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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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最悪の出逢いから恋に落ちたふたり。夢に向かう道の途中で時にはぶつかり合い、時には支え合い、やがてそれぞれの努力は実を結ぶ…。
ミュージカル調で描かれるベタベタな展開、オープニングは渋滞の高速道路で始まる陽気な歌とダンス。暗い映画を観たあとに、連休最後くらいは明るく楽しく! と選んだこの作品でしたが、地上波放送の録画だったので吹き替えがイマイチだったのと、意外なラストにちょっと肩透かしをくらいました。
しかしあとあと反芻してみると、やっぱり高い評価を受けたことも納得の、心に深くしみいるミュージカルでした。
女優を目指すミア、ジャズに人生を捧げるセバスチャン。
LA、それは夢のような場所であり、もっとも現実的でもある場所。オーディションで瞬殺されるミアは悲しく、開店資金を貯めるため方向性の違うジャズバンドに参加するセバスチャンは切ない。それでもふたりはLAの夜空に夢を描く。恋というしあわせのかけらを握りしめ、また厳しい現実に立ち向かう。
夢も愛も、愛する人の夢も手に入れたい。そんな最高級の贅沢が実現するはずもなく、ふたりが選択したのは結局、互いの夢でした。しかし互いの手が互いの背を押さなければ、決して叶わない夢でした。
別々の場所で生きることを選んだ5年後、セバスチャンの店で再会したふたり。
セバスチャンの指が紡ぐメロディーが、もうひとつの未来を描き出しました。
セバスチャンがもしミアと一緒にパリに行っていたらという未来。そこでミアは現実世界と同じように女優として成功をおさめ、セバスチャンはパリのジャズバーで演奏家になる。子どもが生まれ、デートにも出かけ、しあわせなふたりの姿が描かれる。
でもそこに、セバスチャンの夢は存在しません。
夫を連れて偶然とはいえセバスチャンの店に入ってきたミア。ふたりの間に、どんな5年間があったのかはわかりません。正式にお別れしたのか、自然消滅だったのか。少なくとも、ミアはセバスチャンが自分の提案した名前で店を開いていることを知りませんでした。セバスチャンが隣の夫に気づかないわけはなく、ミアの胸に罪悪感が生まれなかったとは思えません。
そんなミアに、セバスチャンはもうひとつの未来を見せました。
自分の夢は叶わなかった未来を。
今こうして、自分は夢を叶えたんだ。だから、これで良かったのだと。
ミアはセバスチャンの夢を、セバスチャンはミアの夢を、それぞれが互いの夢を尊重した結果、恋は終わりを迎えたけれど、ふたりの愛は夢を実現させたのです。
ならば。もしかしたらふたりは、夢も愛も愛する人の夢も手に入れたのかもしれない。
つまりこのラブストーリーは、最高級に贅沢なハッピーエンドを迎えたのかもしれない。
太陽の下の賑やかな高速道路から始まり、静かな夜の小さな店で幕を閉じた、LAの片隅の物語。
切なくて、それでもしあわせで満たされるミュージカルでした。

【ヤスオーの回想】
 僕はこの映画を「ヤスオーのシネマ坊主」では最初5点満点で★3を付けました。そもそも僕はミュージカルが好きではないのでほぼ見ないのですが、職場の映画好きの部下2人が何回も勧めるので、職場の人間関係を円滑にするため渋々見たんです。この部下2人は女性なのですが、観た直後は、やっぱりあいつらが勧めるだけあって案の定女目線のストーリーだなあ、女が夢叶えてハリウッド女優になり、地元のしがないジャズバーの店長を捨てて金持ちっぽい奴と結婚して、うまいこと子どもまで作って離婚しても養育費がっぽり、まさに女目線の人生バラ色ハッピーエンドやんと。
 さや氏もこの映画を観ていて、ラストはびっくりすると言っていましたが、この監督は「セッション」を作った奴ですから、恋と仕事の成功の両方を成就させるような甘ったれた映画は絶対に作らないので、僕はびっくりしなかったですね。2人が結ばれないラストは恋愛至上主義のバカな女が怒るから、終盤にバーの店長と結婚する未来をミュージカルで流し、2人を再会させて、きれいに終わらせたのは上手いなあと思いましたが。
 しかし、「オアシス」と同じく、この映画もずっと心に引っかかるんですよ。こういう観てから何か月も心に残る映画は、今までの経験上★3レベルの映画ではありません。そして何回も思い出して考えていると、やっぱり僕の解釈が浅かったという結論に至りました。僕はヒロインが恋か夢かで夢を選び、最後恋を選んだバージョンをミュージカルで流して、ヒロインの冷たさをぼかしていると解釈していましたが、こんなくだらない解釈を一瞬でもしてしまった自分の感性のなさが恥ずかしいですね。
 恋バージョンの妄想ミュージカルは、2人が出会ったらすぐにキスしています。男の方は好きではないバンドの仕事はしていません。ヒロインの1人芝居は成功しています。これはすべてありえなかった過去ですからね。つまりこの流れの未来はありえないんです。この過去じゃないと2人がくっつかないということは、この2人はそもそも結ばれる運命にはなかったんです。そもそもこの2人は、決して互いへの愛情を夢より軽んじてたわけではないですからね。だから別れる以外の選択肢はなかったんです。しかし、この決して結ばれることのない2人が出会わなかったら、2人共間違いなく夢は叶っていないですし、幸せにもなっていないでしょう。
 選ばなかった方の現実ではなく、完全に妄想の中の世界だと考えると、ありえなかった過去が存在するのもつじつまが合います。くっついただの別れただの、恋より夢を選んだだの、そういう現実の世界に即したものではありません。そしてこの妄想ミュージカルは2人が再会した時に始まるので、妄想は2人が共有しているものです。
 そう考えると、この2人っていったいどういう間柄の存在なんでしょうね。別れていますし、おそらくもう2度と会うこともないだろうけど、2人の妄想の中では一緒に愛を育んでいるんです。まあ、「セッション」を作ったちょっと頭のおかしい監督ですから、愛情は、現実に一緒で過ごすとかは関係なく、2人の頭の中だけにある世界、つまり現実の世界とはかけ離れた次元のものと言いたいのでしょう。ちょっと何を言っているかよくわかりませんし、僕の愛情に対する解釈とはかけはなれたものですが、そういう理屈では解釈できないところに訴えてくる映画が、いわゆるいい映画なのは間違いないです。★は3から4にこっそり変えました。
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