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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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今年も桜の季節がやってきました。

切ないほどの青い空。



美しいものを見ると、胸がきゅっとなるのはなぜなのでしょう。



花弁も笑顔も、川面にほろほろ。



どこまでも続く桜並木。

橋の上で立ち止まっている私は、これからどこに向かっていけばいいのかな。




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桜が開花するも、冬の名残はフィギュアの世界選手権。
オリンピックの興奮もまだ記憶に新しいところですが、
いよいよシーズンのラストを飾る氷上の熱戦、ミラノにて開幕です。

《女子SP》
メドベージェワ選手が欠場し、ザギトワ選手の優勝は固いかと思われましたが、地元の大声援を受けたコストナー選手が会場を魅了する演技でトップに立ちました。
地元紙で引退が報じられたコストナー選手。最初から最後まで時を忘れて見入ってしまうほどの濃密でしあわせな時間でした。ザギトワ選手はその次の滑走でしたから、高得点が出た時の歓声でプレッシャーがかかってしまったのかもしれません。また、オリンピック後の疲労もあったでしょう。オズモンド選手も宮原選手もジャンプにミスがありましたが、演技構成の質の高さでメダル圏内につけます。樋口選手は後半の得点源のジャンプで転倒があり、SP8位と出遅れてしまいました。昨年のリベンジを果たしたい気負いもあったでしょうか。フリーでの挽回を期待します。

《男子SP》
羽生・フェルナンデス選手の両オリンピックメダリストの欠場で、宇野選手に金メダルの期待がかかりましたが、直前で足を怪我したためかジャンプにミスがあり5位発進となりました。羽生結弦選手の代役出場となった友野一希選手がパーフェクトな演技で11位と健闘したものの、枠取りの期待がかかる田中選手は14位と、来季の3枠に暗雲がたれこめます。
首位に立ったのは、オリンピックの悪夢を振り払ったネイサン・チェン選手。『ネメシス』は音楽も振り付けもチェン選手の持ち味を最大限引き出してくれる名プログラム。色気たっぷりに魅せてくれました。
オリンピックでは悔しい思いもしたコリヤダ選手が2位、3位には4Lzを武器とするアメリカのヴィンセント・ジョウ選手がつけました。金博洋選手がメダル圏内の4位。FSではやはり高難度の4回転が鍵を握ることになりそうです。構成を落としても演技構成点で勝るとはいえ、宇野選手の状態が気がかりです。

