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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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いよいよ、今年を締めくくる全日本フィギュア、開幕です。
来年の平昌オリンピックの出場権がかかったこの大会、始まる前からドキドキが止まりません。
全員の笑顔が見たい、でも誰かの悔し涙はあるわけで…。

《女子シングルSP》
たった2枠をおよそ7人近くが狙う熾烈な争い。宮原・樋口両選手が一歩リードかと思われましたが、SPのトップを取ったのは、現在昇り龍の勢いを誇る坂本花織選手でした。
アメリカ大会で2位に入り、調子は上昇カーブを描いてはいたものの、ここまで点数をたたき出すとは正直、思いもしませんでした。ジャンプ技術はジュニア時代からトップクラスで、スピード感もスケール感もシニア1年目とは思えない質の高さですが、それに加えてアメリカ大会で得た自信に満ちあふれていました。滑りには関係ないものの、点数が出た時のリアクションやインタビューから垣間見えるキャラクターも好感が持てます。
2位はさすがの宮原知子選手。緊張からかややジャンプに精彩を欠きましたが、密度の高いステップはいっそう洗練されていて、フィニッシュまで魅了されました。
3位は本郷理華選手。最初のジャンプは高さがあり、そこから波に乗りました。手足の長い本郷選手に『カルミナ・ブラーナ』の情熱的でダイナミックな音楽はぴったりで、振り付けも際立っていました。彼女がこれまで歩んできた苦しい道のりを、観客はもちろん知っていました。フィニッシュを待たずして次々に立ち上がり贈られた惜しみない拍手。ソチ以降、宮原選手とともに日本女子を牽引する存在でした。FSも本郷選手らしい、ドラマチックなプログラムです。悔いのない演技をしてほしいと思います。
優勝争いは固いと思っていた樋口選手は、冒頭のジャンプで痛いミスが出ました。坂本選手が高得点を出しただけに、よりプレッシャーを感じていたのでしょう。しかし後半のジャンプでひきずらなかったのはまだ折れていない証。失うことを怖がらず、最高のボンドを演じてほしいと思います。
ジュニアながら最終グループに食い込んだのは紀平梨花選手。見事なトリプルアクセルでした。数十日単位で年齢制限にかかり平昌の出場資格がないところも、トリノの時の浅田真央さんを想起させられます。シニア参戦が楽しみな選手です。
オリンピック争いから後退してしまったのは、本田真凛選手、三原舞依選手、白岩優奈選手。白岩選手は宮原選手の、本田選手は本郷選手の直後でふたりとも少し動揺や緊張があったでしょうか。白岩選手は転倒あり、本田選手は独特の雰囲気を醸し出せる選手ですが個性が少しかすんで見えました。
宮原・樋口・三原の三つ巴と見られていた三原選手も、今季のGPSの不調を取り戻すことはできていませんでした。せっかく3-3を決めたのに、2Aの転倒からみるみる覇気を失ってしまいました。大人プロな『リベルタンゴ』はオリンピックに向けた勝負曲だったのでしょうが、柔らかな雰囲気を持つ三原選手にはここに来てもやや背伸びに映り、やはり世間で評されているように選曲ミスだったのでしょうか。しかしFSで盛り返し2枠を勝ち取った今年の世界選手権も記憶に新しい、「フリーの三原」です。大逆転をあきらめず、挑んでほしいと思います。

