以前は雨に阻まれた賀名生梅林。何度も今年こそは! と思いながらタイミングが合わず、そのうちコロナが始まって、なかなか実行できませんでした。
春の訪れが遅かった今年、満開は3連休の予想。しかしワクチン接種が入っているし、人出も予想されるから、今のうちに行っておこう…と、咲き始めは承知のうえで決行。 電車で五条駅へ。ちなみにICOCAはもう使えるようになっています。 賀名生和田北口でバスを降り、山登り。 やっぱりまだちょっと早かったか…。 薄紅と橙の並びがかわいいです。 ずいぶん登ってきたような気がしますが、まだまだ序盤。 売店横のしだれ梅もまだまだでした。 ぜいぜい…。運動不足の身にはキツイ。 紅白両並びに癒されながら。 ちょっとひとやすみ。 梅ジュース飲みたいな…と財布を見ると、ガーン! 小銭がなーい! 試食用のキンカンだけいただきました…。 ようやく頂上付近かな。 さすがにこのあたりの花はまだまだです。 観梅登山もようやく終盤。 だいぶ陽も高くなってきて、散策する人も増えてきました。 帰りは梅林をはずれ、多目的広場へ向かうルートへ。川のせせらぎを聞きながら山下り。 お昼におにぎりを持っていったのですが、月ヶ瀬と違って梅林の中では食べるところがありません。梅林といっても、集落そのものですから。 というわけで、駐車場になっている広場のベンチでいただきました。目の前の梅は満開でしたし、暖かくなってきたのでちょうど良かったです。 休息の後は賀名生の里歴史民俗資料館へ。 賀名生は後醍醐天皇が吉野へ向かう途中へ立ち寄った土地、そして後村上天皇が行宮とした場所です。その歴史をムービーで学ぶことができる他、南朝ゆかりの宝物や、西吉野の人びとが使用してきた農機具や家財道具などが展示されています。 また、いくつもの雛壇が飾られていました。七段飾りを目にしたのはひさしぶり。間近で観察するとあらためてひとつひとつ異なる細工の精巧さを堪能できます。 資料館の裏の坂道を上ると、北畠親房のお墓があります。 更地になっていますが、五條高校の分校跡地だったようです。調べると、昨年閉校したばかりでした。 頭の中には近藤正臣を思い浮かべながら…。 さて、帰りのバスまでまだ時間があります。 資料館の隣にある「堀家住宅」は、国の重要文化財。南朝の皇居でもあったのです。 今はレストラン・ホテルにもなっています! ランチはお高いのであきらめていましたが、カフェくらいなら…。 お座敷の雰囲気も良い感じです。ランチならテラスでいただいても気分がよさそう。 雰囲気を味わいつつ、注文したアートスムージーを待ちました。 なんとも映えー! 下はブルーベリー、上はマンゴー。カットバナナも入っています。 「混ぜてお召し上がりください」と言われましたが、混ぜるのもったいないー! もちろん美味しゅうございました。 売店で梅干しと草餅を買って帰還。 やはり梅干しは梅林で買うに限ります! そして素朴な草餅も絶品でした! 梅香に包まれ迎える早春も最高です! 次は満開の季節に行きたいなあ…。 PR
いよいよ、冬の祭典も終幕です。
日本のメダル、ラストを飾ったのはカーリング、ロコ・ソラーレ。 溌溂とした笑顔、前向きな言葉の数々、劇的な一投や巧みなスイープで話題をさらったものの、彼女たちがただニコニコ楽しそうにしているだけではあたりまえですがないわけで、そうやすやすとその境地へはたどりつけないと思うのです。 「コミュニケーション」と簡単には言うけれど、集団競技においてそれがどれほど大切かはわかっていても、勝ち負けのみならず人生すら左右するような緊迫した場面においてもなお実行し続けるのはなかなか難しいのではないか…と素人には思えてしまいます。しかしロコ・ソラーレはそれをやり遂げた。成功しても失敗しても「ナイスー」と声をかけ続け、敗色濃厚でも試合が終わるまで落胆や涙は封印しました。相手につつぬけ状態で戦略を話し合うカーリングは、紳士のスポーツとはいえちょっと変わった競技に感じますが、つつぬけだからこそ動揺も余裕も悟られてはいけないし、だからこそいつも「変わらない」でいることが大切なのではないかと、それができたからこそロコ・ソラーレは2大会連続で代表となり、前回を超える銀メダルを獲得できたのではないかと思います。「変わらない」ことができる人。