてまだ完全には吹っ切れていないように見える未知も、島に戻って自分らしい生き方を定められるのか気になります。未知は一見大人びていますが、芯は子どものまま大人の殻をかぶっているように感じます。きっと13歳で被災し、島のために働くことを決意したその時から、みずから大人びることを課したのでしょう。モネを「正しいけれど冷たい」と感じる未知は、やっぱりまだ大人になりきれていないのだと思います。「誰かのため」という言葉に縛られていたモネが、菅波に同じ言葉をぶつけた時のように。 亮も同じです。亮にも未知にも、モネにとっての菅波のような大人の手が必要です。未知は亮のそばにいると言いましたが、未熟なふたりが安易に寄り添うのは良いことにならないような気がします。 ただ、仲間ではじめて震災のことを語り、三夫の言葉もあって、未知も少し気づき始めたように思います。自分が島で働くのは「自分のため」と。あと少しです。誰かが手を貸せば、きっと姉への複雑な思いも緩和すると思います。 この作品には通常のドラマにはあまりない手触りを感じます。感情や状況を端的に表すセリフはほとんどありません。震災、遺体、行方不明といった刺激的な単語がないのも視聴者への配慮だけでなく、被災者である主人公たちが意図的に口にするのを避けているのであろうと推測され、それが逆に彼らの記憶の重さを感じさせます。「恋」「好き」という言葉より先に「会いたい」「いなくなるのが怖い」といったストレートな欲求が出てくるのも、本来それが自然な感情の揺さぶりながらドラマとしてはあまり描かれない流れでした。思いを伝えるのはセリフだけではなく、演者の表情、指先、背景の陰影、それらすべてなのだと改めて気づかされました。小さな水滴が大きな波紋を広げるような表現方法には感じ入ります。 あと二ヶ月、モネだけでなく、他の人びとにも救いが訪れることを願いながら見守りたいと思います。 |
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