《男子シングルSP》
羽生選手が欠場したものの、オリンピック選出は間違いなし。残り2枠のうち、宇野選手にも当確ランプ。残るひとつの椅子をめぐり、無良崇人・田中刑事・村上大介選手ら世界戦の経験豊富な中堅選手が火花を散らします。
しかし、最初に会場を沸かせたのは山本草太選手でした。
ジュニアで輝かしい成績を残し、4回転もマスターして、将来を嘱望された選手でしたが、シニアに上がった昨年、度重なる大怪我に見舞われました。ようやく全日本の舞台に帰ってきた山本選手は、恐怖心もあったであろうに、予定構成からジャンプの難度を上げ、本番で成功させました。美しいスケーティングも流れるようなステップも健在。本人が思い描いていたオリンピック代表戦の内容では決してなかったでしょう。それでもリンクに帰ってきた山本選手に、観客は総立ちでした。北京まで4年。決して短くはない道のりですが、山本選手のこれからが光り輝くように祈ります。
村上選手も昨年怪我に泣いたひとりでした。今季も肺炎でNHK杯を欠場し、ベストの状態とはいかないまま今大会を迎えました。ジャンプをひとつミスした以外は演技をまとめましたが、点数が少し伸びませんでした。
いっぽう、圧巻の演技を見せたのは田中選手。高くてクリーンなジャンプに迫力あるステップで会場を惹きつけました。緊張を感じさせない演技の大きさでした。村上選手に10点差をつけ、次に滑る無良選手にプレッシャーをかけます。
最後のオリンピック挑戦と意気込む無良選手ですが、今季はジャンプが決まらず結果を出せていません。このSPでも最初の4回転でミスが出てしまいますが、続くトリプルアクセルは2点台のGOEをたたき出す最高のジャンプでした。タップ音だけで魅せるステップは無良選手の真骨頂。田中選手に6点差とつけます。
そして争いとは別次元の場所で、ひとり自分と戦う宇野選手にとっては、モチベーションの維持が難しかったのではないでしょうか。めずらしい連続ジャンプのミスで得点を落としてしまいました。顔色も少し悪かったように見えましたが、コンディションは大丈夫でしょうか。それでも全日本連覇は揺るがないでしょう。羽生選手不在の優勝に本人がどれだけの価値を見出しているかはわかりませんが、FPではGPFで得た教訓を糧に、「別次元の演技」を見せつけてほしいと思います。

《女子シングルFS》
宮原選手が情感あふれる演技で逆転優勝。4連覇を飾り、オリンピック出場権を獲得しました。
いつも冷静で感情を表に出すことのない宮原選手ですが、演技後には渾身のガッツポーズを見せました。リンクの外では濱田コーチもフィニッシュと同時に顔を覆い、キス&クライでもその涙は止まらず、宮原選手がどれほど努力を積み重ねてこの日にたどりついたのかが垣間見える一幕でした。練習を始めてまだ二ヶ月のジャンプは完璧とはいきませんでしたが、それでも跳べない間に磨かれたスケーティングはそれを補ってあまりあるものでした。平昌のキス&クライでは涙ではなく笑顔のふたりを見られますように。
初優勝を狙った坂本花織選手でしたが、最終滑走の緊張もあってかアメリカ大会に較べると勢いに欠け、回転不足やエッジのアテンションもあって思うように得点が伸びませんでした。それでも大きなミスなく滑り切ったメンタルは見事です。大会前は圏外扱いだった選手が、まさかの表彰台。モスグリーンから真っ赤になった衣装もリンクに映えていました。
表彰台に上ればオリンピックをぐいっと引き寄せられた樋口選手でしたが、結果は4位。演技前の表情は落ち着いて見え、慎重に要素をこなしてジャンプミスをひきずらず最後まで滑り切りましたが、点数は自己ベストに及びませんでした。報道によると怪我を抱えていたようです。それでもフィニッシュ後にリンクをコンコンと叩いたのは、今のすべてを出し切ったというサインだったのでしょう。
これでオリンピックの残り1枠は、現時点で勢いある坂本選手か、実績の条件にあてはまる樋口選手のどちらかに絞られましたが、いずれにせよすんなりとはいかないであろう結果となりました。スケ連がどのような判断を下すのか…24日の結果発表を待つのみです。
SP7位から5位に上がった三原選手。この全日本でも、得意のフリーが輝きました。流れるようなスケーティングから天使のようにフワリと舞うジャンプの美しさ。至高の時間に酔いしれました。最後のサルコウを決めてのガッツポーズと、フィニッシュ後の涙にはこちらも感極まりました。FSでは3位の140点台をたたき出しましたが、SPのミスが痛かったです。
本郷選手は二度の転倒で順位を落としてしまいましたが、それでも情熱のステップは観衆を魅了しました。本郷選手の表現力は若手にはない唯一無二の武器。これからも本郷選手のいろんなプログラムを見ていきたいと心から思います。
本田選手は滑り出しから勢いがありませんでした。オリンピックを目標にやってきて、それをまだ試合中にもかかわらず見失ってしまった悲しさや混乱が演技からも伝わってきました。どんなに世界の舞台で戦っても、まだ10代の女の子です。メンタルの強さがいかに問われる競技なのか、あらためて感じさせられました。SP8位と出遅れた白岩選手ももともと選出には厳しい条件でしたが、FSでも転倒して悔しい結果になってしまいました。今後のスキルアップに期待です。
ジュニアながら3位に入った紀平選手。空気に乱されることなく、見事に加点のつくトリプルアクセル2本を決めました。まるで男子のように鮮やかなジャンプでした。このまま他の部分をブラッシュアップすれば、ロシア勢に対抗できる選手になりそうです。第3グループでは竹内すい選手がトリプルアクセルを跳び、横井ゆは菜選手が会場を沸かせ、紀平選手もあわせてジュニア層の厚さも感じる全日本となりました。