どんなスポーツにおいても、それがいちばん強い人です。 一時は予選敗退を疑わず涙を流したロコ・ソラーレでしたが、ライバルチームの敗戦により準決勝へ勝ち上がりました。そして前日に負けていたスイスを破って進んだ決勝戦、相手はイギリス。奇しくも平昌で銅メダルをかけて争ったチームです。イギリスが絶対的有利で迎えた最後の一投、ショットが狙いを外れて日本のストーンが真ん中へ押し出され、解説が「あっ…」と息を呑んだ、あの場面は今でもはっきりと憶えています。その解説の石崎さんがロコ・ソラーレのリザーブになっているのですからそれもまた奇妙な因縁といえます。 そしてその一投を放ったミュアヘッド選手が、今回もイギリスのスキップとして日本の前に立ちはだかりました。 ミュアヘッド選手のショットの精密さは際立っていました。こちらのわずかなミスを見逃さず得点を重ね、気がつけば7点差。9エンドがあっという間に感じました。試合後、涙するミュアヘッド選手の姿に、4年前の失投を忘れることは片時もなかったのではないかと想像させられました。 カーリングには詳しくありませんが、日本のミスはわずかなものだったように感じます。野球にたとえて言うなら、「きわどいコースを見きわめられ四球を出した」「難しいコースをホームランにされた」ような…。そんな紙一重のところを攫っていったイギリスが、今回は強かったということでしょう。 しかし、まるでアイドルのような軽い扱いをされていた4年前と較べれば、今回のカーリングチームはきちんと「アスリート」として報道されていたように感じます。競技の面白さも充分に伝わりましたし、これからのロコ・ソラーレ、他の日本チームの活躍もますます期待できそうです。 カーリングを見届けた午後からはフィギュアのエキシビション。メダリストだけでなく、各国からさまざまな選手が楽しい時間を届けてくれました。トゥルソワ選手が笑顔で滑っていたのがなんだかうれしかったです。ジャスミンもかわいかったですし(でもちょっと魔人には引いていた?)、ラプンツェルにあこがれて伸ばしているという髪を垂らしながら披露したクリムキンイーグルには圧倒されました。 日本選手は割と正統派なプログラムばかりでしたが、コミカルな一面も観てみたかったです。 しかし羽生選手の『春よ、来い』の吸引力はさすがというか。別格です。 ラストのネイサン・チェン&キーガン・メッシングのバックフリップ共演はお見事! ここが自分の中でのフィナーレでした。 終わったあとは、いつもながらロスです。 いろんなことがありました。無事に終わったからそれで良しと済ませるわけにもいかない問題もたくさん残っています。 それらを片づけなければ、札幌開催にも賛成することはできません。 これからのオリンピックは、どこに向かうのか。 純粋に楽しめるものでなくなっていることは、確かです。 楽しかったと同時に、それが淋しくもあるオリンピックでした。
いつもなら早めに行われるフィギュアのペア競技が最終種目となったのは、地元中国が金メダル候補であったからでしょう。
ペア競技はもともと好きだったのですが、日本ではマイナー種目とあってなかなか中継がなく、世界選手権で高橋成美・マーヴィン・トラン組が銅メダルを獲得した時は、これで日本のペアの未来はあかるくなると希望を持ったものです。しかし国籍が異なったためオリンピックには出場できずペアは解消。そして、相方を探す高橋選手にスカウトされたのが男子シングルの木原選手でした。しかしソチ五輪ではフリーに進めず、ペアは解消。木原選手は須崎海羽選手と平昌五輪にも出場するも、やはりフリーには進めず。怪我などもあってまたもペアは解消。それでも木原選手は第一人者として、新しい相方・三浦選手と努力を続けました。 そして迎えた三度目のオリンピック。 「総合5位」という目標を聞いた時はまさかと思いました。しかし、GPFの出場権も得た(開催されなかったのが残念)彼らなら、決して夢物語ではないのでしょう。そして団体の時の演技を観て、現実にあり得るかもしれないと確信しました。それほど、りくりゅうペアの雰囲気は、今までのペアと違っていました。 SPではジャンプミスもあり、8位で迎えたFS。 直前の6分間練習で三浦選手が何もないところで突然転倒し、驚きました。怪我や痛みなどはないようでしたが、三浦選手の表情は硬く見えました。