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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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せっかくのゴールデンウィーク、たまには外に出なくては。

目的はふたつの浮世絵展。幸いにも、開催場所が重なっています。

まずは家族連れでにぎわう天王寺公園を抜けて、『江戸の戯画』が行われている大阪市立美術館へ。



浮世絵というと、美術の教科書に載っているような美人画や役者絵をイメージしますが、
江戸の戯画(直訳するとおふざけイラスト)のセンスもなかなかのもの。
百年以上前の人びとが現代にも通じるクリエイティブな感覚を持っていたことに、あらためて驚かされます。

耳長斎の『地獄絵』。現世での職業がそのまま地獄の刑罰になってしまうというユニークすぎる発想で、おそろしいはずの地獄がコメディーチックになっています。大根役者は大根と一緒に釜でゆでられるし、鰻屋は串刺しで焼かれるし。地獄なのになんだか楽しそう。「あいつ○○屋だったってよ、どうする?」「じゃあ○○してやろうぜ」なんて鬼の会話が聞こえてきそうです。

今回の目玉は、歌川国芳の『金魚づくし』。なんと、はじめて全9点揃って展示されているのです!
150年前の女子にもきっと「カワイイ!」と騒がれていたに違いない、国芳の描く動物たち。このシリーズは、擬人化された金魚たちが突然の雨にとまどったり、百物語の最後に登場した化け物(猫)に大騒ぎしたり、躍動感あふれる姿で描かれています。金魚やちび蛙が愛らしいのはもちろん、絵の中に描かれているタイトルも金魚柄で水草にふちどられており、女子の心をくすぐるテイスト満載。この展示は前期だけのもので、早めに行っておいて正解でした。

とにかく人がこけてばっかりの『滑稽浪花名所』や色彩鮮やかな河鍋暁斎の作品など、最後まで笑顔のまま会場をあとにできる、大満足の浮世絵展でした。

ひとつ見るだけで、存外足が疲れるもの。
しかしまだお昼。次なる目的地はあべのハルカス。

こちらでは『ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信』が行われています。



北斎展ではエライ目にあったハルカス美術館ですが…。
前回の春信展と同じく、今日はやっぱり、空いている。
じっくりゆっくり、春信の「らぶ」の世界を堪能できそうです。

この展覧会は、春信の絵の美しさと同時に、浮世絵の発展の経緯を知ることができます。
錦絵は、当時裕福な趣味人の間で絵暦の交換会が行われたことで誕生し、発展していきました。絵暦はイラストの中に大の月、小の月、年号が巧みに隠されており、それを探し読み解くことが、当時の風流であったようです。そしてそのイラスト自体の価値に目をつけ、暦を版木から削って、純粋な絵画として売り出した版元たちの商才もたいしたものです。
絵暦のように、春信は絵自体にいろいろな情報を含ませています。「見立」と呼ばれていますが、一見当時の風俗絵でありながら、実は古典文学や歴史の名場面を含ませており、その知識を持っていないとその絵の本当の意味を読み取れないという趣向になっています。まさに江戸の粋。

展示の中盤は広告にでかでかと書かれていた「LOVE」の世界。春信の描く男女の立ち姿は実に色っぽい。どちらもなよなよとしていて、よく見てみないとどちらが男でどちらが女なのかわからないのですが、絡み合う視線は今にも手を取り合いそうな想いを感じてぞくぞくします。
展示の最後は、春信を慕いその画風を模した浮世絵画家たちの作品群。やがて浮世絵界はさまざまな絵師を生み出し大きく発展していくこととなりますが、その筋道を作り上げたのはやはり春信であったのです。

一日じゅう浮世絵の世界を堪能し、満足満足。

足はパンパンですが…。








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