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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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『降り積もれ孤独な死よ』
薄気味悪い死体遺棄事件で幕を開けた物語。薄暗い映像が効果的でした。謎がひとつひとつ明かされていくと同時に幾つもの命が失われ、悲惨な展開ではありましたが、謎解きものでいえば中盤までは面白かったです。灰川の過去編もドラマチックで、虐待に遭った子どもたちの養育を始めるにあたって説得力のあるものでした。出演時間が少ない割に小日向文世の存在感はさすがでした。
俳優陣は総じて良かったと思います。静かに感情を爆発させる成田凌、ミステリアスな空気感を作り出す吉川愛は魅力的でしたし、カカロニも案外いい味を出していたと思います。
終盤、舞台が現代になってからはトーンダウンした感がありました。ことの発端である美来の失踪事件は燈子にあまり共感できないままでしたし、瀬川や健流の母の設定もやや強引に感じました。たぶんドラマオリジナルの展開だったのでしょう。虐待の連鎖の問題など、心に響くメッセージがあちこちに残されていただけに少しもったいない最終回でした。原作を読んでみたいです。

『海のはじまり』(承前)
大人になるということは、選択肢が増えていくということ。
そのために、あらゆる選択肢の中から最善のものを選ぶ力を身に着けるのが、子ども時代。
この物語は、大人も子どもも自分の生き方を選んでいく、選択肢ばかりの日常が描かれています。水季が海を出産したこと。夏が海の父親になる道を選んだこと。弥生が海の母親になることを選ばなかったこと。たくさんのものを見て経験を重ねてきた大人は、子どもの世界がたった数年間で構築されたものでしかなく、選択肢が少ないことを忘れてしまう。選択肢の少ない海は、無数の道を持つ大人の選択を完全に理解できない。かつての夏がそうだったように。それでも子どもは、まわりの大人たちが考えて出した結論であることを知っているから、我慢して、気を遣う。それに大人は目を瞑る。かつての自分を忘れてしまっている夏も、本心を隠したままの海と暮らし始める。
彼らのひとつひとつの選択は、誰もの共感を生むわけではありません。
ドラマという仮想空間には、困難な現実を忘れるために、それとはかけ離れた自分の理想が広がっていることを期待してしまいます。誰も傷つかず、誰もが優しく寛容で、誰もが幸福である世界であることを疑わずに観ると、この作品は受け入れがたいものになるでしょう。
このドラマは理想的な仮想空間ではありません。誰もが迷い、傷つき、誰かが正しいと選択した道のその裏に誰かの犠牲が必ずある。犠牲になった者は、悪人ではないしなりたくもないから面と向かって糾弾できない。けれど傷ついたことは知っておいてほしい。だから言葉にわずかな棘を含ませて、相手に後ろめたさや迷いを起こさせる。
リアルで平凡な人間の心理があぶり出されて、ちょっとしんどい。
それでも夏も、弥生も、海も、誰もが自分のしあわせのために自分の道を選んでほしいと願わずにはいられない。
自分をしあわせにできるのは自分だけ。子どもも大人も、選択肢が多くても少なくても、それだけは変わらないはずなのです。





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