昨年、野球に夢中だったかたわらで、相撲界では大栄翔の初優勝に始まり、鶴竜の引退、照ノ富士の大関復帰、白鵬の復活優勝、照ノ富士の横綱昇進、白鵬の引退…と、さまざまなことがありました。
白鵬の引退で淋しい思いをする一方、照ノ富士の活躍は本当に感慨深かったです。 横綱が目の前に来ていたところから大怪我と病気で序二段まで陥落し、それでも師匠に背中を押されてリハビリに励み、不屈の闘志で大関に返り咲き、そして4年前は手の届かなかった横綱の地位へ昇りつめた…。 一本の映画になりそうな、復活劇です。 幕内に上がってきた照ノ富士の顔つきは、まるで変わっていました。以前はニコニコと愛想よく、自信に満ち溢れていた表情だったのが、地獄を見てきたような暗影が刻まれていたのです。優勝インタビューを何度重ねても、笑顔はほとんど見られませんでした。縦社会の相撲界で、大関として栄華を誇った力士が序二段から再出発せざるを得ない状況は、こちらの想像を超える本当の地獄だったのだろうと思います。そして、おそらく膝が万全になることはもう二度となく、横綱としての寿命は長くないことを本人も覚悟しているのでしょう。一番一番、その限りある命を削り取りながら取り組んでいるように見えました。 横綱として3場所連続優勝がかかったこの初場所。初日から、押し込まれる場面が続きました。毎日が、横綱に挑戦してくる相手力士だけでなく、膝との戦いでもあったのだと思います。終盤には土俵際で踏ん張れず俵を割ってしまう場面が目立ちました。今までにはなかった横綱の姿でした。 一方、新しい年に再起をかけた力士ふたりが、序盤から白星を重ねました。 大関候補と呼ばれながらなかなかその殻を破れずにいた御嶽海。不祥事で幕下に陥落した後地道に番付を上げてきた阿炎。今年はと期するものがあったのか、どちらも今までにはない引き締まった表情をしていました。さらには期待のサラブレッド・琴ノ若も参戦し、御嶽海を先頭に四人が争う優勝の行方は、千秋楽まで持ち越されることになりました。 そして千秋楽。阿炎と琴ノ若の一番は激しい攻防の末、阿炎に軍配。結びで照ノ富士が御嶽海に勝てば、優勝決定の巴戦になります。 ひさびさの巴戦が観たい。しかし照ノ富士の身体は、それを許しませんでした。 それでも御嶽海戦は、最後の気力を振り絞るような一番でした。まわしを取れず逆にもろ差しを許しても、受け止める気迫を感じました。最後はやはり踏ん張りきかず俵を割りましたが、横綱としての責はじゅうぶんに果たしたと思います。照ノ富士には少しでも長く相撲を取ってほしい、もう無理をしてほしくないというのが本音です。途中休場してもおかしくない状態だったように感じます。十五日間取り続けたのは、横綱としての責任感からなのでしょうか。そんな照ノ富士だから、これからも応援し続けたいと思うのです。だからこそ、来場所は全休してでも怪我を治して、五月にはふたたび強い横綱として君臨する照ノ富士を観られることを望みます。 さて御嶽海。期待しては裏切られる場所が続いて、今場所も調子良く見えてもいつかコロコロっと連敗するだろう、と冷めた目で見ていたのですが。 勝っても勝っても、勝ち越ししても、黒星を喫しても、その落ち着いた仕切りに変化は見られませんでした。とはいえなかなか確信は得られませんでした。今まで歯の立たなかった横綱相手にも怯むことなく挑んだ大一番に勝って、ようやく今回の御嶽海は違うのだと安堵しました。 貴景勝は怪我に泣き、正代は精彩を欠き、謹慎中の朝乃山は幕下から再出発予定という大関陣。照ノ富士一強という今の上位陣において、新大関御嶽海が救世主になることを願います。 そして優勝には届かなかったものの、初場所を盛り上げた阿炎や琴ノ若、宇良、若隆景など、これからが楽しみな力士はたくさんいます。春場所が待ち遠しいとともに、今年こそは大阪の街を歩くお相撲さんを見られるように祈ります。 PR |
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