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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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『宙わたる教室』
最後まで共感性の高い、上質な作品でした。
空中分解してしまった科学部。明かされた「実験」の秘密。それぞれの決意。そしてまたひとつになった部員たちは、大会に向けてラストスパートをかけます。
消滅と誕生をくり返す宇宙を見ているかのような、再生劇でした。
厳しい言葉を発しながらも、柳田のことを人一倍案じていた長嶺。みずからの傷より仲間の傷をいたわるアンジェラ。ふたたび保健室から戻ってきた佳純。そして、過去にとらわれ続ける旧友に腹を割って思いを告げ、前のみを見つめることにした柳田。
彼らが力を合わせて知恵を絞り、試行錯誤を重ねて作り上げた「火星」は、見事口頭発表の代表に選ばれ、教室を飛び出して大きなホールでお披露目されることになりました。
司会が紹介した定時制の高校名にざわつく会場。緊張の面持ちで登壇した柳田と佳純を、まるで関係者のひとりかのように祈る気持ちで見守りました。
「私たちは、教室の中に火星を作ることに成功しました」
柳田の第一声に、驚きの声が上がります。スピーチが進むごと、それは感嘆に変わっていきました。大きい声を出せなかった佳純も、胸を張って懸命に声を振り絞りました。
純粋に科学を愛する人たちが集まった場所で、同じく一途に科学を愛し実験に没頭した彼らが集めたのは、今までのような差別も偏見もない、素晴らしい成果を得たことに対する尊敬と感動の視線でした。それは権威主義の石神もひれ伏せざるを得ない、探求心の勝利。「科学の前では人は皆平等である」―—藤竹の仮説が正しいと証明された瞬間でした。
万雷の拍手が鳴りやまぬ中、藤竹も立ち上がって拍手を送ります。そして観る者もまた手が痛くなるほど拍手を送りながら、あふれる涙を禁じえませんでした。
そして優秀賞を受賞した彼らは、藤竹の旧友でJAXAの研究者である相澤に協力を求められます。一年前には想像すらしていなかった場所へ、彼らはたどり着くことになりました。そこに導いたのは藤竹ですが、彼らのたゆまぬ努力、強い意志があってこそ。藤竹が学校を去っても、科学部の活動は続いていく。より頼もしくなった柳田部長が引っ張っていってくれるだろう。最後に悔し涙で負けず嫌いの一面を見せた佳純も、二度と保健室に戻ることなく、先輩として一年生を指導するだろう。アンジェラは包容力で部をまとめてくれるだろうし、長嶺も熟練の技で次々新しい装置を生み出すかもしれない。そんな想像すらたやすくできてしまいます。
実話をもとにしていますから、展開はわかっていました。しかしそれでもラストに向けての紆余曲折には一喜一憂させられてしまいました。最低限のセリフにとどめた余白の多い脚本に、繊細な間の取り方と表情や声音の微細なトーンで彩りを加えた演者たち、静謐な夜空にきらめく星々のようにキャラクターを浮かび上がらせ感情の揺さぶりを伝える演出、すべてが完璧に合致した素晴らしいドラマでした。観終わってもなお余韻に包まれています。見逃さなくてつくづく良かったです。

『嘘解きレトリック』
「原作のネタはまだまだあるのに描き切れるん…?」と訝しんでいたら、最終回は鹿乃子が自分自身の発した嘘で祝先生への思慕に気づく…という印象的なエピソードでした。徳田史郎が絡むあれこれはとても1~2話で消化しきれるものではありませんし、無理くりおさめるよりは続編を匂わせたこういう終わり方で良かったのかなと思います。
実年齢では松本穂香が鈴鹿央士を上回っているのですが、それを感じさせない両者の好演で、祝と鹿乃子の微笑ましいやりとりや、関係性が変化していくさまを楽しめました。馨や千代といった漫画チックな脇役も違和感なく溶け込んでいて、最後まで原作の世界観を損なうことはなく、最初から最後まで原作に対するリスぺクトを感じる仕上がりになっていて安堵しました。
早めにシーズン2が放送されることを祈ります。

