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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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『鬼滅の刃』1巻を無料で読んだ時は、ここまでブームになるとは思いもしませんでした。その人気の理由についてはネット上にもいろんな考察がありますが、私が面白いなと思ったのは正義感の強い少年がそれぞれ個性のある仲間たちとともに、先輩や恩師の力を借りつつ鬼と戦う…という少年漫画のモデルケースはそのままに、大正期という少年漫画ではあまり見られない時代を舞台にしていることと、ヒロインが妹(ありがちな幼なじみでない)という設定です。また、過酷な修行中にひとりつぶやく「自分は長男だから耐えられる。次男だったら耐えられなかった」というセリフは、字面だけなら滑稽なのに、長男として一生懸命働き支えてきた家族を鬼に惨殺された背景を思えば悲しく響きます。そんな炭治郎は応援したくなるし、鬼になってしまった禰豆子が恋人だったなら一緒に戦うという選択肢は生まれなかったかもしれません。幼児化して炭治郎に素直に甘える可愛らしさも、妹でなければ表現しづらいものがあったでしょうし。
と、そんなことを考えながら、アニメ全話を視聴しました(あと、映像がとても綺麗なことにも最近の技術はスゴイと感心しつつ)。物語自体はそれなりに面白いとは思いましたが、やはり少年向けとあってそこまで入り込めるものはありませんでした。
が、それなりに続きは気になるし、あれだけブームになった映画なのだから観ないというのも…ということで、テレビ放送を録画してみました。
「煉獄さん」「よもやよもや」というワードだけは耳にしていましたが、確かに煉獄さんのインパクトが強いエピソードでした。ただ、2時間で彼の生い立ちと上弦の鬼との死闘と、もちろん主人公たちの活躍や心情も描くというのは少し詰め込み過ぎたかなという印象です。
煉獄さんが出会って即炭治郎たちの心をつかみ、おそらく今後の彼らの鬼狩りとしての生き方に影響を与えるのだろうということは感じましたが、こちらとしてはそこまで煉獄さんに思い入れが生まれていなかったので、彼が死を迎えた時も号泣する善逸たちにどこか感情移入しきれないものがありました。そういえば『ONE PIECE』でも、エースがルフィの兄のような存在として突如登場しすぐに亡くなりましたが、ルフィが我を失うくらいショックを受けている展開についていけませんでした。煉獄さんが正統派なヒーローでなく、ちょっと変わった人として登場したことも一因かもしれません。炭治郎たちが変人の煉獄さんに振り回されるエピソードが今までにあれば彼への愛着が生まれたでしょうし、よりそのギャップが活きたような気がします。
後半が煉獄さんメインだったので、炭治郎・善逸・伊之助はあまり印象に残りませんでした。とくに善逸は炭治郎と別行動だったので、ほとんど出番がなかったような…。
善逸が過酷な過去を背負っていることはTVシリーズで描かれていましたが、普段があまりにも怖がりで女好きで騒々しいので、すっかりそのことを忘れていました。鬼に見せられた幸せな夢は禰豆子とアハハウフフのデートをしているという案の定なものでしたが、その向こうの世界が真っ暗闇だったのは、少しゾッとさせられました。炭治郎の世界が美しく澄み渡っていたのとは対照的です。正気のままでは力を発揮できない彼の、心に棲みつくトラウマから解放される日はいつ訪れるのでしょう。
伊之助の夢で、彼があまり関わらずむしろ邪険にしていた節のある禰豆子がちょっと可愛く登場していたのは面白かったです。彼も粗暴で騒がしい印象ですが、心根には他人への優しさを持っているのでしょう。それぞれのキャラが一面的でないことも、これからの展開に興味を惹かれます。
調べてみたら無限列車編は原作全23巻のうち8巻…。先はまだまだ長そうです。







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現実離れした設定に、今をときめく若手俳優をそろえたキャスティング。ストーリーよりは視覚で楽しむ作品かなと思っていたら、案外面白かったです。原作は未読ですが、少年漫画らしいトリッキーなキャラ設定をイケメンたちが振り切って演じていて、作品世界にのめりこむことができました。
演技派でならす菅田将暉は当然として、ライバル役にあたる野村周平も一瞬それとはわからないほど三枚目になりきっていました。案外こういう役柄のほうが向いているのかもしれません。志尊淳の中性的な個性も輝いていて良かったです。
作中でも言われているほど少女漫画のヒーローそのもののような竹内涼真も存在感ありましたし、金髪ロン毛でも違和感のない間宮祥太郎もさすがです。
そんな魅力ある俳優たちがわいわいしているのを観ているだけでも楽しいのですが、展開自体もなかなか見ごたえありました。ライバル同士のしょうもないいざこざに割って入る異質な正義漢と関係性のわかりやすい導入部から、ひとくせもふたくせもある生徒会の面々に興味を惹かれ、さらに会長選挙をめぐって学園じゅうを巻き込んだ帝一たちの活躍にはワクワクしました。
文化祭での太鼓パフォーマンスあたりは観客サービス的なものも感じましたが、展開的には違和感ないものでしたし、迫力あって良かったです。
学園以外のキャスティングも見事なもので、父親役の吉田鋼太郎がいい味出していました。菅田将暉とのシーンは互いにノリノリで笑えました。お嬢様だが男の子よりケンカが強いという変わった個性の持ち主であるヒロインも、永野芽郁がその変人ぶりを醸し出しつつ冷静に主人公を諫めるという難しい立ち位置を悪目立ちせずに演じていて好感が持てました。劇中ではあまり出せなかった可愛らしさは、エンディングのダンスでしっかり味わえましたし。
大団円、と思わせておいて余韻を残すラストシーンも良かったです。14巻もある原作をうまくまとめたなという印象です。
 