《男子シングルFS》
やはりひとり別次元だった宇野選手。公式練習で2A―4Tのコンビネーションに挑んでいたと明かされた時には耳を疑いました。そんな見たことも聞いたこともないジャンプを跳べる人間がこの世に存在したというのか?
結果は失敗でしたが、そのファイティングスピリッツには感服。ループやフリップの高難度4回転プログラムももはやあたりまえ、ミスはあったものの圧倒的大差で連覇を果たしました。オリンピックではどのような構成で金メダルに挑むのか想像もつきませんが、それにしても宇野選手がまさかここまで順調にトップ選手の階段を駆け上がるとは。4年前のソチ争いの最終グループでひとりあどけなかったあの少年が…全日本初出場の時にはタキシードの衣装が入学式のようだったあのチビッ子が…。実に感慨深いものがあります。…て、なんか親戚のおばちゃんみたい。
熾烈な2位争いを制したのは、後半の4回転を成功させた田中選手でした。緊張感は手に取るように伝わりましたが、それと同じくらいオリンピックにかける強い意思も感じました。それまでの選手に4回転の失敗や回避が続いていた中、絶対に決めなければいけないジャンプを降りきった瞬間、それはオリンピックへの道がはっきりと拓けた瞬間でもありました。
そしてそれは同時に、無良選手の道が閉ざされた瞬間でもありました。ジャンプが不調なこともあり構成を変えて確実な方法を選び、その計算は当たったものの、SPの点差が響きました。
渾身のオペラ座。気迫のファントム。ようやく見せてくれた、それは最初から最後まで無良選手にしか滑れないオペラ座でした。コーチでもあるお父さんとの抱擁、そして涙。どの選手にもここに至るまでドラマがあります。しかし無良選手がどれだけ長い時間オリンピックに向け戦ってきたのか、ファンは知っています。この日いちばんの拍手は、キス&クライで赤い目をした親子に降り注ぎました。
村上選手は万全の状態には遠く見えました。4年に一度のオリンピックに出場するには、タイミングという運が大きく作用することもありますが、村上選手にはそれがもっとも影響したように思います。数年前イキイキと滑っていた時の村上選手がここにいれば、と思わずにはいられません。村上選手の品があって丁寧なプログラムをもう一度見たい。そう願わずにいられません。
町田樹さんを見習ってあえてオリンピックと口にするようにした、と自分にプレッシャーをかけて今シーズンに挑んだ友野一希選手。シニア1年目での快挙には届きませんでしたが、町田選手のように心を惹く演技でした。4年後はきっとひとまわりもふたまわりも成長して、枠争いの中心にいることでしょう。
そして4年後の姿が楽しみなのは他にも。須本光希選手はJGPFから構成をあげたプログラムを滑りきりました。山本草太選手もショートに続いて復活劇を披露し、オリンピックには関係ないところで会場が拍手と涙に包まれました。客席では一緒に練習してきた本郷理華選手も涙を見せていましたね。女子に較べて話題が少なくなった男子ですが、ちゃんと未来へのバトンは受け継がれていきます。

表彰式後、出場選手が発表されました。
最後の名前が発表された瞬間、ひときわ大きな歓声が上がりました。スケ連の人もタメましたね~。
女子の2枠目は坂本選手でした。今大会の結果だけでなく、アメリカ大会2位の実績があったことも功を奏したでしょう。
羽生・木原・リード選手以外は初出場。団体戦も含めチームジャパンみんなが笑顔でフィニッシュを迎えられるよう、祈りを捧げたいと思います。

今年はとくに泣きつかれた4日間でした。
翌日のエキシビションはメダリストがクリスマスメドレーで楽しませてくれたいっぽう、惜しくもメダルに届かなかった選手の演技がひときわ心に残りました。
中でも樋口選手の『ハレルヤ』は気持ちが伝わりました。ジャンプを封印してのスケートでしたが、かつてジャンプとスピードで注目されたジュニア選手が、時を経てスケーティングを身につけオリンピックを争い、結果には届かなくてもしっかりとその足跡を見る者の心に残した。その事実は樋口選手の歩んできた道が間違っていなかったことの証明です。試合後のインタビューではまだ涙が止まりませんでしたが、4年後の新たな目的のために彼女はふたたび立ち上がるはず。たくさんのファンが見守っています。
それにしても、高橋大輔さん泣きすぎ。オリンピック選考会とあって平常心ではいられないんだろうな。解説者って難しそう。
あと生中継と荒川静香・本田武史両氏の解説とTESカウンターは本当に良かったのに、なぜエキシビションはク×(自主規制)になるフジテレビ。オリンピックはどこが中継するのかなー。




