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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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ノルディック複合で2大会連続メダルの渡部暁斗選手。それだけでもじゅうぶんに偉業なのですが、さらに今回のラージヒルで銅メダルを獲得しました。
見どころはクロスカントリーのラストスパート。ノーマルヒルではジャンプ11位のドイツ・ガイガー選手が驚異の追い上げで金メダルを獲得。そのインパクトは強烈でした。
それもあって楽しみにしていたラージヒルでしたが、時間を間違えてしまい見逃してしまいました…(フィギュアのチャンネルにメダル獲得のニュース速報が出てガクゼン)。最後の最後だけVTRで観ましたが、リアルタイムだったらものすごく興奮しただろうなあ…とガックリしました。
それもあって、団体はちゃんと観ようとしっかりチェックしました。
とはいえ、ノルウェー・オーストリア・ドイツの牙城を崩すのはしんどいかなあと予想していたのです。ジャンプで12秒差の4位につけ、早々に首位争いに食い込みますが、途中からノルウェーがひとり旅。銀・銅メダルは残り3国で争う展開になりました。
実力者の渡部暁斗選手を3走に、若い山本選手をアンカーにしたのは、きっと何らかの確信があっての戦略だったのだろうと思います。そしてそれは的中しました。渡部善斗選手が先行集団をとらえ、永井選手がしっかりつなぎ、渡部選手がメダル争いを確定させると、山本選手は他国選手が幾度も仕掛けるスパートに果敢に食らいつき、最後まで振り落とされませんでした。そして最後の最後、あのガイガー選手のスパートにも滑り負けることなく、体力を残していなかったオーストリアを置き去り、3位でフィニッシュ。複合ニッポンがリレハンメル以来、28年ぶりのメダルを獲得しました。ワックスマンも含め、全員で勝ち取った銅メダル。やっぱり団体戦っていいなと思います。

スノーボード女子ビッグエアでも銅メダル。この競技をはじめて観ましたが、スタート地点の高さに背筋が冷えました。あんな高いところから凄いスピードで滑り降りて何回転もまわって着地する…考えただけで足がすくみます。
村瀬選手のエアが素晴らしかったのはもちろんですが、注目されたのは3回目で女子ではじめてトリプルコークに挑戦し、惜しくも転倒しメダルには届かなかったものの、選手たちから賞賛のハグを受けた岩渕選手。東京五輪のスケボーでもあった光景でした。選手たちはライバルでなく仲間。カルチャーの一面を持つ競技ならではの美しい光景でした。






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オリンピックが始まる前、自分の中でいちばん楽しみにしていたのが、フィギュアスケート女子シングルでした。
表彰台はロシアの三人娘で確定だろうけれど、坂本選手・樋口選手・河辺選手には悔いを残さぬ演技をしてもらいたい。最高の笑顔でフィニッシュを迎えてほしい。そして三人娘にはハイレベルきわまりないトップ争いを見せてほしい。そう思っていました。
まさかこんなことになるなんて。
いちフィギュアファンとしては、その楽しみを奪われた悲しみしかありません。もちろん怒りもありますが、どこにぶつけていいのかわかりません。ワリエワは紛れもなく加害者のひとりですが、たくさんの加害者がいる中で、矢面に立つのは彼女だけ。演技後に涙をこらえきれない15歳の少女相手に拳を振り上げるわけにもいきません。
…というのも見越した上で、これがロシアのやり方なのだろう。
虚しい気持ちでいっぱいです。
採点でも、いつものオリンピックなら大盤振る舞いのはずが、レビューの嵐。樋口選手のトリプルアクセルが認定されたのはうれしかったですが、回転不足とエッジエラーで点数が思いのほか低くなってしまいました。ユ・ヨン選手のトリプルアクセルのダウングレードには解説も驚きを隠せていませんでしたし。坂本選手にエッジエラーがつかなかったのも、一瞬喜んでからすぐ、「ああ最終滑走だから遠慮する必要なくなったんだな」とどこか冷めた思いが湧いてしまいました。
本当に、いったい何を見せられているのだろうという気持ちです。
もちろんFSは、日本の三人だけでなく、全員の健闘を期待したいです。しかし、素直な思いでその日を迎えられなくなってしまったことがただただ悲しいです。






