生まれつきの遺伝子疾患のため、人とは違う外見をしているオギー。10歳ではじめて通い始めた学校で、彼は人と出会い、人の心と出会い、そして自分の心とも向き合うことになります。
あらすじだけで「泣ける」お話であることは容易に想像がつくのですが、この作品の素晴らしいところは、決してありがちなお涙頂戴や綺麗ごとでに終始しているお話ではないことです。
主人公はオギーですが、物語の視点は姉のヴィア、姉の友人のミランダ、そしてオギーの友人ジャックと展開していきます。ミランダなどは一見オギーとの関係性は薄く思えるのですが、彼女がヴィアに与えた影響がオギーに及んでいることを考えれば、決して人と人との縁は両者のみで成り立つものではないということがわかります。そしてミランダもまた、ヴィアを通じて繋がったオギーによってその生き方は変わっていくのです。
オギーが外の世界ではじめてできた友人のジャックも、生まれた時から一緒にいるヴィアも同じです。彼らも互いに影響を及ぼし合って、人は生きていくのです。
「普通」と違うオギーに対するクラスメイトの反応はさまざまです。案内役に気のりのしない男の子、世話焼きぶる女の子。クラスを仕切っているいじめっ子のお坊ちゃんは、取り巻きとともにオギーに酷い言葉を浴びせます。容赦ない他人からの悪意に傷つき悲しむオギー。しかし家族に支えられ通い続けていくうち、頭が良くて機転がきいてユーモアもあるという彼の魅力に気づき始めたクラスメイトたちは、次第に彼のもとへ集まっていきます。
子どもたちの行動は大人よりも素直です。大人が振りかざす正論は彼らの世界には通用しませんし、そもそもこの作品にそのような言葉は出てきません。だからこそオギーが受け入れられていく流れは自然でしたし、いじめっ子が最後に流した涙からも、オギーと彼の周りの変化にうまく溶け込めなかった彼の複雑な感情が伝わってきました。
子どもでも、大人でも、変わることには勇気がいります。
学校へ通うことにしたオギーも、彼を送り出した家族も、ヴィアとの仲直りのきっかけを作ったミランダも、オギーに謝罪したジャックも、皆、それぞれの勇気で未来へ踏み出しました。
大切なのは、いつでもその最初の一歩なのだと思います。
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