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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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『あなたのことはそれほど』
原作の1巻だけ読んでみましたが、登場人物の誰にも感情移入できないわりに、妙にリアルでした。
激しい愛情なく結婚する。
罪悪感なしに不倫できる。
現実は、およそそんなもの。
しかし作り物のドラマでは、受け手側の感覚を揺さぶるために、なんらかのアレンジを施します。結婚は恋人同士が確かな愛のもとで行い、見ている側も幸せを感じられるものとなる。不倫は罪悪感に苦しみつつも抑えられない激情に見ている側も心を寄せ応援してしまう。どちらも現実社会においては非現実的で、だからこそ「ドラマ」チックになりうるのです。
しかしこのお話は違う。初恋の人と偶然再会して、ホテルへ直行。帰宅後、夫に平然と「ただいま」と言いながら、心の中では幸福感にひたり運命を感じている。そんな美都には嫌悪感しかない。
中学の頃、つきあってもいない同級生を抱いた有島は、15年後、同じ女を、妻帯していることを言わずに、言う必要もないかのごとくに再び抱いた。もちろん不快感しか抱きようがない。
不倫の被害者である美都の夫・涼太は、仕事中にも関わらずささいなメッセージを妻の携帯に日がな一日送り続けたり、寝ている妻の枕元から携帯を取り不審な記録がないかチェックしたりする「重い」男。
もうひとりの被害者である有島の妻・麗華は、学生時代クラスで孤立していた。同級生の人気者だった有島を「落とし」たことは、自分を貶め続けた彼女たちを見返すひとつの手段だったのかもしれない。だから麗華は外面のいい有島を、ことあるごとに見事なタイミングで牽制する。有島は見事にそれにひっかかる。軽くチャラい人物を装いながら、他人の中での自分の立ち位置をはかり調整し続けている有島もまた、「あんな人が彼女だったら兄のことを見直す」と妹に批評された麗華を手放せない。
それぞれがそれぞれの思惑で互いを利用し、自分の足元を固めようとする。
現実は、およそそんなもの。
読み進めるのに苦痛を伴いそうな原作ですから、これをドラマにするのは難しいと思われます。
夢見る夢子の美都がズルズル不倫に溺れていくのには無理があるし、波瑠のイメージともかけ離れている。有島の複雑さを表現するのも鈴木伸之では困難そう。麗華はもっと地味な外見でないと有島とのギャップがなくなるし、涼太はイケメンすぎて冬彦さんにはなれそうもない。
ただただ、不倫が不愉快なだけ。今後見続けるかどうか悩みます。

『リバース』
湊かなえは『告白』しか読んでいませんが、なんとも後味の悪い作品でした。人と人、あるいは社会との関係を構築するうえで、どうしてもみずからの足場を確固たるものにするために保身に走りがちな人間の狡猾さ、いやらしさ、言いわけ、それらが行間からにじみ出ているようで、読後感は最悪と言ってもよいものでした。ただ、作品を美しい言葉や表現で飾りたてることで、作り手も受け手も美しいものを美しいと感じられる美しい心を持った気になれる、それもまた狡い人間の営みのひとつでもあります。そんな偽りの装飾をかなぐり捨てたような湊作品は、心に直接爪を立ててくるような破壊力があります。
このドラマも、導入部から何ともいえない暗鬱な空気が漂います。
かつて大学生だった四人は友人を雪山の事故で失う。それぞれが己を守るためにはからずも共通でついた嘘。事故を事件と確信して追い続ける元刑事。今になって掘り返される過去。誰がなんの目的で彼らを陥れようとしているのか、謎は最後まで明かされそうにもありません。
キャスティングも絶妙で、それぞれの演技力が光ります。藤原竜也と戸田恵梨香は『デスノート』を思い起こしますが、当時の面影など完全に消し去るくらい役になりきっています。藤原竜也は追い詰められる役ばかりですが、作品ごとに異なるキャラクターで異なる追い詰められ方を見せてくれるのはさすがのひとこと。
視聴するたびに胸が痛む思いですが、見ごたえのあるミステリーです。

『小さな巨人』
警視庁にはどれだけイケメンが存在するのか、と叫びたくなる今期の警察ドラマ。
中でもこのドラマは、『半沢直樹』スタッフの作品だけあってアップの多用が多いせいか、長谷川博己と岡田将生のツーショットにずきゅんずきゅん。隣の雑音も気になりません。
もちろんビジュアルだけでなく、ストーリー自体も骨太で、見ごたえがあります。本庁と所轄の対立構図は『下町ロケット』をほうふつとさせますが、きっと同じように爽快なラストが待っているだろうと期待が持てます。
香川照之の濃い演技は飽食ぎみですが、腹黒で野心家の上司を演じさせたら彼の右に出る者はいないでしょう。桂文枝も千利休の記憶を思い出す悪役ぶりで、敵と味方がはっきりしている構造がドラマに入り込みやすくさせてくれます。
『平清盛』の頃は男前ぶりと反比例する演技力にガッカリ感があった岡田将生ですが、今回はハセヒロと安田顕の実力者ふたりにひっぱられて、質を損なわない演技を見せてくれています。しかし、なぜに「山田」? いや、山田哲人みたいなイケメンもいるんだけど…。「香坂」に較べるとどうも地味感がありまして。
あと、芳根京子ちゃんの存在価値が今ひとつわからないので、今後の活躍を期待します。

『おんな城主 直虎』
知識と期待値はほぼゼロの状態で視聴し始めたこともありますが、今のところまずまず面白い大河ドラマです。
直虎が領主となって場を締めるベテランがほとんどいなくなったこともあり、若手俳優陣ばかりの場面が多いことと、オリジナルストーリーのご都合主義的な軽さはやや目立つものの、脚本家の意図が現場にしっかりと伝わっているのか、スピード感は失われていません。戦国時代と言いながら戦場面がほとんどないため、お家と人間関係を整理しながら観なければいけないのが衰えた頭にはつらいですが…。
とわ&鶴&亀の幼なじみ同盟が解消され、次なる三人組は直虎&六左&之の字の主従トリオ。まるで気まぐれなペルシャ猫のうしろに控える気の弱い大型犬とキャンキャンうるさい小型犬といった雰囲気ですが、安易にイケメンがキャスティングされなくて逆に良かったと思います。直虎にすっかり毛嫌いされた小野政次が時折見せる苦悩の表情に身もだえする奥様方の情が移ってしまいますから…。
それにしても今川と井伊の板ばさみとなっている政次の立場は切ない。今後の情勢を考えれば、あまりしあわせな展開にはなりそうもありません。唯一の理解者であるなつとのシーンがわずかばかりの救いとなっています。
ムロツヨシが家臣となり、柳楽優弥も登場して、ますます盛り上がりそうな今後に期待します。




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