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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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『舞いあがれ!』
航空学校編が終わり、晴れて舞もパイロットに…と思いきや、時代がそうさせてはくれませんでした。
時代もののヒロインが太平洋戦争に巻き込まれてしまうように、舞が立ち向かうのはリーマンショック。内定直後の舞も、また町工場である舞の実家も無傷ではいられません。今までの朝ドラでは描かれてこなかったシビアな現実です。しかし戦争と同じように家族を失うことになるとは、想像もしていませんでした。
『カムカムエヴリバディ』のような、突然の父の死でした。
舞はパイロットになるものだとばかり思いこんでいましたが、どうやら風向きは変わりそうです。
厳しい訓練に耐えようやく得た内定を蹴ってまで、工場を守ることを選んだ舞。彼女にとっていちばん大切だったのは、自分の夢でも恋でもなく、父が大事にしてきた工場を守り抜くこと、逆風に立ち向かう母を支えることでした。
経営のけの字も知らないパイロットの卵が、同じく経営素人の母を手伝いねじ工場を継ぐというのは、はたから見れば無謀な転身です。しかし工場を愛してきた父を見て育った舞が、父の夢を継ごうと決意しみずからを犠牲にするのはごく自然な流れに感じました。思えば舞はずっと無謀な子でした。なにわバードマンのパイロットにチャレンジしたり、大学中退して航空学校に入ったり、訓練中も年上の仲間や教官に臆することなく対峙してきました。それはいつも舞が舞自身正しいと考え、出した答えでした。今回も、父や母のためではなく、舞が自分にとってそれがいちばん正しい道だと考えたのでしょう。
工場経営者とパイロット。冷静にみて、そんな恋人同士がこれからも関係を続けられるとは思えません。
柏木との別れは、まるで柏木が舞を振ったようなシーンになっていましたが、柏木からすれば、本音を明かしてくれないどころか電話も出なくなった舞の様子で、自分の居場所は彼女の心からなくなったと感じたのではないかと思います。つねに冷静でものごとを客観視できる柏木ですから、工場経営に関して自分が力になれることは何もないし、断腸の思いで夢をあきらめた舞のそばにパイロットである自分がいても逆に心が離れていくだけだと察したのでしょう。そして新入社員で大事な時期の柏木を自分の都合で振り回すことも舞の本意ではないはずです。
唐突に始まったふたりの恋でしたが、その終わりも唐突になってしまったのは少し残念です。しかし共同生活で初めての恋に落ちるというのは若さゆえの衝動でしょうし、もう少しふたりが大人だったら関係を続ける方法を見つけることもできたかもしれません。物理的な距離と実家の事情という壁を壊すには、お互い若すぎたのでしょう。時代は違えど、世相に翻弄されるヒロインとその恋人というのは朝ドラの典型的要素。舞と柏木もそのルートを乗り越えることはできませんでした。
と、いうことは、やはり最後に舞の隣にいるのは貴司くんなのか…? メッチャいい男かどうか微妙な一太の線も捨てきれないぞ…?
余談はさておき、兄の存在もここにきて重要になっています。悠人は朝ドラあるあるなダメ兄とは一線を画す、エリートで超優秀な投資家ですが、親からすれば万年反抗期、投資家という職業も含めて理解し難い長男です。それでも嫌いになれないのは、親からの電話は出ないのに妹からの電話は出たり、実家の隣のうめづ夫婦には素直だったりする、心底悪人ではないところ。リアルなキャラクターだと感じます。
幼少期から両親とはどことなく距離を置いていて、父とも喧嘩別れが最後の会話となってしまいました。そのことを舞に指摘されずとも悔やんでいる様子がありましたが、悠人が工場再生に何らかのかたちでかかわってくることは間違いないでしょう。福原遥とは実年齢では相当の差があるはずですが、ちゃんと兄妹に見えるあたりさすがジャニーズだなあと妙なところで感心してしまいました。
ラストでは舞が機長になっていたオープニングに戻るのか、なんだか疑わしくなってきましたが、あと三ヶ月、舞の人生の着地点がどこにあるのか見守っていきたいと思います。




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