・ファウンダー:★★★☆☆

たまたま見つけて、何の前知識もなく勢いで観た映画だったんですが、わりと面白かったですね。同じ実話ベースでも、先日観た「モリーズ・ゲーム」のように、ハリウッド的な悪い脚色もなく淡々とストーリーが進み、主人公もヒーローには描かれていないですから。英雄ではなく梟雄でしたね。

マクドナルドの店を奪って自分が創業者になるし、人の嫁を強引に奪って再婚するし、とにかく野心があり、強引で、執念深いです。しかしそれぐらいの奴じゃないとマクドナルドもここまで大きくなってないでしょうね。ただ、52才でマクドナルドに出会い、いくら勝ち組になるきっかけを見つけたからといってここまでパワフルに動ける人間は、素直に尊敬できますね。最後に本人が出てしゃべってましたが、底知れぬ冷たさを秘めた、まったく感情を読み取れないやばそうな奴でしたし。

最近はテレビでも、コンビニや外食チェ―ンの秘密を探るとかいう、ステマどころかダイマの真髄ともいえる情報バラエティ番組が多く、僕も、ごく一部の良心的なバラエティ番組を除けば、野球と格闘技と映画しか観ていません。この映画はそういうゴミみたいな番組と違って、実際のマクドナルドのマークがほとんど出ませんし、そもそもこの映画を観てもマクドナルドに行きたいとまったく思わないところもいいですね。マクドナルドが実際は不動産のリースの形で儲けているという描写でも、ああなるほどな賢いなとは思いますが、決してマクドナルドにいいイメージは抱きませんし。

ただ、この映画では、マクドナルドの店を奪われた兄弟が、マクドナルドの品質を守るためにクロックと対立する、消費者思いの愚直すぎる善人のように描かれていましたが、実際はそんなことはないでしょう。世の中そんなお人好しはなゴかなかいませんし、ここは違和感がありました。もちろんマクドナルドのシステムを最初に考えたこの兄弟も、すごいと思います。クロックと比べると、0を1にすることができる人と1を10にすることができる人はどちらがすごいかという難しい議論になりますが、クロックは1を1万ぐらいにできるので、やはりクロックの方が異能の才人だと思います。なのでこの兄弟は、結局は主人公のクロックが頑張ってマクドナルドがどんどん大きくなっていくにつれ、おこぼれをもらって大金を得ようという普通の発想しかなかったと思いますけどね。十分な大金を得てのんびり暮らしたいというのが凡人の夢ですから。

・ファーゴ:★★★★☆

いや素晴らしい映画だと思いますよ。さすがコーエン兄弟ですね。才能に満ち溢れていると思いますね。同じコーエン兄弟の「ノーカントリー」に似ていて、それより前に作った映画なので、「ノーカントリー」に比べたら落ちますが、それでもよく出来ていますよ。そりゃアカデミー賞もたくさんノミネートされ、いくつかは受賞しますよ。僕が映画評論家でしたら満点近い評価をせざるをえないですから。

「ノーカントリー」と同じく不条理の塊のような残虐な殺人鬼が出てきて、それと対比するように地に足をつけて地道に幸せに生きている主人公の女性警官が出ます。主人公のくせに中盤になってやっと出ます。主人公とその旦那は、この映画の他の登場人物のように大金には縁がないけれども、愛が溢れる幸せな夫婦です。ラストはこの幸せな夫婦の幸せそうな様子を映して終わりです。しかし、この映画は、素直にストーリーを解釈しようと思えば簡単なのですが、細かい気になるところがたくさんあります。主人公の殺人鬼への薄っぺらい内容の説教は、そのまま素直に受け止めるべきなんでしょうかね。主人公は、旦那に隠れて仕事にかこつけてヤナギタという男に会いに行きますが、実際に不倫するわけでもありませんし、むしろヤナギタのアプローチを断っているように見えるので、主人公の夫への愛がより強調されていると解釈していいんでしょうかね。

ちなみに主人公は妊婦の設定で、旦那は売れない絵描き(ヒモ)の設定です。夫婦で虫の出産のTV番組を観るシーンがあったりします。ヤナギタなんぞは本筋のストーリーにまったく関係なく、出さなくてもいいキャラです。邪推をすればきりがなく、気にしなければ気にならないが、気にしてしまえば気になって仕方がないところがたくさんあるし、サスペンスなのに全体的にもっちゃりした空気が流れており緊張感がないし、コメディなのにあまりにも残虐で不条理なシーンが多く心から笑えないし、結局は不快感しか残らない映画です。僕は映画評論家ではないのでこの映画より「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の方が好きですね。

あと、この映画はとんでもない仕掛けがあります。タイトルにもなっている、「ファーゴ」という町が最初しか出てこず、映画の舞台でもなんでもないことではありません。もっとすごいことがあります。さや氏が観ていない映画だと思うので書きませんが、観終わって色々ネットとかで調べて真実を知った時に、その仕掛けがない状態で観る場合を想像したら、まったく違う形でこの映画を観ていたとわかります。そして最後までその仕掛けに僕が騙され、コーエン兄弟の思うツボになっていたのが本当にイライラします。だから僕は、どこか人を舐めており、共感を拒絶するようなコーエン兄弟の作品があまり好きじゃないんですよ。この映画や「ノーカントリー」は出来がよすぎて一定の評価をせざるをえませんが。

