なんと12年も前の作品。瑛太も濱田岳も若い! しかし今と変わらぬ演技力が、作品をより味わい深いものにしています。 この頃の瑛太はドラマでよく見ていたわりにたいして印象に残っていなかったのですがね…フツーの青年役ばかりだったから気づかなかったのかな…。 『重力ピエロ』『ゴールデンスランバー』と同じ伊坂幸太郎作品ですが、この作品も糸が縒り合わさっていくように真実があきらかになっていくたび、胸が痛み、祈りにも似た感情があふれてきます。 春でも冷たい風の吹く海沿いの仙台で、新しい生活を始めた椎名。河崎と名乗る新しい隣人とボブ・ディランをきっかけに出逢い、友情が芽生え、そして流されるように誘われた「広辞苑を盗む」ことに手を貸したその時から、椎名の日常は一変します。 まだ引っ越し荷物も解かれぬ間の話。 河崎の悲しい過去。麗子の凛とした強さ。電話機の向こうの家族の声。食べられなかった牛タン弁当。 わずかな日々のうちにも、さまざまなことがありました。 入学したばかりの頃は、困っている留学生に見て見ぬふりをしてバスに乗り込んだ椎名ですが、仙台を去る時はドルジの前で神さまをコインロッカーに閉じ込めます。 新幹線の先で椎名を待つのは、胃ガンを患った父親と継ぐ者のいない靴屋。 荷物が足りないと親に電話をして探させていた椎名は、もうそこにはいません。 仙台のわずかな日々とたくさんのできごとが、椎名の表情を力強いものに変えていました。 ラストにおいて、ドルジのゆくさきは観る者に委ねられることになります。ただ、いずれにせよドルジの犯した罪、そして嘘は、椎名と神さまによって救済されたのだろうと思います。 なんとなく「ドルジ=101の住人ではなく、瑛太本人なのだろう」と予想はしていましたが、画面のあちこちで示されていたその確証に気づくことができませんでした。文字だけの原作なら使える叙述トリックも、映像ならその塩梅が難しくなります。この作品のバランスは見事だったと思います。 PR |
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