《女子FS》
オリンピック後の世界選手権は例年と少し雰囲気が異なります。どの選手もオリンピックにピークを合わせてきますから、約一ヶ月後の世界選手権ではすでに下降線をたどっているのです。とくにメダリストにとっては、モチベーションの維持も難しくなるでしょう。
そんな中、出場を決めたザギトワ選手ですが、シニアに上がったばかりの15歳にとってこの状況はあまりにも過酷だったかもしれません。シニア1年目で負けなしのままオリンピックの金メダリストとなり、世界じゅうから注目を集め、おそらく帰国後もてんてこまいで練習もままならなかったでしょう。FSでは後半にジャンプを固める構成が仇となってしまいました。批判を受けつつも、この高難度プログラムをこれまでほぼ完璧に滑りこなしていたザギトワ選手でしたが、ひとつ失敗すると点数も気持ちも取り返すのが難しくなる諸刃の剣であることを皮肉にも露呈することとなってしまいました。表情をゆがめながら転倒をくり返すザギトワ選手には、見ている側も心が痛くなりました。おそらく今まで経験したことのない苦しい時間であったに違いありません。キス&クライでエテリコーチがめずらしく優しい表情で、泣き崩れる愛弟子を抱きしめる姿も印象的でした。
そんなザギトワ選手に試合後あたたかいエールを送ったコストナー選手もまた、オリンピックの団体戦からのフル出場による疲労が蓄積していたでしょうか。他の追随を許さない演技構成点ではカバーしきれない技術面でのミスが出て、順位を落としてしまいました。
逆転の金メダルに輝いたのは、オリンピック銅メダリストのオズモンド選手。連戦の疲労を感じさせない集中力が伝わってきました。質の高いジャンプだけでなく、ベテランらしい表現力もシーズンを経るごとに磨かれており、今の女子フィギュア界でロシア勢と対等に戦えるのは彼女だけかもしれません。
そんなオズモンド選手に負けず劣らず力強いジャンプを跳べるのは、今の日本においては樋口選手ただひとり。樋口選手にとってはオリンピックを逃した悔しさを、そして昨年その枠を減らすことになったみずからの失敗を取り返す、一年越しのリベンジの舞台でもありました。世界選手権に坂本選手でも三原選手でもなく、樋口選手が選ばれた、その意味をきっとかみしめながらの舞台であったに違いありません。トップグループを前に登場した樋口選手のFSは、SPのミスを取り返して余りある、珠玉のワカバボンドでした。これを見たかった。この『スカイフォール』を見たかったのです。ジャンプの高さを感じさせない流れあるスケーティングからの魂のこもったステップには、こちらも叫び出しそうでした。全日本から、いや昨年の世界選手権の後からの日々は、樋口選手にとっては苦しい時間だったに違いありません。フィニッシュ後の涙が物語っていました。この銀メダルはワカバ・ヒグチの名を世界にしらしめ、そして「倍返し」ロードへの価値ある一歩となりました。
四大陸選手権では、ここ数年ではじめて日本選手の後塵を拝することとなり涙も見せた宮原選手。この世界選手権でも、樋口選手に続く3位となってしまいました。めずらしい転倒もあり、やはりオリンピック出場選手にとっては調整が難しい大会だったのかもしれません。それでもプログラム全体の質の高さは世界トップレベル、若手選手を寄せつけるものではありません。20歳を迎えてますます円熟味を増すであろう宮原選手の表現力。今季はしっとりとした日本女性を演じましたが、そろそろ悪女やドラマチックな映画の主人公を演じる宮原選手も見たいものです。わざわざミラノまでグラブを持参して練習していたというオリックス戦の始球式も楽しみにしています(真面目すぎるよー)。

《男子FS》
先に滑った田中選手の点数が伸び悩み、枠取りがかかるプレッシャーの中でも、友野選手はノーミスの演技で観衆を沸かせ、PBを更新する点数を叩き出しました。SP後には涙もあり、このFSをどういう心境で臨むのか気になっていましたが、この日も溌溂とした中にも緩急を織り交ぜ、自分のスケートに集中しているようでした。14番滑走でしたが、残り10人全員が滑り終わってなんと総合5位。友野選手はFSだけなら3位という、来季の3枠どころかスモールメダルまで獲得する大活躍でした。世界に名を売ったカズキ・トモノの来シーズンが楽しみです。
男子FSもオリンピック出場選手は不調が目立ちました。とくに金選手の相次ぐ転倒には胸が痛みました。予想できた結果だったのでしょうか、減点9が響き120点台という低得点にもキス&クライでは吹っ切れたような笑顔でした。金選手はプログラムに個性があふれていて、今度はどんな新しい金博洋を見せてくれるのだろうと毎年ワクワクしていましたが、来季は氷上でその笑顔を見たいと思います。
「痛みはない」と主張する宇野選手は構成を変えずに挑みました。結果は3回の転倒。それでも、後半にコンビネーションを立て続けに入れてリカバリーしました。苦闘のほどが指先からも伝わりました。
たとえ完璧にはいかなくても、心を震わせる演技というのは確かにあるのです。
演技者の思いが伝われば、そのプログラムはいつまでも記憶に残るのです。
本人にとっては、悔しいシーズンの締めくくりだったかもしれません。それでも宇野選手の逆境に負けない侃さが、オリンピックに続く銀メダルをもたらしました。
初の世界王者に輝いたのは、6本の4回転に挑んだチェン選手。オリンピックに続き、今回もすべてを着氷させ圧巻の技術点をたたき出しました。上位選手に転倒やミスが相次ぐ中、高難度プログラムでミスを最低限に抑えたチェン選手の圧勝でした。ただ、ルール改正が議論されている中、これだけ4回転を跳ぶ異次元のプログラムを見られるのは、今回が最後なのかもしれません。
チェン選手のFSはみずからのルーツへの思いもこめられた『小さな村の小さなダンサー』ですが、どうしてもジャンプに比重が置かれるせいで、表現面でその思いが伝え切れていないように思うのです。SPでは難解な曲を滑りこなしているように、洗練された表現力を持っているのですから、もしジャンプ構成を落としていたらきっとチェン選手の伝えたい物語が見えたと思うのです。おそらく時間をかけて滑りこなせば、技術と表現の両立もいずれ可能になるのでしょうが、それまでに身体が悲鳴を上げないとも限りません。羽生選手の例をとってみても、やはり才能のある選手が息長く活躍してもらうためにも、4回転の制限はかけなければいけないのかな、とも思います。
クールなチェン選手が主人公になりきって感情をあふれさせながら滑る姿も、一度見てみたいですしね。