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NHK杯の練習での羽生結弦選手の負傷は、フィギュア界に衝撃を与えました。
注目選手がのきなみ不在とあって盛り上がりが心配されましたが、ベテラン陣の魂のこもった熱演と日本の若手選手の奮闘で、見ごたえあるNHK杯となりました。
で、グランプリシリーズをほぼ全視聴して思うのは、やっぱり中継はNHKがいちばんだなあということ。
このGPFも、日本開催なのに生中継じゃないってどういうことなのよ。番組内で結果が出るまで、CM中もスマホをのぞくの我慢しましたよ。
全日本もオリンピックも世界選手権も、全部NHKでやってくれませんかね…。

《男子》
4回転を成功させるどころか、上に行くにはSPですら複数の4回転を跳んであたりまえという、超・超ハイレベルな4回転時代を迎えている男子フィギュア界。その先頭を行くのが、「ネイサン、事件です」との見出しも記憶に新しいネイサン・チェン選手。5種類の4回転をマスターしているうえ、アメリカらしい力強さと個性を兼ね備えた若手選手です。羽生選手の負傷も、ネイサン選手に触発されて4Lzをプログラムに組み込もうとしたゆえのアクシデントでした。
しかし、パーフェクトな演技とはならず。SPの貯金で優勝は果たしたものの、FSは2位と悔しい結果に。宇野昌磨選手も4Fに加え、4Lo、4Sに挑んだ結果、跳べていたはずの4Tの失敗につながってしまい、わずかな点差でネイサン選手に逃げ切られてしまいました。
時代が進むにつれてプログラムの難度がどんどん上がっていくのはスポーツにおいて当然の流れでありますが、このところの急激な4回転志向は選手への負担があまりにも大きすぎます。今大会では上位選手が高難度の4回転に複数挑みましたが、転倒や失敗が重なり、総合点は前年に較べて低いものとなりました。しかも、解説の織田信成さんが言及していましたが、4回転を組み込むことで助走が長くなり、結果演技構成点の低下にもつながってしまうようです。フィギュアというスポーツは技術と芸術の融合でありますから、どこかで4回転時代に歯止めをかけなければいけない必要があるように思います。五輪後には何かしらのルール改正があるようですが。
そんな中、4回転がなくても「魅せる」演技で会場を惹きこんだのが、ジェイソン・ブラウン選手とアダム・リッポン選手。親日家で日本でもファンの多いブラウン選手ですが、NHK杯のキス&クライでは日本語で書いた羽生選手あての手紙を披露し、ますます人気が高まりました。個人的にも、ジェイソン選手の演技は大好きです。最初から最後まで目が離せず、曲の終わりが惜しく思えるほどです。
アダム・リッポン選手のFSも見ごたえ充分で、本当に鳥が羽ばたいているようでした。ベテランの域に達しているにもかかわらず4Lzに挑戦する意気込みは素晴らしいです。NHK杯エキシビションでの熱唱にはビックリでしたが。
皇帝プルシェンコ以来目立った選手が不在だったロシア男子ですが、ここへ来て復活したベテランのセルゲイ・ボロノフ選手と、若手ホープのミハイル・コリヤダ選手が、世界の中心に踊り出てきました。
NHK杯での気力体力を振り絞った熱演が印象的なボロノフ選手は、FSのラストのポージングで会場を沸かせてくれました。全身からこぼれだす男の色気に、ほ、惚れそうです。
コリヤダ選手はまだ粗削りですが、高さのある4回転とロシアらしい貴公子的雰囲気が魅力です。安定した演技で表彰台をものにして、まだまだ男子フィギュアにロシアありと存在感を放ちました。

