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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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『ブラックペアン』
ニノと佐伯教授しか人命を救える医者がいなさそうなへっぽこ医師ばかりの大学病院やら、「♪テレレテッテレー、ブラックペアーン!」なひみつ道具やら、西崎教授とニノの間で右往左往してしまいにはコナン化してしまう高階ゴンタやら、何かとツッコミどころ満載ながら、スピード感と盛り上がりに騙されて結局最後まで見てしまうという、最近の日曜劇場らしいドラマでした。
ブラックペアンの謎が解き明かされた最終回は、あらゆる命を救ってきたスーパードクター渡海も佐伯教授という最後の壁を超えることはできなかった…という、なかなか衝撃的なラストでした。「でも佐伯が止血のためにペアンを残しましたと最初に申し送りしていたら済んだ話なんじゃね?」という野暮なツッコミは置いておいて…。原作は読んでいないのですが、時代設定に30年の乖離がありますから、現代においてブラックペアンひとつで片づけるには少し無理のあるオチだったかもしれません。
猫ちゃんとの関係性も今ひとつよくわかりませんでした。医療過誤の被害者団体とかかわりがあるということでしょうか。猫ちゃんを演じた趣里は『リバース』の時と印象が変わりました。サイケな役が似合いそうですね。
竹内涼真と葵わかなのペアは絵面が爽やかでした。ただ、世良がブラック上司の渡海のもとで医者としての腕を上げたのは自然な流れですが、花房が優秀な看護師であるという描写がなかっただけに、最終回の高階の説得は不自然でしたね…。
日曜劇場おなじみの顔芸ですが内野聖陽と市川猿之助のベテランふたりもしっかり担当。わかりやすーいライバル関係をわかりやすーく演じてくれました。しかしこの両者、『風林火山』では水魚の交わりのような主従だったんだよなあ…と古い話を思い出しました。
これからもこの枠はこんな感じのドラマばかりなんだろうか…と思いきや、次の作品は『この世界の片隅に』ではないですか! 澄子(松本穂香)かあ…松坂桃李かあ…どうなるんだろう。
じっくり丁寧に、あの世界観を再現してくれることを願います。

『西郷どん』(承前)
いよいよ歴史が動き始めました。
なんとも感情を揺さぶりにくる大河ドラマです。『翔ぶが如く』のような時代の大回転を描く迫力には欠けますが、ひとりひとりが何を思い何を心に感じて行動に出るかを歴史書の行間に想像力を働かせ、見る者が個人個人の視点に立てるよう作り手なりの物語を組み立てています。
しかしこの脚本家は想像の翼が大きすぎるのか、主要人物よりも脇役の方が輝いて見えます。生きざまが文字として残っている歴史の英雄よりも、名前しか残っていない無名の人物の方が魅力的。たとえば、前者は井伊直弼や徳川慶喜、後者は愛加那。イメージや実際の行動や言動に制限がないだけに好きに描けるからでしょうけれど。
井伊直弼の最期のなんともいえない表情は、今まであまたの俳優が演じてきた井伊直弼のどれにもなかった特筆もののワンシーンでしたが、それまでの描かれ方がステレオタイプのヒールすぎて少し残念でした。
井伊直弼には井伊直弼なりの義があって、互いの義があるからこそ対立が生まれ血が流れる、幕末とはそういう時代。薩摩が主人公である以上、井伊直弼が悪で徳川慶喜が善でなければならないのでしょうが、その構図をあの表情ひとつで打ち崩した佐野史郎はさすがだな、と思いました。『翔ぶが如く』では短絡的で仕事のできない俊斎だったのに…。
徳川慶喜のひーさまも今ひとつパンチがきいておらず、将軍の跡目争いでもいまいち存在感がなかったのですが、これからの活躍に期待ですかね。全体的に吉之助の江戸での暗躍をめぐるターンは少しトーンダウンしていた感があったのですが、盛り上がりをわかりやすく描くには難しい部分だったでしょうか。
一方、愛加那との出逢いから結婚までは実にドラマチックでした。生きる希望を見失った吉之助が生命力に溢れるとぅまに惹かれていく流れは、二階堂ふみの熱演もあって心を揺さぶられました。しかし歴史は吉之助を奄美に留め置かない。否応なしに激動の時代の中心へ、吉之助は舞い戻ります。
時がめぐり、思うところも分かれたけれど、昔に戻ってうなぎ獲りにはしゃぎ、獲物をまわし食いして笑いあう仲間たち。このあとに待つ別れを知っているだけに、彼らが楽しそうであればあるほど、よけいに悲しく映りました。
寺田屋事件。大山格之助に北村有起哉がキャスティングされた時から、この出来事がどう描かれるのか気になっていました。『翔ぶが如く』の蟹江敬三の鬼気迫る演技は強く印象に残っています。今回の寺田屋は泣き崩れる格之助がややセンチメンタルすぎましたが、直前のうなぎ獲りとの対比で、この同士討ちの悲劇性が浮き彫りにされていました。
これからは悲しい別ればかりが待っています。時にはハリセンボン春菜のような、ほっとする場面がさしはさまれていればいいのですが。