それを解きほぐそうとしているのか、笑顔で話す木原選手とコーチ。そして始まった、『Woman』。 流れるようなトリプルツイスト、そして前日失敗したジャンプも着氷。リフトやスロージャンプも次々に成功し、ふたりの表情は徐々に輝きだしました。そして最後のリフトを終えた後は、解放感と歓喜に満ち溢れていました。 今まで積み重ねてきたすべてを出し尽くす。目指していたその場所にたどりついた時、スケーターに翼が見える時があります。たとえばバンクーバー五輪の高橋大輔『道』、ソチ五輪で6種8トリプルを着氷した真央ちゃん。2018世界選手権の樋口新葉『スカイフォール』。最後のステップですべてから解放され氷上で羽ばたく彼ら彼女らに、何度観返しても涙を禁じ得ません。そんな思い入れのあるプログラムの数々に、りくりゅうのこのFSも新たに仲間入りしました。 フィニッシュの後、泣き崩れた木原選手。ずっと三浦選手を励まし続けてきたその笑顔の裏に、どれだけのプレッシャーを抱えていたのでしょう。そんな木原選手を抱きしめる三浦選手。試合前とは逆の姿でした。 PBを更新するも、総合7位。SPのミスがなければ目標も達成できていた位置でした。長い間フリーすら進めなかった(そして放送がなかった…)頃を思えば、夢のような成績です。まだまだ走り続けると力強く宣言してくれた木原選手。そしてこの活躍を目にした若い選手がペアを目指してくれれば、日本の未来はさらにあかるいものになると期待できます。 しかし、世界のトップとはまだまだ差が開いているのも事実。最終組の中国・ロシア3組のトップ4の演技は見惚れるほど素晴らしかったです。直前のタラソワ・モロゾフペアが完璧な演技を披露した後登場したスイ・ハンペア。いきなり4回転ツイストという大技を決めると、ジャンプのミスはあったものの他の要素を高いレベルでこなして加点を積み重ね、わずかな差で逃げ切り悲願の金メダルを獲得しました。 外国人のペアは男女の身長差がなく、恋人同士のような、まるで映画の一場面を演じているような物語性があってとても美しく、見ごたえがあります。しかし三浦選手が小柄なりくりゅうペアは軽やかで、そしてふたりが一対ではなく、ひとつに融合しているかのように見える時があって、それはそれで彼らにしか出せない魅力だと思うのです。これからふたりがどこまで世界のトップ争いに食い込んでいけるか、これからのフィギュアはシングルだけでなくペアにも注目して見ていきたいと思います。
スピードスケート高木美帆選手の3種目めは500m。前半の4組で滑走し、長い間その瞬間を待たされました。そして最後は跳びはねてガッツポーズ。言うなれば中距離選手が短距離に出場して、しかもメダルまで獲得するようなものなのでしょうから、そりゃあうれしいでしょう。観ている者からは驚きとともにますます尊敬の念があふれてきます。
そして4種目めはチームパシュート。決勝の相手は、オランダとの熾烈な準決勝を制したカナダ。 前回の金メダルの感動は今でも憶えています。同じメンバーで挑む今回も、隊列の一糸乱れぬ美しさは健在でしたが、現在世界トップのカナダチームは中盤までつけられていたタイム差をどんどん詰めてきました。周回ごとに拳を握る手に汗がにじんできます。がんばれ、がんばれ。いける、いける。最後のカーブ、あと少し! 誰もがその瞬間を祈っていたに違いありません。しかしそれが聞き届けられることはありませんでした。 追い上げるカナダにプレッシャーを感じたゆえか、先行のスピードが上がっていなかったせいか、さまざまな憶測が飛び交う中、エッジが溝にはまったという解説も聞きました。敗因はきっとひとつではないのでしょうが、転倒した高木菜那選手がひとり背負うものでは絶対にありません。団体戦の涙はとりわけ胸が痛みます。うなだれる背に添えられたチームメイトの手にこの思いも乗せたいような気持ちで、そしてスピードスケート最後の種目マススタートで氷の女神が菜那選手に微笑んでくれることを願いました。 パシュートの2日後に行われた1000m。7レース目の美帆選手が疲労困憊でないはずがありません。それでも最後の最後で、圧巻のレースを見せてくれました。強く、美しく、逞しい滑りでした。1500mとは逆に、後に滑る選手へプレッシャーをかけるオリンピックレコード。最後の組を見届けて、静かに泣いた高木美帆選手。