『刑事ゆがみ』
規律ガン無視の破天荒&真面目エリートの優等生、というコンビは目新しいものではありませんが、浅野忠信と神木隆之介という連ドラでは少しめずらしい配役と、テンポの良い脚本、毎回なにげに豪華なゲスト陣で、非常に見ごたえある刑事ドラマになっています。 普段は暴走ぎみの変人ですが、時折天才的な勘を働かせ事件を解決に導く弓神。浅野忠信がその二面性を演じ分け、時折ふっと色気も見せてくれます。山本美月演じるハッカーとはどういう関係なのか明らかではありませんが、ハッカーは惚れている様子? それもうなずける大人の包容力を随所にきちんと見せてくれています。 刑事を演じるまで成長したのかとしみじみ感じる神木隆之介も、演技派に囲まれてもまったく見劣りしない実力派。弓神に振り回される羽生の成長もこれからの見どころとなりそうです。 2話を終えて杉咲花、大後寿々花、水野美紀と事件の鍵を握る面々も全員演技巧者(で、斎藤工はあれだけ? 変態下着泥棒なだけ?)。笑いあり、涙ありと、毎週楽しく視聴できそうです。 『明日の約束』 登校拒否していたバスケ部員の自殺の原因は、いじめなのか、それとも「毒親」が関わっているのか。井上真央演じるスクールカウンセラーが直面する、高校生たちの抱えるさまざまな問題。そして彼女自身もまた、「毒親」という闇を抱えています。彼女がそれを乗り越えられる日は来るのか…。 丸子実業バレー部員の自殺を発端とした、遺族と学校の裁判事件をモチーフにしたものと思われますが、仲間由紀恵演じる「モンスター母」の一本調子の台詞回しが、背筋を虫が這うような恐怖を誘います。 家と学校。そのふたつしか居場所がないと思っていた十代の頃。「気のせい」「甘え」「社会に出ればもっとしんどいことがある」、そんな言葉はからっぽの心を通り過ぎていきました。逃げ場所は知っている場所にしか思いつけない。ならば結局のところ、「そこ」しかない。誰もが行きつくであろう場所。そこにたどりつけたら、きっと安楽が待っている。「逃げ」「弱さ」「罪」、だから何? 誰もの行く末でありながら、誰も知らない場所へ旅立った彼らを、いったい誰が責められようか。それは彼らにとっての「救い」だったのだ。残された者たちがどれだけ傷つき悲しもうが、彼らを救えなかった、それは生を甘受する者たちに与えられるべき苦しみなのだ。 結局のところ、自分は死ぬ勇気を持たずに今を生きている。 ならば答えを出すべきなのだと思う。生きるとは、生きていくとは、何なのかということを。十代の自分に、答えを出すべきなのだと思う。 初回でも描かれていたさまざまな毒親、苦しめられる子どもたちの描写に、これからも胸を痛める展開となるのでしょう。果たしてそこにはどんな答えが待っているのか。吉岡の答え、彼の死に苦しむ者たちの答え、教師たちの答え、母親の答え。それを見届けるべく、見続けていきたいと思います。 『監獄のお姫さま』 上記作品と同じ曜日でありながら、テイストのまったく異なるクドカンドラマ。 『あまちゃん』は15分だったから楽しめたけれど、クドカンテイストは1時間はきついかな…。 とはいえ芸達者な女優がそろっているので、それだけでも見ごたえがあります。 『あまちゃん』とはまったく性格の異なる服役囚を演じるキョンキョンはじめ、菅野美穂・坂井真紀・森下愛子・満島ひかり・夏帆と、個性的な女優陣が仇と狙う相手は伊勢谷友介。これだけのキャストをそろえるとは、さすがクドカンです。ただ、今のところ、いったい何が目的でいったいどんな落としどころが待っているのか、まったく読めないのですが…。 気楽に楽しみたいと思います。 『全力失踪』(最終回) 苦悩の末、磯山を探し出すことにした妻子。ようやく長崎にて再会を果たしますが、結局逃げられてしまいます。そして最終回はいきなり7年後。紆余曲折経て、家族はふたたび結集。