『半分、青い。』(承前)
神回かどうかは、視聴者が決めるものですから。作者が先に言ってどうする…。
朝ドラはじっくり見るものではないので、そこまで登場人物の心中を読むことはしません。ですから鈴愛と再会した律が涙ぐんだり、突然プロポーズしたりしても、「なんでぞ! アンタあんなあばずれ女と三年も付き合ってたんやろ! てか、よく三年ももったな!」とツッコミたくもなります。映画や、せいぜい連ドラなら感情移入できたでしょうが、朝ドラにそこまで求められても。
しかし律が「いつのまにか婚」をするとは思いませんでした。プロポーズを断っておいて涙する鈴愛の複雑な心中もわからないでもないです。若い頃はまだまだ「自分はこれから」の気分でプロポーズを断ってしまったけれど、心のどこかで「やっぱり律は自分のものだ」という確信、言い換えれば余裕があったのかもしれない。結局仕事に行き詰まり、超優良物件を手放した後悔で悶々…という図式は、夜ドラなら感情移入できたかもしれませんが、朝ドラだとなあ…。
子ども時代は懐かしい少女マンガを読んでいるようで楽しめましたが、ハタチ越えるとやはりもう大人として見てしまいます。大人視点だといくら漫画三昧のひきこもり生活とはいえ鈴愛は世間知らずがすぎて成長を感じられませんし、東京に出てからの時間の流れが早いことも相まって、故郷に帰って親に甘えたり律と逢って昔に戻る描写も効果的になりません。
鈴愛はアラサーになり、放送の折り返し地点にして早くも漫画家生活が行き詰まっているようです。最終的に漫画家ではなくシングルマザーになって一大発明をするらしいのですが、いかにしてその展開に持っていくのか、新たな登場人物と展開に期待です。





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『コンフィデンスマンJP』
最終回まで騙されっぱなしでした!
ダー子たちの過去は、今までのパターンからしてまず嘘なのだろうなとは思いましたが、まさか最終回が第0話だったとは!
真剣に見ずとも楽しめると軽く扱ったら大間違い、毎週のように最後でどんでん返しされて、もう騙されないぞと構えていてもやっぱり毎回「なんだよもー!」と膝を打ってしまう。映画になるようですが、今度はさらに大がかりな仕掛けを用意してくれそうです。
ダー子・ボクちゃん・リチャードの詐欺師トリオのバランスも絶妙。色気をまったく垣間見せずにあらゆる変顔バージョンで女優魂を見せてくれた長澤まさみ、最後はあの棒読みもクセになりそうだった東出昌大、中の人からして安定の演技派・小日向文世と、一見アンバランスのようで均整の取れたメインキャストと毎回豪華なゲスト陣(ウッチャンは事前の宣伝ぶりからするとちょっと肩透かしだったかな)。ダー子の描いた絵が別の回でゲストの部屋に飾られていたりと小ネタもちょいちょいさしはさまれているようでした(あとからネットの話題で知った)し、隅々まで楽しめる娯楽作品でした。
しかし毎度のように長丁場の対決でしたが、いったい劇中では何年経過しているのでしょうかね。ダー子はホントその執念をまともな仕事に費やしていたら…なんて野暮なことは言いませんよ。

