忍者ブログ

いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
<<  < 364350358353356* 339* 338337352351349 >  >>



『クライマーズ・ハイ』『突入せよ!「あさま山荘」事件』の原田眞人監督とあって、群像劇を形成する人びとの魂と魂のぶつかり合いがこちらの心を熱くし揺さぶってくる作品です。
とはいえ見習い医者で戯作者志望の主人公を大泉洋が演じているだけあって、シリアスよりはコメディ寄り。早口の江戸言葉の応酬にはこちらの腰もウズウズしてきて、思わず駆け出したくなるようなパワーがありました。
時は天保、舞台は鎌倉・東慶寺。…ではなく、その門前にある御用宿。縁切りしたくて駆け込んでくる女たちの事情聴取を行い、まずは和解するよう説得する場所です。それでも埒が明かぬとなった場合、女は髪を切り入山、2年間の修行に耐え抜けば晴れて離縁達成、自由の身となるわけです。
水野忠邦政権により綱紀粛正が行われた江戸に居場所を失い、親戚を頼って御用宿にやってきた信次郎は、放蕩DV夫から逃げてきた鉄練りのじょご、そして質屋の妾・お吟の「駆け込み」に偶然にも居合わせます。
御用宿に集うのはさまざまな事情を抱えた女と男。信次郎は運命に抗う彼女たちを目の当たりにし、戯作者魂に火をつけられます。
江戸時代の女は弱者とされていました。縁切寺に駆け込むしか離縁の手段がなかったことを思えば、確かに現代より立場は弱かったのかもしれません。それでも女が集団になった時の、男どもを一網打尽にする威力は、今も昔も変わりません。尼寺の風景はまるで女子寮。衣替えでウキウキしたり、ひさびさの男を遠巻きにしてはわきゃわきゃしたり、もちろん嫉妬から来るイジメもあったり。
鉄練りの技術は一流ですが、顔の火傷で夫に醜女扱いされ、なかなか人に心を開けなかったじょご。信次郎たち御用宿の人びとと触れ合い、一緒に駆け込みしたお吟と心を通わせたり、寺で薙刀を振るったり薬草の知識を深めていったりしたことで、徐々に自信を取り戻していきます。寺を出る頃には、かつてのじょごはもうどこにもいませんでした。自分の行く先を自分の心で決め、自分の口で語り、信次郎の求愛をくちづけで返すような、ひとりの自立した女性へと成長していたのです。
登場時とまるで違う表情を見せた戸田恵梨香の笑顔が印象的でした。
それには、みずからの人生に見事な仕舞いをつけた「姉」お吟の存在抜きには語れないものだったかもしれません。
八犬伝の続きを心待ちにしていた婀娜っぽい質屋の妾の、浮世絵から抜け出てきたかのような姿態と、命の灯が尽きるまで心に秘め続けた偉大な愛。目線や声色から色気が匂い立つような存在感の大きさでした。
人と人とが絡み合って作り上げられていく世界、そして人生の岐路に立たされた時、揺れ動いた感情の行きつく先。誰もが抱える心の秘密。地に足つけた人間の侃さ。胸のすくような大団円。
まるで、昔の日本映画を観ているかのようでした。…観たことないけれど。









PR
* SNOW FLAKES *
STOP  *  START
* カレンダー *
12 2025/01 02
S M T W T F S
5 6 7 8 9 10
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
* プロフィール *
HN:
さや
性別:
女性
自己紹介:
プロ野球&連ドラ視聴の日々さまざま。
* ブログ内検索 *
<<  <  *  NEW *  BLOG TOP *  OLD *    >  >>
Copyright©  さや
Designed & Material by ぱる
忍者ブログ ・ [PR]