・帝一の國:★★★★☆

ここ数年で観た邦画の中では一番面白いです。映画の技術うんぬんではなく、純粋に面白いです。イケメン俳優達がたくさん出ていて、こいつらが突如学園祭で全員が不自然に裸で太鼓を叩くシーンを入れたりなど商業主義な面もあるので、観ているのがほとんどなのは誰でも想像できます。評判もいいんですが、ほとんどの男はその評判についても穿った見方をし、積極的に観ようとはしないと思います。それがもったいないですね。男の僕が見ても普通に面白いですからね。

極端な変人の設定のキャラクターが多く、こういう若手俳優が多い映画でありがちな演技の拙さもまったく気になりません。こういうキャラクターを演じるのは、オーバーリアクションで一生懸命やれば何とかなりますからね。特に主人公の帝一を演じた菅田将暉は熱演で、とにかくこの映画は主人公が活き活きとしていて魅力的です。この主人公は正義や友情の大切さに気付き、人間的にも成長しているのでしょうが、帝一という人間の核というか、芯になるものがラストまでブレていないところも、痛快というか、心地いいですね。やはりキャラクターに魅力があるというのは映画の大事な部分です。

ジャンルでいえばコメディと言える作品なので、ストーリーや世界観は非常にばかばかしいものなのですが、ばかばかしいながらもメッセージ性もあるところもこの映画の良さですね。一応伏線らしきものもいくつかあり、きちんと回収できていますし、現実の政治を風刺している面もあります。

十数巻ある漫画が原作なので過程を描く余裕がないのか展開が強引なところがいくつかあり、登場人物の心情描写は明らかに不足していますが、アラ探しよりも観ていて純粋に面白いという気持ちが勝ちますね。テンポもいいですし。もちろん先日観た「ファーゴ」のようなアカデミー賞を獲るような作品と比べるのはナンセンスですが、「映画とはエンターティメントである」という精神でいえばこの作品は満点に近い出来と思います。

・ライフ:★★☆☆☆

単刀直入に言うと面白くなかったんですが、どうしてこんなに面白くないんでしょうかね。金もかかっていそうだし、キャスティングも豪華なんですけどね。話もまとまっていますし、オチも捻りがあると思います。脚本家もええラストができたでと喜んでいるでしょう。しかし、全体的にラストも含めパっとしないというか、チェーン店の居酒屋の料理を食ったような感じですね。そこまでまずくはないんですが、「まあこんなもんだろうな」という感想しかないですね。

まず、「カルビン」とかいう名前のエイリアンが、見た目も行動もパっとしないです。高い知能を持っていると誰かが言ってましたので、僕は宇宙飛行士達の心を読み取って、誰かを操って仲間割れを引き起こしたりなど知能戦を予想していましたが、肉弾戦ばかりでしたね。高い攻撃力、耐久性、スピードで宇宙飛行士と闘う、完全なパワーファイターです。性格も凶暴なだけで、知性はまったく感じませんでした。そら犬猫に比べたら賢いですけど。なので戦いのシーンんは同じようなシーンばかりで飽きてしまい、恐怖感や緊張感はあまりなかったです。

宇宙飛行士達もみんな献身的ないい奴ばかりでつまらないですね。宇宙飛行士は性格検査もあるのでいい奴ばかりなのは当たり前なのかもしれませんが、ステレオタイプの善人キャラばかりで感情移入がしにくいので、次々に死んでいってもあまり感情が動きません。むしろ、みんなもうちょっと工夫したらカルビンを撃退できるのにと毎回思う死に方なので、腹が立っていました。カルビンにちょっかいを出してこんな悲劇を巻き起こしたヒューとかいう黒人の生物学者だけは、あまりにもろくなことをしないので目立っていましたけどね。実はカルビンと裏でツーツーの関係なのではとも思っていましたが、そんなこともなくただのバカでしたね。いくら足が不自由で麻痺しているとはいえ、ヒューが自分の足の所に隠れてそれどころか足を食ってたらわかるだろと思うのですが、気づかずに心肺停止するレベルですからね。

ラストも、「カルビンだって生きるために頑張っているんだ!だからこの映画のタイトルは『ライフ』なんだよ!人間が正しいわけではない!生存競争に善悪はないんだ!どうだ余韻があるだろう!」と制作陣は言いたいんでしょうが、それならもうちょっとカルビンに感情移入できるように描いてほしかったですね。

