やっと…やっと…。 奈良で公開されました…。 待ちわびたこの日までに、さまざまな映画賞を総ナメし、キネマ旬報ベスト・テンでも第1位を獲得。いろんなメディアで取り上げられました。もちろんクローズアップ現代も視聴済。 この素晴らしい作品が多くの人に知ってもらえて、ファンとしては喜びでいっぱいです。 席についてハンカチ握りしめ、準備は万端。 コトリンゴの澄んだボーカルのオープニングだけで、もう涙があふれそうです。 スクリーンの中で動いておしゃべりするすずさん。 予告編を見た時に、のん(能年玲奈)の声に正直、違和感を抱いていました。 のんのふわふわしたキャラクターはすずのイメージにぴったりで(ドラマ版の北川景子も好演でしたが、原作に忠実なドラマとはいかなかったので)、すず役決定と聞いた時はうれしかったものです。しかし生身での演技とアニメの声をあてることはまるで異なります。俳優が声優を兼ねることはめずらしくなくなりましたが、演技が上手な人でもアテレコが不自然なことは多々あります。逆に意外な才能を見せることもありますが(『ハウルの動く城』の木村拓哉はその典型)。 予告編でののんの台詞回しはややぎこちなく、そして声が特徴的なこともあり、聞いているだけだとどうしてものんの顔をイメージしてしまって、数分間の映像とはいえ作品との一体化を感じることができず、不安になってしまいました。 しかし公開後は、のんに対して絶賛の評しか聞こえてきませんでした。イロイロあってメディア露出が控えめになっていたのんですが、そんな大人の事情をも吹き飛ばすほどの賛辞の嵐でした。 そうなのか…実際に映画館で見たら印象変わるのかな…。 すぐに変わりました。 少女時代から成長後まで通して演じたのんですが、いつの間にか作品世界に溶け込んでいました。そこにいたのはすずさんでした。紙媒体で何度も、何度もボロボロになるまで読み返し、私の心の中で息づいていたすずさんでした。8年を経て、今、私の目の前で動いているのは、のんによって命を吹き込まれたすずさんでした。 こういうことなのか…。観終わった後に嘆息しました。やはりのんは稀有な才能の持ち主です。台本の文字から、きらめく命を生み出したのです。 すずさんは、生きていた。 「普通」の日々を生きていた。 普通に見知らぬ町へ嫁ぎ、普通に新しい家族と心を通わせ、普通に生活の知恵をめぐらし、普通に笑って、普通に怒って、普通に失敗して、普通に立ち直って。大事な人を失い、傷つきもしたけれど、また普通に生きていく。 普段は見向きもしないたんぽぽの綿毛のように、あたりまえにある日常。 それが突然戦争であったり、天災であったり、事件であったり、事故であったり、自分ではどうにもできない何かに巻き込まれて消えていく。失ってから後悔する。泣いて悔やんで、そしてまた明日を迎える。自分ではどうにもできない何かに抗い、自分の力で起き上がる。それもまた誰しもが歩む普通の人生。 エンディングでいつの間にかボロボロと顔を汚していた涙は、そんな「普通」の美しさ、尊さにあらためて気づかされたからであったのかもしれません。 リンさんのエピソードがごっそり抜かれていたのは少し残念でした。 「この世界に居場所なんてそうそう無うなりゃせんよ」とのセリフが、すずの回想で唐突に出てきましたが、この時のすずとリンとの会話やそれまでに至るエピソードはこの話の根幹を担っている(周作との過去を絡めなかったとしても)と感じていたので、初見の観客には少しわかりづらかったのではないでしょうか(実際、一緒に見たツレはわかっていなかった)。 こうの作品が高く評価されて、うれしい限りです。これから他作品にも注目が集まって、メディア化が広まっていくかもしれません。二次元での表現方法が突出しているので難しいかもしれませんが、以前『まれ』の感想でも書いた『さんさん録』のドラマ化はぜひ実現を…! 主演は田中泯で(ちょっと参さんの年齢を超えているが)! ビジュアルは違うが三浦友和でもいいよ! PR |
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