「やっぱり王者」と言わせるか青学大。
それを追ってひた走るしかない東海大。 熾烈なシード権争いにも注目。 オリンピックイヤーの幕開けを彩る箱根駅伝、いよいよクライマックスです。 《6区》 スタートから独走状態の青学大・谷野選手を追って、山下り経験者の東海大・館澤選手はスタートからガンガン飛ばしていきます。青学大の布陣を見るに大ブレーキは考えにくいですから、東海大はとにかくひとりずつ前との差を縮めていくしかありません。 小田原前の平地が最後の試練。各校監督の声に背を押され、気力を振り絞ります。 必死に山を下ってきた館澤選手は限界寸前だったはずです。それでも区間記録を40秒更新する力走で、あとにつなぎました。しかし谷野選手の走りは初の箱根とは思えないほど安定していました。なにものにも乱されないということは、それだけ自分たちの力を信じているということ。青学大には、この精神が部員全員に浸透しているのだろうと感じます。 東洋大・今西選手もさすが山下りの経験者、昨年の区間記録を超えるペースであっという間に順位を7位へ押し上げました。昨日の遅れを取り戻す気合いが伝わってくるような力感でした。 そのひとつ上は、こちらも順位を上げた駒澤大。せめて総合5位には食い込んでほしい…。 中央学院大もシード圏内に入ってくるなど、今年の山も順位変動が起こりました。 《7区》 東海大は早々に國學院大をとらえ、12キロ過ぎで2位浮上。いったんは開いた青学大との差を、後半一気に詰めていきます。前を信じて進むしかありません。 4位浮上した明治大エースの阿部選手からは古豪のプライドを感じました。並走していた高校の同窓生・東国大の真船選手を後半に差しかかるあたりで抜き去ると、一気に独走。区間新記録と明治復活ののろしを高らかに打ち上げました。 古豪といえば早稲田大。中央学院大との2分近い差を逆転して9位浮上。中央学院大がそれに続き、11位創価大との差は約40秒となります。 青学大・中村選手も、4年生にして初の箱根。これまた浮足立つことない走りで、しっかりと役割を果たしました。まだまだその背中を仰ぐことはできない東海大が平塚にたどりついたのは、2分後のこと。レースのゆくえは、実力者小松選手に託されました。 《8区》 先頭を独走する青学大。そしてあまり映らなくなる。この光景、2年ぶりですが懐かしく感じます。 岩見選手は昨年往路を走り、失速した経験を持ちます。5連覇を逃した責任を感じ、今年に賭ける思いもあったでしょう。後ろを走るのは昨年区間記録を打ち立てた小松選手ですが、その脅威を感じなくても済むタイム差をつけてここまでつないできてくれました。それを受け、みずからも青学大もリベンジを果たすゴールに向け、最後まで軽快に駆け抜けました。 小松選手は昨年も8区を走った逆転優勝の立役者、負けられないプライドがあるはずです。しかし見えない敵を追うプレッシャーはランナーに大きくのしかかります。死力を尽くして走り切るも、差を縮めることはできませんでした。最後の箱根が小松選手に残したのは2年連続区間賞獲得の喜びよりも、タイムを詰められなかった悔しさかもしれません。 創価大が中央学院大に追いつき、抜きつ抜かれつのまま戸塚中継所へ。なんとか中央学院大が逃げ切るも、その差はわずか10秒足らず。シード争いも佳境に入ってきています。 駒澤大は帝京大・東洋大にも抜かれて8位に順位を落としてしまいました。ウーム…。大八木節もどこか元気がありません。 《9区》 優勝に向かう青学大・神林選手の足取りは軽く、覇権奪回へ視界は良好。自信と確信に満ちた走りで、後続を突き放していきました。 東海大に続いて東国大が鶴見にやってきたのには驚きました。いつ國學院大・明治大を抜いたのでしょうか。新興校が3位となれば、令和の箱根戦力図はがぜん面白くなりそうです。 駒澤大は早稲田大にも抜かれてしまいました。9位…えええ…? シード争いのほうは、中央学院大の4年生が力走。ここで創価大を1分近く突き放し、逃げ切りに入ります。 