今季はオリンピックイヤーだったこともあり、テレビを見ながらうれし涙も悔し涙も一緒になってたくさん流しました。
これでひとまず、フィギュアスケートはお休み。
また秋に、ひとまわり成長した選手たちに逢える日を楽しみにしています。



自分の中ではフィギュア女子シングルフリーがこのオリンピックのクライマックスだと思っていました。
まだこんな心揺さぶる瞬間が待っていたとは!

準決勝ではメガネ先輩の正確なショットにやられて3位決定戦に回ったカーリング女子チーム。スピードスケートのマススタート決勝と時間がかぶっていたので、スマホ横目にテレビはスケートにあわせました。

大勢で一斉にぐるぐる回るマススタートは、何やら不思議な種目。レース状況への観察力やかけひきをしかける判断力を必要とする、まるで競輪か競馬のようです。
準決勝でもルールを理解する前にはやばやと決勝進出を決めていた高木菜那選手。同国の佐藤選手が転倒し孤独な戦いを強いられたことで不利になるかと思われましたが、決勝でも冷静なレースを展開していました。オランダの選手をしっかりマークしつつ、韓国の選手につかれても位置を譲らず、虎視眈々とスパートのタイミングを狙っていました。ラスト、オランダの選手が外にふくらんだ一瞬の隙をついてインから抜けたさまはまるで武豊のよう。シンボリルドルフ? キタサンブラック? 競馬フリークのツレとその仲間うちではそんな話題で盛り上がったようです。
インタビュー前にカメラで前髪チェックしたり表彰台でぴょんと跳ねたり、レース中の強くて落ち着いた姿とは異なる一面を見せてくれたこともなんだかうれしい金メダルでした。
金銀銅をコンプリートした妹に続き、姉は2つ目の金メダル。高木家はなんとこれで両親どころかお兄さんにもかけてあげられる3つ目の金メダルになりました。国別ランキングでも13位に浮上したとか…?

この結果を知らないであろうカーリング女子ですが、日本チームとしては追い風としてほしい。チャンネルを戻せばエンドも佳境。
序盤は互いに1点ずつ取り合う展開、中盤はイギリスリードでブランクエンドが続き、8エンドにようやく日本は同点に追いつきます。
9エンド、最終投でブランクエンドを狙ったイギリスですがミスショットで日本がナンバーワンを取り、最終エンドへ。リードはしたものの不利な先攻となってしまいました。
3連敗中だった日本チームですが、その原因は10チーム中9位というショットの成功率の悪さでした。準決勝でもわずかなショットのズレが勝敗を分けました。しかしこの試合、スキップの藤沢選手はじめ大きなミスはなかったように見えました。むしろここいちばんの研ぎ澄まされた集中力を、画面越しにも感じました。最後の最後は、イギリスのミスが日本に銅メダルをもたらす結果となりましたが、そこでミスをしてしまうほどイギリスにプレッシャーを与え続けた日本の正確なショットが勝利を呼び寄せたのではないでしょうか。
しかしその寸前、藤沢選手もわずかなミスを犯していました。これでイギリスの勝利は固いと見られ、実況席も半ば諦めムードでした。
そんな絶体絶命の場面で、黄色のストーンが真ん中に滑ってきた真上からの映像、解説者のかすかな悲鳴とアナウンサーの絶叫「ナンバーワンはー! 日本だああー!」。この大会のクライマックスにふさわしい、これから幾度も見返すことになるであろう日本オリンピック史に残る名場面だったと思います。

