『西郷どん』
2話まで見た限り、とりあえずついていけそうです。 話題にもなっていましたが、初回の小吉、2話のふきと、子役の熱演が視聴者をぐいっと惹きつけたと思います。最近の子どもは凄いな。 あと、風間杜夫&松坂慶子&平田満の『蒲田行進曲』トリオの共演、語りの西田敏行&島津斉興役の鹿賀丈史という『翔ぶが如く』コンビの復活も、オールドファンにはたまりません。 まだまだ「やっせんぼ」の西郷どんですが、鈴木亮平はきっと新しい西郷隆盛像を生み出してくれると思います。ここ最近の大河ドラマにおける西郷隆盛は脇役だったため、倒幕に暗躍する策略家であったり、腹黒な野心家であったりと、悪役に描かれることが多かったのですが、ひさしぶりにまっすぐなヒーロー西郷どんが見られそうです。 『翔ぶが如く』が放送された時は小学生だったので、毎回きちんと見ていたわけではなく記憶もあまりないのですが、西郷と大久保がともに手を取り維新を成し遂げながら最後は敵味方に分かれるという悲しい結末は、今でも強く印象に残っています。 今回はふたりの友情はメインストーリーでないとはいえ、西郷を描くに大久保の存在は欠かすことはできません。大久保役の瑛太は『篤姫』で演じた小松帯刀のイメージが自分の中で払拭できていないのですが、あれから演技力が増しましたし、切れ者ゆえの苦悩を見せてほしいと思います。 昨年流行したゲス不倫で斉藤由貴が交代するも、同じ文春砲をくらった渡辺謙が降板しないのはどーたらこーたら、と若干話題になっていましたが、やはりNHKの続投判断は正しかったですね。抜群の存在感でドラマを引き締めていました。鹿賀丈史と親子役というのは違和感があるにせよ、斉彬という重要なポジションはやはり渡辺謙にしか任せられなかったのだろうと思います。 と、なかなか見ごたえのある2話だったわけですが。 唯一の不満点は、「意識高い系女子」いとの描写。男装して学問しようとした『篤姫』とかぶってるし、この時代にその価値観、別にいらなくね? 男女不平等について考えるきっかけを小吉に与えたとはいえ、それが今後にどう影響してくるというのか? 演じる黒木華は時代を先取りする女性とは真逆の古風な雰囲気ですし、まさかむりやりなこじつけか? 前情報でBLという言葉がひとり歩きしていたので、やや不安ではあったのですが…。 ここまでの雰囲気のまま、幕末維新のエネルギーを表現してくれることを祈ります。 『女子的生活』 朝ドラの出演も決まってすっかりNHKづいている志尊淳ですが、『植木等とのぼせもん』はその演技で見るのをやめたほどなのでLGBTという複雑な役を演じきれるのか、ほとんど期待はしていなかったのですが。 う、美しすぎる…。 というのが、第一印象でした。ただそれだけではない、ドラマ全体の密度の濃さに惹きつけられています。 以前、職場にLGBTの人がいました。仕事のできる人でもあったので女性は割と普通に受け止め信頼を集めていましたが、男性の中にはそれが理由で人格を全否定するような陰口を叩く人も少なからずいました。「腐女子」という一定の存在もあるように、性的少数者に寛容なのは女性のほうなのかもしれません。主人公・みきも、女性の多い職場で働いています。そして男性として生まれながら女性として生き、さらに好きになるのは女性という複雑なみきの性的指向を周囲は受け入れています。みきを採用した社長は男性ですが、女性向けファッション会社を運営するだけあって、「うちの服が似合えばオッケー」というスタンス。家も職場もカワイイものに囲まれ、街中でカワイイものを見つけては写真に収め、ガールズトークに花を咲かせる、みきはどこにでもいるそんな女子としての「女子的生活」を満喫しています。生まれ落ちた時の性別が男、ということをのぞいては。 好奇心や差別意識にまみれた世間で生きていくうえでは、トランスジェンダーである現実からは逃れられません。トランスジェンダーに限らず、いわゆるマイノリティに接した時、人はどうしても平静ではいられません。驚いたり、下卑た好奇心を持ったり、見下したり、感情は様々ではあるけれど「それを口にしてはいけない、態度に出してはいけない」風潮がある。なぜなら、相手は「差別されている人」だから。「差別されている人」は「カワイソウ」であり「すごく頑張って生きている人」だから。だから「カワイソウな人を、頑張っている人を差別してはいけないのです! 私は差別なんてしません! 私はあなたの味方です! 私は差別しないイイ人です!」と、それこそが差別意識であることを気づかず声高に主張する無神経な人はどこにでもいるもので、きっとみきもそんな他人に心を乱され続けたのだと思う。せいいっぱいに女子として生きながら、みきはどこか無理しているようにも見えます。ナチュラル系女子を装いながら真っ黒な内面を隠し持ったゆいに惹かれながらも、自分が異質であるという意識からか、一歩引いてしまいます。 そんなみきの心に強引に転がり込んできたのが、高校時代の同級生の後藤。共同生活を送ることになった後藤のおっちょこちょいな性格や見境のない行動に振り回されながらも、みきはどこかでリラックスしています。後藤の中でみきはどれだけ変貌しようと高校時代を共に過ごした「小川」であり、女子的生活の中で捨てたはずの過去と現在を結びつける唯一の存在です。常に他者によって揺るがされそうになるみきのアイデンティティに、小川幹生であった18年間は決して消すことはできません。その事実を後藤の存在によって目の前に突きつけられ、意外にもそれを受け入れている自分に、みきはさらに揺れています。 生きていくうえで、誰しもが自己と他者をさえぎる壁に直面します。自分の信じる道を進もうとしても、それが他者にとって正しいとは限らず、他者に囲まれて生きていくからには他者に迎合するか後ろ指を指されるのを覚悟で我が信ずる道を行くか、その二択に迫られます。みきがいったいどのような決意を持って人生を歩もうとするのか、たった四回と短い尺で描き切れるのか不安はありますが、みきの人生を、ラストまでしっかりと受け止めたいと思います。 PR |
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