・カイジ ファイナルゲーム:★☆☆☆☆
カイジの映画の3作目ですね。映画として成立していたのは映像に迫力があった1作目だけで、2作目はTVドラマレベルで、今回の3作目はTVドラマとして観ても絶望的に面白くないですね。前2作を観てしまっていたので、評判が悪いのを承知で義務感のような気持ちで観ましたが、本当に酷い作品でした。まず、カイジが政治家や官僚をやっつけて日本を救うという設定が最もダメですね。カイジはそんな人間ではなかったはずです。普通の庶民です。庶民はしょせん庶民なので、自分や自分の周りの人達の生活を守ることでいっぱいいっぱいです。今までのように、地下での労働からの脱出とか、莫大な借金を帳消しにしたいなど、自分を守るためにゲームに挑むならわかるのですが、日本の弱者みんなを救うとか、日本という国家の将来を守るとか、そんな高潔な思想はカイジは持ち合わせていないはずです。
カイジはいつも自分の金、いや金どころか自分の人生を賭けてゲームに挑んでいるからこそ、自分のような底辺の人間が持つ哀愁を感じながら、カイジに感情移入し、緊張感を持って観ることができるんです。別に今回はカイジがゲームに負けても、莫大な借金を背負うわけでもなく地下労働に送られるわけでもないので、具体的な自分の損はないのに、カイジがドリームジャンプで自分の命まで賭ける意味がわかりません。ラストでは共産党の政治家みたいな内容の演説をカイジがベラベラと喋っていますが、感動するどころか心の底からがっかりしました。いつからカイジはこんなキャラになったんでしょうか。こんな社会派映画にすることにより、カイジシリーズの持つ良さをすべて失ってしまいました。まあ、社会派映画として観ても、カイジがゲームに勝ったことによって預金封鎖・新紙幣発行の政策はなくなるんですが、社会は変わらないので、観終わった後の爽快感がまったくないクソ映画ですが。
さらに、カイジが挑むゲームも、4つのゲームすべて面白くなかったです。最初のバベルの塔というゲームは、高い塔にあるカードを最初に取った方が勝ちという超越的に面白くないゲームなうえに、カイジは事前に大槻に塔の場所の情報を得て準備をしているので、他の参加者より有利な状況でゲームをスタートします。カイジシリーズは、絶体絶命の状況に追い込まれたカイジが、知恵を振り絞って超人的な発想で勝つのが面白いのに、このゲームにおいてはカイジはただ人脈を使っただけの卑怯な奴です。僕はこのゲームを観ただけでこの映画はダメだと気づいたので、残り1時間半は苦痛でしかありませんでした。次の、人間秤というゲームでは、そもそもカイジが戦うわけではなく戦うのは東郷で、カイジはプランを練るだけです。おばはんや若者達をうまいこと使っていますが、こんな軍師みたいなカイジにはまったく魅力がありません。さらに、廣瀬の持っている絵画が本当に価値があったらどうする気だったのかがわからないので、軍師としても大したことありません。ドリームジャンプはこの映画で唯一カイジが命の危険があるのですが、これもゲーム自体が10の数字から1つを選ぶだけというゲームなので、ゲームとして何も面白くありません。最後のゲームのゴールドジャンケンは、3回やってカイジが1回勝ったらいいというルールなので、最初にグーを出して、敵である高倉が肩に力が入っているとかで見破られて負けたとしても、残り2回のうち1回勝てばいいので、勝つ確率は9分の5で何も考えずにやっても半分以上勝ちますね。こんな余裕のあるゲーム何が面白いんですかね。というか金の玉を握らずにグーを出した奴がいないから高倉は連戦連勝だったのですかね。いやそこまで人間はバカじゃないでしょう。
東郷と廣瀬のとってつけたような人間ドラマは、展開がベタすぎて怒りどころかしんどくなっていました。この映画は120分の尺におさめようと最初から最後までバタバタしているので、こんなくだらんドラマを入れるならもうちょっと加えるべきシーンがたくさんあるはずです。そもそも廣瀬はいなくてもいいキャラです。遠藤、坂崎、大槻など過去にカイジシリーズに出たキャラも登場しますが、こいつらも大した役割はなく、全員出す必要はなかったです。新田真剣佑をキャスティングしないといけない大人の事情や、ラストだから今までのキャラを相登場させとこうというくだらない思いがあるのかもしれませんが、マイナスにしか働いていないです。第1作に比べて天海祐希が老けたなあぐらいしか感想はありません。ラストの戦いの敵は福士蒼汰が演じる高倉ですが、こんな細マッチョの威圧感のない若者をシリーズ最後の敵にするというのも意味がわかりません。ヒロインの加奈子はラッキーガールという設定なんですかね。この伏線どっかで使いましたかね。何がラッキーガールなのかがよくわかりませんでした。というかこの加奈子を演じていた関水渚という人を見ていると、小6の時にクラスでやった壷井栄の「二十四の瞳」を思い出しました。僕は磯吉とかいう生徒役を演じたのですが、たぶんこいつみたいな演技だったんでしょうね。たくさんの親や先生が見ている前でよくあんなことできたなと今思えば恥ずかしいです。

・バケモノの子:★★★★☆

僕は細田守の映画はだいたい観ていますが、調べてみるとこの映画は脚本を初めて細田守1人でやっているようですね。ちなみにこの人の脚本は全然ダメです。特に後半はむちゃくちゃです。人間界からバケモノの世界に迷い込み、8年ぶりに人間界に戻った主人公の蓮が最初に行くところが図書館ですしね。いやこの図書館でヒロインに出逢うので図書館に行かせたいのはわかるんですが、行く理由づけがまったく描かれていません。ちなみにバケモノの世界にいた蓮は「鯨」の文字が読めないのですが、同じようにバケモノの世界にいた一郎彦はなぜかこの文字が読めます。蓮はこの一朗彦とラストで戦うのですが、人間界にずっといて一郎彦と初対面のはずの楓が、なぜか一郎彦に偉そうに説教をします。一生懸命正論を語っているのですが、もちろんお前に一郎彦の何がわかるんだという話で、何も心に響きません。