北海道の小さな町で本橋選手が心血を注ぎ一から作り上げたチームが、羽生選手の金メダルに続く視聴率をたたき出すほど日本じゅうを熱狂させました。
オリンピックのたびに注目されてはいたけれど、選手たちのビジュアル中心の報道ばかりだったため、4年ごとにしか思い出されない感のあったカーリング。しかしこの大会で結果を残したことで、ようやく社会の中にひとつの競技として根づいたのではないでしょうか。予選リーグが大会期間を通じて行われていたこともあって、初の準決勝進出を決めた女子はもちろん、長野以来の出場となった男子も女子とはまるで迫力の異なるカーリングの魅力を教えてくれました。世界を見ても美人さんばかりとかノルウェー男子のおしゃれなパンツとか、競技内容以外でも目を惹いていましたが、試合内容も最初から最後まで見てみると非常に奥が深くて興味深い。文字どおりの布石や氷の状態を読んで変化させるスイープなど、本当に頭も身体も使うハードなスポーツなんだなと。将棋でも藤井六段が活躍する前から将棋メシや甘い間食が取りざたされていましたが、そりゃ栄養補給しないともちませんね。おやつタイムなんてのんきな言い方は失礼かと思いますが。

始まる前はなんやかんやありましたけれど、終わってみれば最初から最後まで興奮の連続でした。時差がなく移動距離が少なかったことも、日本チームの躍進の要因のひとつであったと思います。次の北京大会も近距離ですから、また盛り上がってくれることでしょう。リアルタイムで楽しめますし。
おっと! その前に、東京オリンピックがありました。
これもなんやかんやありましたし、これからもきっとあるのでしょうが、アスリートファーストを忘れず、選手を第一に考えた運営を行ってほしいと思います。まさかまた競技時間をアメリカに合わせて、深夜に決勝なんてやらないよね?






興奮の連続だったオリンピックも、いよいよ残りわずかです。
祭典の終盤を飾るのは冬季五輪の華、フィギュアスケート女子シングル。
団体戦では悔しい結果だった宮原知子選手、坂本花織選手が、おそロシアに挑みます。

同じ過ちはくり返すまじと、録画はバッチリ高画質。
第4グループのトップで登場した坂本選手。緊張感は少し見え隠れしていましたが、力強いスケーティングは戻っていました。スピードがあれば持ち味のジャンプは大丈夫。ノーミスでガッツポーズ、パーソナルベストの得点にこちらも笑顔になりました。
坂本選手暫定1位で迎えた最終グループは、メドベージェワ選手から。
滑るたびに演技の濃密さが増していきます。最初から最後まで、まばたきするのも惜しいくらい。この選手はどこまで進化していくのでしょう。自身の世界最高得点を更新する81.61点をたたき出しました。
大歓声の中でも、宮原選手は冷静でした。慎重な踏み切り、丁寧なステップです。3-3回転でまた黄色ランプがついた時には机をたたきたくなりましたが、八木沼さんも「大丈夫!」と断言するほど今までとはあきらかに質の違う高さのあるジャンプで、団体戦での低評価にもくさらず個人戦へ向けて短期間にコツコツ練習を積み重ねてきたことが伝わりました。結果は緑ランプに変わり、点数が出た瞬間のキス&クライの笑顔にはこちらも胸を撫でおろしました。
ケイトリン・オズモンド選手のエディット・ピアフは代名詞になりそうな名プログラム。雰囲気にのせたジャンプの高さと楽曲の持つ力強さを体現するようなステップ、唸らされました。
絶対女王・メドベージェワ選手に欧州選手権で土をつけた同門のザギトワ選手。3Lz-3Loってこんな簡単に跳べるんでしたっけ? もはや「私、失敗しないので」な貫禄さえ感じます。十数分前の世界最高をさらに更新する衝撃の82.92点。え、ほんとに15歳?
団体戦の疲労が懸念されたコストナー選手でしたが、やはりミスが目立って6位と出遅れてしまいました。それでもため息が出るようなスケーティングの美しさは若い選手にはない魅力です。
SPの最後を飾ったのはソツコワ選手。最終滑走のプレッシャーのせいか動きが硬く、ソツコワ選手らしい優雅さがなりをひそめてしまいました。五輪前はOARの表彰台独占もあるかと思われていましたが、12位スタートと意外な結果になってしまいました。