今年も鶴見の長い直線で、あとわずか届かない繰り上げスタートがありました。筑波大も平塚では何とかつながった襷でしたが、ここで途切れてしまいます。それでも『いだてん』の箱根駅伝の回を観た者には感慨深いものがありました。 《10区》 長い長い箱根路の旅も終わりを告げる時がやってきます。 皆がそれぞれの役割をしっかり果たし、レースを進めてきた青学大。原監督が築いてきた王者の精神がここに結実しました。覇権奪回。正月の大手町にふたたび新緑の風が吹きました。 鶴見では笑顔で襷を受けた東海大・郡司選手。昨年、いちばんにゴールテープを切った彼は、今年も笑顔で箱根を終えました。仲間に抱えられ、そして涙。しかし、黄金世代のトリを飾るにふさわしい堂々たるゴールだったと思います。 9区で順位は固まったかと思いましたが、ドラマは最後に待っているもの。3位争いも3校の団子状態に帝京大も参戦してきて熾烈なものに。ラスト1キロでスパートをかけたのは國學院大。必死にくらいつく帝京大、東国大、明治大を振り切って目標の総合3位を手に入れました。選手の歓喜と前田監督の涙が印象的でした。 7・8位は競り合うようにゴール前へやってきた早稲田大と駒澤大。最後のスパート合戦は1秒差で早稲田大の勝ち。古豪が失ったシード権をふたたび取り戻しました。 そしてドラマはまだまだあるもので、中央学院大そして3分差の東洋大を逆転した創価大が9位に入りました。スタートから区間新記録ペースで飛ばしていたので、最後まで持つのかと案じていたのですが、すさまじい追い上げでした。 最後のシードを手にしたのは区間19位で順位を3つ落とした東洋大でした。鉄紺の常勝軍団が、シード圏内にぎりぎり滑り込みセーフ。理由はいろいろあるのでしょうが、にわかには信じがたい順位でした。 《総括》 2位東海大のタイムも大会新記録だったという、超高速レースとなった2020年の箱根駅伝。 巷ではナイキのシューズのおかげだの、規制すべきだの、はてはドーピングとさえ…さんざんな言われようです。 しかし、まずは青学大を賞讃すべき。多くの選手が同じシューズを履いていましたし、駅伝は個人技で勝てる種目ではありません。エントリーの半分以上が箱根初出場の選手で、それでも目論見どおりの結果を残すという完璧な区間配置は、決して無謀な挑戦ではなく勝利への確信があってのことのはずです。それを見越せる原監督の眼力と冷静な計算、そして選手たちの日々の練習によって培われた確かな実力と自信が、覇権奪回へと導いたに違いありません。周囲からのいわれなき批判を一発で黙らせる原監督、そして青学大には本当に天晴れ! です。 黄金世代の集大成を連覇で飾ることができなかった東海大。最後に全員がそろった箱根を見てみたかったというのも、偽らざる本音でありました。しかし、彼らを見て育った後輩たちをいかにして令和の常勝軍団に成長させていくか、両角監督の手腕にも注目です。 今回、着実なレース展開で成績を残した國學院大・帝京大。優勝候補の常連になってもおかしくない地力を感じました。そして圧巻の箱根デビューを飾ったヴィンセント選手を擁する東国大も、今後大会をかき回していく存在になっていくことを期待します。 シード奪還は立派ですが、早稲田大・明治大は伝統校のかつてを思えば少し淋しいもの。古豪・新興ないまぜの混戦だから楽しいのです。だからこそ! 駒澤大がこんな成績なのは面白くない! ここ最近、優勝候補と言われながらのかみあわなさが歯がゆいです。来年こそはガンガン檄を飛ばす大八木節をもっと聞きたいものです。 今年は出雲も全日本も事前番組も見られなかったので、誰が現役選手かどころかどこがシードだったかもおぼろげなままの観戦でした。それでもこんなに興奮させられるとは予想もしませんでした。予備知識があればもっと面白かったに違いありません。来年は雑誌でも買って勉強しようかな…。 PR |
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