ラストも感動はまったくありません。そもそも蓮が8年ぶりに人間界に戻った後は、蓮は2つの世界を自由に行き来できるようになっていていますからね。ラストで蓮は人間界で実の父親と生きることを選びますが、もはやこの時点では楓すら、蓮に高認の書類を渡すというくだらない用事でバケモノの世界に来てるレベルなので、その決断にまったく重みがありません。というわけで、後半の人間界に戻ってからがアラ探しをしなくてもアラが目につくレベルで全然ダメなところが、この映画の世間の評価が悪い理由でしょうね。
さらに、そもそもこの映画は登場人物が状況や心情をすべてセリフで説明してしまうという映画好きに間違いなく批判されることをしているのもマイナスです。「人は1人では生きていけないし、成長もしない。親も子どもを一方的に育てているのではなく、子どもによって育てられている。」というこの映画のテーマも、色々な登場人物がセリフで説明しています。ちなみに僕が小学生であったとしてもこのテーマはセリフなしで読み取ることができるので、いくら何でも観る人をバカにしすぎですね。

じゃあ僕がこの映画の何を評価しているというと、熊徹のキャラがとても魅力的で熊徹と蓮(九太)の絡みがなんやかんやで面白いのと、これは誰も賛同しないでしょうが、図書館で「白鯨」という本をたまたま手に取った蓮が、横にたまたまいたヒロインの楓に「鯨」の文字の読みを聞きます、そして図書館にいた不良達に絡まれた楓を蓮が助けて仲良くなり、楓がクラスメイトに蓮が彼氏だと冷やかされながら蓮に勉強を教える彼氏未満友達以上のようになり、そして楓は楓で心に闇を抱えているという、小学生でもうんざりするような甘酸っぱい青春ラブストーリーがとても良かったからですね。ちなみに僕は細田守作品は「サマーウォーズ」「おおかみこども~」「未来のミライ」と軒並み低評価ですが、最初に観た「時をかける少女」だけはものすごく評価が高いです。だから懲りずにいくつもこの人の映画を観ているのですが。この人はそういう青春ラブストーリー物を描くのがすごく上手いのに、なぜか違う趣向の映画ばかり撮っているのが残念ですね。



京都アニメーション制作とあり、映像は非常に美しいです。空の色や陽ざし、川の流れなど、自然のきらめきが青春のそれを感じさせます。
ただ、光が眩しければ眩しいほどその裏腹に陰も深い。
ヤンチャ少年の石田や女子のリーダー格の植野が中心となった、聴覚障害者の硝子へのイジメ。声真似をしたり高価な補聴器を何度も壊したりと、心の痛む行為の数々は教室内で公然と行われました。しかしそれが問題となった時、責任を負わされたのは石田ひとり。硝子のいなくなった教室で、次の標的となったのは石田でした。
集団の中で孤立したまま高校生になった石田が自殺に失敗し、硝子に会いに行くことを決意した瞬間から、止まっていた時間は再び動き始めます。
ただ、これは石田の贖罪の物語ではありません。
さまざまな経験と時間を積み重ねた少年少女が、自分を見つめ、他者と向き合えるようになる、それぞれの物語です。
もし私が学生の時にこれを観ていたら、誰かひとりに感情移入したかもしれません。イジメっ子からイジメられっ子になった石田。自分の感情に正直で周囲と軋轢を生む植野。イジメに加担した自覚を持たない川井。環境が変わって自信を取り戻した佐原。マイペースを貫く永束。正論で人を追い詰める真柴。傷ついた心を押し隠す結絃。教室という狭い空間、しかしそれが世界のすべてだったあの頃、誰もがこの登場人物の誰かとして生きていたでしょうから。
しかし歳を重ねた今は知っています。教室だけが世界のすべてではないことも、行動や言動だけがその人のすべてを表現しているわけではないことも、少し何かが違えば立ち位置はたやすく変わってしまうということも。いわば、誰もが彼らの誰かなのではなく、誰もが彼らの寄せ集めだということに気づかされたのです。

あの頃、誰かを傷つけたことを思い出し、傷つけられたことを思い出し、答えのない問いをくり返したことを思い出し、誰にも伝わらない思いを心の中で叫び続けたことを思い出し、人の顔にバッテンをつけて下向いて歩いていたことを思い出し、人の言葉に救われたことを思い出し。
気づけばわけもなく涙を流していました。

正しく生きたいともがいていたあの頃。大人になれば、正しく生きられるのだと思っていた。そんな時間は来なかった。今も来ていない。自分の思う正しさを守るためには、誰かにとって正しくない存在としてしか人は生きられないような気がする。担任や母親たちのように。
正しく生きたい。今も探し続ける、その方法を。
きっとこれからも探し続けて、死ぬまでそうしてもがき続けるのだろうと思う。
生きることは苦しみの連続。けれど、美しいと思えば美しく輝き出す空を、川を、人を、世界を美しいと思いながら眺めていたい。
それでまた生きていけると思えるのだから。






・最高の人生の見つけ方:★★★★☆

観終わった後に、素直に、いい映画を観たなと思える作品ですね。ありきたりの設定(特に主人公2人の余りにも真逆のキャラ)と予定調和なストーリーですが、観終わった後は、死を扱う映画にも関わらず、爽やかで清々しい、そして温かい気持ちになれます。