《女子》
ロシア陣の表彰台独占かと思われた女子ですが、メドベージェワ選手が怪我のため出場辞退。NHK杯では足にテーピングが見られ、めずらしいミスもあったため、その時点でかなりの負担があの細足にかかっていたのでしょう。本番はロシア選手権とオリンピックですから、回避は当然の措置です。
そのため、補欠選手であった宮原知子選手の出場が決定しました。全日本に照準を当てていたでしょうし、怪我明けのため休養が欲しかったところかもしれませんが、オリンピックの枠が2つしかないことを考えると、ここで結果を残しておくことも必要かもしれません。
復帰戦でのNHK杯ではさすがに振るいませんでしたが、その2週間後のアメリカ大会では見事に表彰台を勝ち取り、今回もSPで完璧な演技を披露してエース復活を印象づけました。FSは最終滑走の緊張と、調整の難しさもあったのか、回転不足が目立って順位を落としてしまいましたが、昨年からいちだんと磨かれていたのは演技構成の部分でした。
『SAYURI』と『蝶々夫人』、日本女性の芯の強さと清楚な美をあわせ持つふたつのプログラムは宮原選手にぴったりですが、技と技の間も表現を怠らず、濃密なつなぎをしっかりアピールできているように思いました。怪我でジャンプの跳べない間も、自身の向上に研鑽を重ねてきたであろうことが伝わりました。努力家の宮原選手らしい貫禄の滑りで、全日本に向けて手ごたえを感じたのではないでしょうか。
いっぽう悔し涙が止まらなかったのは樋口新葉選手。溌溂としたSPと迫力あるFSはオリンピックという大舞台にふさわしく、樋口選手の出場に賭ける思いの強さを感じます。とくにFSのスカイフォールは、会場一体となって盛り上がることのできる素晴らしいプログラムだと思います。GPSでもしっかり結果を残し、出場権獲得レースを一歩リードしたかと思われましたが、今大会のFSでは調子を落としていたうえ、ミスのリカバリーに頭がいっぱいになってしまったのか、途中からあきらかにスピードが落ちてしまいました。リカバリーはしっかりできていたので、あとはメンタルの持ちようかと思いますが、これも16歳でシニア2年目という経験の浅さゆえなのでしょうか。全日本までになんとか立て直してほしいです。
30歳という年齢でGPFの舞台に帰ってきたカロリーナ・コストナー選手。彼女の演技を今年も見られることに幸せを感じます。ジャンプの基礎点が低いためひとつのミスで点数が落ち込んでしまいますが、演技構成点の高さはさすがベテラン。4度目のオリンピックでの、コストナーの絶品スケーティングを楽しみにしています。
怪我でのブランクを経て大舞台に帰ってきたケイトリン・オズモンド選手の見違えるような演技には、瞠目させられました。今季のSPのエディット・ピアフは彼女の代名詞になるのではないかと思うほど、印象強いプログラム。FSを苦手としているようですが、今回はさすがの貫禄でした。パワーと情感のカナダが帰ってきました。
表彰台の2トップを飾ったのは、今年もおそロシア。シニア1年目でGPS2連勝を飾りファイナルも制したアリーナ・ザギトワ選手と、長身かつ可憐で完成度の高い演技が売りのマリア・ソツコワ選手。
ザギトワ選手は、ジャンプはすべて後半、しかも3Lz-3Loを武器とします。トンデモナイ選手が出てきました。これこそ事件です。セカンドに3Loを持ってくる選手がついに現れたことに、なぜ世間はもっと騒がないのか!? 安藤美姫さん以来ではないか? それもセカンドの3Loには頑として回転不足としか判定しなかったジャッジですら加点を付けざるを得ないクオリティ。なぜロシアは毎年毎年、雨後の筍のごとく逸材が出てくるのでしょうか。JGPFでは4Sに挑んだ選手がいたというし…。
ただ、女子選手につきものなのが体型変化。ロシアは民族性からかとくに顕著なようですが、ソチ五輪で活躍したリプニツカヤ選手は、その後摂食障害をわずらって今季を前に引退を表明しました。個人的に好きなポゴリラヤ選手も、今季ひとまわり身体が丸くなってジャンプの感覚に苦しんでいるように見受けられます。ザギトワ選手も15歳でちょうど成長期にあたりますが、このまま順調に乗り越えていってほしいですね。
こうなると、気になるのがロシアのオリンピック出場の問題。とくに女子フィギュアにおいては、ロシアの独壇場です。もし出場がかなわなければ淋しい限りですし、オリンピックメダルの価値が落ちてしまう可能性もあります。お国柄の問題もあるでしょうが、なんとか個人出場の道を開いてほしいものです。