磯山の出した結論、鼻水でどろどろの顔にこちらまで涙を誘われました。そうして家族三人、人生やり直し…かと思いきや。 そうきたかー! と、唸らされるほど視聴後感の良いプレミアムドラマでした。 毎回のゲストを含め、キャスティングが絶妙で、満足感がありました。イヤ~な役ばかりで印象の良くなかった手塚とおるも、回を経るごとに磯山への対応が変化していく様子が自然で、評価が変わっていきました。 しかし、ドラマの質を高めていたのはなんといっても主役を演じた原田泰造。愚かさゆえの選択の誤りから始まった悲劇的転落人生のはずが、失踪ライフを満喫する楽観的性格のおかげで展開にあかるさが満ち、生来の人の良さがにじみ出た行動に違和感もなく、しっかりと体温を持った磯山を演じていました。もはや大河ドラマの常連となっていますが、NHKが気に入る理由は明白です。ネプチューンが主演した『小田信夫』でも、ひとりだけちゃんと「俳優」だったもんな(あ、小田信夫の続編はないのかな? 幕末編とかいかがでしょう)。 成長後の七海を演じたのは小野寺ちゃん。鈴木梨央に近づけていたのでしょうか。不自然さがなくて驚きました。最後はしっかり店長として、バイト2名の採用を即決した様子。あのぶんじゃ、母親が失踪してもパン屋の心配はしなくてよさそうですね。 PR
『わろてんか』
京都の薬問屋の嬢はん、最初から大人の俳優の相手役、インテリあて馬…どこかで見たような。 どうやら、モデルである吉本せいの出自とはずいぶん異なっているようですが、その意図はどこにあるのでしょうか。吉本興業の歴史を紐解いていけばその疑問は解消しそうですが、とりあえず、ドラマはドラマとして楽しんでいこうと思います。 前作が良質だっただけに、比較されてしまうのが悲しいところ。二週目を終えていかにもNHKらしい作りが少し足をひっぱっているようにも思いますが、それなりに満足しています。 ヒロインが「ゲラ」のわりに顔立ちが上品ですが、さすが笑顔はかわいいです。これから男相手にきったはったですから、貫禄を出してほしいもの。脇を固める濱田岳&徳永えりコンビが展開を引き締めているので、最後まで出演してほしいですね。二度目のヒロイン相手役で目新しさがない松坂桃李は、新井美羽との年齢差がありすぎて、子役からでも良かったように思います。キース役がまえだまえだ弟だったのに漫才コンビを組む前に成長したのはもったいなさすぎる。 新喜劇のような演出はやや過剰ですが、波乱万丈と思われるてんの人生に感情移入して一喜一憂できるドラマになることを願います。
『ひよっこ』
お父さんが見つかってからの展開は少しまったりしすぎていて、退屈だなと感じることもありましたが、総合的に見てかなりの良作でした。 何かの功績を残したわけでもない、何の才能もない、その時代にはあふれていたただの「金の卵」のひとりであるみね子。しかしそのありふれた人生にも紆余曲折はあって、つらいことも悲しいことも、笑えることも楽しいことも、たくさんのなにごとかを毎日に残してきていて。 それはみね子だけでない、当時を生きる誰もの日常であり、そして今を生きる私たちにもきっと通じる感情の起伏でもある。 だから、知らない時代なのに懐かしい。 終盤、茨城の実家で行われた酒宴の席。男衆は奥の部屋、女衆は台所の近くと別れるテーブル。ああ、田舎でもそうだった。幼い男の子も、その時ばかりは大人ぶってちゃっかり男衆の中に混じるのだ。席の間を行き来する瓶ビール、女たちが朝から作った持ち寄りの煮物。男は男の、女は女の話題に興じて時を過ごす。確かに幼い頃、私が見た光景だ。だから何でもないシーンなのに、自然と涙が出てしまう。 みね子の周りにはやさしさがあふれている。都会の冷たさも職場の厳しさも、極端には描かれない。