棺桶リストのほとんどは金がなければ現実にはできないことで、結局金がいるじゃないかと、僕みたいなひねくれ者は思うでしょうし、実際に2人の旅行シーンはあんまり面白くなかったのですが、「荘厳な景色を見る」(エベレストは結局この2人は天候が悪いかなんかで登れなかった)や「世界一の美女にキスをする」(「世界一」は主観)など、金だけではできないことを、きちんと終盤こちらに納得させる形で描写しているところが、この映画の素晴らしいところですね。

しかしこういう観てて苦にならないいい映画に限って尺が短いですね。僕はラスト30分の伏線回収の時間は時計をまったく観ていませんし、頼むから終わってくれるなと思いました。詰め込みすぎだと言えないこともないですが、さりげない主人公2人の会話が、ああこういうことかと次々にわかってくるのがこの時間です。のんびりした雰囲気のくせに、言葉の1つ1つに意味があり、演出が巧みな映画です。まあ僕がこの映画で一番好きなシーンは、伏線とはあまり関係ない、エドワードの秘書の「出るべきです。」ですが。

あと、主演2人は演技が上手いですね。当たり前ですが。文句があるとすればダサい邦題ぐらいでしょう。さや氏はこの映画をだいぶ前に観て、すごくいい映画だと言っていましたが、僕は邦題で敬遠し、観るのに時間がかかりましたから。

・キャストアウェイ:★★★☆☆

過酷な無人島生活から脱出し、恋人と奇跡の再会をする予定調和の映画と最初思っていて、その割にはえらい尺が長いなあと思っていましたが、無人島の孤独で過酷な生活と、生還後の主人公の苦悩(世界を羽ばたく仕事人間で、本来は時間効率ばかり気にしている主人公が、時間とは無縁の無人島で暮らしているうちに、時間は残酷に過ぎているみたいなことが言いたいんでしょう)と、両方描いているんですね。贅沢な映画です。ただ、両方面白くなくはないんですが、やや物足りないですね。

まず、主人公の生還を聞いた恋人のシーンで、すでに旦那や子どもが映っているので、ロバートゼメキス監督、トム・ハンクス主演の映画で、突飛なラストはないでしょうから、主人公が「脱出しても社会に溶け込めない。愛する人もいなくなった。それでも強く生きていくんだ。」みたいな余韻を残すラストは予想できます。だから、生還後はちょっとだるかったですね。

無人島での生活も描き方は、ややソフトな気がしますね。主人公は無人島で4年も生きていますから、あまりにも過酷に描くと4年生きることにリアリティがなくなりますから、難しいところですが。しかし全体的な感想としては、さすが巨匠、合格点は確実に超えてくる作品を作るなという感じです。

オープニングでカップルで出た女性がラストに登場するんですが、1人身になっていて、それでも明るくたくましく生きているところなんかは、良かったですね。むしろ主人公の元の恋人よりこっちの女性の方が若くてかわいいですしね。もちろん主人公と結ばれる描写はないんですが、主人公のその後の人生にも必ず希望があるということが伝わります。

・ファウンド:★★★☆☆

いやこれはとんでもない映画ですね。特に劇中映画の「HEADLESS」がとんでもなく悪趣味です。エロもグロも血も大丈夫な僕でも引きました。こんなくわせ物の映画がアマプラで普通に観れるのはダメだろとも思いました。絶対に他人に勧めることはできない映画です。DVDのジャケットに「イット・フォローズ」を超えたと書いてありますが、あんなわかりやすくて親しみやすい映画ではありません。共通点は青春映画という点だけです。

ただ、描写は過激とはいえ、僕が青春映画と言い切るだけあり、主人公の心の動きや葛藤、そして成長(いい意味でも悪い意味でも)は、上手く描けていると思います。父や母の言動から、兄が鬱屈した黒人差別主義者の殺人鬼に育ってしまうのも一定の理解はできます。さらに、ラストでとんでもないことをする兄が、弟である主人公に告げた「いずれ感謝するはず」という言葉も、いい風に解釈すれば、兄が同じ境遇の弟に同情し、普段から何かと気をかけ、最終的には将来自分のようになるのを防ぐためにラストでとんでもないことをしたと解釈できないこともないです。兄弟愛という観点から見ればあの無茶苦茶なラストも不自然ではありません。なので、映画としての出来は悪くないと思います。

僕は南大阪の泉州地方の団地出身で、この映画に出てくる大人のように表面だけ取り繕った綺麗事を言う人間は周りに1人もいなかったので、大人になった今は苦しんでいるのですが、少年時代はこの映画の主人公のように追い詰められてはいませんでしたね。ただ、主人公が兄に言う「殺してくれてありがとう」というセリフは理解もできますし、感動しましたね。もちろん殺すのはダメですが、主人公が綺麗事では何も解決しない状況であるのはわかりますから。主人公が、モンスターは誰なんだと苦悩しているのもよくわかりますし。兄貴は間違いなく頭がおかしいですしモンスターですが、それでも心が純粋すぎる、生き方が不器用なモンスターですね。

制作費が8000ドルらしいですね。日本円にすれば100万円ぐらいですか。ここまで安い映画はちょっと記憶にないですね。なので映像はチープだし演技は全員下手だしあらゆる面で安っぽいです。映像はもはやホームビデオレベルです。それでも脚本とか演出など金のかからないところで頑張って、それなりに観れる作品にした制作陣はすごいと思います。