宮原・坂本両選手はどちらも初のオリンピックでパーソナルベストと、いいスタート。

すべてが決まるFS最終グループは宮原選手からとなりました。
音楽が鳴り始めて動き出した瞬間から、キレがありました。いける、と感じました。美しい3Loから高さを会得した連続ジャンプ(だからなんで黄色つけるの!)につなげ、宮原選手の持ち味である逆回転スピンで歓声を誘ってからはもう会場は宮原選手だけの世界。唯一の不安材料だった3Sも成功。指の先まで美しい『蝶々夫人』は、最後の一音まで全身全霊を捧げるようなプログラムでした。練習しなければガッツポーズもできなかったという宮原選手。完璧を追求するまじめな性格のあまり、どれだけノーミスの演技をしてもまだガッツポーズするような演技ではないと考えていたのかもしれませんが、今日ばかりは自然と湧き出る感情にまかせ両手を振り上げたように見えました。謙虚な宮原選手に「メダルが欲しい」と思わせる、それほどリンクに思いを残すことなく今のすべてを出し切った演技だったのだと思います。結果はメダルには届かなかったけれど、宮原選手がくれた至高の4分間はファンの胸にしっかりと刻まれました。入賞おめでとう、最高のガッツポーズをありがとう、さっとん。

コストナー選手のFSは『牧神の午後への前奏曲』。バンクーバーの翌シーズンの使用曲で、大好きなプログラム。ジャンプミスは少し残念でしたが、あの頃よりいっそう洗練された、彼女にしか表現することのできない澄み渡った世界を見せてくれました。最後まで柔らかい笑顔でした。かつては思うような滑りができなくてフィニッシュ後悲愴な表情をしていたこともありましたが、すべてを乗り越えてこの境地にたどりついたコストナー。いつまでもコストナーのスケーティングを見ていたいけれど、年齢的なこともあるので毎年のことながら去就が気になります。

シニア参戦1年目で最終グループに勝ち残った坂本選手。それだけでも立派なことなのに、3Loの着氷をミスした以外はほぼ完璧に滑り切りました。ただこの猛者たちの中だと、演技構成の面で見劣りしたことも事実。笑顔でしめくくったものの随所ににじみ出ていた悔しさが、きっと坂本選手をこれからひとまわりもふたまわりも成長させてくれるはず。それでも、はじめてのオリンピックで堂々たる演技、坂本花織の存在は世界じゅうのフィギュアファンの胸にしっかりと刻まれたことでしょう。6位入賞おめでとうかおりん。今のかおりんにしか演じられない、かわいい『アメリ』でした。

