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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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『海のはじまり』
『silent』のスタッフで制作されただけあって、『silent』の優しく切ない空気感がよみがえってくるようです。
脚本家が「目黒蓮主役で月9ドラマを書いて」と依頼を受けたそうですが、夏のキャラクターは目黒蓮にぴったりです。優柔不断で受け身になりがちな心弱さ、彼女が妊娠したとわかって産む選択以外持っていないある種の不器用さ、幼い海にも真正面から向き合う生真面目さ。類を見ないイケメンなのに、どこにでもいそうなひとりの平凡な青年に見えます。
水季の変化に気づかず彼女の嘘にあっさり騙されてしまう若さゆえの失敗は、胸がギュッとつかまれました。大人になれば言葉の裏を探ることも相手の立場になることもできるけれど、二十歳そこそこの学生にそんなスキルがあるはずもなく。
そのまま終わっていたならば、ひとつの青春時代の思い出のはずでした。
しかし彼女は知らないところで自分の子どもを産んでいた。名前は海。彼女が大好きだった海の名前。
初回の放送後、「ホラー」という感想がSNSで上がっていたことが話題になりましたが、「ホラー」とまでは思わなくとも、正直水季の選択には納得できませんでした。
おそらく受診時に何かしらあって手術をせず、父親になると言うであろう夏を突き放し、ひとりで産むため姿を消したところまではわかるのですが、それならば夏の存在は最後まで隠すべきではないか。そしておそらく自分の命が長くないことを知り、さほど遠くに住んでいない夏の居場所を海に教えたのでしょうが、もし海と夏が接触した時に夏が家庭を持っていたら互いに苦しむことになるであろうに、水季の行動はあまりにも自分勝手すぎやしないかと思ったのです。
確かに人は自分勝手なものです。登場人物の皆それぞれ、自分勝手な面がほのめかされます。海の祖母である朱音も、何も知らなかったことをわかっていながら夏に事実を突きつけ、海に懐かれる弥生を見て心穏やかにはいられず厳しい言葉を投げかけてしまいます。傷ついた弥生に「楽しかったね」としか言葉をかけられない夏も、「楽しかった」で終わりにして弥生をあくまで外野に置こうとするのは、弥生の心を慮っていないある意味自分勝手な言動です。そして「外野」から水季のいるはずだった場所に入り込もうとした弥生もまた、無自覚ながら自分勝手な人間なのです。
他者と自己の交わりによって生じる複雑な感情を必死に消化しようとする人びと、その生きざまがそれぞれ心に響いてきます。そしてこの物語の主人公は夏ですが、朱音と弥生の存在感が際立っています。水季も含めて、生と死をその身体で生み出すことのできる女性の性を描きたいのかなと感じます。

『降り積もれ孤独な死よ』
漫画で無料の部分だけを読んだら非常に面白く続きが気になっていたので、ドラマ化されると聞いて楽しみにしていました。
おどろおどろしい雰囲気は同じ日テレ系の『ボイス』を思い出します。登場人物はやさぐれた主人公やきりりとした女性上司、不思議系美少女などステレオタイプなキャラクターばかりですが、大量殺人事件の犯人は誰なのか、屋敷にはどんな謎が隠されているのか、ミステリードラマとして楽しんでいきたいと思います。

『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』
BSで放送された当時、評判が良かったので見逃したことを後悔していました。今回の放送はやや短縮された編集版のようですが、カットされていることに気づかなかったほど満足しています。
学校では三軍、父は死亡、弟はダウン症、母は車椅子。はたから見れば七実の現状はかなりのハードモードで、いくらでもお涙頂戴にできそうですが、七実の日常はカラッとしています。放課後に彼氏とデートしたり、一軍女子をSNSでハメたり、嘘泣きで遅刻を見逃してもらったり、大道芸人を目指して英語を猛勉強したり、それなりの青春を送っています。
しかし、それでも時には感情が爆発してしまうこともある。下半身が動かなくなり未来に絶望する母を前に、自分が手術の同意書にサインしなければ母が苦しむこともなかった、一緒に死のうと泣き出す七実は、しっかりしているようでやはり十代の女の子でした。笑ったり、泣いたり、現実に向き合ったり逃避したり、家族に怒ったり優しくしたり、普通の十代はそんなもの。七実の現状は普通ではないのかもしれないけれど、七実はあくまで普通なのです。
普通に生きる女の子の話なのに、なぜか涙があふれてしまう。
やっぱり「普通」はいとおしいものなのです。
ドラマや創作ものは非日常であるからこそ面白いはずなのに、心揺さぶられるのはいつも普通に生きる人びと。「普通」とは、自分に素直に生きることだと思います。それこそが本当はいちばん難しいのかもしれません。




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プロ野球&連ドラ視聴の日々さまざま。
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