9/10・11 vsM ●●
日ハムに負け越した時点で、もうCSはなくなったとあきらめていたのですが、さすがにホーム2連戦で連敗はなかろうよ…。 しかも火曜日はTの引退会見。花束を渡した杉本が特大のホームランを放ち、めずらしく鬼の形相でバットを投げ捨て万感の思いの伝わる昇天ポーズを披露したまでは良かったのですが…。 4回、好調のソトに同点弾をくらってから空気は一変。乱れだすと止まらないエスピノーザが失点を重ね、この回途中で交代。代わった鈴木が次の回、またもやソトに一発を打たれ、その瞬間にチャンネルを替えました(もともと我が家にはオリックス・西武いずれか点差の少ない試合を観るという掟がある)。 結局鈴木は2.1回を1失点でしのいでくれました。感謝の念しかありません。早くも来年のパフォーマンスが心配になります。その後を受けた椋木・宇田川は無失点。復調しているようでひと安心。 水曜はなんと若月お休みで石川がスタメン捕手。しかし捕手が問題にはならないほど田嶋が乱調。エスピノーザも田嶋もずっとローテを回っていますから、疲労が溜まっているのですかね…。この日もソトに3ランをくらった瞬間西武戦にチャンネルを替えたのですが、スコアの得点を見るだけでゲンナリする試合でした。おかしいな…ソトにもポランコにもあまり打たれていなかったはずなのですがね…。ソトはいきなりDeNAのソトに戻っちゃったのですかね…。前の失点は味方のエラーがらみのようですが火に油を注ぐ結果となってしまいました。連投の椋木・宇田川は今日も頑張りました。来年の飛躍に期待します。 そしてこの日は、安達の引退も発表されました。Tの引退会見で「お先に」という発言があったので、安達はまだ先かなと想像していたのですが…。もう心が追いつきません。 9/13~16 vsH ●●●● マジックを着々と減らしているソフトバンクですが、とりあえずこのカードでの胴上げはなさそうです。それでもこの先の日程はソフトバンク戦が点在しているので戦々恐々…。いや、我々も過去に他チームの目の前で成し遂げてきたわけですが。 先発は3連勝中の山下。しかし先頭にストレートの四球を出すと、前回の対戦で被弾した栗原に先制打を許してしまいます。その裏、攻撃陣は天敵有原から無死一・三塁と大チャンスを作るものの、例によって無得点。しかし2回、「いろんなことが同時に起きた」記録上はセデーニョの盗塁失敗と栗原のエラーで同点に。しかし直後、あっさり勝ち越しを許す山下。5回にも1点を追加されてしまいますが、6回にはセデーニョのソロホームランで1点差に迫ります。 …と、ここまでは接戦ぽく進んでいたわけです。 問題の8回は、我が家ルールによって西武戦を観ていたので速報でしか確認できていないのですが、「え、吉田交代?」「はあ? 宇田川も!?」「若月まで!!??」と、「交代」の二文字を目にするたびどんどん血の気が下がっていきました。途中には廣岡も頭を打って交代しています。なんでここまで来て怪我人が続出するのよ…もう終盤だよ…。 古田島も石川も緊急事態で頑張りました。川瀬もあの場面で犠飛の1失点にとどめました。二死から川瀬兄との対決もありました。小久保監督も粋なことしますね。ボーゼンとしていたであろう観客も活気を取り戻しました。できればオリが大量リードの場面で見たかったです(涙) 翌日の公示は、宇田川が右肘違和感、若月・廣岡が脳震盪特例で抹消。代わって登録されたのは山岡・福永。こんな状況でモイネロは泣きっ面に蜂です。それでも序盤は投手戦の様相でした。これなら終盤まで踏ん張ればチャンスが来るはず…と期待したのも束の間、中盤にカスティーヨが突如ご乱心。あっという間に6-0という絶望的な点差に。栗原の走者一掃で5点差になったところで西武戦にチャンネルは替わったわけですが。その後、またもや回またぎの鈴木も4失点で今週二度目の二桁失点。ホームゲームやで…。 見どころは山岡の復帰登板無失点と、二夜連続の川瀬兄弟対決で今回も弟が勝ったことくらいですかね…。