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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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プロ野球シーズンも終わったし…ということで、野球動画の配信を解約してネットフリックスに入会しました。
いやー、観たかったドラマがてんこもり!

『イカゲーム』
評判になっていた韓国ドラマ。いわゆるデスゲームが主題ですが、飽和しているこのジャンルにおいて、まだこんな作品が作れるんだ! と感動するくらいに面白かったです。
主人公がダメダメ人間なところは『カイジ』と同じですが、ギャンブルにおいては天才的な才能を発揮するカイジとは違って、ギフンは割と運にも恵まれつつゲームを突破していきます。旧友のサンウ、脱北者のセビョク、アウトロー一味など周囲を固める登場人物にもそれぞれ個性や見せ場があるので、「どうせ主人公は生き残るんだろ」とわかっているのに飽きません。イカゲームのルールがいまいち理解できなかったところは残念ですが。韓国ではメジャーな子ども遊びなのでしょうか。

『イカゲーム2』
地獄を見てきたギフンの顔つきがシーズン1の初回とはまるで異なっていました。復讐心に燃えるギフンが組織を潰すためゲームに参加する…までは良いのですが、参加までに話数を費やし、またゲームごとに投票が行われるため進行も遅く、前回よりも複雑な背景を持つ参加者(ピンクガードまで)のエピソードも語られるためなかなか話が進みません。「これ7話で終わるん…?」と懐疑的に観ていたら案の定! ここで終わるんかーい! 
ゼッケン1番がフロントマンであることは最初から明かされているので、シーズン1のイルナムほどの意外性がないですし、観ながら「五人六脚で転んだらどうなるんだ…?」といらぬ疑問を抱いていました。シーズン3に持ち越される登場人物は少なくありませんが、トランスジェンダーのヒョンジャや妊婦ジュニ、チャン親子たちの悲しい最後は観たくないですね…。あとジュノ刑事、イケメンです…。

『地面師たち』
これが噂の「もうええでしょう」と「ハリソン山中」か…。
↑前者は流行語大賞、後者は古田島のインスタ(に登場した西川)で知った
登場人物が皆構成的で魅力的。積水ハウスの地面師事件はニュースで知った時はピンと来ず(どうして一流企業がこんな詐欺にひっかかるんだ? という疑問)、ここに来てようやく腑に落ちました。数字に追われているところへ弱みをつかれた不動産会社の部長が、怪しいと思いつつそれでも引き返せずに突っ走っていくさまは、人の業のようなものを感じました。現実にあった事件と思えば背筋が寒くなりますが、エンターテイメントとして非常に面白い作品となっていました。
原作はハリソン山中が新たな地面師グループを作り不動産詐欺を働く続編があるようですが、もしシーズン2があったとしても、これほどの面々をそろえられるのか疑問です。そのくらいクセ者俳優ぞろいでした。

『極悪女王』
幼少期、プロレスに夢中になっていた我が夫。クラッシュギャルズも極悪同盟も語り始めたら止まらない。「ドラマに集中させて!」と何回口にしたことか…。
ちなみに私の実家は親がプロレス嫌いだったのか、兄弟も興味がなかったのか、プロレス中継が流れていたことはありませんでした。
ゆりやんレトリィバァ・剛力彩芽・唐田えりかという、演技力にはハテナのつく三人が主要人物とあって、あまり期待はしていなかったのですが、事前情報で耳に入れていた「徹底的な役作り」は決して誇大広告ではありませんでした。プロレスシーンの迫力はカメラワークだけではありません。本当に飛んだり投げたりぶつかったり、演者の身体に痣らしきものが見えたのはメイクではないのかもしれません。
物語は香がプロレスデビューするずっと前、ビューティペアが活躍している時代から始まるのですが、このふたりが無名の女優ながら本当の女子プロ選手に見え、もっと言えばカリスマ的人気を誇っていたという説得力のある存在感で、1話から惹きこまれました。
ゆりやんは当初、ゆりやんそのままのふわふわした話し方で「松本香」には見えず、あまり期待できないなあ…と感じていたのですが、ヒールに目覚めてからは一変。メイクのせいもあるのですが、ドスのきいたセリフ回しも立ち居振る舞いも「ダンプ松本」にしか見えなくなりました。差別化をはかるためわざとふわふわしていたのでしょう。
ちなみに終盤にかけては松永兄弟の悪事をえんえんと聞かされていたのですが、そこまでは描かれませんでしたね。あくまで松本香の物語ですからこれで良かったのでしょう。引退試合も感動的でした。

