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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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『季節のない街』
仮設住宅の新たな住人である半助の目から見た、そこに住む人びとと日常。「ナニ」から12年経ち、そこは外部からは半ば忘れ去られた場所になっています。ですが夫が入れ替わる夫婦や子どもたち皆父親の違う家族、ホームレス親子など、外部では「まともでない」とされる人たちがごく自然にその空間に溶け込み、日々を暮らしています。
彼らを観察し報告するのが半助の仕事。しかし、ホームレス親子の塒を市が撤去したことを発端に、仮設の街に徐々に外部の風が吹き込むようになっていきます。
コメディタッチだった物語も、暗い影を纏い始めます。医者を呼ぶことができずホームレスの息子は亡くなり、タツヤの兄を盲目的に愛する母はタツヤをひとり残して仮設を去り、叔父に襲われ妊娠したかつ子は彼女を想うオカベを刺してしまいます。
その頃「まともでない」はずの人びとは、いつしか愛すべき隣人になっていました。「まとも」な外部が仮設住宅からの退去計画を推し進め、半助は知らずにその片棒を担いでいたのです。すでに「まともでない」側に回っていた半助。立てこもりを決行した子どもたち、乱闘の末火事を起こした住人たちとともに、「まとも」な側を相手に大立ち回りを演じます。
大暴れで幕を閉じた仮設生活。更地になったそこを去った彼らは、素知らぬふりで暮らしています。しかしそこでの生活は、記憶はなかったことにはなりません。街のシンボルでもあった大漁旗を身に着けた半助はその日々を文章につづります。編集者からはコンプラ的にアウトと判断されてしまいましたが。
生きていくことは苦しくて、難しくて、それでも笑えばきっとあかるい明日がやってくる。最後、かつ子は笑っていた。半助もタツヤも笑っていた。あの場所はなくなったけれど、きっとこれからも皆笑って生きていくのだろうと思う。もう二度と会うことはないだろう。けれど、そう信じている。
笑いがいつしか涙に変わるクドカン節。懸命だからこそ滑稽な人間の性を、軽妙に巧妙に描いていました。生命力あふれる街の日常の中にたったひとつ描かれた死のもたらすインパクトは強烈で、流石のバランス力には唸らされました。メインキャストのハマり具合も余韻を残すラストも素晴らしく、最高品質の作品を味わえたように思います。

『アンチヒーロー』
テンポの良さと緩急のついた演出、わかりやすい悪が最後に成敗される安心感は日9ならでは。複数人が担当したという脚本も破綻なく、あれこれ考察しながら楽しんで観られる作品でした。
名前の「色」がキーポイントなのは早い段階から気づいていましたが、緑川がいつこちら側に寝返るのか最後までハラハラさせられました。伊達原がやりこめられるところは(野村萬斎の顔芸も含めて)痛快でしたが、してやったりのはずの緑川には悲愴感がありました。桃瀬の遺志だけでなく、男社会で戦う必死さのあまり人道を外れた瀬古判事の無念も、緑川は背負っていたのです。明墨もまた、志水とその家族の人生を狂わせた罪悪感を背負い彼の冤罪を晴らす使命のために生きてきました。それはそのまま志水家の命の重さでもあります。朝ドラ『虎の翼』のヒロインも弁護士ですが、どちらも法を扱う者の矜持がしっかり描かれていて、背筋が伸びるような思いがします。
彼らの執念が結実し、志水は釈放されましたが、事件の真相は明らかにはなりませんでした。同じく冤罪事件を取り扱った『エルピス』でも真犯人は野に放たれたままでしたし、日曜劇場とはいえども、現実の冤罪事件の被害者を慮ればこれで良かったのかなとも思います。
ちなみに「真犯人は青山だ!」と断言していた自分…。伊達原が明墨の事務所に持ってきた花束が青と白だったことから、白木と青山が敵側。しかし白木が寝返ったのが最終回前だったので白木は囮、つまり青山がラスボスだと推理したのです。結果的には大ハズレでしたが…。中の人(林泰文)が二面性のある俳優ですし、最後に弁護士の妻(山本未来)をチラ見せしたのも何やらいわくありげなのですよね…。ただ、冤罪事件というテーマを考えれば続編はなくていいかなという気もします。

『オードリー』(承前)
いやー、24年前の作品とはいえツッコミどころ満載で、毎朝大笑いしています!
なぜ錠島役に一茂を起用したのでしょうか。黙っていればカッコ良いですし、元スポーツマンですから殺陣もさまになってはいますが、いかんせん演技力が…。一茂というイメージが邪魔して少年院あがりの戦災孤児には見えないというだけならまだしも、セリフを発するたび、いや立っているだけでも棒演技が目について、美月が言う「才能がある」役はさすがに無理がありすぎます。美月も美月で表情が乏しく、なにゆえ錠島を、いったいどのタイミングで好きになったのかまったくもってわかりませんでした。錠島はめっちゃ構ってちゃんだし、美月への仕打ちはもはやDVだし、イジメから庇ってくれたことだけが理由ならそれは危険すぎるぞ…。そういうダメ男に心を奪われ道を誤る若気の至りを描いているのなら、逆に上手いなと感じますが。
美月を椿屋に縛りつけようとする滝乃には同情できませんでしたが、錠島と別れさせようとする滝乃には「いいぞ! もっと言え! 目を覚まさせろ!」と応援してしまいます。実両親も美月を奪われるだけあって今ひとつ頼りないですし、もはや両家でまともなのは梓だけなのでは…と思えてきます。
あ、杉本と幸様もまともな部類でした。堺雅人と佐々木蔵之介はこの頃からさすがの安定感。このふたりのどちらかが錠島役なら(プラスもう少し演技力のあるヒロインなら)見栄えがしただろうに…と惜しまれます。
着地点がいまひとつ見えてきませんが、ドラマで笑って、SNSで共感あるツッコミを見てさらに笑って楽しんでいます。





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