ザギトワ選手が後半の3Lzからの連続ジャンプを失敗した際はドキッとしました。それでも後半も後半、単独3Lzに3Loを付ける鬼リカバリー。「私、失敗しても大丈夫なので」と、最後まで自信に満ち満ちた『ドン・キホーテ』でした。
後半にジャンプを固めるという極端な構成が物議を醸しています。ザギトワ選手のずば抜けた身体能力を前にしたら、エテリコーチも批判覚悟で暗黙の了解を破りたくなったのかもしれません。
ザギトワ選手は、この字面だと美しくない予定構成をしっかりひとつのストーリーとして演じ切っています。序盤のステップも決して手抜きはしていないし、後半の音楽の盛り上がりとともに密度の濃いつなぎを入れながらたたみかけるジャンプ、しかも現在最高難度の連続3回転を入れた7つの要素は、ひとつ失敗すればすべての流れを失ってしまう危険も孕んでいます。しかしザギトワ選手は、その危険の可能性を限りなくゼロに近いところまで滑りこなしてきています。
戦略として取り入れる選手が増えてくるという危惧もあるようですが、ここまで完成度を高められる選手が今後果たして現れるでしょうか。才能だけでは絶対にたどりつけない努力の歳月を15歳の少女が10年も捧げてきたという事実に畏怖すら感じました。

現在3位の宮原選手のメダルを左右するオズモンド選手。FSはやや苦手にしている印象がありましたが、この日は気迫が違っていました。冒頭から連続ジャンプを次々着氷、スピードと高さは全選手の中でもトップクラス、圧倒されました。3Lzの着氷で乱れましたがすぐに立て直しました。このプレッシャーの中で、オズモンド選手はその個性である可憐さと力強さを余すところなく体現し、白いリンクに羽ばたく美しい黒鳥となりました。北米の美ここにあり、素晴らしい『ブラックスワン』。銅メダルにふさわしい最高のプログラムでした。オズモンド選手も怪我に苦しんだ時期があっただけに、見る側の感慨もひとしおでした。
(小声)でもちょっとミスを期待してしまったブラックな自分…。いや、好きなんだよオズモンド…でも、でも、やっぱりさっとんにメダル取ってほしかったさ…。

最高の戦いに幕を下ろす最終滑走は、メドベージェワ選手の『アンナ・カレーニナ』。
冒頭の単独ジャンプにセカンドジャンプをつけてきました。確実性を選んだとはいっても、ザギトワ選手を超えるには技術点の減少は避けたいはず。ジャンプもステップも少し身体が重たいように見えました。状態が良くなかったのでしょうか。
世界の中心に躍り出た頃は、メドベージェワ選手の演技があまり好きではありませんでした。加点を狙うタノの多用がジャンプの流れを止め、プログラムの美しさを損なっているように映ったからです。今でもその印象は変わりません。
それでも、年々広がりを見せるメドベージェワ選手の世界に惹きつけられずにはいられませんでした。
音楽が鳴って、そして鳴りやむまで、リンクはメドベージェワ選手が紡ぎ出すさまざまな物語の舞台になります。銀盤の向こうに凍てつくロシアのプラットホームが見えました。冷酷な警笛が響きました。滑り出しから見る者を自分の世界に惹きこむ力、それはザギトワ選手をもってしても超えることはできない、メドベージェワ選手が技術以上に磨き上げてきた芸術です。
このFS、ザギトワ選手とメドベージェワ選手の得点はまったく同じ。メダルの色を分けたのは、SPの技術点でした。オリンピックというスポーツの祭典で、より難度の高い構成に挑んだザギトワ選手に軍配が上がるのは、やむなしかと思います。
それでも。
4年に一度のオリンピック。金メダルに輝くには、才能も努力も必要なことはもちろんですが、運という要素も大きく関係していることを感じずにはいられません。
演技後、メドベージェワ選手は大歓声の中で顔を両手で覆い嗚咽しました。世界女王として臨んだオリンピックの最終滑走、プレッシャーの中素晴らしい演技で滑り切った彼女の胸にはさまざまな思いが交錯したことでしょう。涙の止まらないまま得点が表示され、自身の名の横に「2」が表示された瞬間の茫然とした表情、慰めるように抱き寄せるエテリコーチ。こちらも涙を禁じ得ませんでした。
この2年、メドベージェワ選手は絶対女王として女子フィギュア界に君臨しました。平昌の金は彼女のものであると信じて疑いませんでした。まさかそのオリンピックイヤーに年齢制限ぎりぎりの後輩が台頭し、自身は直前に怪我を負い、母国が参加資格を失うなどとは、おそらく本人も想像だにしていなかったに違いありません。オリンピックのため血を吐くような鍛錬を重ね痛みに堪えてきたのは皆同じであったにしても、世界女王というプレッシャーは彼女ひとりにしか与えられない重圧でした。
あらゆる試練と戦い続けたメドベージェワ選手に、金メダルをかけてほしかった。それが正直なところです。