日本人女子最多の7個目を飾ったのは、最高に輝く金メダルでした。 そして、精彩を欠いていたのが小平選手。500mでイ・サンファ選手との戦いを制し、金メダルを獲得したのが4年前。連覇はならず17位、前回銀だった1000mでも10位と伸びませんでした。後のインタビューで直前に怪我をしていたと明かしていました。まるで豹かチーターのようにしなやかな滑りを楽しみにしていたので残念でしたが、苦しみながらも滑り続けた小平選手のファイティングスピリットにあっぱれです。 4年前はじめて観たマススタートで、最後にインコースから飛び出しいちばんにゴールした菜那選手。まさに大穴といった感じで興奮しました。コロナ禍もあって、ここ数年マススタートからは遠ざかっていたといいます。確かに、レース中とまどっているようなしぐさが見られました。なかなか中に入れず外を回って体力を消耗していたのかもしれません。またも最後に転倒してしまい決勝には残れませんでした。 4年前、優勝候補ながら転倒で予選敗退していた佐藤選手は、冷静に状況判断して最後まで足を残していたようでした。しかし決勝ではメダルも見えた最後に接触がありスパートできず。不運といえば不運な結果となりましたが、レース後のふたりのコメントには、マススタートに対する恐怖心と不信感が透けて見えました。確かに、4年前もこんなんだったっけ? とちょっと気になる場面がいくつもありました。基本的に接触のないスピードスケートの選手に、ショートトラックのような接触のあるマススタートは慣れていないと戸惑いがあるでしょうし、そのために制定されたルールが守られていないというのは問題だと思います。駆け引きや状況判断の求められるこの競技は、確かに観ている者からすれば面白さがありますが、疲労の溜まっている選手を出すより、専門とする選手がいてもいいのかなという気がしました。 躍進を期待されていた男子は、500mで森重選手が銅メダルを獲得。中国の高選手がトップをキープしていた状況で、最後2組はフライングを取られて会心の滑りができなかったように見えました。そんな中3位を獲った森重選手は見事でしたが、最終組の新浜選手・デュブルイユ選手はただでさえプレッシャーがかかる場面でさらに集中力を削がれてしまったように見えました。個人的には「フライングちゃうやん」と言いたいですが…。マススタートの一戸選手・土屋選手の入賞を狙ったレース運びは観ていて面白かったです。
フィギュアスケート女子シングルは、波乱の結果に終わりました。
波乱、と形容して良いものなのかはわかりません。 ただ、坂本選手が銅メダルを獲得した喜びよりも、ワリエワ選手のあまりの痛ましい姿に、こんな風景をオリンピックで見ることになろうとは想像もしておらず、ただただつらい終幕でした。 SP15位で迎えた河辺選手。トリプルアクセルはステップアウト、その後もミスが続いて結果23位と本人にとっては悔しい結果になりました。調子を合わせられなかったのかもしれません。アイスダンスも含めて選考過程を疑問視する声を目にしましたが、選考会で上位に立ったうえで勝ち取った権利なのですから結果論で物申すことは好みません。ただでさえコロナ禍で大会の機会が減っている若い選手にとっては貴重な経験だっだでしょうし、世代をひっぱっていく代表としてこれからも高難度ジャンプに挑み続けてほしいです。 このところ北米選手の表彰台はめっきり減ってしまいましたが、個人的に注目していたのがアメリカのマライア・ベル選手。北米らしいスケールの大きさと優しいスケーティングが大好きです。25歳の全米チャンピオンとして臨んだこのオリンピックでも、その世界観を堪能させてくれました。 若い選手の溌溂とした演技も良いですが、ベテランにしか出せない味というのもフィギュアの醍醐味です。おそらくそれを表現力と呼ぶのだと思います。 圧倒的なスピードを武器にシニアに参戦し、スーパー中学生と呼ばれていた樋口選手も、年齢を重ねて本当に魅力的なスケーターになったと思います。平昌代表を逃して北京だけを見据えて戦ってきたこの4年間で、3Aだけでなく、樋口選手にしか作り出せない情感という武器を手に入れました。優しさに包まれるSPと、力強い生命力にあふれたFS。まったく異なるふたつの世界を見事に演じ分ける姿に、感動と勇気をもらいました。