『サンクチュアリ-聖域-』
これまた、「ここで終わるんかーい!」な最終回でした…。
北九州の不良少年が時に周囲と衝突しながらも相撲の才能を発揮していく…という、相撲版スラムダンクのような物語を期待していたのですが、少し違っていました。猿桜が相撲道に目覚めてからは面白くなりそうだったのに、そこから最終回までが短すぎて…。
それ以外にも、桜木花道と較べると猿桜の魅力が乏しい・猿将親方が安西先生のような包容力に欠けている・そもそも力士出身の俳優が多いため他のドラマに較べて演技力がない…などなど、アラが目立ちました。終盤は静内にスポットライトが多く当てられていたため、清や猿将部屋の描写が浅くなっていたように思います。あとで調べると、当初は静内が主人公の設定だったとか…。確かに重い過去を背負った静内の方が、猿桜より興味を惹かれる存在でした。
結局静内の全貌は明らかになることなく、卒業アルバムを塗りつぶした七海の過去も謎のまま。幕下で終わった猿桜と大関の龍貴ともほぼ絡みがありませんでした。何だったの!?




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『光る君へ』
主人公は平安朝の女性、動きといえば権力争い、このマイナーな時代を舞台に一年間観せられるドラマを作れるなんて、さすが大石静…。
ところどころに源氏物語のオマージュを入れながら、まひろと道長の長い恋物語は幕を閉じました。
もう少し時代背景の勉強をしておくべきだったと後悔しています。なぜなら記憶力の低下著しく、名前と関係性が憶えられない!
とはいえ、登場人物は実在非実在あわせてそれぞれ個性的で美しかったです。飽きずに視聴できたのも、男女問わず美麗な俳優たちが画面を彩ってくれていたからというのも理由のひとつでしょう。
まひろは文学史に残る作品を残したとはいえ、朝廷の中心にいたわけではありません。そこにいたのは道長であり、このドラマは同心円状に広がる両者の視点から歴史を描いていましたから、女性主人公にありがちな違和感(無理やり歴史の事象に関わらせたりなど)を憶えることもありませんでした。例外といえば終盤の太宰府ですが、紫式部の晩年は不詳ですし、こんな旅をしていたのかもしれないと思わせるそれまでのまひろの生きざまでした。
ラストに登場したのが武士の双寿丸というのも意味深でした。もちろん戦の世まではまだまだ隔たりがありますが、我々は平安の時代に終わりが来ることを知っています。歴史という大きな河を流れる一艘の小舟に乗って、さまざまな時代を観てきたわけですから。
さて来年の小舟が立ち寄る先は、これまた戦なき世の江戸時代。蔦屋重三郎が主人公です。近世出版業を研究(一瞬だけ)した身としては、見逃せない題材です。脚本家が森下佳子というのも期待大。再来年も仲野太賀の豊臣秀長ですから、面白い大河が続いていきそうです。

『おむすび』(承前)
『カーネーション』と続けて観ているため、余韻に浸って集中できない…。
それでもところどころ、感動させられる場面はあります。今なお震災から立ち直れずにいるナベさん。同じく肉親を亡くしているがゆえに彼を許せない美佐江。どちらも目には見えない心の傷が、まるで手に取るかのように感じられる繊細な演技が胸を打ちました。ふたりが過去のわだかまりを解いたことはセリフでしか語られませんでしたが、ふたりだけの空間できっとふたりにしかわからない感情を伝えあったのだろうと自然に納得させられました。ありきたりな言葉よりも説得力を感じる、緒方直人とキムラ緑子の演技力あればこそです。
結もまた、幼さゆえとはいえ、避難所でおむすびを持ってきてくれた女性に発してしまった心ない言葉を後悔していました。
この作品には震災を描くことに対する覚悟を感じますし、食べることと生きることの大切さを伝えたいという意志は感じます。空気感はまるで異なりますが、『監察医 朝顔』とテーマは同じであると思うのです。だからこそ、いまだ「ギャル」にぴんと来なくてハマりきれないのを惜しいと思ってしまう。
結と翔也の結婚には乗り越えなければ障害が多そうですが、物語はまだまだ折り返し。栄養士としては駆け出しの結ですが、これから一人前になってどのような活躍をしていくのか、『カーネーション』に負けずハマってしまう展開になることを願います。