・ファイティングファミリー:★★★★☆

この映画に僕が★4をつけているのは、僕がプロレスを好きだからでしょうね。同じプロレス映画でも、映画好きな人には僕はミッキー・ロークの「レスラー」の方を勧めます。どう考えてもあちらの方が映画としては圧倒的に上です。いや僕も「レスラー」の方が上ですが、この映画も普通に面白かったです。実際のプロレスの面白さや、プロレスラーがプロレスに対しての純粋な思いは、ちゃんと描いていますからね。プロレスを好きな人が観たら面白いことは間違いなしの映画です。

ストーリーはありきたりなシンデレラストーリーです。ただ、そんなベタな話でも、実話を題材にしているからこそ、WWEのスターになることがどれだけ難しいことかをこちらが理解しているのですが、説得力があり、純粋に楽しめますね。兄妹でテストを受けて、妹しか受からなかったのも、ラストで家族全員が登場するので当然わかります。たぶんプロレスが好きじゃない人は、本物の主人公(ペイジ)がなぜスターになるのかが見ただけではわからないと思います。しかし物心ついた頃からプロレスを観ている僕はわかります。

好きか嫌いかは別にして、注意を引くんですね。こういう人は何を言っても何をしても目立ちます。ルックスもまあまあだしプロレスも多少上手かったんんでしょうが、そういうのではありません。僕は今格闘家の朝倉未来のYOUTUBEをよく観ていますが、朝倉未来が特に好きなわけでもないし、飛び抜けて強いとも思いません。しかし最近のRIZIN(ライジン)でも、ほとんど朝倉未来の試合しか観ていません。そういうことですね。兄がスターになれないのはプロレスが好きじゃなくても一目みてわかりますが。

兄が妹に嫉妬するのは、僕も兄妹で、わりと関係性も近いので、非常によくわかります。この映画でもプロレスの技術の巧拙は兄が上という設定だったように、僕も勉強や運動は妹よりできました。なので、この映画の妹も僕の妹も、兄を凄いと思い、いつも立てる関係なのですが、仲が良くてお互いを理解しているからこそ、兄は妹に、自分にはない能力があることに気づきます。そしてこの映画よりはスケールは小さいですが、実際に社会に出たら、僕より妹の方が稼いでいますからね。もちろん収入がすべてではないでしょうが、こうなるのは兄の僕は予想できていましたが、親は妹にはまったく期待していませんでしたし、わかっていませんでした。映画の両親もヒロインの秘めた能力はわかっていなかったでしょうね。なのでこの映画では、僕は兄に非常に感情移入しましたね。

・孤狼の血:★★★★☆

こういうヤクザ映画(洋画ならマフィア映画)は、スタイリッシュに描くか、男臭く描くかのどちらかになると思いますが、僕はあまり後者の映画は好きではなく、昔TVでたまたまやっていた「仁義なき戦い」もちょっと観てすぐやめましたし、哀川翔がよく出ているイメージのVシネマもまったく観ていません。そんな僕でもこの映画は良かったですから、かなり良い映画だと思います。

キャラクター設定はベタですし、ストーリーもひねりのない展開です。独自の価値観で動くので拷問も放火も窃盗も暴力もセックスも何でもありな一匹狼の刑事大山に、最初はそんな大山の破天荒な仕事ぶりの処分を目的としていた県警の監察官である広島大卒のエリート日岡が、だんだん大山に感化されていき、心酔し、大山の魂を継いでいくみたいな、まあタイトル通りのよくある感じの映画です。特に大山が死んでからは、実は14年前の殺人は里佳子をかばっていたとか、日岡の日報を大山が添削したりとか、大山はすごくいい人だみたいな描写がすごいです。このへんは別に言われなくても最初からそういう展開になるのはみんなわかっているからいいんですけどね。まさに昭和の人情劇を観ているようでした。

いやこういう昭和の人情劇も僕は嫌いなはずなんですけどね。桃子が実は大山に頼まれて美人局をやっていたみたいなラストもいまいちですし、日岡が一ノ瀬に五十子会長の殺害を仕向けて一ノ瀬自身を逮捕するのも理由がよくわかりませんでした。

しかしそれでも面白いんですよ。だから面白いというのは、理屈じゃないんでしょうね。映像が80年代をよく表現できていたとか、暴力シーンに迫力があったとか、松阪桃李の演技が意外に良かったとか、色々あると思うんですが、映画の持つエネルギーそのものがすごいんでしょうね。こんな映画は女子どもにウケませんし、カップルで観る映画でもないですから、大ヒットは間違いなくしません。今はコンプライアンスもうるさいですし、この映画はその点でも問題だらけです。それでもこういう映画を作るということは、やはり制作陣にそれなりの信念があるのでしょう。

・聲の形:★★★★☆


満点評価ではないのですが、これはただの好き嫌いで、完成度という点では数年前に大ヒットした「君の名は」なんかより上でしょうね。いいシーンは言い出せばキリがないのですが、石田と西宮の関係が変化するたびに、この2人が池や川に飛び込むところなんかは、最もいいなあと思ったシーンですね。まあこの映画は雨も涙も含めて水を使った演出が秀逸ですね。あとは西宮がクラスの子と仲良くするのを諦めた時にノートを学校の池に沈めるところなんかは、ノートで他者と分かり合おうとするのがいいか悪いかは置いといて、素直に西宮を可哀そうだなあと思いましたし、病院で医者に何か言われて落ち込んだ次の日の朝に西宮が髪をポニーテールにしたところ(最後は普通に補聴器が見えていましたが)なんかも、あっこのタイミングでそうきたかと感心しました。

