ひさびさのキム・ギドク。 しかし、ベネチア映画祭金獅子賞を受賞しただけあって、ギ毒は薄めでした。 『ブレス』『悲夢』から隠遁生活を経て制作された作品。少し路線が戻ってきたかなという感じです。ただし、そこにある愛は男女の愛ではなく、タイトルの「ピエタ」が示すように母子の愛になっています。 借金を取り立てるためには手段を選ばない冷酷非道なガンド。その前に現れる、生き分かれた母と名乗る女性・ミソン。最初は敵意をむき出しにしていたガンドでしたが、どれだけ酷い仕打ちを受けてもミソンは引き下がらない。生まれてはじめて接する母性に、ガンドは徐々に心を許していきます。 しかし、ミソンには秘密がありました。大きな鍵で鎖されたある工場の中に、それは隠されていました。 ふたつの母性の間で揺れるミソンの悲しい決断。誰のために編まれたものか、遺されたセーターを身に着け、一度は拒否された母の隣に寄り添うガンド。そしてガンドが選んだ、最期の場所。 尖ったナイフのようなギ毒に侵されてきましたが、これはこれで、ギドクが作り出した新たな毒なのかもしれません。 無言でたたむず女、赤いルージュ。臓器の散らばる風呂場。機械が雑然と並ぶ町工場。夜明けの車道に伸びていく血痕。 ギドクらしい静かで無機質な背景が次第に母と子ふたりの感情で彩られ、そして最後は暁闇で幕を閉じます。 悲しいほどに美しいラストカットでした。 いろいろスキャンダル的なあれこれがあったようですが…。 確かに常識的に考えたらちょっと一線超えているような気もしますが…。 「ギドクだからしょうがないよね」と思ってしまうのは、私がギ毒信者になってしまっているからでしょうか。 PR |
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