『宙わたる教室』
最後まで共感性の高い、上質な作品でした。
空中分解してしまった科学部。明かされた「実験」の秘密。それぞれの決意。そしてまたひとつになった部員たちは、大会に向けてラストスパートをかけます。
消滅と誕生をくり返す宇宙を見ているかのような、再生劇でした。
厳しい言葉を発しながらも、柳田のことを人一倍案じていた長嶺。みずからの傷より仲間の傷をいたわるアンジェラ。ふたたび保健室から戻ってきた佳純。そして、過去にとらわれ続ける旧友に腹を割って思いを告げ、前のみを見つめることにした柳田。
彼らが力を合わせて知恵を絞り、試行錯誤を重ねて作り上げた「火星」は、見事口頭発表の代表に選ばれ、教室を飛び出して大きなホールでお披露目されることになりました。
司会が紹介した定時制の高校名にざわつく会場。緊張の面持ちで登壇した柳田と佳純を、まるで関係者のひとりかのように祈る気持ちで見守りました。
「私たちは、教室の中に火星を作ることに成功しました」
柳田の第一声に、驚きの声が上がります。スピーチが進むごと、それは感嘆に変わっていきました。大きい声を出せなかった佳純も、胸を張って懸命に声を振り絞りました。
純粋に科学を愛する人たちが集まった場所で、同じく一途に科学を愛し実験に没頭した彼らが集めたのは、今までのような差別も偏見もない、素晴らしい成果を得たことに対する尊敬と感動の視線でした。それは権威主義の石神もひれ伏せざるを得ない、探求心の勝利。「科学の前では人は皆平等である」―—藤竹の仮説が正しいと証明された瞬間でした。
万雷の拍手が鳴りやまぬ中、藤竹も立ち上がって拍手を送ります。そして観る者もまた手が痛くなるほど拍手を送りながら、あふれる涙を禁じえませんでした。
そして優秀賞を受賞した彼らは、藤竹の旧友でJAXAの研究者である相澤に協力を求められます。一年前には想像すらしていなかった場所へ、彼らはたどり着くことになりました。そこに導いたのは藤竹ですが、彼らのたゆまぬ努力、強い意志があってこそ。藤竹が学校を去っても、科学部の活動は続いていく。より頼もしくなった柳田部長が引っ張っていってくれるだろう。最後に悔し涙で負けず嫌いの一面を見せた佳純も、二度と保健室に戻ることなく、先輩として一年生を指導するだろう。アンジェラは包容力で部をまとめてくれるだろうし、長嶺も熟練の技で次々新しい装置を生み出すかもしれない。そんな想像すらたやすくできてしまいます。
実話をもとにしていますから、展開はわかっていました。しかしそれでもラストに向けての紆余曲折には一喜一憂させられてしまいました。最低限のセリフにとどめた余白の多い脚本に、繊細な間の取り方と表情や声音の微細なトーンで彩りを加えた演者たち、静謐な夜空にきらめく星々のようにキャラクターを浮かび上がらせ感情の揺さぶりを伝える演出、すべてが完璧に合致した素晴らしいドラマでした。観終わってもなお余韻に包まれています。見逃さなくてつくづく良かったです。

『嘘解きレトリック』
「原作のネタはまだまだあるのに描き切れるん…?」と訝しんでいたら、最終回は鹿乃子が自分自身の発した嘘で祝先生への思慕に気づく…という印象的なエピソードでした。徳田史郎が絡むあれこれはとても1~2話で消化しきれるものではありませんし、無理くりおさめるよりは続編を匂わせたこういう終わり方で良かったのかなと思います。
実年齢では松本穂香が鈴鹿央士を上回っているのですが、それを感じさせない両者の好演で、祝と鹿乃子の微笑ましいやりとりや、関係性が変化していくさまを楽しめました。馨や千代といった漫画チックな脇役も違和感なく溶け込んでいて、最後まで原作の世界観を損なうことはなく、最初から最後まで原作に対するリスぺクトを感じる仕上がりになっていて安堵しました。
早めにシーズン2が放送されることを祈ります。

