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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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『プラダを着た悪魔』を観たのはもう10年以上前のことになります。
その頃ギリギリ20代だった私はもはやジャスフォー、ファッション雑誌も読まなくなって久しくなります。
『プラダを着た悪魔』では女性上司に振り回されながら自分の未来への道筋を確立していったアン・ハサウェイが、この作品ではみずから部下を振り回し、仕事と家庭の両立に悩む女社長を演じています。
社会も10年前とは大きく変わりました。高齢化社会と労働力不足はますます進み、マクドもコンビニも店員はシニアばかり。働かなくては食べていけないのも事実であり、定年70歳時代も遠くない現実かもしれません。
この作品の主人公・ベンも、シニア・インターンとして入社した70歳。しかし第二の人生をそれなりに充実させて生きてきた彼は、言動も立ち居振る舞いも紳士的で、上司であるジュールズのむちゃぶりにも冷静に対処し、慣れないパソコンも努力して使いこなせるようになっていきます。同じ説明を何度もしなくていいし、沸点も低くない。
こんなじいさん、おらんがな。
…と言いたくなるのは、私自身がベンよりも年下の高齢者と仕事をした経験があるからですが。
『プラダ』でも物語そのものより主人公のファッションチェックが見どころでしたが、こちらもジュールズのカジュアルからコンサバまでさまざまなアラサーファッションを楽しみ、ベンの含蓄あるセリフを味わい、大団円の結末に満足して終わりの作品です。
20代の頃に観たら、きっと感じ方は違っていたと思います。おそらくジュールズやベッキーに感情移入していたでしょう。ベンのような素敵な老紳士が友人だったらと憧れたに違いありません。が、今の自分は、彼女たちとはまるで違う場所にいますし、ベンが妖精であることも知っています。
それでも、こういうハッピーエンドを「ありえんがな」で片づけてしまってはつまらない。
テンポ良く物語もわかりやすいですし、何よりアン・ハサウェイとロバート・デ・ニーロのツーショットが美しく健康的で、余韻も爽やかです。
トシをとると、予定外のことに対応できなくなってきました。
二時間集中するのも疲れますし、頭からっぽにして楽しむのが、四十路の映画鑑賞の醍醐味でもあります。







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