いや、見てはいなかったのですがね。 試合後のコメントで中嶋監督は福永を庇っていましたが、福永にとっては大チャンスですから、来季への希望を持たせてほしいところです。 4連敗か…さすがにもうそろそろ止まるだろう…止めてほしい…いや、止めてくれ…、と祈るしかない3戦目。先発は宮城。エースで勝たねばどこで勝つ。 出かけていたのであとで映像を見たのですが、宮城はさすがの内容でした。コースはビタビタ、相手はきりきり舞い。ピンチは3回、7回のみ。いずれも満塁でしたが、怖い打者をしっかりアウトに仕留め、規定までのノルマとなる8回を投げ切りました。 …が、援護がない。 とにかく、打てない。 4安打で勝てるわけがない。 9回でなく、12回で4安打って何!? 9回裏に先頭が四球を選びながらクリーンアップが三人続けて凡退。10回裏も先頭四球で無得点。11回裏なぞ相手エラーも絡んで無死一・二塁、次は4番。もういいかげんサヨナラ勝ちと思いましたよ…。なんでランナーも進まず3つ赤ランプがついているのだ。 そしてこちらは味方のエラーが失点につながるという。 投手が踏ん張っても勝てない試合が続くうち、ついに投手も踏ん張れなくなってズルズル連敗が続くというこの感じ。あったわー。過去に何度もあったわー。完全にあの頃のオリックスだわー。 本日の見どころ(見ていないが)は内藤のプロ初ヒットしかも長打だけでした。 いよいよ最後の6試合目。もういいかげん勝つやろ…勝ってくれ…。 という切なる願いを捧げた曽谷は、今日も好投でした。ランナーを出しても堂々と強力打線に立ち向かう姿は2年目とは思えない頼もしさで、得点を許しません。 …が、今日も援護がない。 まったく得点できる気配がない。 そして7回、曽谷がみずからのエラーで溜めたランナーを犠飛で還され、これが決勝点というなんとも切ない結末に。 立て直しをはかるはずのホーム6連戦でなんと6連敗! アハハ! もう乾いた笑いしか出てこない! 13日には安達の引退記者会見が行われました。引退決断の分岐点として、やはり神戸での一戦に触れていました。ファンもあの瞬間のことは忘れられません。安達の守備には何度も助けられてきたはずなのに、最後に1イニング3エラーという見出しで上書きされてしまうのは辛いです。 病気を発症した時は、これで終わってしまうのかと悲しくてなりませんでした。それでも安達はグラウンドに戻ってきてくれました。月間MVPを獲得し、オールスターにも出場しました。残念だったのはGG賞に縁がなかったこと。今宮・源田と並ぶ守備の名手のはずなのに、そのふたりのイメージが強くて記者の票数を集められませんでした。山本が昨年ノーヒットノーランを達成した日はショートを守っていましたが、安達が内野安打を阻止した捕球があってこその記録だったことは忘れてはなりません。 難病とつきあいながらの現役生活は、本当に苦しい道のりだったと思います。それでも安達の活躍と笑顔には何度も救われました。 それなのに、自分のブログを検索すると安達へはTと同じで苦言が多め(笑)。ベテランらしい活躍を期待していたからこそではあるのですが。胴上げでのダチョウ倶楽部やら、なにわ男子の宣伝やら、いじられ役だったところはTとは異なる存在感のベテランでした。ルーキー年は、後年「守備の名手」と呼ばれるとは想像できないほどのアレでしたが、みるみる上達していく過程を見るのは本当にしあわせな時間でした。今度は安達が若手たちを「守備の名手」に育ててくれることを願います。体調のこともありますから遠征の多いコーチ業は難しいかもしれませんが…。 と、感傷にひたる間もなく15日には比嘉の引退が発表されました。会見も引退セレモニーもしないという、比嘉らしいといえば比嘉らしい幕引きとなりました。 火消しといえば比嘉。ピンチで『Stay Gold』が流れると安心感を憶えました。2014年の10.2は比嘉が打たれたならば仕方ないとあきらめがつきましたし、だからこそ2022年の日本シリーズでのMVP級の活躍は本当にうれしかったです。