ともすればあざとさを感じてしまうはずのぬくもりも、みね子の笑顔の合間に自然と溶け込んでいく。 穏やかな気持ちで過ごせる半年間でした。 だからこそ、世津子さんの存在が中途半端に終わったのが残念でした。記憶喪失の父が女と暮らしていた、というのはこの作品の雰囲気からして衝撃的でかなり生々しい展開だったのですが、朝ドラの路線からはずれるわけにはいかないために世津子さんに潔く身をひかせることであっさり決着。その後もスキャンダル事件を経てみね子と和解を迎えたわけですが、一方的に別離をつきつけられた実さんの気持ちはどうだったのかな…と。もちろんお母ちゃんとの二度目の恋愛は微笑ましかったですが、せめて最後にでも実さんがきちんと世津子さんと対峙してケリをつける場面があってほしかったな…と感じました。 それにしても、やっぱりお相手はヒデ! ヒデだと思ったよ! 綿引さんの存在もちょっと気になったけど。 とりあえずスピンオフは角谷家のきよ・高子・米子の巴戦でお願いします。 『全力失踪』 初回は冷たい妻と娘、ブラック企業に借金と、追い詰められる主人公があまりにも悲愴で、見続けていくのは辛いな…と感じたのですが、ロードムービーとなった2話以降は、ややコメディチックな流れになってきたので、気楽に楽しめるようになりました。主演に原田泰造を配したからには、こうでないと。 どこに流れついても親子の人情話ばかりなのはいかにもNHKらしい展開ですが、本人にも娘がいる設定のため、いずれ訪れる再会のための布石ということでしょうか。 失踪中なのにどこか楽観的な原田泰造はもちろん、軽薄上司の勝村政信といい、借金取りの手塚とおるといい、メリハリがあってドラマを盛り上げてくれます。実力派ぞろいなゲストたちも毎週見ごたえがあります。 ラストは家族との和解なのか、それとも完全失踪してしまうのか…全8回と民放よりは少ない尺ですが、納得のいく最終回であることを願います。 『アシガール!』 「高校生のタイムスリップもの」はよくある設定のため、それで読者を楽しませるには何か斬新なスパイスが必要になります。今回は「女子高生が愛しの若君のため足軽に」。 この女子高生、美人でもなく賢くもない、走ることしか能のないおバカ。その足ひとつでなんとか取り立てられ、若君のため文字どおり東奔西走。見た目が金太郎のため、甘い展開にはなりそうもありませんが、歴史上はどうやら悲しい結末が待っている様子…どうなる、羽木家!? 美少女であるはずの黒島結菜が、色気より食い気の主人公を違和感なく演じています。走り方が少し拙いのはやむなし。土屋太鳳がもう少し若ければ、きっとキャスティングされたでしょうね。 戦国時代の再現度はさすがNHK。建物や風景から小道具に至るまで、映像が充実しています。 おそらく架空のお家なのでしょうが、羽木家の運命やいかに。原作よりは少しいかついですが涼しげな若君もさりながら、野望を秘める兄(栄輔さん!)も良いですね。原作も完結していないので、どういうラストに持っていくのか楽しみです。
『ブランケット・キャッツ』
ウロウロしている猫を見ているだけで幸せになれるうえに、心にもぬくもりを与えてくれるドラマでした。 最初はトライアルから帰ってくる猫ばかりで、このままみんなお店に残るのかなと心配でしたが、ちゃんと家族として迎えてくれる人たちも現れて、ほっとしつつも少し淋しそうな西島秀俊の表情が秀逸でした。 主要人物のキャラクターやベタなエピソードはいかにもドラマと感じつつ、毎回感情移入してボロボロ泣いてしまいました。涙と同時に日々の鬱屈も洗い流され、エンディングの時にはすがすがしくなっているような、そういうドラマも時には必要なのだとあらためて感じます。 猫ちゃんたちの名演技には感服。 『愛してたって、秘密はある』 途中から「これ最終回だけ見ればいいんじゃね?」と思いつつ、毎回録画をながら見。 