小さい頃に連れていかれたスキー場で転んだ時のあまりの痛さに「もう二度とやらん」と心に決め、実際にその後ウィンタースポーツと無縁の人生を送ってきた自分からすれば、あんなのとは比較にならない痛みや恐怖と戦いながら競技に挑んでいる選手たちには本当に尊敬の念しかありません。女子選手であればなおさらです。
スノーボードハーフパイプでは、冨田せな選手が日本女子ではじめてメダルを獲得しました。演技中のカッコいい姿とニッコリ笑顔のギャップがほのぼのしました。モーグル5位で悔し涙にくれながらも周囲を気遣う言葉を残した川村あんり選手もそうでしたが、自分のことよりサポートしてくれた人々への謝辞が多い印象です。もちろん本心からの言葉なのでしょうが、世の中の風潮が彼ら彼女らにそうさせているのかな…とも感じます。
謙虚な姿勢は日本人の美徳とも言われますが、ネット社会になりいち庶民の声が本人へ容易に届くようになって、よりそれが意識されているように感じます。個性が尊重される社会になっているにもかかわらず、なぜかアスリートだけは自己主張すると叩かれる。もちろん一定層に過ぎないのでしょうが、心に受けるダメージは百のプラスのコメントより大きく響くと思います。ジャンプ混合団体の一件でも、もし日本がドイツなどのように「おかしい」と声をあげていたら、きっとそういう輩がわらわら湧いてきたでしょう。
それを選手みずからが口にするのは、きっとものすごく勇気がいることです。採点競技ならなおさらです。どんなに不満を憶えても涙を呑んでこらえてきた選手を何人も見てきました。言葉にすればもっと不利になるからです。
平野歩夢選手が目指してきた未知の領域、トリプルコーク1440。この大舞台で彼にしか決められなかったまさに最高難度のルーティン。それを目の当たりにしながら、なお80点台を出す審判がいるという事実。実況は言葉を失い、解説も新技をまだ持っているから抑えられたのかもしれないと苦しい想像を述べましたが、観ているだけの素人にはまったく納得がいきませんでした。
しかし、採点に不満を憶えたのは日本人だけではなかったことをあとで知りました。アメリカの解説者は怒りを隠そうとせず、トップだったジェームズ選手の母国であるオーストラリアですらこの低得点を過激な言葉で報じました。それもこれも、選手を国の代表としてではなく、競技を盛り上げていく同胞として見ているからだと思います。これが平野選手でなければ、日本でも同じ風潮が起こったかどうか。フィギュアスケートでも同じようなことが起こりがちですが、被害者が日本選手でなくても我々は怒りを憶えなければならないと自戒させられました。
もちろん、もっとも怒りを憶えたのは平野選手本人のはずです。命を賭けて挑んだ大技を、海外の言葉を借りれば「茶番」にさせられたのです。
ただ、平野選手は偉大でした。競技ラストを飾る3本目。彼は北京の空へ誰よりも高く、誰よりもクールに舞い上がり、その怒りを見事に昇華させました。金メダルという結果以上に、平野選手の3本目は、(この競技にはやや不似合いな形容かもしれませんが)心技体のそろった一流のアスリートにしか成しえない偉業だったと思います。
ただ、「金メダル取れたから良し」で終わらせてはいけないこともまた事実です。平野選手自身がはっきりと「怒り」と口にしただけでなく、会見でも採点の改善を求める発言を述べていましたが、やはり日本人も「美徳」を守るだけでなく、こういった姿勢を貫くことも大切なのではとつくづく思いました。もちろん、スノーボードとその他の競技では選手の立場が違いますし、といって連盟が積極的に働きかけられるかというとそうもいかない事情もたくさんあるでしょう。
ただ、「オリンピックだから」というだけでたくさんの不可解な出来事が起きて、そのオリンピックのために4年間すべてを犠牲にして戦い続けてきた選手たちにたくさん涙を流させるようなことがあって良いものなのか。
いったい誰のためのオリンピックなのか。
オリンピックを見るたびこの違和感が大きくなっていることに、悲しみが募ります。

それとは別にして。現役最後の競技を終えたショーン・ホワイト選手には、観衆とともに大きな拍手を送りました。今回はメダルには届かなかったものの、過去2大会の演技には圧倒されました。海祝選手の思わず声が出るほど大きなエアも、本人の言うように強く記憶に残る瞬間だったと思います。