『ライオンの隠れ家』
たちばな都市建設とリニア利権など、いわくありげな地方都市の闇の部分をちらつかせつつ、この物語の本題は家族愛からブレることはありませんでした。祥吾はみずからの罪と向き合い、愛生たちは安息の地で新しい生活を営み、出頭した柚留木も過去の呪縛から解放される。そして、洸人と美路人もそれぞれの新しい道を歩きだす。そんなそれぞれの未来が最終回の一話をかけて描かれました。
十話で終わることの多い連続ドラマにあって、このドラマも十話にて祥吾が捕まり、事件は解決したかに思われました。しかしまだ残っていた一週に向け、洸人が失踪したように見せかけた十話のラストはやや蛇足な演出にも感じました。ふたりでひとつのように暮らしてきた兄弟がそれぞれの未来を選ぶことは、ここまでの話の中で彼らの意識の変化を目にしてきた者にとっては、当然の結末であると思うからです。
それぞれがそれぞれ、自分と相手のことを考え、出した結論でした。
洸人は自分のために進学を選んだ。しかしバスに美路人ひとりを残して降りた、あの日とは違います。自立の道をみずから選んだ美路人が、自分の思いを理解してくれていると信じているから。美路人もまた、家族を信じているからこそ家を出ることを選んだのです。家では姉と甥が待っていてくれる。洸人はきっと美路人の本を作ってくれる。いつも心はそばにあると、知っているから。
あまりにも静かで凪いでいたふたりだけの暮らしは、一見信頼に守られていたようだったけれど、美路人があれほどルーティンを破られることに怯えていたのは、いつまた兄が自分を置いていってしまうかという不安の裏返しだったのかもしれません。そして洸人もまた、美路人の存在を周囲に知られたくないがために外界から閉ざされた生活を送っていました。ふたりがふたりだけの日々を守っていたのは、互いを思っているようでいて実は自分のためだったと、ライオンをめぐる嵐の中で気づかされたのです。
ライオンの隠れ家。ライオンとは愁人ではなく、洸人と美路人のことだった。そしてライオンは隠れ家を出て、外の世界へ、未来へ歩み始める。
希望と優しさと愛を感じる最終話でした。そしてメインキャストの名演が彩りを添えたのは言うまでもありません。期待を裏切らない名作でした。

『海に眠るダイヤモンド』
最後のからくりには「やられた!」と膝を打ってしまいました。
しかしそこに至るまで描かれていた鉄平の壮絶で悲しい半生に胸を打たれていたので、衝撃は半減でした。
戦争と戦後の高度経済成長という歴史の大回転に翻弄される若者たち。昭和という時代を駆け抜けた彼らの生きざまが、一話ずつ丁寧に綴られていきました。それはまさに鉄平の日記を読んでいる感覚そのものでした。
日記は日常を書き留めるものですから、本来ドラマチックではありません。仕事や恋、友情、家族。他人にとっては取るに足らない瑣末なことが散らばっています。この作品のテンポの悪さやあまり興味を惹かない四角関係も、鉄平の日記に書かれているささやかな日常生活なのだと思えば得心がいきます。リナたちのその後も、鉄平の逃亡生活の行く末も、日記がなかったからドラマにはできなかった。あくまでこれは鉄平の日記を読んだ玲央の脳内映像(だから玲央と鉄平が瓜二つ)を共有していただけだったのだと、最後の最後で理解できました。
つまり期待していたものではありませんでした。歴史ものでもサスペンスでも恋愛ドラマでもなく、石炭産業の栄枯盛衰も、朝子の正体や鉄平と結ばれなかったのはなぜなのかという種明かしを焦らすような引っ張り方も中途半端で、日9ブランドに寄せた勧善懲悪風な初回も興を削がれました。
それでも、そういった小さな不満を押し潰す圧倒的な力が、このドラマにはありました。説得力のある脚本、細部までこだわった演出、そして何より時代をたやすく飛び越えた俳優たちの熱演。二役を演じた神木隆之介はもちろん、杉咲花は流石としかいえない存在感でした。最初はあまり見せ場がありませんでしたが、後半、朝子中心に話が回り始めてからは目が離せなくなりました。最終回では鉄平を想うあどけない少女から、母となった女性の艶っぽさまで、朝子の繊細な変化を演じ分けており、舌を巻く思いで過去に置き去られた朝子の切ない恋心に感情移入させられていました。
朽ちてゆく歴史の片隅に置かれたままの青いギヤマン。朝子を想い植えた庭一面のコスモス。鉄平の心もまた、端島にあり続けたのだと知り、あの夜からどこか空虚だった朝子の人生はようやく輝きを取り戻します。そして鉄平の生きざまは、時を隔てた玲央の心も動かしました。
街が消えても、そこに存在した人が消えても、心は残る。世代を超えて語り継がれ、残り続ける。それが歴史というものなのだと、連綿と続く人の営みであるとあらためて思い知らされました。