もう一度「ビールかけのHIGA」を見たかった。 しかしお別れなしはあまりにも悲しすぎます。そんなファンの思いを無碍にする中嶋監督ではありません。15日の公示で昇格していた比嘉の出番は16日の8回表、1点ビハインド二死二塁でやってきました。投手椋木、山川を打席に迎えた場面。中嶋監督がベンチを出てみずからマウンドへ向かいます。そして流れる『Stay Gold』。大きく沸いた観客席。比嘉が選手の作った花道を抜けてマウンドへ。同郷の山川には惜しくも四球になってしまいますが、続く中村を外野フライに打ち取り、比嘉の「引退試合」は終了しました。何度もチームの危機を救ってきた比嘉らしい、ヒリヒリする場面での登板でした。その裏で逆転して勝ち星を餞にできれば言うことなかったのですが…。 連日の引退ラッシュに、朝起きると速報をチェックするようになってしまった16日には小田の引退報道。またひとり、貴重なベテランが去ることになってしまいました。 小田といえば、代走も守備固めも全部こなせる仕事人。平野劇場のバックにはいつも小田がいました。抜けそうな当たりを捕球したり、完璧な補殺でランナーをアウトにしたり、いくつもの名場面がよみがえります。そしてなんといっても忘れられないのは、2021年11月12日。CS突破を決めたバスターは、T・安達の連打のあとに生まれました。 T・安達・比嘉・小田…暗黒期を耐え、黄金期を支えた人たちが現役を去っていく。 ひとつの時代が終わっていくのだと、あらためて感じます。 PR
『降り積もれ孤独な死よ』
薄気味悪い死体遺棄事件で幕を開けた物語。薄暗い映像が効果的でした。謎がひとつひとつ明かされていくと同時に幾つもの命が失われ、悲惨な展開ではありましたが、謎解きものでいえば中盤までは面白かったです。灰川の過去編もドラマチックで、虐待に遭った子どもたちの養育を始めるにあたって説得力のあるものでした。出演時間が少ない割に小日向文世の存在感はさすがでした。 俳優陣は総じて良かったと思います。静かに感情を爆発させる成田凌、ミステリアスな空気感を作り出す吉川愛は魅力的でしたし、カカロニも案外いい味を出していたと思います。 終盤、舞台が現代になってからはトーンダウンした感がありました。ことの発端である美来の失踪事件は燈子にあまり共感できないままでしたし、瀬川や健流の母の設定もやや強引に感じました。たぶんドラマオリジナルの展開だったのでしょう。虐待の連鎖の問題など、心に響くメッセージがあちこちに残されていただけに少しもったいない最終回でした。原作を読んでみたいです。 『海のはじまり』(承前) 大人になるということは、選択肢が増えていくということ。 そのために、あらゆる選択肢の中から最善のものを選ぶ力を身に着けるのが、子ども時代。 この物語は、大人も子どもも自分の生き方を選んでいく、選択肢ばかりの日常が描かれています。水季が海を出産したこと。夏が海の父親になる道を選んだこと。弥生が海の母親になることを選ばなかったこと。たくさんのものを見て経験を重ねてきた大人は、子どもの世界がたった数年間で構築されたものでしかなく、選択肢が少ないことを忘れてしまう。選択肢の少ない海は、無数の道を持つ大人の選択を完全に理解できない。かつての夏がそうだったように。それでも子どもは、まわりの大人たちが考えて出した結論であることを知っているから、我慢して、気を遣う。それに大人は目を瞑る。かつての自分を忘れてしまっている夏も、本心を隠したままの海と暮らし始める。 彼らのひとつひとつの選択は、誰もの共感を生むわけではありません。 ドラマという仮想空間には、困難な現実を忘れるために、それとはかけ離れた自分の理想が広がっていることを期待してしまいます。誰も傷つかず、誰もが優しく寛容で、誰もが幸福である世界であることを疑わずに観ると、この作品は受け入れがたいものになるでしょう。 このドラマは理想的な仮想空間ではありません。