平成最後の全日本。新星アリ、復帰アリ、今年も感動が盛りだくさんです。
《女子SP》 宮原選手が貫禄の首位。ジャンプはGPFからよく立て直したなと思います。国際大会で日本選手の後塵を拝することも増えたとはいえ、ジャンプも振り付けも年々精度を増しており、演技全体の雰囲気はやはり日本国内では圧倒的。ベテラン選手らしいパフォーマンスになってきました。 2位につけたのは技術点トップの坂本選手。いよいよシニアらしくなった演技に、追随を許さないジャンプの高さが加われば、昨年果たせなかった優勝も見えてきます。 3位は三原選手。やはりこういう柔らかな音楽が似合います。SP・FSそろえることができていればGPFにも出場できていただけに、全日本は雪辱の舞台となります。 怪我が心配されていた樋口選手ですが、ジャンプをすべて降りて僅差の4位。持ち味のスピードは欠いたものの、樋口選手にしか滑れない個性的なプログラムで観衆を惹きこみました。世界選手権を経て一皮むけたような印象があります。自分だけのスケートを手に入れたような、メンタルが強化されたとも言えるのかもしれませんが、日本では誰も見せたことのない世界を見せてくれる選手になりそうな予感がするのです。 靴のテーピングが合わなかったのか、紀平選手は5位スタートとなりました。がぜん注目を浴びてプレッシャーに潰されたとは思いたくないのですが…。GPFから日程も開かず、調整がうまくいかなかったのかもしれません。 3枠のゆくえはまだまったく読めません。 《男子SP》 羽生選手が欠場し、今年も孤独な戦いを強いられることになった宇野選手。衆目を一手に引き受けるかと思いきや、高橋大輔選手の電撃復帰によりプレッシャーは和らいだかもしれません。 6分間練習で足を痛めたという報道もありましたが、ジャンプは4T-3Tが4-2になった以外は完璧で、演技後はガッツポーズが飛び出しました。成功したらニコッ、失敗してもてへぺろで終わっていた宇野選手にしてはめずらしい感情の爆発でした。ライバルなしの環境とはいえ、今までとは違う心境で臨んでいたのだろうなあと感じます。 GPSに参戦していたシニア勢がのきなみ4回転に失敗し、2位には31歳の高橋選手がつけました。5年のブランクがあって試合に出ることだけでも驚きなのに、3Aをはじめジャンプを決め、さらに見る者を惹きつけるステップはなお健在。試合中継のゲストに出ていても、解説というよりは選手目線で感情移入して話している姿を見て、本田さんや織田さんのように解説に徹することは向いていないのかなと感じていましたが、まさか現役復帰するとは思ってもいませんでした。リンクに思い残すところがあったのか、このピリピリした雰囲気を味わいたかったのか、クルム伊達公子選手のように羽生・宇野をのぞく若手に活を入れたかったのか真意の程はわかりませんが、今はこの舞台で高橋選手が見られることに浸ります。 4位にかろうじて田中刑事選手がつけた以外は上位にジュニア選手が続きました。羽生選手は選出されるだろうし、宇野選手も間違いないとしても、世界選手権の残り1枠はいったいどうなるのか…。 《女子FS》 見ごたえのある優勝争いでした。とにかくひとつのミスも許されないという緊迫した中の最終滑走で、見事に演技をまとめあげた坂本選手が歓喜の初優勝。昨年も堂々と滑りあげましたが、較べると演技全体の差は歴然。この結果が世界での得点にもつながればいいのですが。 優勝最右翼と目されていた紀平選手は、わずかに届きませんでした。それでもシニア一年目にして演技中にミスをリカバリーするクレバーさには舌を巻きます。演技全体から漂う雰囲気ももはや貫禄さえあり、まだまだ成長途上にあることを思うと、これからどのような演技を見せてくれるのかそらおそろしくさえあります。 全日本五連覇を狙った宮原選手でしたが、若手の勢いに阻まれるかたちとなりました。さすがの宮原選手も緊張していたでしょうか。めずらしく大きなミスが出てしまいました。キスアンドクライでは点数が出た瞬間唇を噛みしめ、表彰式前では談笑していたかと思うとふと目をそらして真顔に。過去四年にはなかった、いちばん最初に名前を呼ばれる表彰式に、悔しくてたまらないといった表情に見えました。ミス・パーフェクトが感情に彩られた瞬間を見て、なんだかわくわくしてしまったのです。これからもまだ宮原選手は高みをめざして、前を向くはず。そしてもっと豊かな演技を見せてくれるはず。 三原選手は惜しくも表彰台に届きませんでした。天使のように見るものを幸せにしてくれるスケートでしたが、得点に結びつけるにはあと一歩なのかもしれません。樋口選手はやはり怪我の状態が芳しくないようでした。SPはとても良かったのですが…無理せず来季に切り替えてほしいです。 ただ、上位争いに絡まなくても、この全日本でいちばん心に残ったのは細田采花選手の3本のトリプルアクセルでした。 一度は引退を決めながら、紀平選手に誘われて練習するうち跳べるようになった3A。昨年はフリーに進めず披露できなかったそのジャンプを、今年はショート・フリーとあわせて3本、完璧に回りきりました。演技後の涙。悔いなく滑りきった満足感がこちらにも伝わってきました。あきらめないこと、続けること。それがいちばん難しいからこそ生まれた美しい涙でした。現役を続けるかどうかはまだこれから決めるとのことですが、細田選手の未来に光あるよう祈ります。 《男子FS》 宇野選手は最初のジャンプから本調子でないことがあきらかでしたが、後半から盛り返し、魂を感じる熱演となりました。演技後のガッツポーズからも、「宇野昌磨という生き方」というコメントからも、宇野選手の変化を感じます。こんなところまで羽生選手を追わなくても…という気はしますが、来年こそはふたりの火花散らす戦いが見たいですね。 そこに割って入るべき選手が結果を残せなかったことは少し淋しい結果となりました。田中選手はオリンピックからこのかた、辛そうな表情しか見られていません。世界選手権では納得の笑顔が見られるよう願います。 友野選手もフリーでは真骨頂ともいえる観客を惹きこむ演技で沸かせましたがジャンプミスが響き、今年自力で勝ち取った残り一枠を手放すことになってしまいました。 四回転を決めかつ演技全体の完成度をまとめないと戦えない時代。島田選手や鍵山選手、佐藤選手といった今後が楽しみなジュニア選手の登場や、山本選手の復活の四回転もありましたが、この大会話題をさらったのはなんといっても高橋選手。果敢に挑戦した四回転は失敗に終わりましたが、世界一のステップは健在、スピンはむしろ現役時以上に洗練されていました。ラストも体力的にきつそうでしたが、やはりショーで見る高橋選手と競技会での高橋選手が見せる表情はまったく違う。そこには、疲労困憊でも満足感、そして思うような演技ができなかった悔しさがありました。世界選手権は辞退するも、競技続行を宣言しました。もう二度とリンクに思いを残したまま降りたくはないのでしょう。本人が満足するまで、挑戦の日々を見届けたいと思います。 今年のフィギュアシーズンもこれで半分。 これ以上怪我なく、選手たちがシーズンを終えられることを祈ります。 PR |
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