『ライオンの隠れ家』
たちばな都市建設とリニア利権など、いわくありげな地方都市の闇の部分をちらつかせつつ、この物語の本題は家族愛からブレることはありませんでした。祥吾はみずからの罪と向き合い、愛生たちは安息の地で新しい生活を営み、出頭した柚留木も過去の呪縛から解放される。そして、洸人と美路人もそれぞれの新しい道を歩きだす。そんなそれぞれの未来が最終回の一話をかけて描かれました。
十話で終わることの多い連続ドラマにあって、このドラマも十話にて祥吾が捕まり、事件は解決したかに思われました。しかしまだ残っていた一週に向け、洸人が失踪したように見せかけた十話のラストはやや蛇足な演出にも感じました。ふたりでひとつのように暮らしてきた兄弟がそれぞれの未来を選ぶことは、ここまでの話の中で彼らの意識の変化を目にしてきた者にとっては、当然の結末であると思うからです。
それぞれがそれぞれ、自分と相手のことを考え、出した結論でした。
洸人は自分のために進学を選んだ。しかしバスに美路人ひとりを残して降りた、あの日とは違います。自立の道をみずから選んだ美路人が、自分の思いを理解してくれていると信じているから。美路人もまた、家族を信じているからこそ家を出ることを選んだのです。家では姉と甥が待っていてくれる。洸人はきっと美路人の本を作ってくれる。いつも心はそばにあると、知っているから。
あまりにも静かで凪いでいたふたりだけの暮らしは、一見信頼に守られていたようだったけれど、美路人があれほどルーティンを破られることに怯えていたのは、いつまた兄が自分を置いていってしまうかという不安の裏返しだったのかもしれません。そして洸人もまた、美路人の存在を周囲に知られたくないがために外界から閉ざされた生活を送っていました。ふたりがふたりだけの日々を守っていたのは、互いを思っているようでいて実は自分のためだったと、ライオンをめぐる嵐の中で気づかされたのです。
ライオンの隠れ家。ライオンとは愁人ではなく、洸人と美路人のことだった。そしてライオンは隠れ家を出て、外の世界へ、未来へ歩み始める。
希望と優しさと愛を感じる最終話でした。そしてメインキャストの名演が彩りを添えたのは言うまでもありません。期待を裏切らない名作でした。

『海に眠るダイヤモンド』
最後のからくりには「やられた!」と膝を打ってしまいました。
しかしそこに至るまで描かれていた鉄平の壮絶で悲しい半生に胸を打たれていたので、衝撃は半減でした。
戦争と戦後の高度経済成長という歴史の大回転に翻弄される若者たち。昭和という時代を駆け抜けた彼らの生きざまが、一話ずつ丁寧に綴られていきました。それはまさに鉄平の日記を読んでいる感覚そのものでした。
日記は日常を書き留めるものですから、本来ドラマチックではありません。仕事や恋、友情、家族。他人にとっては取るに足らない瑣末なことが散らばっています。この作品のテンポの悪さやあまり興味を惹かない四角関係も、鉄平の日記に書かれているささやかな日常生活なのだと思えば得心がいきます。リナたちのその後も、鉄平の逃亡生活の行く末も、日記がなかったからドラマにはできなかった。あくまでこれは鉄平の日記を読んだ玲央の脳内映像(だから玲央と鉄平が瓜二つ)を共有していただけだったのだと、最後の最後で理解できました。
つまり期待していたものではありませんでした。歴史ものでもサスペンスでも恋愛ドラマでもなく、石炭産業の栄枯盛衰も、朝子の正体や鉄平と結ばれなかったのはなぜなのかという種明かしを焦らすような引っ張り方も中途半端で、日9ブランドに寄せた勧善懲悪風な初回も興を削がれました。
それでも、そういった小さな不満を押し潰す圧倒的な力が、このドラマにはありました。説得力のある脚本、細部までこだわった演出、そして何より時代をたやすく飛び越えた俳優たちの熱演。二役を演じた神木隆之介はもちろん、杉咲花は流石としかいえない存在感でした。最初はあまり見せ場がありませんでしたが、後半、朝子中心に話が回り始めてからは目が離せなくなりました。最終回では鉄平を想うあどけない少女から、母となった女性の艶っぽさまで、朝子の繊細な変化を演じ分けており、舌を巻く思いで過去に置き去られた朝子の切ない恋心に感情移入させられていました。
朽ちてゆく歴史の片隅に置かれたままの青いギヤマン。朝子を想い植えた庭一面のコスモス。鉄平の心もまた、端島にあり続けたのだと知り、あの夜からどこか空虚だった朝子の人生はようやく輝きを取り戻します。そして鉄平の生きざまは、時を隔てた玲央の心も動かしました。
街が消えても、そこに存在した人が消えても、心は残る。世代を超えて語り継がれ、残り続ける。それが歴史というものなのだと、連綿と続く人の営みであるとあらためて思い知らされました。







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