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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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『ハヤブサ消防団』
田舎町を乗っ取ろうとすべく押しかけた、実際のあれこれを思い起こさせるような宗教団体に、ヒーロー戦隊のごとく立ち向かう消防団。ビジュアルだけですでにユーモアとシリアスが入り乱れ、そのバランスが絶妙でした。
毎週秘密のベールがひとつひとつ剥がされていく展開で、最後まで目が離せませんでした。中盤までは消防団の誰かが怪しい(これはある意味正解でしたが)、中山田が怪しい、とあれこれ考察がくり広げられたものの(我が家で)、どれも大ハズレ。しかし最終回にあきらかになったそれぞれの過去と未来は、どれもストンと心におさまるものでした。展子の本当の人生の歩みを知り改心した立木彩が防災無線で教団の罪を告白し、我を失った真鍋が立木たちを殺そうとして逮捕され教団は解散、一件落着したかと思いきやアビゲイルの後継団体は新たな聖母を立てて活動を始めていた…という、ハッピーエンドに含みを持たせるオーソドックスな終わりかたも、サスペンスらしくて良かったと思います。
実力派の役者たちが盛り上げてくれた中、もっとも印象に残ったのは杉森役の浜田信也でした。あとで調べると、今まで観ていたドラマにちょいちょい出演していたようなのですが、まったく憶えていません。おそらく、まるで違う役柄だったのではないかと思います。杉森の抑揚の少ない話し方、光のない目は、ホンモノの宗教団体の弁護士なのではないかと思うほどでした。いやホンモノは知らないけれど、そう思わせる説得力がありました。これからどんどんドラマのオファーが来るのではないでしょうか。

『VIVANT』
世間では考察合戦で盛り上がりましたが、ほとんどは空振りに終わったようです。我が家も例外ではありません。もしや意味深なシーンを入れることで盤外を賑わせる作り手の作戦? まんまと乗らされただけなのかもしれない…。
乃木がテントの一員となった終盤は、資金の流れやフローライトをめぐるやりとりがまるで『半沢直樹』のようで雰囲気ががらりと変わり、乃木&野崎コンビの緊張感(+ドラムの癒し)がなくなって、少しテンションが下がってしまいました。それでも芸達者な俳優たちとスピード感ある展開はやっぱり魅力的で、最後の最後まで集中して観られたのですが。
ベキについては、どれほど崇高な信念を持っていたとしても人の命を奪い結果的に孤児を生み出すテロ行為はどうしても正しいとは思えず、あまり感情移入できませんでした。ですが父親としての愛情を随所に滲ませるベキは非常に人間的でしたし、乃木もそれを全身で感じていました。ですから乃木がベキを殺害するラストは受け入れられそうにありません。乃木や野崎の意味深なセリフが示唆するように、ベキとその仲間は生かされたはずです。タイトル「VIVANT」の意味はそこにあったのでしょう。
ただ、良いドラマだったからこそ細かいところもひっかかってしまいました。乃木の二重人格設定は必要だったのか? 小日向文世をただの不倫おじさんで終わらせて良いのか? 黒須は別班員なのに表の姿で目立ちすぎじゃないか? テロリストの息子に見えないノコルやハッカーに見えないブルーウォーカーはもっと適役がいたのではないか? …等々。まあ、前ふたつは続編で解決すると信じます。ジャミーンが野崎になつかなかった理由や「奇跡の子」の意味も説明されていませんし。しかし早く撮影しないとジャミーン役の子が成長してしまいませんかね。

『らんまん』
万太郎と寿恵子の冒険は、植物図鑑の完成で幕を閉じました。
その謝辞には多くの人の名前が記されていました。数多の植物、そして数多の人々。この図鑑は、万太郎の人生そのものでした。かつては植物と自分のことしか見えていなかった万太郎が、周りの人びとによって己が支えられ生かされていることを知った。そして自分の使命は植物に名前をつけることではなく、植物の姿を後世に残すことだと気づいた。図鑑の完成とともに、万太郎の成長もまたうれしく感じました。
天真爛漫な万太郎に皆が巻き込まれていきましたが、唯一彼の天性の魅力に抗ったのが田邊教授。しかし彼にも彼の矜持があったこと、家族を愛するひとりの人間であったことが明確に描かれていたため、決して悪人とは感じませんでした。海外帰りの徳永も、植物を諸外国に対抗する手段として扱うような場面がありましたが、そういう考えを持つようになった背景が端的に表現されていましたし、台湾でのピストル携帯や震災後の自警団の描写など、さりげなくしかし明確に時代や人物像を映し出す脚本は素晴らしかったです。
寿恵子があの時代において受け身でもなく出張りすぎることもなく、万太郎と一緒に人生を走り抜けたヒロインだったことも、このドラマの質を上げた要因であったと思います。貧乏、子の早逝、震災とさまざまな困難に遭いながら、寿恵子はいつも前向きでした。『八犬伝』マニアの彼女のあこがれは八犬士さながらの冒険劇。万太郎のそばにいることで寿恵子もまた自分の夢を叶えられたのだと思います。呼び方が「万太郎さん」から時折「万ちゃん」になるのもかわいらしかったですし、対等なふたりの関係性を感じました。
図鑑の最後を飾ったのは、「スエコザサ」。ふたりの名を冠した学名に、これで永久に一緒にいられるとはかなく笑う妻を抱きしめ「愛しちゅう」。…こんなに悲しくも美しいラブシーンがあったでしょうか。バックに流れる『愛の花』の歌詞がまたふたりの生きざまそのもので、あふれる涙を禁じえませんでした。
ふたりの冒険を見守ってきた今は満足感しか残っていません。
時には脇役にスポットを当てつつ、中だるみする展開がひとつもなかった、濃密な半年間だったと思います。





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