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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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最近どうもお通じの調子がよろしくない…。

検索すると、原因とされるのは「大腸がん」。
もちろん可能性としては低いのだろうが、大腸がんは女性のがん死亡数第1位。三浦綾子や今井雅之が亡くなった原因でもある。

とはいえ、手軽に受けられる大腸がん検診はいわゆる検便。潜血があれば精密検査になるが、今のところその兆候はない。
ちなみに昨年、夫が初検診で要精検となり、内視鏡検査を受けていた。結果ポリープが見つかったものの悪性ではなく、切れて出血しただけだったのだが、大変だったのは検査を受ける前の食事制限と当日朝に飲む下剤。いわゆる腸洗浄である。
以前、芸能人の体験談を聞いたことがあって、つねづね一度やってみたいなあと思っていた。お腹の中をキレイにすることは健康にはもちろん、お肌にもいいはずだ。しかしそれは想像以上に壮絶な戦いだった。下剤の量の多さ、さらにはそれ以上に摂取しなければいけない水、間断なく迫りくる便意。「…やっぱりやりたくない」と、その時は思った。

しかし万が一、ということもある。
覚悟を決めて病院へ向かった。

医師は年下であろう若い男性医師だった。羞恥心を持つ状態でも年齢でもないためペラペラ症状を伝えると、案の定、大腸がんの可能性を挙げられた。
「まあ確率は低いだろうけど、いちおう調べましょう」というニュアンスで「大腸がん検診をして陽性なら内視鏡検査をするか、いきなり内視鏡検査をするかどちらにしますか」と聞かれ、迷わず「内視鏡検査で」と答えた。
予定を聞かれ一週間後に検査と決まると、あとはあっさりだった。「じゃあこれ当日までの食事の注意事項。これ当日に飲む薬」と次々渡され帰された。

食事制限は検査の3日前から始まる。繊維質のものは摂れないため、野菜はダメ。きのこもダメ。脂質の多いものもダメ。食べられるのは白米・素パン・素うどん・じゃがいも・バナナ・むね肉・白身魚くらいである。つまり色味がない。
数日間のこととはいえ、野菜抜きというのは案外ツライ。色がないと味もしないような気になってくる。量は関係ないからおなかいっぱい食べられるのに、なんだか食べたような気がしない。

そんなこんなで一週間が過ぎ、いよいよ当日。
朝は絶食し、下剤と水を飲む。前日夜に飲んだ下剤(これは普通の錠剤)もさっそく効いていたが、当日の下剤(モビプレップ)は水を入れて溶かすタイプでこれがなんと2リットル。これをコップ1杯15分くらいかけて2杯飲み、普通の水を1杯飲むというルーティンを、排泄物が透明になるまでくり返す。
最初は「あれ? 全然だな」と思いながら服用していたが、2杯目で大波が突如やってきた。2ターン目になるともはや飲む→すぐ出るという状態。
部屋とトイレを往復していると、病院から電話がかかってきた。
「どんな感じですか?」
「モノはないんですが透明にならなくて…」
「では大丈夫です。来てください」
準備している間にも波が次々やってきて、なかなか家を出られなかった。

検査では鎮静剤を打つため車はもちろん、自転車も不可である。病院まで徒歩で向かう15分も、波との戦いだった。そして到着すると、通常の診察時間のため待合室は混雑している。トイレを利用する人も多い。…行けない。
名前を呼ばれるまでひたすらお腹を抱えて我慢していた。これでは検査中にとんでもないことになるのではなかろうかという不安にかられながら待つこと30分。ようやく順番が回ってきた。
検査着は上は手術着(服の上から羽織る)、下はお尻の部分に穴が開いたステテコみたいなものだった。
診察台に横になり点滴を受けたが、そこから記憶が曖昧になっている。おそらく鎮静剤が効いたのだろう。「始めます」という合図や、医師と看護師の会話はなんとなく聞こえていた。
ちなみに夫はまったく記憶がないそうだ。横になったと思ったら終わっていて「全然わかりませんでした」と言うと「しゃべってましたよ」と返されたそうだ。いわゆるせん妄状態でおかしなことを口走ったのではなかろうかと落ち込んでいた。
が、私の場合は、ひたすら痛かった。痛いことははっきりと憶えている。お腹をぎゅうぎゅう押されている感覚だった。もしかしたら「痛い痛い」と口にしていたかもしれない。
「終わりましたよー」の声で覚醒するのは全身麻酔の手術の時と同じだった。
医師は開口一番「何もありませんでした」と言った。ボンヤリした頭で、「ああ、大腸がんではないということだな」と理解した。良性ポリープもなかったという意味でもあったのだろう。
「どうでしたか」と訊かれ、迷わず「痛かったです」と答えた。
支えられながら起き上がると、隣室で休みつつ着替えて待つよう指示された。事前にもらった説明書には1時間ほど休憩してもらうと書いていた。もちろん頭はまだフラフラしているが、直尻で椅子に座るのも気が引けたため、とりあえず先に着替えだけはなんとか済ませた。
数分後に医師が様子を見に来たが、着替えて水を飲んでいた私を見て「もう大丈夫だろ」と判断したのか、診察室に連れていかれた。

医師はモニターの写真を示しながら説明を始めた。
「まず、時間が20分くらいかかっていますが、これは長いです」
どうやら、腸内だか腹膜だかに癒着があって(まだボーっとしていたので説明をはっきり聞けていない)内視鏡を挿入し内部を進んでいくのに通常の倍の時間を要したらしい。
さらに腸壁の一部が赤くなっている写真があったが、「カメラが当たった痕です」。まあ傷というほどのものではなかったのだろう。
痛みの原因の癒着は、子宮全摘手術の影響らしい。お腹の不調の原因もそこにあるのかもしれないというようなことも言われた。
「漢方を処方することもできますが、ヨーグルトとか消化の良いものを食べて改善をはかるというのも…」
つまり病気ではなく、ただの便秘みたいなモノという結論だった。もちろん薬はもらわずに帰った。

ということで、初の内視鏡検査はなにごともなく終わった。
次の機会があるのかはわからないが(ないことを祈る)、「内視鏡検査は痛い」ことを知ることができて良かったのかもしれない。

ちなみにヨーグルトはそれまでも毎日摂取していたので特別食生活が変わったわけではない。しかし腸をまるごとキレイにしたせいか、そこからは割と快腸である。いつまでも続けばいいのだが…。






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