羽生選手が無事入国。いよいよ男子フィギュアが始まりました。
絶対王者ネイサン・チェンvs4Aに挑む羽生結弦。そんな構図を期待していましたが、結果は意外なものになりました。 21番目に登場した羽生選手。最初の4S、いつもの美しいジャンプが来ると思っていたら、待っていたのは文字どおりの落とし穴でした。その後の4T+3T、3A、スピンやステップはさすがの出来栄えだったものの、要素抜けは痛すぎました。まさかの8位スタートとなります。 そのあとに登場した宇野選手はわずかなミスがあり、それでも前回銀メダリストの貫禄でPBを出しました。そしてシングルでもビックリさせられたのが鍵山選手。最初から最後まで安定感があり、振り付けから表情まで今の鍵山選手にぴったりなプログラムで、終わった後のガッツポーズにも思わず「カワイイ…」とつぶやいてしまうほど、「鍵山優真ここにあり」を示してくれました。宇野選手を超える得点でこの時点でトップに立ちます。 しかしその直後、ネイサン・チェン選手が圧巻の演技であっさり上回りました。平昌では悪夢に見舞われたSP。その記憶を振り払うように、この4年間世界の頂点に立ち続けてきました。その集大成ともいえる今回のオリンピック。あの頃よりもさらに洗練された身のこなしと、追随を許さない高難度のジャンプ構成。ようやく、彼の絶対的なプログラムをオリンピックで堪能することができました。 迎えたFS。 その日の朝、羽生選手が4Aのみならず3A+3Loを構成に入れるというニュースを見た時は正気かと目を疑いました。本調子でない足の状態で滑り切れるのか…とただそれだけが心配で、その日は仕事も手につきませんでした。 結局、4Aは転倒。続く4Sも転倒し、3Aのセカンドは3Loではなく2Tになりました。それでも後半の4回転からの連続ジャンプは成功。 「完璧」にはならなかった『天と地』。しかしそれも、戦いの場に身を置き決して常勝ではなかった上杉謙信の生きざまそのものであり、戦い傷つきそれでも最後まで刀を振るい続けた姿は羽生選手のスケート人生と重なるものがあります。プログラムはスケーターの作品であり、彼ら自身を表現する場でもあります。成功しても失敗しても、羽生結弦のメッセージが誠心誠意伝わってくるからこそ、観る者は彼のスケートに心を揺さぶられるのだろうと思います。 残り3人になっても羽生選手はなお1位。 今季、宇野選手は「攻める」と言い続けてきました。そしてその言葉どおり、4本の4回転を5本組み込む高難度のプログラムに挑みました。平昌で銀メダルを獲得した頃は、まだ少しつかみどころのないマイペースな少年といった雰囲気でしたが、辛い時期を乗り越え、ランビエールコーチとともに北京を目指し、今は挑戦し続けるアスリートの面持ちになりました。得意の4Fでミスをするなどやや失敗はあったものの、得点で羽生選手を上回り、2大会連続メダルとなる銅メダルを獲得。これからも挑戦し続けると強い言葉で締めくくった2度目のオリンピック。宇野選手のさらなる進化は、これからもまだまだ見られそうです。 SPまでは「緊張していない」と言っていた鍵山選手も、さすがにトリ前の演技では緊張感が生まれたのか、やや硬さがありました。それでも、4Loは惜しくもステップアウトするも他の4回転は高さと柔らかさを生かし、きれいなジャンプでまとめました。他の要素も18歳とは思えないほどの完成度で大きなミスなく終え、200点超えでチェン選手を残しトップに。キス&クライで師弟そっくりな顔で喜ぶ姿、お父さんの少し感極まっている様子も印象的でした。 そして、北京オリンピック男子シングル、ラストを飾るのはネイサン・チェン。 4年前とは見違える姿でした。身に着けたのは、絶対王者としての風格だけではありません。ジャンプの安定感も、スケーティングの質も、プログラム全体の密度も、何もかもが素晴らしく、ただただその世界観に酔いしれるだけでした。特に、音楽のわずかな隙間に放たれた4Lz。あの時点で心のボルテージは最高潮でした。 フィニッシュポーズの後、少し安堵したような様子もありました。今後は学業に専念するとも噂されているチェン選手のオリンピック、最後が金メダルで、達成感溢れる笑顔で終われて本当に良かったと思います。 もちろん、羽生選手が完璧なプログラムを滑り、チェン選手と最後の一戦を競ってほしかったという気持ちはあります。今後について明言を避けた羽生選手ですが、宇野選手、鍵山選手をはじめ、世界でも若手はどんどん育ってきています。羽生選手が回転不足とはいえ初めて公式試合で跳んだと認定された4A、そのチャレンジャー精神は、きっと後進に受け継がれていくでしょう。 羽生くんがこれからどんな道を選ぼうとも、本人のやりたいようにやってほしいと思います。かつて、浅田真央ちゃんにそう思っていたように。こちらは見守るだけです。ただ、今回も含め、これまでたくさんのしあわせな時間を味わわせてくれたことに感謝を捧げます。 PR |
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