『シグナル 長期未解決事件捜査班』
過去と通信し続けたことで、最終的に未来が変わってしまいましたが、健人の兄は帰ってこなかったのですね…。
最終回が駆け足気味で、過去の改変と現在がどうつながったのか、「今の未来」が結局どういう世界なのかはっきりと説明されなかったため、今ひとつ頭が追いつかず想像で埋めるしかないのが少し残念です。目が覚めると「記憶が変わっている…」。まるで『ときめきトゥナイト』の過去の扉みたいですね。行方不明になっている大山がどこにいてどういう状態なのかはっきりと描かれなかったことは、それはそれで余韻を残す良い演出ではありましたが。
大山&三枝コンビが時空を超えて事件を解決していく図式は斬新だと思ったのですが、後半扱う事件が重すぎて、ファンタジー×サスペンスはやはり連ドラでは難しかったのかもしれません。
それでもスピード感が最後まで失われなかったこと、俳優陣の緊張感あふれる演技が作品を見ごたえあるものにしていました。
中でも甲本雅裕演じる岩田係長の存在感は素晴らしかったです。板ばさみになる中間管理職の悲哀が全身から滲み出ていて、究極の選択を迫られる場面には胸が痛くなりました。渡部篤郎演じる中本の憎々しさが倍増されました。最終的に中本に制裁が下っていたことは救いです。それにしても渡部篤郎@警視庁エリート=ロクデナシという図式が完成されてしまいました。
これはこれで完結していますからおそらく続編はないでしょう。それより『CRISIS』の続編が見てみたい。

『未解決の女 警視庁文書捜査官』
こちらは続編に困らなさそうな刑事ドラマ。演技派俳優に囲まれて、波瑠ががんばっていました。事件自体よりも、個性的なキャラたちのやりとりを楽しんでいたように思います。
第6係の面々のバランスが絶妙でした。遠藤憲一が少しキャラが薄くてもったいなかったような気もしますが、高田純次がちょいちょい朝ドラネタをブッ込んでいたのはアドリブなのでしょうか。沢村一樹に「記憶喪失なんて朝ドラの見過ぎでしょー」と振っていたところは笑ってしまいました。
最終回の事件は実質未解決となりましたが、谷村美月は波瑠と対峙する絵面を考慮して同世代の女性を持ってきたのでしょうか。ただ個人的に谷村美月の演技力にはハテナがあって、ラスボスに配置するには技量不足の感がありました。このキャストで次作にひっぱるのは少し無理があるかな…。
ただ一話完結のドラマは安心感をもって見られるので、続編があったらまた見てみようと思います。

『あなたには帰る家がある』
カピバラ英明に笑わされ、真弓に感情移入し、綾子に恐怖し、太郎に不覚ながらも可愛さを感じてしまう…。
メインキャスト4人がハマり役すぎて、ひさびさに毎週楽しみでたまらなくなった連ドラでした。ツイッターでもしていたら、リアルタイムでつぶやきまくったに違いありません。一括で感想を書くには思うところが多すぎる。
欠点だらけの二組の夫婦のラストは、英明と真弓は再婚することなく適度な距離感で友好関係を保ち、綾子は太郎の愛にほだされ復縁。結局落ち着くところに落ち着いた、という感じです。
それにしても綾子の行動はすべてにおいてホラーでした。あの可憐な服装も、それで台所に立ち肉屋レベルのメンチカツを作り上げてしまうところも、男の落ちどころを熟知した上目遣いも、木村多江があえて真弓含め視聴者を不愉快にさせるよう演じているように映りました。そして何やら魔女を演じることを楽しんでいるようにすら見えました。終盤、ヒッチハイクをスルーされたり心の声で真弓と張り合ったり、綾子のボロが出てくるところは痛快でしたが、視聴者にそう思わせているあたり、木村多江の演技力は圧倒的だったということですね。
それは中谷美紀&玉木宏も同じで、綾子の挑戦状を真っ向から受けて立つ真弓の負けん気も、英明のダメダメっぷりもやや大げさすぎにも感じましたが、それが逆に視聴者の共感を得たり、物語に入りこませたりしてくれたように思います。ユースケ・サンタマリアも同様、綾子を一途に思う不器用な男への変貌には、真弓ならずとも少しふらっとよろめいてしまいそうになりました。登場時の感情の欠け具合から、終盤の人間味を感じさせる表情の変化も絶妙でした。
しかし、同じ不倫の加害者でありながら、英明は許されず綾子は許されるという理不尽な結末に。それでも不快さがないのは、綾子と太郎は欠陥人間同士、似たもの夫婦だから憎しみもわかないのでしょう。
太郎は終盤綾子への愛を吐露し、株を上げましたが、最初のセクハラや傍若無人ぶりを思えば、ナス坊もやっぱり最低な男に変わりありません。綾子も実際に存在する人のものにしか興味を持てない女の敵の女。さんざん虐げられてきた姑に強く出るところは痛快でしたが、こんな機能不全の家にいて、信吾くん大丈夫? と言いたくなります。
タイトルの『あなた』は英明のことか、と解釈していましたが、綾子のことだったのですね。このあたりのひっかけも最高でした。
しかし玉木宏の結婚発表はこのドラマの放送後にしてほしかったな…と思います。木南晴夏がお相手とは、とても良いカップルだなと感じる一方、このドラマの玉木宏を見ていたら「大丈夫?」ってなっちゃいますし。「玉木ロス」なんてならないし…。




