連覇のかかる東海大はじめ、東洋大・青学大・駒澤大・國學院大の5校が有力と見られる今年の箱根駅伝。
しかし、レースは始まってみないとわかりません。
《1区》
東海大・鬼塚、青学大・吉田、東洋大・西澤選手ら、今年も有力選手が揃った箱根駅伝のスタート。5キロ待たずに遅れる選手が出てくるようなハイペースで幕を開けました。
11キロ付近で集団がばらけ始めました。三年連続区間賞を狙う西山選手も遅れてしまいます(しかし、このCM中に何かが起きるパターンは毎年のことなんですが、なんとかならんのかね…ワイプで映しておくとかさあ…)。いきなり波乱の予感。
集団の中にいた駒澤大・中村選手も後半になって遅れ出し、最後のポイントを前に差をつけられてしまいました。
9校に減った集団で迎えた六郷橋。各校追いつ追われつ、スパート合戦が見ごたえありました。集団をひっぱってきた青学大・早大あたりがふるい落とされ、抜け出したのは國學院大。このまま行くかと思いきや、あとを追ってきた創価大が残り300メートルで抜き返しました。創価大は初の区間賞、4年生の意地を感じたラストスパートでした。
西山選手が最後まで粘り切ったものの、東洋大はまさかの14位スタート。解説の渡辺康幸さんが「酒井監督らしくない」と手厳しいことを言っていましたが、西山選手は今年不調だったようですね。2区にはスーパーエースの相澤選手が控えているとはいえ、少し不穏な展開になりました。
駒澤大は9位通過…こちらも厳しいスタートです。
《2区》
各校エースがそろった花の2区。
相澤選手は前評判通りのハイペースで次々に選手を抜いていき、東京国際大・伊藤選手と並びました。伊藤選手は予選会日本人1位のタイムを持つ、こちらもスーパーエースです。4年生同士の並走は、10位明治大を抜き、個人走状態だった9位駒澤大も追い越していきました。おそるべし相乗効果です。
並んで8位へ順位を上げた時には、胸がぐわっと熱くなりました。このまま最後までいってほしい、そんな気持ちにもなってしまいますが、いつか決着の時はやってきます。苦しげにくらいついていた伊藤選手は、残り3キロの上り坂でついに力尽きてしまいました。
ずっと涼しげだった相澤選手の表情も、最後のほうにはさすがに歪んできましたが、塗り替えられることはないだろうと思っていた山梨学院大・モグスのタイムを上回る1時間5分台の区間新記録をたたき出しました。戸塚での精も根も尽き果てた背中に、エースの矜持を感じました。
今年はまれに見る高速レースです。最後の最後で先頭を奪った青学大・岸本選手のタイムも、1年生新記録。今年も恐ろしい1年生が現れました。
7人走だった1位集団から創価大が落ちていき、青学大とあわせて國學院大・東海大・早大の4校がトップ争いに残りました。5強に匹敵すると見られていた帝京大もしっかり続いています。
駒澤大はなかなかペースを上げることができませんでした。テレビに映らないので、大八木節も聞けません…。3区の田澤選手に襷が渡ったのは1分50秒差の13位。今度こそ巻き返しなるか…?
《3区》
青学大キャプテン・鈴木選手は早々に後続を引き離し、単独トップの座をものにしますが、区間2位の伊藤選手の激走を受けた東国大・ヴィンセント選手がぐんぐん近づいてきました。エースに続いて留学生を配置し上位を狙うのは面白い作戦です。11キロで首位に立ったあとは独走状態、すさまじいハイペースで1時間を切る区間記録を箱根史に刻みました。今年は本当にびっくりすることばかりです。
ここでも4年生同士のデッドヒートがありました。青学大・鈴木選手に國學院大・青木選手が追いつき、最後まで抜きつ抜かれつ。最後は青学大が2位を守ったものの、國學院大とのタイム差は5秒。帝京大が昨年までの区間2位のタイムで4位、連覇を狙う東海大が5位で続きます。
田澤選手はスーパールーキーの諱のとおり、ワクワクするような力強さでした。次々に順位を上げ、最終的には昨年の記録を抜く区間3位のタイムで6位浮上。岸本選手に続き、これからの箱根を湧かせるであろう1年生の登場です。
東洋大は10位に順位を落としました。往路2連覇中の常勝軍団に危険信号か!?