この映画は障害やいじめが登場しますが、いじめた奴がひどい目にあっていじめられた奴が幸せになる勧善懲悪物でもなく、障害者との心の触れ合いを描いた感動ポルノでもなかったところも良かったです。たぶん人と人とがお互いに分かり合うのは難しいなあ、いや、自分のことを理解することも難しいんだよ、それを前向きに努力することで人は成長するんだみたいなことを言いたいのでしょうね。いや他人と分かり合うのは、もちろんこの映画と同じく人の性格、価値観、倫理観はバラバラですし、お互いに分かり合おうと思わないとダメなので、現実では、他人とうまく適度な距離を取る人が、人間関係が上手い人となりますし、このテーマも決して好きではないんですが、そういうテーマだからこそ、キャラクター設定が緻密で、心情描写にもこだわりを感じました。

ただ、人物設定が細かいからこそ、あまりにも登場人物が生々しすぎるのはある意味難点ですかね。特に保身に長けていて他者へのあたりも柔らかい川井なんかは最も嫌いなタイプですが、実際の社会ではこのタイプが一番多いので、出るたびに現実に置き換えてしんどくなりましたね。僕は自他共に認める植野タイプなので、植野に感情移入して観ていましたが、植野を見ているとあまりにも自分を見ているようでこれもまたしんどかったですね。ただ、植野がラストで手話を覚えて、ちょっと西宮に擦り寄っていったのが残念ですね。自分の価値観と違うものは絶対に受け容れず、さらにそれを表に出し、他者との争いも厭わない正直さが、植野の良さですからね。ちなみに他人をいじめる攻撃性があったくせに孤独になったらしょぼくれて自尊心が低くなる生き方に一貫性のない石田と、とりあえず謝っときゃいいだろう、笑っときゃいいだろうである意味人を舐めている西宮の、主人公ヒロインコンビはあまり好きになれなかったですね。

あと、西宮が石田をなぜ好きになったかがまったくわかりませんでしたね。植野も明らかに石田が好きですから、石田がモテモテのイケメン設定なんですかね。しかしイケメン設定は真柴のような気がしますね。西宮がクラスメイトの前で初めて手話を披露した時に、石田だけ席で手話のまねごとをしていたからですかね。しかし恋愛映画ではないですし、これはどうでもいいことなんでしょうね。


・モリーズゲーム:★★☆☆☆

ハリウッド映画の僕が嫌いなところがすべて詰められたようなつまらない映画でしたね。ただ、あくまで僕が嫌いというだけで、尺が長い割に展開が早く観るのに苦痛はないですし、素直に物事を見ることができる人はこの映画は好きでしょう。決して作品として出来が悪いわけではないです。

主人公のモデルである人が書いた本を題材にした実話ベースの作品なので、主人公は清廉潔白な生きざまで、人に裏切られても自分は決して裏切らない素晴らしい人格者のように描かれています。僕がこの作者ならこんな映画を作ってくれたら、嬉しくて仕方がないでしょうね。周りに吹聴しまくるでしょう。しかしいくら頭が良くても、命の次に大事な金を賭けるポーカールームの経営者は、清廉潔白な人間では無理です。これはもう言い切れます。僕も若い頃は刹那的にギャンブルをしていましたし、金を人から取り立てるような仕事もしていましたからね。主人公がFBIに顧客の情報をバラさず裁判で自ら有罪をアピールしたのは、顧客の家族を救いたいからではなく、間違いなく顧客の復讐が怖いからでしょう。みんな社会的成功者なので金と人脈で何をされるかわからないし、そこは確かに怖いですからね。

ちなみに心理学者の父親の分析によると、主人公は、厳しいだけで愛情のない父に対するトラウマから、権力のある男を支配したいのでポーカールームの経営者になったと説明していましたが、そんなわけないだろと思いました。主人公は、たまたま手伝っていたポーカールームで仕事の流れを理解し、顧客さえ手に入れれば間違いなく儲かるとは思ったんでしょう。理由は金稼ぎでしかありません。まあ、もちろん自分はオリンピックで挫折したから、父や社会的成功者である弟を、金持ちになって見返したいというのはあったかと思いますが。そもそもラスト付近で、主人公が裁判前で精神的に不安定になっている時に、疎遠であった父親が主人公を訪ねてきて、父娘が和解するシーンがあるのですが、父の、主人公に不倫現場を見られたことがあるから素直に愛していると言えなかったという下世話な告白もしょぼいですね。こんな父が100%悪い理由で、弟と較べ自分を素直に愛せなかったと言われても、僕ならよけい父を嫌いになっています。ちなみに父娘の関係の修復を強調したいからか、終盤になっても母親は一切登場しません。これでは母親が普段は優しくてもピンチの時には見放す冷たい奴みたいですし、不自然ですね。

そして、主人公が依頼する弁護士の娘が、なぜかオフィスにちょいちょい姿を現し、理想の父娘関係をアピールしてきます。そして主人公は父親に対するトラウマから男を信用していない設定ですから、この弁護士が自分を必死に守ってくれている姿にもとまどいを隠しきれていません。さらに、弁護士が主人公の依頼を受けたのも自分の娘が主人公をかばったことがきっかけだそうです。もちろんいくら実話ベースとはいえ、この弁護士絡みの部分がすべて創作なのはさすがにバカな僕でもわかりますが、実話ベースの作品にこういう薄っぺらくわざとらしいエピソードを加えると冷めてしまいますね。

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