まずはPart2の感想を遅ればせながら。 映画ではウシジマくんたちよりも債務者たちにスポットを当てているため、レギュラーメンバーのインパクトは多くありません。だからこそ菅田将暉(マサル)のクズっぷり、中尾明慶(愛沢)の小物っぷり、高橋メアリージュン(犀原)の壊れっぷりがすがすがしいほど目立っていました。もちろんお金によって人生を踏み外していく窪田正孝や門脇麦の哀れなほどの愚かさも身に沁みて、映画ならではのカタルシスに満ちていました。犀原はドラマを経て最後までウシジマくんに絡む存在となります。 そしてPart3。 「ファイナルに続く」物語なのかと思いきや、これのみで完結していたオーソドックスな作りでした。ネットビジネス界のカリスマ天生翔(与沢翼?)に傾倒した沢村(『フリーエージェントくん』)と、キャバ嬢にいれあげるサラリーマン加茂(『中年会社員くん』)が今回の債務者。 野心に燃える沢村を演じたのは本郷奏多。『NANA2』でシンを演じていた時と変わらない線の細さでしたが、若さゆえの愚かな焦りと思慮の浅さが伝わってきて秀逸でした。ただ天生役の浜野謙太が体型から表情からハマりすぎていて、沢村の存在感が欠けていたので少し残念。最後の白石麻衣とのシーンは、若さそのものがすべての可能性を秘めた財産であることをしみじみと感じさせ、まだ道の途中ながらもこれから拓いていく未来を感じさせる余韻が良かったです。 若さのみならずすべてを失った中年サラリーマンがオリラジ藤森慎吾であることは、最初のほうは気づきませんでした。そのくらいすべてにおいて小物っぷりが際立っていました。このキャスティングは意外ながら絶妙。 しかしこの作品内でいちばん印象に残ったのは、加茂に火をつける犀原のタイミングむちゃくちゃなカウントダウン。背筋が凍るほど衝撃的でした。 ただカウカウファイナンスの一員であるモネの性格が、今までの事務員と異なっていたことが違和感。今までのキャラはしらっとしていて、事務所の中でさしたる存在感がなかったのですが、モネは債務者に対して思いやりを見せるシーンが2作を通して随所にあります。どういう意図でこのようなキャラにしたのかわかりませんが、ファイナルの展開においては行動がさらに不自然さを増していて、作品の質を損なっていたように感じました。 そしてファイナルは、ウシジマくんの過去がメインストーリー。 ウシジマくんの幼なじみである竹本(永山絢斗)がカウカウファイナンスにお金を借りに来るところから話が始まり、過去と現在を行き来する作りになっています。 最後に来て、ようやくウシジマくんにスポットが当たりました。竹本とのエピソードに加え、丑嶋と同級生だったはずの柄崎がなぜ今部下になっているのか、ようやく判明します。さらに犀原とも長い関係があったことには驚き。 今回の最大の敵は中学時代からの因縁である鰐戸三兄弟。鰐戸一役の安藤政信がどのくらい狂気を見せてくれるか期待していましたが、あまり目立たなくて残念。顔半分隠れている三蔵(間宮祥太郎は最近公開された『全員死刑』でも凶悪殺人犯を演じたという)のほうがインパクト大でした。 その兄弟が取り仕切る貧困ビジネスの世界は悲惨でした。暴行され搾取されながらもそこでしか生きられない愚かな貧困者たち。そこに一石を投じようとするも通じない竹本の言葉。裏切られ続けた過去に縛られて竹本を信じたくても信じ切れずに揺れる甲本。ラストでついに竹本の心へ歩み寄り、甲本の死んだ魚のようだった目に生気がよみがえる場面は印象的でした。太賀は本当に良い俳優です。 言葉だけなら聖人君子のような竹本ですが、彼の行動が博愛精神という崇高な信念に基づいたものでないことは、回想シーンの彼自身の言葉で感じました。「母ちゃんが好き」と即答できるウシジマと、「わからない」と言う竹本。竹本にとっては自分が正しいと思うことがすべての行動指針であり、善とか愛とか、他者へ送る視点を欠いているように映りました。 ラスト、全員の借金を背負った竹本は「誰もが廃人になる清掃員」の職場へ行くことになります。丑嶋がどのような思いで彼を送ったのか、それを理解していれば「賭けに負けた」なんて言葉は絶対に出てこないはず。 なぜなら、丑嶋は賭けなんてしていなかったのだから。 旧友を救いたかっただけなのだから。何度もチャンスを与えた中で竹本がひとこと命乞いすれば、それは叶えられたのです。それは丑嶋の竹本への愛であり、竹本の丑嶋への愛にもなるはずだったのです。 —―僕も馨ちゃんみたいに人を好きになってみようかな 結局、竹本は丑嶋のように人を好きになることはできなかったのでしょう。逆方向へと走りだす二台の車のように、互いの愛は交わることはなかったのです。これまでも、そしてきっともう二度と。 無表情を貫いてきた丑嶋が、最後の最後で見せた悲しみ。無言のまま、その心のうちをさらけ出すラストシーンに、ウシジマくんはやはり山田孝之にしかできない役だったとあらためて感じました。ウシジマくんの原作ファンのツレには受け入れがたい配役だったようですが、この映像作品の世界観を表現できるのは、山田孝之だけだったと思います。 これでカウカウファイナンスの面々と最後なんて、実に淋しい限り。 PR |
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