GPFが終わり、今年残すは全日本選手権のみとなりました。
オリンピックの出場がかかった今年の全日本は、より緊張感のある競技会となります。
男子においては宇野昌磨選手が出場権を確実なものとしましたが、心配なのは羽生結弦選手の怪我の状態。万が一全日本に間に合わなくても実績からして選出は問題ないでしょうが、オリンピックまでブランクを開けることに不安もあるでしょう。選手側の冷静な判断を待ちたいと思います。
残る1枠は誰が手にすることになるでしょうか。有力視されていた無良崇人選手がGPSで実績を残せず、田中刑事選手・村上大介選手も怪我を抱えているため、若手も含めて熾烈なものとなりそうです。
女子は、ほぼ全日本一発勝負。安定感ある宮原選手がわずかに有利とはいえ、爆発力のある樋口選手、枠取りに貢献した三原舞依選手あたりを中心に、白熱した戦いになりそうです。他にもアメリカ大会で表彰台に乗った坂本花織選手、実績のある本郷理華選手に加えて、白岩優奈選手や本田真凛選手も控えています。実力伯仲、横一線。見ているこちらも笑顔に涙、2週間後は忙しい週末になりそうです。
年齢制限でオリンピックには出られませんが、JGPFで女子ではじめて3Aー3Tを決めた紀平梨花選手の演技も楽しみです。

余談ですが、女子の3Aのメリットのなさは、前々から疑問でした。単独3Aより、3Lzからの3-3のほうが高得点のため、後者を選択し濃密なつなぎで完成度を高め加点狙いでトップを狙う傾向は、メドベージェワ・ザギトワ・ソツコワを抱えるエテリ陣営の戦法の成功により、ますます顕著になっていくのではと思います(もっともザギトワのセカンド3Loは一石を投じるかもしれませんが)。
浅田真央さんは競技会から去りましたが、3Aへの挑戦の火は消えておらず、トゥクタミシェワ選手や長洲未来選手がプログラムに組み込んでいます。しかし失敗すれば大幅減点となる大技は、その後のダメージや演技構成点にも影響してなかなか結果に結びつきません。各国の表彰台を狙う主力選手が挑むにはあまりにもリスクが大きすぎて、「ベテランが果敢に挑戦する大技」にしかなっていないのが現状です。
それでも彼女たちのチャレンジ精神を無駄にしてほしくありません。
リスクなく3Aに挑める採点方法が確立できれば、それが女子フィギュアの進歩につながるのではないかと思うのですが…どうなんでしょう。



今年もやってきました、お笑いなのにヒリヒリする、年に一度の大イベント。

敗者復活戦は、期待していた霜降り明星やAマッソがイマイチで残念でした。結局、投票はこのように。
さや→スーパーマラドーナ・さらば青春の光・見取り図
ヤスオー→囲碁将棋・ニューヨーク・見取り図
前2組は完全にふたりの好みですが、3組目は共通してまさかの見取り図。ここのところめきめき実力を上げていたこのコンビですが、結果は14位でかすりもせず! やはり知名度か…。
で、スーマラってね。なぜ敗者復活にいるの? と言いたくなるような圧倒的得票数でした。

今回から都度都度抽選をしてネタ順を決めるという趣向に。公平といえば公平ですが、順番が運命を左右することをつくづく感じる大会となりました。

《ゆにばーす》
前にどこかで見た時は、はらのキャラだけが目立っていてさほど面白さを感じなかったのですが、今回の完成度は高かった! 番組中トレンディエンジェルのたかしも言及していましたが、ネタ順によっては結果が変わっていたかもしれません。もったいなかったですね。『翼の折れたエンジェル』の熱唱は、しばらく頭から離れませんでした…。

《カミナリ》
はじめて見た時の衝撃に較べれば、次に何が来るかわかっているだけに、ツッコミ待ちの間が少し冗長に感じてしまいました。この大会はポンポンしゃべりを繰り出して次々笑いを取るコンビが有利なだけに、点数が伸び悩むのはやむなしです。上沼恵美子の評も適確でした。

《とろサーモン》
昔から見ているコンビですが、正直、昔から面白さがわかりませんでした…。
小技を使わず伝統を踏襲した漫才で、仲間内からの評価は高いけれどなかなかブレイクできず苦労してきたことは知っていますから、ようやく日の目を見たことについては素直に良かったなと思いますが、うーん、やっぱりわかりませんでした。たぶん久保田のキャラが受け入れられないことや、「続行!」の面白さが個人的に理解できないことが原因なのだろうけれど。

《スーパーマラドーナ》
昨年と同じパターンの、田中がひとりで状況を進めて武智がツッコミを入れていく展開が大好きで、死ぬほど笑いました。なんで点数が伸び悩んだんだろう? やっぱり私が個人的に好きなだけなのか?

