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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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『おかえりモネ』(承前)

パラアスリートの鮫島をサポートすることでスポーツ気象にかかわり、さらには中継キャスターとしての第一歩を踏み出したモネ。菅波との距離も徐々に縮まり、順風満帆に見えた東京生活ですが、新たな暗雲がその行く道を暗くさせます。
光があれば陰がある。
ただ、モネは決して光ではありません。震災という過去、そしてそれによって生まれた罪悪感は彼女の心にずっと暗い陰を落としてきました。罪悪感から始まった今の道だからこそ、迷いも生まれる。しかしモネは逃げることも間違いでないと諭す言葉に支えられ、自分の選んだ道は正しいと信じ直し、光の方へ歩いていきます。出発点は間違いなく暗闇なのです。
しかし未知はそうは思わない。姉は島から逃げたのに、いつの間にかテレビに出て、親の自慢の娘になっている。島から逃げず大学進学もせず島の仕事に就き、優秀な職員としてこれからも島のために働き続けるはずの自分は、いつの間にか姉の光の陰になっていると感じている。親から向けられる愛情や関心の差に敏感な姉妹間にはただでさえ複雑な嫉妬心が絡まるのに、そこへりょーちんをめぐる想いや震災時の共感性の欠如もあって、未知の怒りの原点は複雑です。
モネも思いをぶつければいいのに、震災の時未知を孤独にした罪悪感からそれができない。そんなモネの罪悪感すら、ひとりですべて抱えていると思い込んでいる未知にとっては「ずるい」のかもしれない。モネ、そして未知の涙は、まだ大人として歩み寄れない未熟なふたりにできた距離そのもので、あまりにも痛々しい。
ドラマにとって言葉は大事なファクターです。しかしこの朝ドラはそれをギリギリまでそぎ落とし、真意は言葉によって語られません。モネも、未知も、りょーちんも、菅波も、皆心のすべてを他者に明かすことはしません。しかし人と人は、言葉がなくても相手の思いの端緒を感じ取ることはできます。それがすべてでないにしても、それをきっかけに心はつながる。少しずつ、その距離は埋まる。モネと未知も、きっとこれからなのだと思います。震災をきっかけに生まれてしまった姉妹の乖離は、隠してきた感情を相手に向けることによって埋まっていくのではないでしょうか。
亮と新次親子もまた、震災の喪失感から歩み出せずにいます。行方不明の美波の母は、老い先短い自分があの世に行った時のことを考え、美波の死亡届に判を押してほしいと望む。しかしそれは自分が妻を殺すことだと、ふたたび酒に溺れてしまった新次。父を思い、母を思い、船に乗ることを選んだ亮は、何もかもがつらくなり船を降りてしまいます。
モネも、未知も、亮も、若い彼らは「誰かのため」にその道を選んだ。大人たちはそんなこと望んでいないのに、震災が彼らにその道を選ばせてしまいました。莉子が言ったように、「誰かのため」というのは、実は「自分のため」なのです。それに気づけば、きっと新しい世界も見えてくる。モネは莉子や菅波、祖父の言葉に救われたけれど、早く未知や亮にもその瞬間が訪れてくれればと思います。
あまりにも心の痛む週末となりましたが、前半はモネ&菅波のかわいらしい恋模様が描かれました。はっきりとは口にしないものの、モネへの気持ちが高まっていくにつれ、なぜかどんどん恋するヒロイン化している菅波。週末会う約束しただけでドヤ顔したり、デートにはちょっとオシャレなシャツを着てきたり、父親に会って頭を下げられたことも追い風になったか、もはやすっかり彼氏気分ダダ漏れ。奥手のモネには決定的な言葉が必要だと思うのですが(いわゆる「つきあってください」「はい」のやりとり)大丈夫なのか…? おまけにデートはお流れ、亮の上京と、菅波にとっては波乱の恋路になりそうです。
亮の事情はいったん置いておいて、「果たして亮はモネを好きなのか」問題です。彼氏がいると聞いた時の真顔や、モネには気持ちを吐露するあたり、他の幼なじみとは一線を画した存在になっていることは確かでしょうが、なんだか蛇足の展開になりそうで不安です。おそらく震災で抱えた重荷のことを告白できるのは、関係者でありながらあの場にいなかったモネだけなのかなという気がします。その時の感覚を共有した他の友人に自分だけが苦しみを吐き出すわけにはいかず、よけいなことを言わず話を聞いてくれるモネには話しやすいのかなと。もちろんそれを恋と呼んでも不思議ではないのですが、そうあってほしくはないです。未知の片想いという設定がありながら亮の心にモネを配置するのは残酷です。完全に菅波に捉われているモネの心が、今さら亮に変わるとも考え難いですし…。ただ、亮の心に寄り添える誰かは必要です。それがモネなのか未知なのか…願わくば、新次であってほしい。父親として、苦しむ我が子に向き合ってほしいです。


『青天を衝け』(承前)
時代は明治へ。栄一もパリから帰国してきました。
栄一不在の間、日本は大政奉還そして戊辰戦争と、激動の時を刻んできました。
当然ながらリアルタイムで他国の現状を知ることができない時代。栄一は、ひとの口から何があったかを聞くことになります。観る者も栄一と同じ目線で、慶喜、そして平九郎の顛末を知ることになりました。
草彅剛演じる慶喜は、英知に優れていたがために時代に翻弄されざるを得なかった悲しみの将軍像を体現しています。裏切りと暗躍渦巻く京に放り込まれ、生涯の友のようだった忠臣をも失い、時代の奔流にもまれ続ける我が人生。それでも運命を受け容れることを覚悟したその姿は、崇高なまでの透明感に溢れていました。そんな彼に心惹かれて、栄一も攘夷の志を捨て、海の外へ飛び出したのです。
慶喜と栄一が、いったいどんな再会を果たすのか。敗将となった慶喜は、そして見立て養子を失った栄一は、何を語り合うのか。
戦は、さまざまな人の命を奪っていきました。消えゆく江戸に絶望した川路聖謨はみずからを拳銃で撃ち、新しい世を目指していた小栗上野介は同じ新しい世を求めたはずの薩長に首を斬られました。そして栄一の子となった平九郎。武士になりたいという若者らしい憧れは抱いていても、彼の生来持つ心やさしさは、戦など無縁の血洗島でていと所帯を持ち、お蚕様を育て畑を耕す人生のほうが向いていたのかもしれません。もちろん、彼を養子に向かえた時は、こんな結末が待っていようとは栄一も予想だにしなかったでしょう。時代の歯車は誰もの想像を遥か超えるスピードで彼らを巻き込んでいったのです。
そして戦はまだ終わっていません。北の大地で、今も戦う者たちがいます。
幕府軍の一員として刀を振るう喜作。そして土方歳三。絶望的とも言える抵抗を、彼らは続けています。幕府への忠誠心か、薩長憎しか、大義名分はきっとそれぞれあるでしょう。時代に翻弄されてもなお、己の心にあるそれぞれの義は最後まで守り通さずにはいられないのです。そして討手に選ばれたのは慶喜の弟、昭武。古き世の残党は古き世みずからの手で滅ぼせというのです。
無血開城により江戸の町が焼失することはなかったものの、明治維新で多くの血が流されたのは言うまでもありません。
栄一が新しい世で羽ばたくには、まだもう少し辛い展開を乗り越えなくてはならないようです。






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