『ひよっこ』
お父さんが見つかってからの展開は少しまったりしすぎていて、退屈だなと感じることもありましたが、総合的に見てかなりの良作でした。 何かの功績を残したわけでもない、何の才能もない、その時代にはあふれていたただの「金の卵」のひとりであるみね子。しかしそのありふれた人生にも紆余曲折はあって、つらいことも悲しいことも、笑えることも楽しいことも、たくさんのなにごとかを毎日に残してきていて。 それはみね子だけでない、当時を生きる誰もの日常であり、そして今を生きる私たちにもきっと通じる感情の起伏でもある。 だから、知らない時代なのに懐かしい。 終盤、茨城の実家で行われた酒宴の席。男衆は奥の部屋、女衆は台所の近くと別れるテーブル。ああ、田舎でもそうだった。幼い男の子も、その時ばかりは大人ぶってちゃっかり男衆の中に混じるのだ。席の間を行き来する瓶ビール、女たちが朝から作った持ち寄りの煮物。男は男の、女は女の話題に興じて時を過ごす。確かに幼い頃、私が見た光景だ。だから何でもないシーンなのに、自然と涙が出てしまう。 みね子の周りにはやさしさがあふれている。都会の冷たさも職場の厳しさも、極端には描かれない。ともすればあざとさを感じてしまうはずのぬくもりも、みね子の笑顔の合間に自然と溶け込んでいく。 穏やかな気持ちで過ごせる半年間でした。 だからこそ、世津子さんの存在が中途半端に終わったのが残念でした。記憶喪失の父が女と暮らしていた、というのはこの作品の雰囲気からして衝撃的でかなり生々しい展開だったのですが、朝ドラの路線からはずれるわけにはいかないために世津子さんに潔く身をひかせることであっさり決着。その後もスキャンダル事件を経てみね子と和解を迎えたわけですが、一方的に別離をつきつけられた実さんの気持ちはどうだったのかな…と。もちろんお母ちゃんとの二度目の恋愛は微笑ましかったですが、せめて最後にでも実さんがきちんと世津子さんと対峙してケリをつける場面があってほしかったな…と感じました。 それにしても、やっぱりお相手はヒデ! ヒデだと思ったよ! 綿引さんの存在もちょっと気になったけど。 とりあえずスピンオフは角谷家のきよ・高子・米子の巴戦でお願いします。 『全力失踪』 初回は冷たい妻と娘、ブラック企業に借金と、追い詰められる主人公があまりにも悲愴で、見続けていくのは辛いな…と感じたのですが、ロードムービーとなった2話以降は、ややコメディチックな流れになってきたので、気楽に楽しめるようになりました。主演に原田泰造を配したからには、こうでないと。 どこに流れついても親子の人情話ばかりなのはいかにもNHKらしい展開ですが、本人にも娘がいる設定のため、いずれ訪れる再会のための布石ということでしょうか。 失踪中なのにどこか楽観的な原田泰造はもちろん、軽薄上司の勝村政信といい、借金取りの手塚とおるといい、メリハリがあってドラマを盛り上げてくれます。実力派ぞろいなゲストたちも毎週見ごたえがあります。 ラストは家族との和解なのか、それとも完全失踪してしまうのか…全8回と民放よりは少ない尺ですが、納得のいく最終回であることを願います。 『アシガール!』 「高校生のタイムスリップもの」はよくある設定のため、それで読者を楽しませるには何か斬新なスパイスが必要になります。今回は「女子高生が愛しの若君のため足軽に」。 この女子高生、美人でもなく賢くもない、走ることしか能のないおバカ。その足ひとつでなんとか取り立てられ、若君のため文字どおり東奔西走。見た目が金太郎のため、甘い展開にはなりそうもありませんが、歴史上はどうやら悲しい結末が待っている様子…どうなる、羽木家!? 美少女であるはずの黒島結菜が、色気より食い気の主人公を違和感なく演じています。走り方が少し拙いのはやむなし。土屋太鳳がもう少し若ければ、きっとキャスティングされたでしょうね。 戦国時代の再現度はさすがNHK。建物や風景から小道具に至るまで、映像が充実しています。 おそらく架空のお家なのでしょうが、羽木家の運命やいかに。原作よりは少しいかついですが涼しげな若君もさりながら、野望を秘める兄(栄輔さん!)も良いですね。原作も完結していないので、どういうラストに持っていくのか楽しみです。 PR |
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