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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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『オールドルーキー』
新町がサッカー選手への未練とスポーツマネジメント事業の魅力に揺れながら、現役選手の心に寄り添いひとつずつ新たな世界へステップを上がっている間は楽しめたのですが、正社員になるとひとつの決着が着いてしまったので、物語に抑揚がなくなったように思います。
ビクトリーの面々をクローズアップしたエピソードもありましたが、そこまで意外性は生まれず、最後まで定型的なキャラにとどまっていました。主人公である新町から視点を動かさなかったせいかもしれませんが、少しもったいない気もします。
「何かが起きるかも」とどこかで期待してしまっていたのは、日9といえば明確な敵役がいて仲間が裏切って…という展開が多かったせいかもしれません。最初はそれが高柳社長の役割なのかと考えていました。しかし果奈子の熱烈なファンであることが判明してクールキャラは崩壊。ヒールの可能性は消滅しました。それでも経営を優先し人情を切り捨てるような発言はあいかわらずで、最後までどっちつかずの存在だったような気がします。ラストの新町解雇→再雇用の流れもあまり高柳の心の動きが読み取れずに終わってしまいました(これは反町の演技力の問題かもしれないが…)。
綾野剛は良かったです。事前にはいろいろあったみたいですけれども…それを感じさせない好演だったと思います。

『拾われた男』
諭がドラマで当たり役をもらい仕事が安定して増え始めた終盤は、彼がずっと抱えていた兄や家族への複雑な思いを解消していく過程が丁寧に描かれていました。
生まれた順番で決まる兄弟の序列は永遠に逆転することはありません。子どもの頃の体格差は追いつけても、兄はずっと兄であり、弟はあくまで弟。自転車に乗って走っていった幼少期、長じてはつかみどころのない言動や行動、武志に振り回されてばかりだった諭は兄にずっと反感を憶えていました。
顔を合わせても相手を思いやることなんてできないのに、文字だけのメールのやりとりならなおさらです。単身アメリカへ渡ったきり祖母の死去の報にも応じなかった兄へ、諭は絶縁宣言を叩きつけます。
それきり、兄とはもうかかわることはないはずでした。
しかし数年後、諭の事務所に兄が倒れたという知らせが入りました。弟が日本で俳優をしていることを兄は周囲に喧伝していたのです。アメリカに迎えに行った先、諭が目にしたのは弱々しい兄の姿。こちらを煙に巻く態度は前と変わらないながら、アメリカでの兄の生活に触れるうち、諭の武志に対する感情は少しずつ変化していきます。
兄ぶりたい兄と反抗したい弟、互いに素直になれないふたり。考えれば兄弟とは不思議な存在です。生まれた時から一緒にいて、遊んだり喧嘩したり、長い時間をともに過ごしてきたけれど、長い時間一緒にいたからこそ生まれる反発心もあって、いつしか鬱陶しい存在になっていく。それでも見捨てることはできないし、本心から嫌いにもなれない。
結局、諭は最後まで武志と仲良し兄弟にはなれませんでした。太巻きも、楽しいふりをする家族も、苦手なままでした。そんな自分に、後ろめたさもありました。
しかし、兄弟って、家族ってそんなものなのかもしれない。居心地悪くて、苦い思い出ばかりで、素直になれなくて。でも、本当は羨ましかった。仲良くしたかった。素直になりたかった。
遠く薄くなってしまった記憶を、諭は思い出す。兄を泣きながら追いかけた。追いかけたのは、兄のことが好きだったから。道の先で、兄は待ってくれていた。兄もきっと、自分を愛してくれていたから。
仲野太賀と草彅剛が醸し出す空気感は絶妙でした。最初は実年齢差による違和感が拭えませんでしたが、終盤は仲良くないまま年齢を重ねた兄と弟そのものに見えました。気まずさから遠ざけていたのに時折ふっと近くなる距離感。どれだけ疎遠にしていても他人にはなれないのだろうなと思わせる兄弟の関係性が伝わってきました。
愉の視点で描かれたため、最後まで武志はつかみどころのない不思議な人間でした。その現実感のなさが草彅剛のイメージとも重なり、わざわざ歳の離れた俳優を起用した意図が最後になって理解できた時、「兄ちゃん!」と涙を流す愉と一緒に泣きました。
最初は、航空券を拾ったことで事務所に拾われ俳優界に発見された演技派俳優のサクセスストーリーかと思っていました。しかし物語の中で発見されたのは異国でひとり倒れた武志も同じで、もしかしたらこのタイトルは愉と武志両方を指していたのかもしれません。
後半は松尾諭という俳優の半生記であることをすっかり忘れ、仲野太賀と草彅剛の織り成す人間ドラマに没入していました。非常に完成度の高い作品だったと満足しています。



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