時効の過ぎた凶悪事件の犯人がみずから名乗り告白本を出版する――衝撃的なイントロダクションで、あっという間に惹きこまれます。
顔出しして会見を行ったことで、一躍時の人となった曾根崎。もちろん世間には賛否両論渦巻くこととなりますが、彼はそんな社会の混乱もまるで楽しむかのように悠然と振る舞い、被害者遺族の前に現れたり、サイン会を行ったりします。
解決できぬまま時効を迎えてしまった無念をずっと抱え続けた、事件の被害者でもある刑事・牧村、事件を追い続けたニュースキャスター・仙道、そして被害者遺族、曾根崎の行動に振り回される彼らを中心に、物語は展開します。
だらだらしがちな邦画にはめずらしく、テンポ良く進んでいきます。中盤の衝撃的な種明かしも、冷静に振り返ってみれば牧村の行動がやや矛盾していたにもかかわらずそれを感じさせない演出がなされていたおかげでまったく予想がつきませんでした。その時点で仙道が真犯人であることは推測できましたが、トーンダウンすることもなく、ラストまで疾走感を失いませんでした。藤原竜也・伊藤英明・仲村トオルという濃いイメージのある俳優が、抑えた演技でその謎めいた世界観を表現していたおかげであるとも思います。とくに藤原竜也は素晴らしかったです。『カイジ』のような「動」に振り切った役柄も嵌っていましたが、こんな「静」の枠の中で感情の振り幅を見せることができるとは思いもしませんでした。
ヤスオーが韓国版を評価していたので日本版を観てみたのですが、映画作品としては日本版のほうが出来が良いが、こういうおどろおどろしい題材を扱うのは韓国の方が向いているとのことでした。刑事がゴーストライターで作家は刑事の妹の婚約者という種明かしはどちらも同じですが、韓国版は真犯人の動機には言及されていないようです。仙道のホワイダニットに重点を置いたラストは、確かに日本的な描き方であるかもしれません。
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