《かまいたち》
もともとコント師なのに、王道のしゃべくり漫才で突き進む姿勢は素晴らしいと思いますが、やっぱりキングオブコントに較べると見劣りしてしまい、期待外れ感がありました。それでも、今後もコントとしゃべくり漫才の二刀流を極めていってほしいです。(コントを漫才化しただけの漫才では真の二刀流ではないと思いますので)

《マヂカルラブリー》
こういう異色なコンビを1組入れないといけない縛りでもあるのでしょうかね。準決勝までは会場でウケたのかもしれないけれど、このスタイルで賞レースを戦うのが不可能なことは歴代大会の出演者を見ても明白です。ネタ中も結果が出たあとも引き潮で、見ていていたたまれないものがありました。上沼さんのコメントが物議を醸していますが、よく言ったと思います。「好みでない」というのは「実力がないということではない」とも取れる最大限の配慮だと思いますし。松ちゃんが締めてくれなかったらどうなっていたことやら。

《さや香》
たぶん初見。おそらくこのネタが十八番なのでしょうが、ごくごくスタンダードな展開で我が家のツボには入らず…。ゆにばーすやカミナリより点が伸びたのは順番のアヤかなあ。他のネタを見たら印象が変わるのかも。

《ミキ》
最初はお兄ちゃんの声が苦手で受け入れられなかったのですが、慣れてきたら業界の高評価もうなずける実力のほどが実感できました。とにかく聞き取るのが大変で、一本見たら疲れるのが難点ですが。上位3組には入るだろうと睨んでいましたが、優勝するにはまだ少し早いかなとは思っていたので、納得の結果です。

《和牛》
昨年とはパターンを変えてきて、この大会にかける熱量を感じましたが、個人的には昨年のネタの方が好きでした。これは漫才なんだろうか? と不思議に思うものの、地力が他を圧倒しているのは明白ですから、点数が伸びるのも当然なのかな。

《ジャルジャル》
抽選でいちばん割を食ったのはこのコンビなのではないかと思います。和牛がトップを取った時点で、もう「和牛・ミキ・とろサーモンで決まり」のような空気が出ていたように感じました。毎年毎年新しい型を生み出して、それがすべて高いクオリティを維持しているのに、なかなか結果を出せませんね…。100パーセントの出来だったと思うのですが得点につながらず、福徳の悔し涙が印象的でした。

ネタ直後の我が家の評価と採点結果の乖離が多く、個人的には消化不良感の残る今年のM-1でした。
準々決勝についてはまだ東京編を見るのがやっとですが、錦鯉がここで落ちていた理由がわからん…。会場は静まり返っていたなあ…自分は涙が出るほど笑ったのに。
ローカルで活躍後、東京進出してからめっきり見なくなった懐かしいコンビが、いくつもここで敗退していたことが発覚。GAGが! コマンダンテが! 何やってんだ!?
中でも、女房に逃げられた元芸人の父親と中学生の娘のコンビが印象的でした。むしろプロより面白かったです。来年敗者復活まで行ったなら話題になりそうです。娘がいつまで付き合ってくれるかが問題でしょうが…。

来年はどんな演者がネタをぶつけ合うのか、楽しみです。


24年前。『いちご白書』というドラマではじめて見た安室奈美恵は、かわいいけれどお金持ちのお嬢様役には見えない垢抜けなさで、さしたる印象はありませんでした。
しかしその直後、CMで見かけた彼女に一瞬で惹きつけられました。『愛してマスカット』の一節を歌うパワフルな声、ダンスは、「安室奈美恵」の名前とともに心に強く刻まれました。
『TRY ME』がスマッシュヒットしたのはその2年後のことでした。

とにかく、かっこよかった。
レンタルして録音した『DANCE TRACKS VOL.1』はカセットテープがすり切れるまでリピートしました。テスト勉強しながら踊りました。
VOL.2が出ることはなく、小室ファミリーになってしまった時は「小室め、安室ちゃんに目をつけるなんて! 安室ちゃんの良さが消えちゃう!」と友人たちと憤ったものです。
しかし良さが消えるどころか、出す曲出す曲ミリオン連発、さらにがらりと趣を変えた『SWEET 19 BLUES』は普通の19歳が抱えるもろさや弱さをちらりと見せるもので、あこがれは共感へと変わりました。
そして人気絶頂の中での妊娠、結婚。精神的に未熟な自分には受け入れがたいものもありましたが、復帰ステージとなった紅白での涙でそんな思いも消え去りました。テレビ出演をしなくなってからは頻繁に曲を聴くこともなくなったとはいえ、それでも安室奈美恵はいつ見てもやっぱりかっこよくて、テレビの中も私の思いもあの頃のままでした。