『嘘解きレトリック』
何年か前にWebで無料のところだけ読んでハマってしまった作品。キャストを聞いた時は「なんか違う…」と首を傾げましたが、いざ初回を観てみると祝先生の包容力、鹿乃子の心の傷や純粋さがしっかり表現されていて、原作の世界観を損なわないものに仕上がっていました。週を追うごとに変化していくふたりの関係性や鹿乃子の成長ぶりを、先を知っていながらも楽しんでいます。
ところで原作がまた無料公開されていたので読み直してみたのですが、最後の最後だけ有料のため、どうしても続きが気になって購入してしまいました。が、いざ読んでみると「なんかこれ見たことあるような…」。
遠い記憶をたどってみると、前回も続きが気になって漫画喫茶で読み切ったような気がします。なんで忘れてたんや…。トシか…。

『宙わたる教室』
舞台は年齢も環境もさまざまな人たちが集う定時制高校。一風変わった教師の作った小さな科学部が、大きな目標に向かう日々を描いています。
科学者としてその世界に名を轟かせたこともある藤竹先生ですが、校内ではあくまで一介の教師です。教師だからと偉ぶることはありません。年上にも年下にも丁寧語で接し、その距離感は誰に対しても同じです。そしていつも、適切な言葉で、的確なタイミングで、相手の心に近づき閉ざされたその扉を開きます。
定時制高校は惰性で通う場所ではありません。何らかの理由があって学びたいと思う人が、学ぶために来ています。ですが一度挫折を経験した人は、また壁に当たると進むことをためらってしまいがち。藤竹先生はそんな彼ら彼女らの背中を後ろからそっと押して、向学心を失うことのないように支えています。科学部でもそのスタンスは変わりません。あえて導くことはせず、基本生徒の自主性に任せます。そんなキャラクターが新鮮です。
初回のエピソードで、一気に心を持っていかれました。自分がディスレクシアだと知って涙を流した柳田。病名を知った安堵のそれかと思いました。しかし違いました。柳田は怒っていたのです。今まで受けてきた叱責、差別はすべて理不尽なものだった。どれだけ努力しても乗り越えられない、それは障害であったのだから。柳田は、知らなければ良かったとまで言い放ちました。安堵などするはずがない。柳田が今まで苦しんできた長い長い時間は、取り戻すことなどできないのだから。
ふたたび闇に堕ちかけた柳田ですが、彼を救ったのは科学への探求心でした。まるで子どものように目を輝かせ実験に没頭する柳田の変化は秀逸でした。『下剋上球児』でもヤンチャな野球部員を演じていた小林虎之助ですが、周囲に牙を剝きながらも心弱さを秘めた野良犬のようなキャラがよく似合います。
さらに話を追うごとに、アンジェラや佳純、長嶺たちの背景が語られていきます。毎回胸を打たれたのですが、とくに長峰のエピソードには涙を禁じえませんでした。藤竹に誘われて若いクラスメイトたちの前で自身と妻の半生を話し始めた長峰。イッセー尾形の静かな語り口が熱を帯びたのは、知らないうちに肺を病んでいた妻の前でタバコを吸い続けた後悔を語る時でした。クラスメイトたちとおなじように、いつしか背筋を伸ばして聞き入っていました。
多種多様なメンバーで発足した科学部は、全日制の生徒も巻き込んで、壮大な夢を現実にすべく奮闘します。そこにいるのは、入部前の、迷いや劣等感を抱えていた彼らではありません。人は学ぶことで成長する。そんな大切なことを思い出させてくれる作品です。