誰もが迷い、傷つき、誰かが正しいと選択した道のその裏に誰かの犠牲が必ずある。犠牲になった者は、悪人ではないしなりたくもないから面と向かって糾弾できない。けれど傷ついたことは知っておいてほしい。だから言葉にわずかな棘を含ませて、相手に後ろめたさや迷いを起こさせる。 リアルで平凡な人間の心理があぶり出されて、ちょっとしんどい。 それでも夏も、弥生も、海も、誰もが自分のしあわせのために自分の道を選んでほしいと願わずにはいられない。 自分をしあわせにできるのは自分だけ。子どもも大人も、選択肢が多くても少なくても、それだけは変わらないはずなのです。
9/3・4 vsL ○○
負けて神戸に帰ってきたオリックス、次なる相手は前回埼玉で3タテをくらった西武。打線は低調期を抜けたとはいえ、よろしくないイメージが強すぎます。しかも西武には好相性のはずだった田嶋の調子が今ひとつ。初回から球数を要し2回に先制されると、西川の逆転2ランの直後に同点を許してしまうという不安定な内容でした。よく2失点で済んだものです。とはいえ、失点のランナーはほぼ福田のまずい守備によるものですから、センターが渡部だったら無失点だったかもしれませんね…。 一方、10連敗中の高橋光成は絶好調でした。西川のホームラン以外はつけ入る隙なく、ベンチ外となった森の不在も響いたとはいえ、今日こそはの気迫が伝わってきました。 5回で110球を投じた田嶋は6回から交代。まずは吉田、ピンチを背負うも連続三振で切り抜けました。するとその裏、現在打ち出の小槌状態の西川が先頭で二塁打を放つと、二死三塁となってから絶不調の紅林が叩きつけた打球が高く弾んでなんとかレフト前タイムリーに。 勝ち越した次の回は古田島が登板。今日もランナーを出しつつ優勝。8回のペルドモは若月アローで結果三人で終え、マチャドも無失点で凌いで連敗は回避しました。 今季神戸最終戦の先発を飾るのは山下。すっかり昨年の姿に戻っただけでなく、フォークはキレを増しており、チェンジアップで三振を取る場面もありました。やはり序盤の挫折と中継ぎ経験は無駄でなかったようです。来季は右のエースとして一年間、確固たる存在であり続けてほしいものです。 今日も先制したのはオリックス。試合前に西川を触ってご利益を得たという杉本のホームランでした。5回には廣岡の犠飛で追加点。ランナーなしとなってからも連打が生まれ、またもや杉本のタイムリーで3点差に。 6回で100球に達した山下は降板かと思いきや、7回も続投。きっちり3人で終えて、役割を果たしました。 8回は山田が登板。二死から連打を浴びると、右の外崎のところで火消しも担える吉田がしっかり三振を奪いました。9回はペルドモが三者凡退、神戸最終戦を白星で飾りました! それにしても、夏の終わりの神戸の花火はどうしてこんなに抒情的なのでしょう。真夏のそれとは違って、火花が散ればひとつの季節が終わるような、もの淋しさが残ります。そして最後の花火といえば『若者のすべて』。いっそう切なさをかきたてられるのです。 9/6~8 vsF ●●○ CSは8割がたあきらめているものの、続けば続くほど良い連勝。とはいえ苦手のエスコン、ここで勝ち越せばまた希望が見えてくる! …はずでしたが。 負け方はともかく、10安打2点という「あと一本欠乏症」をまた発症してしまいました。猛打賞の廣岡は1番定着できそうで良かったです。太田の同点ホームランももちろんですが、先制チャンスの満塁で打ってほしかった…と言えるくらいの存在にもうなっていますから。宇田川が打たれたタイムリーは不運でしたし、マチャドもこういう時はあるでしょう。 2戦目は観られなかったのですが、スマホを開くたびに相手の得点がどんどん増えていきました。こちらの見どころはマルチ安打の廣岡のセンターゴロと鈴木の火消し・椋木無失点くらいでしょうか…。 3戦目、初回に無死満塁から西川が11球粘ってタイムリーを放った時は「よし! なおもまだ満塁、ここで4点くらい取れば勝てる!!」