こういうオチは、最終回まで絶対にバラしちゃダメだと思うのですが、ナンデ事前に二重人格シーンをチラ見させたのでしょうかね。そして二重人格ならば『あなただけ見えない』三上博史レベルの演技力でないと! 福士蒼汰の両目見開きワナワナシーンの連続には、こんな挙動不審な彼氏とは絶対一緒にいられんわとしみじみ思いました。うーん、爽ちゃん奇特。 賀来賢人は最初からこのキャストでよかったのにと思うほどカッコよかったですが、そういやこの前は池杉だったんだよな…。ヤクザまがいの追い込みをかけるエンケンはさすがの迫力。最近『潜熱』という漫画を読んだのですが、もし実写化されたら、女子大生に惚れられる中年ヤクザ役は是非エンケンで。 『カンナさーん!』 芸人としても達者な役者ぶりを見せているものの、渡辺直美がこれほど魅力的に母親役を演じるとは思ってもみませんでした。もちろん演技力はつたないものの、好感の持てるカンナさんでした。 ストーリー自体は共感できる個所は少なく、展開もありきたりでしたが、最後のプロポーズ場面はなぜだかホロリ。これが普通の俳優と女優ならさむーーいはずなのですが、渡辺直美と要潤だからこそハッピーエンドになるのかなと。 いつも朗らかなレオンくんもかわいかったです。 斉藤由貴のスキャンダルはとくに興味ありませんでしたが、最終回に少しやつれていたように見えたのは気のせいでしょうか。イイ人エンドには少し物足りなさがありましたが。 お兄ちゃん(『砂の塔』)は何だったのかな? お兄ちゃんがカフェでバイトしていた設定? 『ハロー張りネズミ』 いきなりホラー展開になった際はどうなることかと思いましたが、その後は義理と人情エピソードにシフトしたのでいささか安心しました。視聴率は落ちたみたいですが…。 最終回も幻の埋蔵金発掘というファンタジー要素で終わり、最後までつかみどころのないドラマでしたが、個人的には好きでした。 深田恭子をのぞけば芸達者な役者ばかりで、見ごたえもありました。 もう少しあかつか探偵事務所の面々を見ていたかったので、続編を期待していますが、低視聴率では難しいかな…。
『カンナさーん!』
この時間帯は『僕たちがやりました』を観ようと思い、初回を録画していなかったのですが、『僕たち~』がイマイチはまらなかったのでこちらに鞍替えしました。 渡辺直美の演技は拙いのですが、カンナさんのまっすぐな一生懸命さに好感が持てました。要潤のゲスっぷりには反吐が出そうになりますが、最近無邪気な毒親を演じさせたら右に出る者はいない斉藤由貴とのクズコンビの加える苦味が、なんでも良い方向に向かっていく漫画チックな展開のアクセントになっています。 シングルマザーだの不倫だの嫁姑だの、細かいことを考えていくとしんどくなる設定ですが、渡辺直美の配役のおかげで微笑ましく気楽に視聴できるドラマになりそうです。 『ハロー張りネズミ』 ハードボイルド調かと思いきや、最新話では幽霊ネタ…いったいどういうテイストのドラマなのかよくわかりません。 原作は知りませんがずいぶん前に描かれた漫画のようで、設定は若干昭和テイストですが、それを逆手に取るようなキャラクターと脚本が秀逸です。ただ、メンバーとなった深キョンの一本調子な演技が浮きまくり。芸達者な瑛太&森田剛&山口智子だけでじゅうぶん成り立っていましたから、配役のもったいなさを感じます。 一瞬ロバートの秋山に見えた瑛太ですが、最近弟の活躍がめざましいとはいえ、やはりそこは兄の貫禄。演技の振り幅はさすがです。森田剛も近頃は脇役で存在感を発揮するようになってきました。バブルはじけてない山口智子もチューハイ缶とテロテロブルゾンが似合っていて、下赤塚の世界観が伝わってきます。 |
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