もう四半世紀以上も前の映画。もちろん当時からそのタイトルは知っていましたが、鑑賞することなくそれだけの時間が経ってしまいました。ジョニー・デップもレオナルド・ディカプリオも今の面影はまるでない。ディカプリオの演技には目を瞠りました。この演技力がありながら『タイタニック』でただのイケメンボーイ扱いされてしまったのなら、そりゃ本人もショックだったでしょうね。
さびれた町で、家族の世話にあけくれるギルバート。かつて美しかった母は夫を亡くしたショックで過食症になり、弟は知的障害者。小さな店で働きながら、弟と母の面倒を見る。それが自分の一生だと諦めにも似た思いで生活してきた彼ですが、ある日各地を旅する少女と出会ったことで、人生観が変わっていきます。
日々を淡々とやり過ごすギルバートのように、ストーリーも淡々と進んでいきます。特殊な環境をあたりまえのように享受してきたギルバートは、ことさら自分が不幸であるとか過酷であるとかは主張しません。しかしそれは自分の本当の思いから目をそらしてきただけで、人並みに同年代の女の子に恋をすれば、若者らしいあらゆる欲求が目を醒まします。町に、家族に縛られて生きてきた彼は、はじめて自分の思いをぶちまけ、感情にまかせて故郷を出ようとします。
しかし、できませんでした。
この町を、家族を大切に思う心も、また本当の自分だからです。
自分を大切にすることは、何かを切り捨てることではない。
家族と自分しかいなかったこの世界の外には、あらゆる存在がありました。
恋人。彼女が通ってきたたくさんの場所。慈愛。優しさ。光とモノがあふれる大きなスーパー。弟が鉄塔のいちばん上から見た景色。母が自分に向けた愛。
自分を縛りつけていたのは自分自身であったことを知ったギルバートは、広がった世界の外へ旅立つ勇気を手に入れます。その先に、果てはありません。無数の選択肢から自分の手で選び取った未来へ向けて、進んでいくことでしょう。
自分を縛るものなんて、本当は何もない。
未来の可能性は無限であることを知る。それが青春なのだと思うのです。
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