と期待感にあふれたものの、三振→ゲッツーという絵に描いたような拙攻で1点どまり。 先発宮城は1回裏、二死から満塁にしてしまいますがなんとか無失点でしのぎます。その後は立ち直り、三振の山を重ねていく宮城。エースの好投に応えるべく、野手陣も今日は奮闘。3回には西野の今季1号ホームラン、4回にはセデーニョにも一発が出て3-0。7回も廣岡のタイムリーでダメ押し。7回で100球に到達した宮城は8回も続投。しかし二死からレイエスにタイムリーを打たれ、続くマルティネスにも四球を選ばれると、中嶋監督がみずからマウンドへ向かい、交代となりました。投げ切れなかった悔しさがないはずがありません。それでもエースの矜持を感じる125球でした。 古田島がピンチを乗り切り、4-1で試合はいよいよ9回裏。抑えはもちろんマチャドです。 まあ、はっきり言って、余裕をかましていましたよ。 エースは好投、得点も先制中押しダメ押し、理想的なペースで抑えに繋げました。すんなり終わるとタカをくくっていたのです。 ところが、二塁打→四球→四球で無死満塁。あっさり水谷にタイムリーをくらって1点差…。 ( ゜д゜) 三振でやっと1アウトを取るも、次は絶好調の清宮。打球はもちろんライト前へ…。 ((((;゚Д゚)))) …しかし、なぜか清宮が飛び出していて2アウト。これまた絶好調のレイエスは歩かせるしかありませんが、次も怖いマルティネス。 鋭い打球が飛んでいった瞬間、「日ハム劇的逆転サヨナラ勝ち!」の見出しが脳裏を駆け巡っていきましたが、奇跡的にライトのグラブにおさまりました。 宮城の勝ちが消え、まさかの延長戦…。 先頭は守備固めで入っていた渡辺ですが、全力疾走で内野安打をもぎ取ります。すると向こうの抑え・柳川が乱れ始め、連続四球でこちらも満塁に。この大チャンスで、代わった池田から若月は三振。そして廣岡の打球はセカンドライナー。二塁ランナー紅林があわてて戻り、ゲッツーはまぬがれます。 無死満塁が二死満塁。この危機を救ったのは今日ホームランを放っていた西野でした! 3球目をレフトへ打ち返しようやく勝ち越し! その裏マウンドはペルドモ。二死からヒットを許し、江越にも粘られましたが最後は三振を奪い、やっとやっと勝利の瞬間を迎えました。 _( _´ω`)_ そしてこの日、T-岡田の引退が発表されました。 いつかは来ることと思ってはいましたが、いざその時を迎えると、淋しくてたまりません。 私のオリックス応援人生が始まったのは、2010年。T-岡田がホームラン王のタイトルを獲得した年でした。オリックスを応援する毎日にTがいました。有り余る才能を活かしきれない打席に歯がゆくなったり、それでも美しい弾道を見ると目が離せなくなったりしながら、いつの間にか14年が経っていました。オリックスは長い暗黒時代を経て日本一にもなり、吉田正尚や山本由伸というスター選手も輩出しました。しかし、自分の中でのオリックスの象徴はやっぱりTなのです。 忘れられない思い出はいくつもあります。 2010年9月16日。故障中のTが「打っても走らんでええ」と岡田監督に言われて立った打席は、まさかの勝ち越し満塁ホームラン。泣いてしまいました。岡田監督の感極まった表情でさらに涙が出ました。 2014年10月11日。負ければ敗退のCS2戦目、1点ビハインドの8回裏2アウト。ランナー2人を置いてT-岡田。カウント3-1から迷いなく振り抜いた打球はライトスタンドへ。一斉に立ち上がる観客席、ベンチに向かって笑顔でバットを掲げるT。今でも見返すたびあの時の興奮がよみがえります。 2021年9月30日。1敗でもすれば相手にマジックが点灯するロッテ3連戦。2勝して迎えた3戦目、1点を追う9回表。雨夜を切り裂いたTの逆転3ランは、優勝を大きく引き寄せる一打となりました。オリックスの夢のような三連覇はこのTのホームランから始まったのです。 Tへの歓声は年々大きくなっていました。成績が落ちても拍手が鳴りやむことはありませんでした。2019年9月30日、去就が注目されていたTが最終戦で一軍昇格し、代打で登場した時の歓声の大きさは忘れられません。2023年9月20日、優勝を決めた一戦でも、Tがコールされカーニバルが鳴ると地響きのような応援が始まり、テレビの前でもその圧を肌で感じてゾクゾクしました。 現役最後の打席は、どんなTを見せてくれるのでしょう。願わくば、あの放物線をもう一度。それが無理でも、悔いのないスイングを。そして、この時だけはファンが思う存分タオルを振り回せるくらいの時間でカーニバルが流れることを願います。