『未解決の女 警視庁文書捜査官』
鈴木京香と波瑠という少し異色な女性コンビと、遠藤憲一や沢村一樹などの脇を固めるキャストが魅力で、録画してみました。
体育会系女性刑事を演じる波瑠はミスマッチですが、大森美香の脚本力とまわりの役者たちに助けられるかたちで、ドラマとしては様になっています。ただ事件自体の設定はかなり荒っぽく、鈴木京香の文書読解力を活かすための装置に過ぎないため、同じ未解決事件を扱う『シグナル』とはまるで雰囲気が異なります。朝ドラキャストが多いせいもありますが、朝ドラのように軽く楽しめます。
『わろてんか』で鈴木京香と遠藤憲一の共演シーンはあったかな? 『あさが来た』では姑と婿の設定だった工藤阿須加と波瑠が同期。『ひよっこ』のお父ちゃんもずいぶん性格がいやらしくなりました。…など思うにつけても、朝ドラってなにげに出演者が豪華なんだな。

『あなたには帰る家がある』
「おばさんのミスは笑えない」-(゚ロ゚)→グサッ
このひとことは効いた…。
設定の年齢は真弓と変わりませんからね…。
しかしこのドラマの主題は心の通わない二組の夫婦。自分と重ねると気持ちが沈んでいきそうなので、あくまで創作物として楽しむことにしています。
玉木宏の顔しか取り柄のなさそうなダメ父っぷりは見事。千秋先輩もこういう役をやるようになったのだなあ、としみじみ。
それ以上に見事なのが、ユースケ・サンタマリアのサイコパス夫と木村多江の魔女っぷり。ユースケの怪演は『火の粉』の不気味さを思わせます。茄子田家の食卓にバウムクーヘンが並んでいたらどうしようかと思いました。そして薄幸女を演じさせたら木村多江の右に出る者はいません。そしてあの悲し気な瞳で男にすがる時の色気といったら。そりゃ妻に辟易している夫なら一撃必殺です。ただ、本当に悪気がなく秀明に接近しているのかどうか。茄子田家のような家は昭和どころか平成も終わろうとしているこの現代にあっても、決してめずらしいものではないのかもしれませんが、あんな傲慢な夫にかしづいておとなしく言いなりになっているのも、何か理由があってのことだと思うのですよね…。終始妻がキャンキャン吠えている佐藤家との対比であったとしても、どこか極端すぎて、単純に受け止められません。そして現代っ子であるであろう息子は黙って食卓に座っていますが、心中どう思っているのかもなんとなく気になります。佐藤家の娘はその点、父親にも肯定的で愚痴る母親を諭していましたが。
原作が恋愛小説に定評のある山本文緒だけに、どんな展開が待っているのか想像もつきません。