『ライオンの隠れ家』
キャストに惹かれて観始めましたが、裏切らない演技力とサスペンス風味のある展開も興味深く、次回が待ち遠しく感じられる作品になっています。
色気を消して平凡な公務員になりきっている柳楽優弥はもちろん、自閉スペクトラム症の弟を演じる坂東龍汰には驚かされました。今まで脇役として出演したドラマのいくつかは観ていたものの、そこまで印象には残っていなかったのですが、まるで本当にみっくんという人間がそこにいるかのような存在感です。
ライオンという闖入者によって破られた兄弟の平穏な日々。『隠れ家』というタイトルとは裏腹に、ふたりの生活はどんどん外へ向かって開いていきます。ルーティンを守り他人には臆病だったみっくんが、大勢の人前で絵を描いたり、遠出したりできるようになった。ライオンのためにルーティンを破ることも厭わなくなった。閉鎖的な毎日のくり返しで半分世捨て人のようだった洸人も、ライオンへの慈愛に目覚め使命感を抱き、道理を飛び越えて逃亡生活を決意した。この物語は、ライオンの正体や、裏のありそうなたちばな都市建設をめぐるサスペンスでありながら、兄弟ふたりの止まっていた時間が動き出す成長譚であるのかもしれません。
誰にとってもしあわせな結末であるようにと願います。

『海に眠るダイヤモンド』
野木亜木子&塚原あゆ子コンビの作品と聞いて楽しみにしていましたが、『アンナチュラル』『最愛』のようなテンポの良い展開にはなっていません。もっともサスペンスではなくホームドラマですから、まったり感が先んじるのも無理はないのかもしれませんが…。
端島の登場人物はひとりひとり際立っています。複雑な四角関係の鉄平・賢将・百合子・朝子に謎多き歌姫のリナ。皆そろって昭和のスクリーンから出てきたようなたたずまいです。しかし進平兄ちゃんは薄暗い炭鉱内でも泥まみれでもイケメンやな…。
コスパが求められる昨今の風潮に反するかのように、それぞれの背景はなかなか描かれません。百合子が朝子にきつく当たったり、進平が次男だと他人のセリフでさらりと触れられたりするも、その秘密が明かされるはのちのちのこと。リナの正体や現代パートのいづみと玲央の出自もいまだ謎です。緩やかで心温まるエピソードを展開しつつも、多くのひっかかりを残しています。
一話ずつばらばらのようでいて、すべては狭い端島で起きたこと。いったいどのような結末を迎えるのか、過去がどう未来につながるのか。最終回まで見守りたいと思います。









『おむすび』
ヒロインが運命的に出会った夢に向かって邁進していく…という王道展開ではあるものの、そこに至るまで少し回り道した今回のお話は、序盤でやや停滞した印象を受けました。
ヒロインには彼女を前向きにさせない過去の記憶があり、自分らしく生きるためにはそのトラウマを清算しなければならなかったのですが、その秘密が明かされるまでかなりの話数を消費することになりました。最近の朝ドラはスピーディーなものが多かったのもあってか、このお話は開始早々から批判を浴びることになってしまいました。
ただ、この朝ドラにしては複雑な構成が、阪神大震災からスタートしたといっていいヒロインの人生そのものを表しているのかもしれません。
結は神戸に戻りますが、それは帰郷ではありません。彼女の故郷は祖父が言ったように、すでに糸島になっています。幼少期を過ごした神戸は、結にとっては未知なる先を目指す新天地、彼女の夢や希望そのものへと変化しているのです。
それは神戸や多くの被災地が目指す「復興」の真理なのではないかと感じます。過去の姿に戻す復旧ではない、さらに未来へ針を進める復興。神戸へと「旅立つ」結も、その地と同じ道を歩もうとしています。
結が過去を払拭できたのは「ギャル」のおかげでしたが、派手な化粧やパラパラは自我の開放という点ではわかりやすいきっかけだったのかもしれません。歩と同世代の自分はギャルとは程遠い場所にいたので、あまり共感はできませんでしたが。ただ自分にも開放される場所はもちろん存在したわけで、それが結とは異なっただけということなのでしょう。
安室ちゃんはドンピシャ同世代ですから、真紀ちゃんとのエピソードは切なくなりました。象徴的な曲が『PARADISE TRAIN』というのも絶妙です。


『カーネーション』
いったい何度目やねん!?
…というくらい観ていますので、ストーリーは全部頭に入っています。しかし何度観ても感動するし泣けるしで、やっぱり朝ドラ史上最高傑作に間違いありません。
展開はわかっているので脚本や演出など細かいところに目が行ってしまいますが、細部に至るまで手抜きがありません。この世界観が好きだったんだよな~としみじみしながら楽しんでいます。
ただ安達もじりの演出はやっぱりひっかかっちゃうなあ…。








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