しかし、この超ハイレベルな戦いを制して「心に穴が開いた」と語るザギトワ選手も、いったいその小さな背中にどれだけのものを背負っていたのか。ロシアのお国柄もあるかもしれませんが、羽生選手とはまた異なる金メダリストの言葉の重みでした。

一夜明け、すわ後半ジャンプ固め打ち禁止のルール改正報道が流れました。確かにこのままでは、ジュニアにも有力選手を抱えるロシア一強の時代はそうそう変わりそうにありません。ここ数年まるで太刀打ちできなかったアメリカや日本もふたたび表彰台への希望を見いだすことができますし、3Aやセカンド3Loなど高難度ジャンプを取り入れる選手も増えてくるかもしれません。
が。ザギトワ選手のやりかたは間違っていると言わんばかりの素早さですね。審判団の国籍公表にはどれだけ時間がかかってるんだよ、と言いたい…。






1000mで金メダルを逃し、連勝中の500mに優勝の期待が寄せられた小平選手。
このオリンピック最後のレースは、スタートで少しタイミングがずれたようにも見えましたが、最初のラップはここまでの最速タイムでした。そこからまったくスピードが落ちないどころか、最後はいっそうゴールを狙う目つき鋭く、さらに勢いが増したようにも見えました。オリンピックレコードのタイムでゴール、あとを待ちます。
どよめく会場に登場したのは世界記録保持者のイ・サンファ選手。小平選手の最大のライバルは500m一本にしぼって勝負を賭けてきましたが、地元開催による観衆の大きな期待と直前で小平選手の出したタイムに、相当なプレッシャーがのしかかっていたのかもしれません。ややミスが目立ち、小平選手を上回ることはできませんでした。
そして最終組のレースが終わった瞬間、小平選手の金メダルが確定しました。
喜びを爆発させる観客席に手を振りながら、小平選手が向かったのは、泣き崩れるイ選手のもとでした。
何度も試合をともに戦ってきたライバルであっても、レースが終わればスケート仲間。お互いを讃えあう姿は誰しもに美しいものとして映ったに違いありません。日本と韓国、政治的な表でもネット社会の裏でも何かと反目してばかりですが、このふたりの姿を見て互いを貶める言葉を吐く者はいないでしょう。国の名前を冠していてもアスリート精神に国境はありません。誰もが常にこうありたいものです。
表彰台ではようやく小平選手の満開の笑顔が見られました。滑っている時の黒ヒョウのようなクールな姿も、かわいらしい笑顔も、どちらもやっぱり素敵すぎます。あとスタート時の構える指先が妙に色っぽい(笑)