『虎に翼』(承前)
終盤になって、寅子のまわりは急にあわただしくなりました。 航一との再婚、星家の家族との軋轢、相変わらずにぎやかな猪爪家。 そんな中、流れる時間とともに描かれていたのは原爆裁判。 思ったより割かれた尺は短かったですが、それでも作り手のメッセージは伝わってきました。 誰も責任を問われない重大な犯罪行為、それが戦争。人類史上最も凶悪な兵器である原爆によって苦しみ続ける被爆者が起こした国家への賠償請求。寅子は裁判官として、よねたちは弁護士として、彼らの思いに向き合います。 原告側が訴えを起こしたのは昭和30年。『夕凪の街 桜の国』の皆実が十年前にあったことに向き合おうとした矢先、原爆症で亡くなったのも昭和30年でした。 竹中記者は「そろそろあの戦争を振り返ろうや」と言っていましたが、原爆投下・終戦から十年が経ち、その間、ドラマの中でも寅子たちの生活は戦争の色も残らない、満たされたものに変化していました。つらくて苦しい記憶は忘れたい。そんな誰しもの思いが、被爆者を社会の片隅に置き去ってしまうことになったのかもしれません。 原爆が描かれる時「苦しみ」「悲しみ」があるのはもちろんですが、昭和生まれの自分が学んだのは被爆者たちの「怒り」でした。広島へ修学旅行に行く際『原爆を許すまじ』という歌を習いましたが、非人道的兵器の根絶を願う詩の陰に、どこへも向けることのできない「怒り」もあると感じたのです。時代が流れ、いつしかその「怒り」はなくなっていきました。昭和から平成初期にかけては現在進行形で多くの被爆者たちが生きていた時代だったからなのかもしれません。 汐見が毅然と読み上げた原爆裁判の判決文は、その「怒り」をひさびさに感じたメッセージでした。 誰にとっても苦しい裁判でした。寅子たち裁判官も、よねたち弁護士も、一度は法廷に立とうとした原告の女性も、苦しみ抜いた8年間でした。国側の代理人も、法学者も、被爆者の現状に向き合って情が生まれないわけがありません。しかし法律は絶対ですから、被爆者に賠償請求権を認めることはできませんでした。 しかし法が無力であってはならないのです。主文後回しで読み上げられた判決理由は、原爆投下は国際法違反と断じ、被爆者たちの心情に寄り添い、彼らを救済しない政府を批判したものでした。途中で席を立とうとした記者たちも座り直して聞き入らざるを得ない、圧巻の4分間でした。実際の判決文に沿ったものだそうですが、これほど素晴らしい判決文だったことは恥ずかしながらはじめて知りました。この数年後、被爆者に対する特別措置法が制定されます。裁判には負けたけれど、寅子たちが作り上げた判決文に込められた被爆者たちの「怒り」は、国を動かすことに成功したのです。 判決後、それぞれの感慨にとらわれる法廷内。よねの涙は、決して敗訴したからではないし、勝訴側の反町もうつむいて席を立てずにいました。裁判の勝ち負けはついたけれども、誰もが原爆投下の責任を誰にも問えない敗戦国の人間なのです。もはや戦後ではないと言われて久しい昭和38年。しかし未来は過去の戦争を無かったことにはできずに、これからも続いていくのです。 原爆裁判から60年経った今もなお、その道を我々は歩んでいることを、決して忘れてはいけない。そんなことを改めて思い知らされた回でした。 |
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