『ブラックペアン』
『半沢直樹』チームのドラマの長所は、勧善懲悪で展開がわかりやすいところ。一見極端すぎるキャラクターも、物語のスピード感で気にならなくさせてしまいます。しかしこの作品は今までと少し様相が異なります。どうも主役の渡海は純粋な「善」ではない模様。渡海と対立関係にある高階も、過去に因縁がありそうな佐伯教授も、あっちこっちに顔を売りまくる女狐のような治験コーディネーターも彼を取り巻く人間は腹黒ばかり。唯一裏表のない世良もまだ研修医で半人前ですから、生命を救う病院という場において絶対的「善」たりえる存在ではありません。金に汚い渡海がいかにして「善」となり、どの「悪」と戦うことになるのか。『チーム・バチスタ』の海堂尊らしいあっと驚くラストが待っていそうです。
竹内涼真や小泉孝太郎のような長身俳優と並ぶとどうしても見劣りしてしまうニノ(しかも役作りで猫背)ですが、その存在感はさすが。手術時の手さばきも、感情を排除したセリフまわしも、中身をつかめない渡海という人間をより魅力的に見せています。医療に対し高い理想を持って向き合っている世良からすれば、命を金でやりとりするような渡海のやりかたはとうてい受け入れられるものではないのでしょうが、なぜ渡海がそのような医師になったのか、秘密は医療ミスを示唆するレントゲン写真にあるようです。あれは誰のレントゲンなのか、渡海に米を送る母親はどのように展開にかかわってくるのか。
毎クールいろんな医療ドラマがありますが、この作品はひさびさに緊張感をもって楽しめる医療ミステリーになりそうです。



『半分、青い。』
北川悦吏子脚本とあって、また背中がぞわぞわするような甘くて寒い展開になるのではと危惧していましたが、今のところ、懐かしい雰囲気を感じられて心地いいです。
思えば、北川脚本にありがちな「初対面では反目し合っていた男女が恋に落ちる」とか「純粋で陽気な女子と照れ屋でスカシな男子」な設定は、80~90年代初頭の少女漫画そのものでした。そう、まさに私が『りぼん』っ子であった時代とまさにドンピシャ。
『りぼん』の中の世界に憧れていた小学生の私は、高校生になったらラブレターが靴箱に入っていたり、登校途中に出逢った他校の男子と恋が始まったりするものだと思っていました(遠い目)。
そのノリを現代劇に持ってきたらお寒いですが、時代を当時に戻して緑豊かな風景に合わせたら、意外にハマるものです。
そしてちゃんと朝ドラらしく、泣きどころも笑いどころも設定されています。鈴愛の片耳失聴からの一連の流れは、子役のまっすぐな演技に泣かされました。最近は芸達者な子役が多いものですが、このドラマの子役は演出からの指示もあったのか、全員素朴で台詞回しもたどたどしく、それはそれで味がありました。
北川作品の主人公には感情移入できないことが多かったのですが、ここから鈴愛がどのようにして漫画家への道を歩んでいくのか、律との関係はどうなるのか、なぜシングルマザーの道を選ぶのか(相手は!?)、ちゃんと鈴愛の心により添えるように描いてほしいなと思います。

『コンフィデンスマンJP』
『デート~恋とはどんなものかしら~』の古沢良太脚本。放送前にちょうど『デート』が再放送されていたので一気視聴しました。やっぱり面白かった。その流れで録画してみたのですが、うーん、荒唐無稽がすぎて『デート』ほどはハマれない。それでもいきいきしたキャラたちや、真実が二転三転するストーリーの展開には惹きつけられます。やはり脚本家の力量でしょう。
『デート』でも杏が変顔レパートリーを披露してくれていましたが、長澤まさみ演じるダー子の豊かな表情もなかなかのもの。杏のダンナもボクちゃんキャラではっちゃけていますが、なぜこの人の演技はいつまでたっても進歩しないのだろうか…? こういう味なのか?
今は大がかりなカラクリをしかける詐欺師ですが、きっとダー子たちの過去や秘密がどこかで明かされるはず。それまでは深く考えずにコメディを楽しむことにします。

