去年後半は映画をたくさん見ましたし、「ドント・ウォーリー・ダーリン」なんかはかなり良かったのですが、文章を書く習性がなくなっており、なかなか感想が書けませんでした。今年こそは短くても書いていこうと思います。
〇 SUMMER OF 84(サマー・オブ・84):70点
80年代のアメリカを舞台として、何の特徴もない主人公、いじられデブ、物知りメガネ、大人びた不良、という非常にわかりやすいキャラクターである4人の少年達のひと夏の冒険を描くジュブナイル作品、と思いきやラスト15分ぐらいで急に展開がおかしくなる映画です。
このおかしくなるところがたぶんこの映画のアピールポイントだと思うのですが、普段の僕がバッドエンドの映画を好んで見すぎてしまっているせいか、個性はあるなあと思いましたが、衝撃はありませんでした。こんなちょっと捻くれただけの映画より、ド直球のホラー映画である「テリファー」なんかの方が圧倒的に後味は悪いですから。主人公の少年は酷い目に遭いますが、隣人マッキーの言う通り自業自得としか言えないですしね。
ただ、ヒロインのニッキーが本当に引っ越してしまうところなんかは、主人公の将来に何の希望もない気がして面白かったです。裏切り者のメガネや不良と友情が戻ることももうないでしょう。人生というのはそんなものです。
〇 アフターサン:85点
これはあまり見たことがないタイプの映画ですね。
普段は離れて住んでいる父と娘がトルコで一緒に過ごした時間を、大人になった娘が思い返している映画なんですが、このトルコでの夏は、父が娘に高いじゅうたんを買ってあげたり、娘がへたくそな歌を人前で歌ったり、父が狂ったようにダンスをしたり、父の誕生日を娘のサプライズでみんなが祝うんですが父があまり喜ばなかったりなど、本当にくだらないことしかありません。娘が夜に外で独りぼっちになってしまうこともあるのですが、そこでも何の事件もありません。本当に何もなく、ラストは父と娘が空港で別れて終わります。
父と娘が一緒に過ごすことによって絆を深めていくことに感動するとか、そういった映画ではありません。別に父娘は元から仲が悪いわけでもないですしね。もう死んでしまった父とのあの夏の思い出が懐かしくもあり悲しくもあると、娘の心情を思いやって感動するような映画でもありません。確かに大人になった娘は父との思い出には浸っていますが、そんな単純な映画ではありません。男と女とは何か、大人と子どもとは何か、親と子とは何か、それらについて我々が持つ古い価値観やイメージを揺さぶっているのはわかりますが、これも揺さぶっているだけで壊したり新しい結論を出しているわけではありません。
ただ、悪い映画ではありません。むしろ良い映画です。その良いと思った理由を説明できないのがこの映画の難しいところですが。新しいタイプの映画なので、映画通ぶりたい人のマウント取りに使われそうなのが一番の欠点でしょう。
〇 フォロウィング:65点
クリストファー・ノーランのデビュー作ですね。金はかかってなさそうな映画ですが、音楽やモノクロ映像など雰囲気は悪くないですし、クリストファーノーランらしく編集は巧みで、時系列をシャッフルし、終盤畳みかけるように伏線回収が行われ、ラストにあーそういうことかと思わせたところで大きなどんでん返しがあります。まさに、センスはある、独創性もある、ないのは金だけという人が作った映画です。
ただ、組み立て方に感心はしますがそこまで大したストーリーではないですし、楽しめたかと言われたらそうでもないです。クリストファー・ノーランは才能はあるんだなあとわかるだけの映画ですね。
〇 シャイニング:60点
去年「羊たちの沈黙」を初めて見た時も思ったのですが、いくら歴史に残る名作でも後になって観るとすごさがわかりませんね。「ユージュアル・サスペクツ」や「ソウ」なんかは公開当時に観てとんでもなく面白かったので、もし公開当時に観ていたらこの映画ももっと面白かったのでしょう。「ユージュアル・サスペクツ」や「ソウ」を観た時より僕自身の感性が鈍くなっているという可能性もありますが。
〇 PERFECT DAYS:75点
社会的地位や他人の目を気にせず、過去も未来も捨てて、毎日のルーティンを大切にしながら、今を幸せに生きている主人公を描いています。しかし、生きているかぎり、色々な人と関わり、色々なことが起こるので、その都度心は揺れ動きます。寝ている間の夢もいいものではなさそうです。過去への後悔、未来への不安だってきっとあるでしょう。主人公は神様ではないので、感情はあります。それが溢れ出ることもあります。
非常に観てて心地良い映画です。この映画の主人公は木漏れ日ばかりを撮影する趣味がありますが、まさに木漏れ日のような、一瞬の新鮮な美を描いた映画です。ただ、現実感があるようでまったくなく、どこか冷めた目で観てしまう自分がいますね。アート作品だと割り切って楽しめればかなり素晴らしい作品なんですが。
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