『まんぷく』
BK制作らしい「ベタ」な演出が光る原点回帰の朝ドラ。実在の創業家夫婦をモデルにしているだけに戦争も苦労話も我慢して待つことができますし、目の保養になる美男美女ぞろいのキャストで、安心感があります。 はじめてのママさんヒロインとなった安藤サクラ。内田有紀や松下奈緒、橋本マナミら正統派美女に囲まれて、作品内でも「美人にもいろいろあるから」と容姿における同等の評価は受けていない模様。ただいわゆる朝ドラヒロイン的な「かわいいけどドジっ子でおせっかい。でも一生懸命がんばります!」キャラではなく、無邪気で気立てがよい末っ子気質と、気配りができて教養もあるしっかり者の両面を備えている女性として描かれているので、違和感がありません。映画女優としてキャリアを積んでいるだけあって、演技も落ち着いています。 ただ落ち着きすぎていて、朝ドラっぽく流し見していると、福ちゃんの心の動きに気づかないことがありました。機械オタクの萬平さんが福ちゃんを好きになる経緯はわかりやすいのですが、そのアプローチにあっさり笑顔で応える福ちゃんがなぜ萬平さんに惹かれたのか、よくわかりませんでした。ただ、カットごとに抜き出してみると、福ちゃんは最初から萬平さんをちゃんと恋する少女の瞳で見つめていたのですね。 萬平さんが憲兵に捕らえられたと知っても仕事に穴を開けることなく日常を過ごしながらも機転を利かせてその道の権力者に助けを求めるところなど、福ちゃんのしっかり者ぶりが活かされていて、どれだけ拷問されてもみずからの信念を曲げない萬平さんの姿と相まって、今後のまんぷく夫婦の生き方を示しているかのようです。 三週が終わり、咲姉ちゃんは亡くなってしまいましたが、克子姉ちゃんはもちろん、真一さんや忠彦さんもまんぷく夫婦を助ける存在となりそうです。忠彦さんが鳥の絵を描くのが好きというあたりは、チキンラーメンのアレに関連しているのでしょうかね…。愛之助(加地谷)があれでフェイドアウトなんてことにはならないだろうし、懲役400年(by華丸)の六平は戦後の闇市あたりで再会しそうです。 真一さんや忠彦さんに赤紙が来たのはショックでしたが、萬平さんも徴兵されてしまいそうですね。戦争が色濃くなってくると辛い場面が続きます。中でもいちばんショックだったのが、蘭丸(白馬)の出征です。みんな帰ってくるだろうから、蘭丸にもぜひ生きて帰ってきてほしい。また牧先生を背中にのっけて登場する場面があったら、確実に泣きます。きっと蘭丸も無事であると信じています。 ところではるか師匠、写真屋役で朝ドラに登場するの何回目…? 『SUITS/スーツ』 アメドラのリメイクと聞いていましたが、確かにキャラやセリフ回しがアメドラっぽい(見たことないけど)。ただオリジナルそのままに演じても違和感がないだろうキャラは蟹江だけですね。美女に弱い鈴木も、アメドラの若い主人公にありがち(見たことないけど)な造型ですが、中島裕翔の容姿がもともと真面目系なのであまりハマっていません。悪友に運び屋をやらされたり甲斐に振り回されたりする青二才の雰囲気はあるのですが。 織田裕二はああいう人を食った役回りがうまいですし、鈴木保奈美演じる所長とのツーショットは実に美しい。『東京ラブストーリー』の頃とはさすがに較べられませんが、どちらも良い歳の重ね方をしているなあと感じます。しかし甲斐のデスク周りに並んだアメフトやメジャーリーグのボールコレクションは日本人にはちょっと不釣り合いかなあ。 テンポが良くて話もわかりやすく、展開を考えずに気楽に楽しんでいます。 『獣になれない私たち』 一話の終盤まではシビアな展開が続いて、観ているのが辛かったです。 もちろん晶みたいに仕事ができるわけでもないし、あんなえげつないパワハラやセクハラを受けたわけでもありませんが、多かれ少なかれ「いろいろ抱え込んでパンクしそうになった」経験は、誰にしもあると思います。他人に仕事を押しつけて平気な顔でいる人や、相手の気持ちなど考えずに思ったことを全部ぶつけてくる人や、自分のたった一部分を切り取って人格を全否定してくる人や、都合が悪くなると聞こえないふりをする人。そういう人たちにも愛想を振りまかずに生きていけるほど強くもなくて、言いたいことを全部心の奥に押し込めて、にっこり笑ってやり過ごして疲れて帰ってダウンして、それでも朝はやってきて。そんな毎日をくり返していたら、いつしかストレスはコップの縁からあふれでる。 胸が痛いままだと視聴を続けられなくなるところ、最後の最後で晶は新しい服と靴で武装し、反撃を開始しました。溜飲が下がったものの、次の回で晶のレジスタンスがなかなかうまくいかないところもまたリアル。 そんな晶の生き方を否定した恒星。晶とは対照的に要領よく切り捨てるべきところを切り捨てながら生きています。だからといって、それが幸せと直結しているわけではない。彼女にフラれて、傷ついていても弱っていないふりをする。それが自分を守るすべだと思っている。晶とは対照的でいて、それでも同じ、平気なふりをしていても中身はボロボロ。 観る前は新垣結衣と松田龍平のラブストーリーと思っていたので、晶に彼氏がいることに少し驚きました。しかし京谷の家には母親が嫌がっていた元カノが居ついている。最近、優しく見えて優柔不断なだけの男を演じさせたら田中圭の右に出る者はいませんね。黒木華もどう絡んでくるのか、今後の展開が想像つきません。 『昭和元禄落語心中』 岡田将生が色っぽい…。 「芸事」には人生の機微が詰まっている、と思います。歌舞伎も落語も三曲も。だからこそその世界で生きてきた人間には、何とも言えない色気が漂う。見せかけのそれではなくて、ちょっとした所作や目線、声音のここそこに、相手をぞくっとさせるような魅力があります。 もともとどことなく陰のある美しさを持った俳優ですから、過去を背負った八代目八雲の青春期から老境までを演じるには適役かもしれません。ただ落語家の大師匠というには滑舌が悪い…頼朝をやっていた頃からあまり変わっていない…。 それはおいておいて、陽の空気を全面に出す助六との対比が明確でわかりやすいです。山崎育三郎はミュージカルをやっているだけあって落語の場面でもリズム感があります。まだ「心中」の場面は出てきませんが、原作は読まずに展開を待とうと思います。 タイトルどおり一貫して昭和の話のようですが、竜星涼と成海璃子も昭和風の雰囲気が出ていて実に良いキャスティング。ゆずの主題歌も透明感があって作品の世界観にぴったり。小道具に至るまで懐かしい風景で、昭和の人間としてはじんわり雰囲気にひたれる作品です。 PR |
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