そして、開催前から金メダル候補だった団体パシュート。
もともとパシュートは日本人に向いた競技だと思っていましたが、個人で結果を残せなくてもバンクーバーでは銀メダル、ソチでも4位と好成績をおさめてきました。今回は一年のほとんどをともに過ごす合宿生活において個人競技だけでなくパシュートにも科学的分析を取り入れるなどさらに力を入れたようです。
3人の一糸乱れぬ正確な隊列、スムーズな先頭交代の流れはまるで芸術作品のよう。陸上のリレーのバトンパスのように、どの国にも負けない練習量に裏打ちされた技術が肉体的アドバンテージを逆転する瞬間は最高の気分です。
今回、日本チームは世界記録を何度も更新し、絶対的金メダル候補として挑みました。しかし確実にオリンピックに合わせてくるのがオランダチーム。全員がメダリストという超強力な布陣で、予選はオリンピックレコードのタイムでオランダが1位通過しました。日本はスタートに失敗した佐藤選手の声で高木美帆選手が一瞬立ち止まり、ヒヤリとしましたが、オランダに次ぐ2位のタイムで準決勝での直接対決を回避しました。しかし日本は序盤にミスがあっても中盤に余裕を持って流しても3位を突き放すタイムでしたから、パシュートはもはやオランダと日本のためのレースといっても過言ではありません。現に準決勝でアメリカはオランダ相手に最初から完全に流しており、対日本のカナダも途中から銅メダル戦に切り替えたようで、両チームとも決勝に先んじて行われた3位決定戦の迫力とはまるで異なっていました。
決勝。予選で失敗したスタートはきれいに成功。2周目まで日本がリード、拳に力が入ります。3周目でオランダが逆転し、テレビ前の視聴者は熱くなりましたが、選手たちは冷静にラップを刻んでいました。残り2周できちっと再逆転、終わってみれば1.58秒差をつけてのゴールでした。オランダが予選で出したタイムを塗り替える見事なオリンピックレコード。美しい走り、美しい姿勢、美しい4人の笑顔でした。
高木美帆選手はこれで金銀銅のコンプリート。姉の高木菜那選手も2本続けての決勝を走り抜きました。同じ世界で戦う中で時にはお互い素直になれないこともあったであろう姉妹の金メダリスト、両親それぞれに金メダルをかけたいという願いが実りました。予選の失敗から不安でいっぱいだったはずの佐藤選手もしっかりと中盤をひっぱり、準決勝で走った菊池選手もダブルヘッダーの選手の疲労を最低限に抑えました。しかし全員が口にしたのはチームジャパンへの感謝、コーチやスタッフ含めたチーム全員で勝ち取ったメダルだということ。選手だけでなく、裏方も含めて4年間いかに努力と研鑽の日々を積み重ねてきたかを感じ取れる言葉の重みでした。

しかしその努力が結果としてかたちに残らないこともある。
ノルディック複合ノーマルヒルの悔しさをぶつけるはずのラージヒルでしたが、渡部暁斗選手は「黒い三連星」の前に力尽きました。ガンダム見ていないからよくわからないんだけど…。
ジャンプは見事トップを飾るも、本人はインタビューではっきり「厳しい」と口にしていました。それは24秒後から3人続いてスタートしたドイツ勢。パシュートのように交代で先頭を滑り、体力を温存していました。対して渡部選手は孤独な戦い。スキー板も滑っていないようで下りで突き放すことができず、早仕掛けも通用しませんでした。
ドイツ勢、強し。メダルの色を争うラストスパートには3人ともまだこれだけの体力があったのかと驚かされました。
団体でもドイツが序盤からほとんど一人旅。3位スタートの日本はノルウェーとオーストリアのヨーロッパ勢の走力の前に屈し、アンカーの渡部暁斗選手の見せ場はありませんでした。
ノーマルヒルで銀メダル、ラージヒルで5位入賞、団体も4位。これだけのすばらしい成績なのに、「4年間で何も変わらなかった」と語る本人の心中を思うと胸が痛くなります。
クロスカントリーではヨーロッパに太刀打ちできない現実。
スケートのように、選手頼みではなくスキー競技もチームとして底上げをはかれないものかと歯がゆく思います。

メダルを獲得すると注目を浴びますが、結果には結びつかなくても心に残る競技はあるもので。
全員が入賞という結果を残した女子スノーボードビッグエア。若い選手が経験を積む一方、他種目から転向したベテランも攻めた演技を見せました。またウィンタースポーツの華でありながら世界と勝負できていないアルペンスキーでも怪我をおして出場したベテラン選手がいます。メダルばかり注目されがちなオリンピックですが、とくに競技を続行することに苦労がつきまとうウィンタースポーツで地道に努力を重ねている、こうした選手たちにももっとスポットが当たればいいのになと思います。



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