『リバース』
最終回の前の回のラストには戦慄が走りました。 原作はそこで終わっていたらしいのですが、後味悪すぎ。さすがイヤミス女王の湊かなえ…。 ドラマではさらにエピソードを加え、未来を生きようとするそれぞれの姿が描かれていて、爽やかなラストになっていました。うまくいきすぎとはいえ、映像で見る分にはこのくらいぬるさがあるほうが良いかな。 スリリングで勢いのある脚本も良質でしたが、実力派若手俳優をそろえたキャストも良作に仕上がった要因でした。主要人物のうち玉森(キスマイ何ちゃら?)だけよく知らなかったのですが、演技力ある他の3人に押されず存在感を発揮していたと思います。黒板の字が高校教師とは思えぬヘタさだったのが何とも不自然でしたが。 回が進むごとに気になっていたのが、深瀬が親友と思っていた広沢と、他者が語る広沢の印象が乖離していることでした。高校時代の知人である古川と川本は、広沢に対して百パーセント好意的には語っておらず、むしろ広沢が己をイイ人として徹するための材料にされたと感じているような印象もありました。美穂子もまた優柔不断な広沢の態度に嫌気がさして距離を置いています。広沢を生涯の親友と信じ慕っていた深瀬が記す広沢の印象を書きだしたノートからは、決して深瀬が感じていたような広沢ではない、多面性を持った人物像が浮かんできます。 しかし、人間とはそういうものなのかもしれません。 物質的存在である自分はこの世にひとりだけであっても、観念的に存在する自己はこの世にひとつではない。 自分を信じ、己を貫いて生きたとしても、他者にとっての己は、他者とともに存在し、他者が感じた分だけ存在する。そしてそれは、他者同士が互いに同じ空間に存在していなかった時間がある限り、共有できるものでは決してない。 深瀬が広沢を理解しようとしても、深瀬の存在しなかった高校時代に古川と川本の中に生まれた広沢は、もう二度と知ることのできない存在なのです。 だからこそ、他者と完全にわかりあえることは絶対にない。その悲しみと折り合いをつけながら生きていくのが、他者との共存なのだとも思います。 ドラマの中では、そのあたり少しうやむやにされていて、結局のところ広沢は優しすぎるために、古川と川本、そして美穂子を傷つけ、場の雰囲気を壊したくないがためにそばアレルギーを隠し、それが仇となって命を落とすことになったという落としどころになっていました。イヤミスならば、深瀬の知らなかった広沢の暗い部分も描かれていたのかもしれないと思うのですが…。 それでもやはり、ドラマですから、ぬるい感じで終わるのが良いのかもしれませんね。 『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』 『フライ,ダディ,フライ』の金城一紀が原案・脚本とあって、ひとりひとりのキャラクターと各エピソードのプロットがしっかりしていて見ごたえがある警察ドラマでした。ただ、回を追うごとに大げさすぎるシーンが増えてきて、「日本はどんだけテロの脅威にさらされてるんだよ。ていうか、そんな危険な任務をたった5人だけにまかせて警察大丈夫かよ」と疑問がわかないでもありませんでしたが。 教団へ突撃の回は、次から次へと敵が出てくるアクションRPGのごときシーンの連続で、「そんなバカな」と思わず笑ってしまいましたが、小栗旬と西島秀俊がさすがのクオリティでアクションを見せてくれたので楽しめました。 野間口徹の飄々とした雰囲気も味がありましたし、演技派に囲まれた新木優子も頑張っていたと思います。田中哲司は途中で残念な報道がありましたが、悔しいかなやっぱりカッコよかった。 ただ、ひとつひとつのエピソード自体は後味悪く、徐々にメンバーが心をすり減らし闇を抱えていくのには胸が苦しくなりました。鍛冶の腹黒さと、板ばさみで苦悩する青沼の描写も秀逸で、どんなラストを迎えるのだろうと思いきや、なかなかの衝撃。映画あたりで続編をする予感…いや、してほしい。 あっちこっちで息子に悩まされる竜雷太はそういう運命なのか。そういや、ひさしぶりに駅伝くん(@てっぱん)を見たなあ。 『小さな巨人』 もう、笑うしかないだろー! 日曜の夜はリアルタイムで視聴して、イケメンに癒されて眠る…のが毎週の日課となりましたが、最後の方はイケメンなどどっちらけ。全員のドアップ顔芸に笑わされ、癒されて眠りました。 この枠は、もはや『半沢直樹枠』と呼ぶべきなのか。香川照之の歌舞伎口調、「確信100%→300%→500%」の決めゼリフ、主要キャストの落語家・芸人(←和田アキ子と梅澤富美男と新聞記者)枠…見慣れた演出はもはや時代劇のような安心感。 芝署編はそれでもおとなしめの、警察組織の闇を描く硬派なドラマと感じていたのですが、豊洲署編から本領発揮。最後のボールペンのキャップをめぐるあたりはもはやコントでした。大の大人がオマケのボールペンを後生大事に使い、捜査一課長を目指す敏腕刑事ふたりがいくらでも取り換えのききそうなキャップの有無に目を光らせ、「キャップはここにあ・り・ま・し・たぁ!」と目をむいて無罪を主張されては肩を落とす…笑いをこらえるのに必死でした。この雑な展開にも関わらず、勢いだけで最終回まで駆け抜けたのは、キャストの熱演のおかげか。 江口を殺したのが金崎と判明した際は、「あー! だから女性理事長に和田アキ子をキャスティングしたのか! 上から鉄骨を落下させられる女なんて、和田アキ子くらいだもんね!」と手をぽんと叩いたにも関わらず、まさかのクレーン…。そこは自力で落とそうぜ! 香川照之だって想像VTRでぜーぜー言いながらも落下させたのだから、和田アキ子なら余裕だろ! という具合で、笑っているうちにエンディングを迎えてしまったので、ちゃんとオチをつけて終わったのかどうかはよくわからないのですが、最後はあれ、香坂は捜査一課長になったわけではない…のだよな? 山田が「香坂さん」と呼んでいたので、たぶんお互いいち課員だと思うのですが…。小野田が推薦した「あの男」は、たぶん藤倉か松岡あたりなのかなと。 あと、三島の存在意義が最後までわかりませんでした。ですが、香坂が三島を「何かあるんだろ、俺に話してみろ」とうながす場面にポーっとなった女性は多いはず。あんなイケメン上司に言われたら、そりゃ一生ついていきますわ。 『あなたのことはそれほど』 誰もかれもの自分勝手な言い分には見るほどにウンザリしてきて、最後までながら見視聴でした。涼太が美都に「あなたのことはそれほど」と言い切るラストは爽快…と言いますか、痛快だったかな。 東出昌大の怪演が話題となりましたが、冬彦さん(佐野史郎)ほどの演技力はないにしても、随所で気持ち悪さを出していました。基本的には美都と有島が絶対悪という視点で、涼太に同情する立場で観ていたのですが、離婚届を何枚もわざと書き損じる場面だけはあまりにイライラして、美都に共感してしまいました。「涼犬」て…「のび犬」かよ。 ただ指輪を海に向かって投げ捨てた背中は、やっぱりイケメンでした。 でも涼太の新しい相手は…そういうことなんですかね? 有島と麗華の落としどころも、こんなところかな。そうなっちゃいますよね。自分だったら平手をくらわせるのは発覚したその日にですが。 美都は、まあ、気のすむまで夢に夢見て好きにしたらいいんでないかい。 PR |
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