髪にメッシュを入れる勇気はなかった。
バーバリーを買うお金もなかった。
ミニスカートもおそるおそるだった。
アムラーになんて、とうていなれなかった。

それでもステージ上で輝く安室にあこがれ続けた青春でした。

それから二十余年を経ての、引退という潔い決断。
その生きざまは、最後までやっぱりかっこいいままでした。

アムラーになれなかった野暮ったい女子高生は、野暮ったいまま四十路を迎え、ぼんやりとテレビの中のかっこいい安室を見送っている。
青春を彩ったスターがまたひとり思い出の中に閉じ込められる感傷にただ浸り、かっこよくも潔くもないまま日々を消費していくのみ。

やっぱり、アムラーにはなれそうもありません。






開催が決まった時から楽しみにしていた北斎展。
繁忙期が終わって、やっと行ける―♪

しかし、閉会間近になって、連日大混雑の報道が。いや、平日の夜ならマシだよね。正倉院展だって、閉館前なら空いてたしぃ。

…と信じて、定時でダッシュ、あべのハルカスへ。



「整理券をお配りしておりまーす」

(;゚Д゚)

…で、17時半に到着したにもかかわらず、入館は18時半。

おなかすいたよー。




ミュージアムショップなら無料で入れるのでのぞいてみると、こちらも超・超大混雑。
ひええ…中はどうなっているのやら。

18時半前にようやく入館するも、もちろん人でごった返し状態。ガラスケースの前はまったく進みません。こりゃ、正倉院展のように開館前から並ぶほうが正解だったのかも。

で、仕方なく二列目に回るも、人の頭しか見えないわ、ぎゅうぎゅう押されるわ…。
浮世絵の楽しみは、細部にわたる描写を堪能することにあると思うのですが、とてもとても、そんな環境じゃねえ! 「立ち止まらないでくださーい」と係員がくり返している中で、単眼鏡なんて使えやしねえ!(それでも立ち止まって見ている人ばっかりだったんだけども。こちとらそんな時間ないし)
ケチの自分でさえ図録買おうか考えてしまうほど、絵を見られねえ…。

それでも、富嶽三十六景の有名な『神奈川沖浪裏』『凱風快晴』の前では立ち止まってしまうのもやむなし。
超有名な二作ですが、やはりその着想にはため息しか出てきません。
風景画にしろ、動植物のスケッチにしろ、北斎の視点は自由自在に空間を飛び回り、意外なところから我々を導きます。

いわゆる下書きにあたるラフ画も展示されていました。紙を前にイメージをふくらませ筆を幾度も滑らせる芸術家の姿が垣間見えるようです。

開催に先立ってNHKで放送されていたドラマ『眩~北斎の娘』。不世出の天才・北斎と、彼の弟子であり理解者であった娘・お栄の日々を描いたもので、芸術の世界に取り憑かれていくふたりのさまを長塚京三・宮崎あおいが好演しており、見ごたえがありました。
そのお栄(葛飾応為)の作品も展示されていました。ドラマでも取り上げられていた『吉原格子先之図』。苦界である遊郭の中はあかるく、格子ごしに遊女を眺める人々の集う道端は暗い。光と闇が入れ替わったかのような、それはまるでこの世の禍福は背中合わせと言わんばかりのような。

晩年、北斎の描く世界は我々が見るそれとは異なる境地へと向かいます。
祭屋台の天井絵として描かれた一対の『濤図』。荒々しく渦を巻く波は、ブラックホールのように奥深くへ見る者を吸い込んでいきます。北斎の視点は、富士を、空をも超えて、宇宙をも見渡そうとしていたのかもしれません。

白銀に溶けていく虎。
爪をいからせ空を翔ける龍。
その双眸は、おそらくこの世に向けられていない。

じきに迎えるであろう死のさきを、龍虎に映して感じ取ろうとしていたのかもしれない。

北斎はその死を前に、「あと五年命をくれたなら、真の絵師になりえたのに」と言葉を残したという。
もしその望みが叶っていたとしたら、彼の世界はどこに行きついただろうか。

・・・
入館した時はどうなることかと思いましたが、「神の領域」を垣間見られただけでも満足でした。
行列にならんで図録を買う気力は残っていませんでしたが…。

あー、でもやっぱり買えばよかったかなー…。




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