羽生選手が無事入国。いよいよ男子フィギュアが始まりました。
絶対王者ネイサン・チェンvs4Aに挑む羽生結弦。そんな構図を期待していましたが、結果は意外なものになりました。
21番目に登場した羽生選手。最初の4S、いつもの美しいジャンプが来ると思っていたら、待っていたのは文字どおりの落とし穴でした。その後の4T+3T、3A、スピンやステップはさすがの出来栄えだったものの、要素抜けは痛すぎました。まさかの8位スタートとなります。
そのあとに登場した宇野選手はわずかなミスがあり、それでも前回銀メダリストの貫禄でPBを出しました。そしてシングルでもビックリさせられたのが鍵山選手。最初から最後まで安定感があり、振り付けから表情まで今の鍵山選手にぴったりなプログラムで、終わった後のガッツポーズにも思わず「カワイイ…」とつぶやいてしまうほど、「鍵山優真ここにあり」を示してくれました。宇野選手を超える得点でこの時点でトップに立ちます。
しかしその直後、ネイサン・チェン選手が圧巻の演技であっさり上回りました。平昌では悪夢に見舞われたSP。その記憶を振り払うように、この4年間世界の頂点に立ち続けてきました。その集大成ともいえる今回のオリンピック。あの頃よりもさらに洗練された身のこなしと、追随を許さない高難度のジャンプ構成。ようやく、彼の絶対的なプログラムをオリンピックで堪能することができました。

迎えたFS。
その日の朝、羽生選手が4Aのみならず3A+3Loを構成に入れるというニュースを見た時は正気かと目を疑いました。本調子でない足の状態で滑り切れるのか…とただそれだけが心配で、その日は仕事も手につきませんでした。
結局、4Aは転倒。続く4Sも転倒し、3Aのセカンドは3Loではなく2Tになりました。それでも後半の4回転からの連続ジャンプは成功。
「完璧」にはならなかった『天と地』。しかしそれも、戦いの場に身を置き決して常勝ではなかった上杉謙信の生きざまそのものであり、戦い傷つきそれでも最後まで刀を振るい続けた姿は羽生選手のスケート人生と重なるものがあります。プログラムはスケーターの作品であり、彼ら自身を表現する場でもあります。成功しても失敗しても、羽生結弦のメッセージが誠心誠意伝わってくるからこそ、観る者は彼のスケートに心を揺さぶられるのだろうと思います。
残り3人になっても羽生選手はなお1位。
今季、宇野選手は「攻める」と言い続けてきました。そしてその言葉どおり、4本の4回転を5本組み込む高難度のプログラムに挑みました。平昌で銀メダルを獲得した頃は、まだ少しつかみどころのないマイペースな少年といった雰囲気でしたが、辛い時期を乗り越え、ランビエールコーチとともに北京を目指し、今は挑戦し続けるアスリートの面持ちになりました。得意の4Fでミスをするなどやや失敗はあったものの、得点で羽生選手を上回り、2大会連続メダルとなる銅メダルを獲得。これからも挑戦し続けると強い言葉で締めくくった2度目のオリンピック。宇野選手のさらなる進化は、これからもまだまだ見られそうです。

SPまでは「緊張していない」と言っていた鍵山選手も、さすがにトリ前の演技では緊張感が生まれたのか、やや硬さがありました。それでも、4Loは惜しくもステップアウトするも他の4回転は高さと柔らかさを生かし、きれいなジャンプでまとめました。他の要素も18歳とは思えないほどの完成度で大きなミスなく終え、200点超えでチェン選手を残しトップに。キス&クライで師弟そっくりな顔で喜ぶ姿、お父さんの少し感極まっている様子も印象的でした。

そして、北京オリンピック男子シングル、ラストを飾るのはネイサン・チェン。
4年前とは見違える姿でした。身に着けたのは、絶対王者としての風格だけではありません。ジャンプの安定感も、スケーティングの質も、プログラム全体の密度も、何もかもが素晴らしく、ただただその世界観に酔いしれるだけでした。特に、音楽のわずかな隙間に放たれた4Lz。あの時点で心のボルテージは最高潮でした。
フィニッシュポーズの後、少し安堵したような様子もありました。今後は学業に専念するとも噂されているチェン選手のオリンピック、最後が金メダルで、達成感溢れる笑顔で終われて本当に良かったと思います。
もちろん、羽生選手が完璧なプログラムを滑り、チェン選手と最後の一戦を競ってほしかったという気持ちはあります。今後について明言を避けた羽生選手ですが、宇野選手、鍵山選手をはじめ、世界でも若手はどんどん育ってきています。羽生選手が回転不足とはいえ初めて公式試合で跳んだと認定された4A、そのチャレンジャー精神は、きっと後進に受け継がれていくでしょう。
羽生くんがこれからどんな道を選ぼうとも、本人のやりたいようにやってほしいと思います。かつて、浅田真央ちゃんにそう思っていたように。こちらは見守るだけです。ただ、今回も含め、これまでたくさんのしあわせな時間を味わわせてくれたことに感謝を捧げます。