『シグナル 長期未解決事件捜査班』
葉っぱのあんちゃんの時は何とも思わなかったのに…。
最近、坂口健太郎がイケメンに見えてしょうがない…。
それはともかく、このドラマは同時間帯だった『CRISIS』のような少し暗めの雰囲気で、なんともミステリアスな空気感のあるサスペンス。韓国作品独特のおどろおどろしさも残してあります。北村一輝・吉瀬美智子・渡部篤郎などの周りを固めるキャストも重厚で、尾崎将也のスピード感ある脚本が展開を盛り上げています。三枝の過去を含めまだ謎だらけの展開ですが、過去と交信することで未来が変わっていく、このファンタジックな設定が物語全体の緊張感を緩和することなく、最後までこの雰囲気を保って見ごたえある作品になってほしいと思います。





『anone』
中盤からは思いもよらない展開となりましたが、物語に流れる空気感は変わらずゆったりとしていて、孤独だった人々が偶然集まり、やがて家族となっていくさまを淡々と描いていました。まるで、その日常を林田印刷所の居間の片隅で見ているかのようでした。幽霊になっていたのかもしれません。
坂本作品は行間の多さが特徴です。見ている者はそれを想像で埋めながら物語を追います。
しかし他者の日々を、その動向も感情の動きも含めてすべて把握することなんていうのは不可能なことであって、言葉の端からその人の過去を、その思いを感じ取り、そして自己の中に新たな他者を作ります。それは時に正解であり、時に誤りであり。
ハリカの中にいた彦星くん。
るい子の中にいた元家族。
玲の中にいた亜乃音。
理市の中にいた社会。
正しい、間違っている、それを判断するのはあくまで自己であり、他者ではありません。
なぜなら、他者は他者であるから。
だからこそ、人は孤独。
しかし孤独だと思うことは、人とつながっていた証でもある。
ハリカが「ひとりになりたい」とはじめて思ったのは、家族を知ったから。少し淋しそうな亜乃音さん。それでもハリカが「ただいま」と帰ってくることを知っているから、ハリカの成長に目を細めて送り出すでしょう。るい子もいる、持本も(おそらくどこかに)いる。もちろん玲も陽人もそばにいる。だから大丈夫。
未来はきっと大丈夫。
坂本作品の後味の良さは、曇り空を割って差し込む一筋の光のようです。

『弟の夫』
全3回はマイクが日本に滞在したのが3週間だったからでした。
『女子的生活』で扱ったLGBTを、今度は当事者以外の人間に主眼を置いて描かれた作品です。
把瑠都が準主役と聞いて好奇心から見始めたのですが、元大関がこれほど存在感を放つとは想像もしませんでした。佐藤隆太・中村ゆりをはじめ子役まで達者な俳優陣をそろえ、細かい演出や丁寧な脚本、プレミアムドラマのあいかわらずの質の高さには舌を巻く思いです。
カミングアウト以来疎遠のまま亡くなった双子の弟の夫を前に、最初は偏見を拭えない弥一の葛藤。しかしマイクの人柄に触れるうち、その頑なな思いは徐々にかたちを変えていきます。ひとり娘の夏菜にその問題が訪れたらと考えた時、自分の知らない弟の姿を知った時。マイクを認め、涼二を認め、そして最後にはようやく周囲へマイクの存在を「弟の夫」と、家族の一員だと主張できるようになるのです。
弥一自身、「家族」を見失っていました。妻と離婚し、夫婦や家族という肩書は失っても、マイクが来たことで夏菜に元妻との時間を与えることができました。他人が言うように、少し「他と違う」のかもしれないけれど、娘、娘の母、そして弟の夫。自分たちは確かに家族。家族がしあわせならば、それで良い。
涼二と過ごすべきだった時間は取り戻せないけれど、「家族」はかたちを変えて弥一のもとに戻ってきたのです。
LGBTというよりも、これは「家族」の話なのだと感じました。
このドラマでも子役の演技が光っていました。父親のもとでのびのび育っていても母親と別れる時の淋しそうな素振り、マイクと別れる時には涙を我慢する成長した姿、さまざまな表情を見せてくれました。把瑠都に負けず劣らず、存在感がすごかったです。
チョイ役でしたが野間口徹の変幻自在ぶりもさすがでした。
全3回ながら、見ごたえのあるドラマでした。把瑠都はこれからも俳優業でオファーがありそうですね。