FSでは転倒もあって全日本と較べると少し勢いを欠いてしまったように感じますが、2回とも決めた3Aは本当に素晴らしかったです。初のオリンピックで5位入賞という結果は立派であるものの、悔しさはきっとあるでしょう。それでも試合後のインタビューは、今まででいちばんすっきりしていたように見えました。新葉ちゃんがすべてを出し切れたのなら、そのうえでさらに高みを目指して進んでいけるのなら、いちファンとして本当に良かったと思います。 SP4位のトルソワ選手が4回転5本を跳んで3桁の技術点をたたき出し、1位に躍り出た直後に登場した坂本選手。団体戦の時よりずっと落ち着いて見えました。演技後のグリーンルームで、4位に落ちて席を立つ樋口選手に「私もすぐそっちに行くよ」と声をかけたそうですが、おそらく本人は3位になれると思っていなかったのでしょう(私も思っていなかった…)。滑走前も、メダルは意識せず、自分のできることをやりきろうと覚悟を決めたように見えました。平昌のかわいらしいかおちゃんとはまるで違う、大人の坂本花織がそこにいました。「強さ」を感じる演技でした。持ち前のスピードは最後まで失われることなく、力強いジャンプもステップもスピンも、要素のすべてがその流れの中に組み込まれ、あっという間に4分間が過ぎていきました。フィニッシュでは、すべて出し切れた、そんな安堵の表情に見えました。 2位のシェルバコワ選手が4回転を含めた完成度の高いプログラムを滑り切って首位に立ち、そして最終滑走はワリエワ選手。 SPを終えてからも、批判は鳴りやみませんでした。その声が本人に届かないはずはなく、そしてたった15歳の彼女がその細い身体ですべてを受け止めきれるはずもなく。 今までの選手とは異なり、同じ4分間がとても長く感じました。 点数が出て、その横に表示された数字は「4」。その瞬間、坂本選手の3位が確定しました。日本女子フィギュア4人目のメダリストが誕生したのです。喜ばしい、晴れがましい、歴史的瞬間のはずでした。しかし実況も解説もなかなか適切な言葉を探せずにいました。テレビの前の私たちも、泣き崩れるワリエワ選手を前にしては、素直に喜べませんでした。 寄り添っていたエテリコーチは、慰めているのだとばかり思っていました。 試合終了時グリーンルームにいたのは坂本選手とシェルバコワ選手だけでしたが、演技後トゥルソワ選手がコーチに向かって泣き叫んでいたという報道もありました。 ワリエワ選手が4位になったことで行われたセレモニーで、満開の笑顔は坂本選手だけでした。 本来ならいちばん喜んでいるはずのシェルバコワ選手は「空っぽ」と言いました。奇しくも4年前、同じエテリ門下のメドベージェワと金メダルを争い勝利したザギトワも、同じ言葉を残していました。 ロシアでいったい何が起きているのか、それは知る由もありません。 そしてフィギュアが常にクリーンで純粋な競技であるとも思っていません。 それでも、素直に楽しみにしていたのです。 後味の悪いものになってしまったことは悲しいです。 それはおいておいて。 シェルバコワ選手の演技は圧巻でした。4回転の本数こそトゥルソワ選手には及びませんでしたが、密度の濃いプログラムを最初から最後まで滑り切り、すべての要素を完璧にこなしました。ロシアらしい気品に満ちていて、威厳すら感じさせるものでした。 トゥルソワ選手は、SPにミスがなければ金メダルだったと思います。つまり3Aに挑戦しなければ、FSで確実に上回れたはずです。しかし彼女はあえて挑戦を選んだ。その意気や良しです。感情を昂らせた本当の理由はわかりませんが、いつか3Aを決めて笑顔になるトゥルソワ選手を観たいです。 そして坂本選手。高難度ジャンプこそないものの、完成度の高いプログラムはこれもフィギュアと唸らされました。技術力と完成度、フィギュアスケートはどちらを重視すべきかというこの問答は永遠に答えは出ないと思いますが、たとえばジェイソン・ブラウン、カロリーナ・コストナーのように、高難度ジャンプがなくても評価されているスケーターは存在しますし、価値があるとも思います。坂本選手もすでにそんな素晴らしい選手のひとりであると感じましたし、彼らのような息の長いスケーターになってほしいと思います。 |
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