フィギュア団体メダルに気を良くした夜はスピードスケート。
なんと今回5種目にエントリーしている高木美帆選手。初戦の5000mは6位入賞でしたが、最も得意な種目が1500m。最終15組で貫禄を見せてくれるか、楽しみにしていました。
しかし12組に滑ったブスト選手がオリンピックレコードをたたき出すという展開に。出番を待つ高木選手にどれだけプレッシャーがかかったか、想像に難くありません。最終滑走にふさわしいタイムでゴールするも、前回の金メダリストには0.44秒及ばず、今回も銀メダルとなりました。
いや、銀メダルだって素晴らしいのです。世界2位です。なのに本人には悔しさしか残っていないようでした。その目には頂点しか見えていなかったのでしょう。オリンピックに完全に調子を合わせて、最高のパフォーマンスを発揮したブスト選手を讃えるしかないようです。銅メダルに0.1秒及ばなかった佐藤選手も惜しかったです。高木菜那選手も接触ありながら8位入賞、日本人選手はしっかり成績を残しました。

連続メダルに良くなっていた気分が、一気に突き落とされたのがその後のジャンプ混合団体でした。
女子ノーマルヒルで表彰台に届かず、「もう自分の出る幕ではないかもしれない」と悲しいコメントを残していた高梨沙羅選手。女子ジャンプが正式競技になってから8年。ヨーロッパ勢が実力を伸ばしてきて、しかも上位選手が次々入れ替わる厳しい世界で、高梨選手はずっと第一線で戦ってきました。そんな選手は彼女だけに思います。オリンピックのメダルには届かなくても、高梨選手の功績が色褪せることは決してないし、そこは誇りに思ってほしいといちファンは思うのです。
だからせめて、混合団体では笑顔で終わってほしいと願っていました。
こんな結末が待っているなんて、思いもしませんでした。
一本目、大ジャンプを見せてカメラの前でニッコリ笑った高梨選手。良かったと胸をなでおろしたのも束の間でした。いきなり「失格」という言葉が出てきて、実況席は混乱。こちらの頭も混乱してしまいました。その後も有力国から失格者が次々出て混乱はさらに加速、もう辛くてテレビの前から離れてしまいました。
どうしてこうなっちゃうんだろう。どうしてオリンピックの女神は、沙羅ちゃんにその手を差し伸べてくれないのだろう。
心の整理がつかないまま見守った2本目。ゴーグル越しにも泣きはらしたことがわかる顔で跳躍し、着地後うずくまって立ち上がれない高梨選手を、いったい誰が責められるというのでしょう。画面越しにもう泣かないでとその背に手を添えたくなりました。
佐藤選手、伊藤選手は彼女の無念を晴らすかのようにしっかりと跳躍し、最後の小林選手がメダルの可能性すら残すほどの大ジャンプで、日本チームは4位で競技を終えました。実質7人で8人のチームに挑んでの4位です。想像を絶する精神状態で2本目を飛んだ高梨選手含め、全員がチームとして戦った証です。戦い抜いた4人に拍手を送りたいです。
内外からいろんな意見が出て、それらを目にして思うところはたくさんあります。今まで知らなかったルールも多くありましたし、ルールがあってこその競技だとも思います。ただ、ルールは競技をフェアに実施するために存在するのであり、そのルールがフェアに適用されていなかったのであれば、もはやそれはルールじゃない。それだけは強く思います。そしてそれに巻き込まれたのがよりにもよって沙羅ちゃんだったこともまた、悔しいし悲しいです。
強く自分を責めている様子ですが、謝る必要なんかない、そのとおりです。でも本人が謝って楽になるのなら謝ればいい、そんな励ましも目にしました。それもそうだと感じ入ります。ただ、沙羅ちゃんが悪いなんて誰も思ってないんだよ。それだけ伝わればいいなと思います。







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