『わろてんか』
藤吉は不要だった….。
と、しみじみ感じた最終回。
女太閤にはとうてい見えなかったけれど、それでも年相応の落ち着きや貫禄を醸し出せていただけに、もっと早く藤吉が退場していれば、後半はおてんちゃんの活躍物語として楽しめていただろうにと残念に思います。
部分的には良いところもありましたが(団真vs団吾や、リリコ&シローや、トキ&風太や)、随所に作りの雑さを感じた朝ドラでした。苦労話やメインイベントが語りだけで終えられたり、エピソードの投げ捨てだったりもさりながら、もっとも重要人物であるてん&藤吉に感情移入しづらかったことが、いちばん話に入り込めない原因でした。ダメ人間である藤吉が結局情熱家というだけで手柄を持っていくところや、苦労女房感のないてん、わろてるだけですべての問題が解決されることをさも事前に知っているかのような似たもの夫婦ぶり、前半の苦労話がこれだけでもうだいなし。事業が落ち着いた後半からは盛り上がりを見せましたが、もっとも大変であったろう戦時中のエピソードが駆け足も駆け足(これは、戦争を描くと視聴率が落ちるらしいことが原因かもしれませんが)。なんとか大団円風で幕を閉じたものの、消化不良感の残る朝ドラでした。
今でも吉本新喜劇は「マンネリ」そのものを主題としています。同じギャグがくり返されることをわかっていて、「来るぞ、来るぞ」と待ちかまえ、「キター!」といっせいに笑う。笑いを待ち、笑うために見るのです。同じことのくり返しとわかっていても、笑いを求めて見てしまうのです。まさしく、このドラマのもっとも言いたかったことであろう、「笑いは薬」に通じるものがあります。
娯楽のきわめて少なかったこの時代、同じ出演者、同じ漫才、同じ落語をお金を払ってでも何度も何度も聞きに来る。そして笑う。笑って満足して帰り、そしてまた笑いを求めてやって来る。寺ギンのような席主もいて、同業他社が乱立していたであろうこの時代、なぜ北村笑店が成功し、多くの小屋を抱えることができたのか。その理由はおそらく、藤吉とてんが金儲けでなく、「笑いは薬」をモットーに観客と芸人を大切に守りながら商売をしていたからであろうと思われますが、どうもその情熱がふたりから伝わってきませんでした。「商売繁盛」という週末の着地点に向けて勝手に話がいいように展開してしまったために、いまいち感情移入しきれずに話が進んでいってしまったように感じます。
ただ芸人を演じた俳優さんたちの熱演はたいしたもので、ここがコケたら見る影もありませんでしたが、リリコとシローの漫才はまるで大助花子を見ているようで楽しめました。広瀬アリスの意外な才能を発見しましたね。まさか夫婦になるとは思わなかったけれど…。
キース&アサリは当時一世を風靡したエンタツアチャコの漫才をモデルにしていると思われますが、現代に通じる部分が少なかったことが残念です。大野拓郎は大阪に住み込んで吉本芸人とも懇意になるまで笑いに専念したようでしたが。
ようやく最後の最後で新喜劇が登場しました。素人出演者が棒読みで演技するところから始まって、だんだん過去と現実がないまぜになり、自然とドラマになっていく演出は非常に良かったです。プロ中のプロ、内場勝則が一座をひっぱり真骨頂を見せましたね。亀さんはそこそこ御歳のはずだったので、いつ退場するか危惧していたのですが…最後までお元気で何より。
老けメイクをしない風潮とはいえ、日本髪に戻したてんちゃんは完全に20代でした。とはいえ、露店に立つオーバー50のてんをならず者が「姉ちゃん」と呼んだのはどうかと思う…。もともと童顔ですから、長い年代を演じなければならないこのドラマにはミスキャストだったのかもしれませんね。今さらですが。
近頃、大阪制作の朝ドラの出来がいまいちで悲しい限り。安藤サクラ&長谷川博己の『まんぷく』には大いに期待します。この夫婦で失敗しないはずがあるまい…。







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