《4区》
3区が終わった時点で「往路の優勝争いは青学大と國學院大になる」とは渡辺康幸談。その言葉どおり青学大が単独2位に浮上し、約1分半差だった東国大をみるみる詰めていきます。粘りたかった東国大でしたが、残り7キロでかわされてしまいました。5区に山のスペシャリスト浦野選手の待つ國學院大も、これ以上離されまいとくらいついていきます。
しかし青学大・吉田選手は(も!)区間記録を超えるタイムでトップを守り、往路優勝を後続に託しました。最初で最後の箱根とは思えない、終始落ち着きを感じる走りでした。
國學院大は山の逆転劇を期待して、1分半差で浦野選手へ。
途中から始まった帝京大と東海大の並走は、結局小田原中継所まで続きました。連覇を狙う4位の東海大、結果やいかに。
駒澤大が6位を守った一方、5強の残りである東洋大は、まさかの区間最下位のタイムで14位。緊急事態です。
ここまでハイペースなレースながら、かつてのように往路から繰り上げスタートにはなりませんでした。各校実力が底上げされている証でしょう。
今年の箱根往路もいよいよ佳境です。
《5区》
昨年の台風で大きな被害を被った箱根の山。鉄道も寸断された場所で開催されるかどうかさえ心配でしたが、今年も大勢の観衆が見守っています。
開始3キロで東国大を抜き2位浮上した浦野選手ですが、青学大・飯田選手との差が思ったように縮まりません。トップをひた走る初山上りの飯田選手は後続の実力者たちにも乱されることなく、自分のペースを貫きました。結果的に昨年の区間記録を上回る区間2位のタイムでがっちり首位固め。竹石選手の欠場でどうなるかと思いましたが、原監督の適性を見定める眼力はさすがです。
最後の箱根で区間賞を狙った浦野選手ですが、二年連続の栄誉を手にすることはできませんでした。飯田選手と浦野選手が続けざまに灯した区間新のランプですが、そのタイムを上回って区間賞の栄誉をつかんだのは、東洋大・宮下選手。往路最後に、強豪校の意地を見せました。区間賞だけでなく、あわやシード落ちの順位を10位と6秒差の11位にまで押し上げたのです。まさに1秒を削り出していく、見る者の心を震わせる山の劇走でした。
《結果》
近年例を見ない高速レースを制し、トップで芦ノ湖にたどりついたのは青学大。状態の見きわめもさりながら、区間配置も完璧でした。復路にも有力選手を残していますし、総合優勝を迎える大手町の風景もはっきりと見えてきたのではないでしょうか。「やっぱり大作戦」などと軽めの口調ながら、出雲・全日本と他校の後塵を拝してきた原監督の勝利への執念を見た気がします。
初優勝を狙った國學院大は1分半差の2位。全員が安定した順位で走れた結果でしょうか。
3位に入ったのは東海大の猛追を受けながら逃げ切った東国大でした。予選会組の往路3位は立派な成績です。伊藤・ヴィンセント両選手に引っ張られるように、全員が粘りきった結果です。これぞまさにワンチーム。
4位の東海大はトップと3分差をつけられてしまいました。連覇を狙うには厳しすぎるタイム差です。スタートから自分たちが思うような展開に持っていけなかったかもしれません。
予想外といえば、東国大以外に明治・創価・早稲田と10位以内に予選会組が4校も入るという、戦国駅伝にふさわしいレースとなりました。そして優勝候補だった駒澤大はいつの間にか8位に…復路の大八木節と逆転劇を期待します。
しかしそれ以上に気にしないといけないのは後方のシード権争い。10位拓殖大から12位中央学院大までほとんど差がなく、駒澤大からも2分とありません。
厚底シューズが話題になっていたとはいえ、ここまで記録ずくめの往路になるとは思いもしませんでした。復路も何か予想外のできごとが待っているかもしれません。明日も早起きで待機です。
PR