セカンド・オピニオンは大事。
そういうお話です。 ------------------------------------ もともと生理の重かった私は、長年薬で軽くして、毎月をやり過ごしていた。 このまま閉経まで飲み続けないといけないのかなあ…と考え始めていた四十路のある月のこと。 それは突然やってきた。 下着を脱ぐなりダム決壊。風呂場はさながら殺人現場。 薬できっちりだった周期が早まったこともさりながら、その量が半端ないのである。 そういえば今月から薬を薬局がすすめてきたジェネリックに変えていた。成分は同じのはずだが、もしかしたら私には効かなかったのかもしれない。 とりあえず薬局に電話をしてみた。 「こんな状態なんで、残りが2か月分あるんですけど元の薬に替えてもらえませんか?」 「ええっ! いや、それはちょっと」 「ダメですか?」 「…………ひとまず上司に確認します」 ちなみにこの行動はあとから夫に「おまえはクレーマーか! 一度出した薬を替えろなんてむちゃくちゃや!」と怒られた。私からすれば同じ服を3枚買ったもののサイズが合わなかったので、未使用の2着を交換してもらうような感覚だったのだが、もちろん薬局は服屋ではないし、購入後一ヶ月も経っているのだから、そんな要求が通るはずないと考えるのが一般的なのだろう。 しかし一般的思考を持たないクレーマーに対し、薬局は無理を通してくれた(いや、クレーマーだからこそなのかもしれない)。 「今回は取り替えさせていただくということになりました…が、病院の診察が必要だと思うので、病院に連絡してみます」 私も念のため診察は受けた方がいいだろうと考えていたのだが、薬局がもらった回答は「診察不要」だった。 やはりジェネリックには、合う合わないがあるということなのだろう。内診の苦手な私は「ラッキー♪」と、厚かましくも差額を払って手つかずのジェネリックを先発品に交換してもらった。 ところが次の月も、そのまた次も周期は狂ったまま&ダム決壊。 薬を飲み忘れた日があったからだろうか。しかし今までは一日飲み忘れたくらいで効かなかったことはないのだが…。 あいかわらず量も多いしなかなか終わらないし、痛みで眠れず睡眠不足が続く。 さすがにこれは何かしら異状が起きているのではないだろうか。 病院に予約を取った。 「薬ですか?」 「それもありますが、診察してほしいんです」 そして予約当日、医師に3ヶ月の現状を訴えたところ、 「じゃ、薬変える?」 ( ゚ ω ゚ ) 診察は…? ナカを見ずに薬の話とは…? 「変えたら治るんですか?」 「痛みが強いんなら、今の薬のままがいいかもね」 「変えない方がいいんですか?」 「違う薬もあります、ということです」 …さすがにこれはないだろう、と思った。 通い始めた当初とは病院の方針が自分の目的と異なっていったことも、だんだん態度がぞんざいになっていたことも前からうすうす感じていた。だが新しい病院を探すのも億劫だったし、薬をもらうだけだからと惰性で通い続けていたのだ。 病院探しを面倒くさがった自分と、内診を面倒くさがった医師は、根本的には同じだ。これも自分の落ち度が招いた結果だ。病院がよりカネになる患者を優遇するのはあたりまえなのだ。 だが、患者にだって病院を選ぶ権利はある。 惰性から脱却することにした私は、夫が同僚から「評判いいらしい」と教えてもらった、隣駅の病院に行ってみることにした。 地域では有名らしく、待合室にはたくさんの人が座って順番を待っていた。 ようやく入った診察室で、医師はまず「内診しましょう」と私の待ち望んでいたひとことを言ってくれた。 「あー、ポリープがありますね。これのせいですね」 やはり。苦痛をこらえながら、予想が当たってホッとしている自分がいた。 「悪性かどうか調べるので、子宮がん検診していいですか?」 ( ; ゜Д゜)oh… がん検診は自治体の指定病院ならば2,000円で受けられるが、この病院は市外なので自費、5,000円はかかる。 しかし四の五の言っている場合ではない。 生理が重かったのはポリープのせいだったのだ。ひとまず、原因がわかったことに安堵した。原因不明がいちばん困るのだ。鼻中隔彎曲症も判明するまで一年以上不定愁訴に悩まされ、不安で仕方なかった。 悪性なわけないと根拠のない自信を持っていたとおり、検診結果は良性。いったん薬を中止して翌月の様子を見ることになったが、やはり量も痛みも変わらない。 「紹介状書きますので、総合病院で内視鏡検査を受けてください」 (((( ;゚д゚))))…なんかおおごとになってきたぞ? しかし「内視鏡検査」「ポリープ」などで検索すると、むしろ超音波より痛みがなく、小さいものならその場でサクッと取り除いてくれるらしい。 「なーんだたいしたことないじゃん」とノンビリ構えて、紹介状を携え総合病院へ向かった。 総合病院の医師はひとまず超音波で様子を確認すると、逆三角形の内臓の絵の真ん中にマルを書き、「ここにポリープか筋腫ができています」と教えてくれた。 実物大でほんの1センチちょっとだが、内臓のナカを塞ぐように生っている。それで出血が止まらないらしい。 「今後妊娠を考えているならこれだけ取り除くこともできるけど、再発することが多いんです。閉経が近い患者さんなら、子宮を摘出することをすすめるのだけど」 ( ゜Д゜) て き し ゅ つ だ と ? 予想を超えた内容に一瞬思考回路が固まったが、はっと我に返った。 毎月その日が来るたび、「もう嫌だ。もう取ってしまいたい」とぼやいていた。「おまえはアンジェリーナジョリーか。あれは遺伝的なガン家系で取る必要があったからや」という夫のツッコミまでがセットであった。 ☆☆ピコーン!☆☆ 私にもついに必要ができた! 「摘出して、何か不具合が出ることはないのですか?」 「卵巣は残るので大丈夫です」 「妊娠できるかできないかだけの話ということですか?」 「そうです」 「じゃ、摘出で!」 「え! いやでも、あなたまだ若いし…」 がぜん乗り気になった私を諌めるように、医師は言った。 「MRI検査を受けてもらうので、その結果が出るまで旦那さんとよく相談してください」 MRI検査は人生二度目だった。一度目は不定愁訴の原因を探るため10年前に脳の検査をした時である。狭い空間にもぐってガンガン音を聞かされた。今回はお腹の撮影なので頭半分はみ出していて圧迫感はないし、お腹が固定されているので何やら落ち着く。よって眠くなってくる。ガンガンうるさいのは相変わらずだが(医療技術は10年前より向上しているはずなのに、なぜこれはそのままなのだろうか)何度も寝落ちしかけた。おかげで風邪をひいた。 夫は摘出に反対した。 「本当に必要なのか? ポリープだけ取ればいいんじゃないのか?」とまた聞きの診察内容に懐疑的であった。「生まれつき在るものを取るべきではない」というのが彼の持論であり、私の下手なプレゼンでは納得してくれそうになかった。仕方ないので結果説明に連れていった。 MRIによる診断結果は「子宮筋腫」だった。 世の女性の三人に一人は子宮筋腫があるという。実際まわりでも耳にした。しかし摘出したという話は聞いたことがない。発症場所が問題のようで、外にできたら気づかないうちに大きくなってしまうこともあるが、私のように内部にできてしまうと、小さくてもすぐ影響が出てしまうのだそうだ。 「本当に再発するのですか?」という夫の質問に、医師はきっぱり答えた。 「半年から三年で再発します」 「じゃ、摘出で!」 医師のわかりやすい説明は私の百の説得よりよほど有効だった。夫があっさり態度を翻したおかげでとんとん拍子に話は進み、手術は年末と決まった。 PR |
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