『ちむどんどん』
沖縄が舞台の朝ドラというと『ちゅらさん』が思い出されますが(『純と愛』もだけれど、まああれは…)、『ちむどんどん』もそれに近い雰囲気なのかなと勝手に想像していました。沖縄の美しい空と海と、家族の愛に包まれて伸びやかに朗らかに成長するヒロイン…のような。黒島結菜も笑顔が魅力的な女優です。 ただ、アメリカ統治下の時代とあって、少し様相は違っていました。借金、貧困、そして戦争の傷痕もほのめかされています。子どもたちを見守る両親の表情は穏やかですが、戦時中の話をした夜は子らが寝ついたあとに涙する母の姿もありました。 初回から暢子へ人生訓を語る父親に、まるで遺言のようだと感じていましたが、こんな早く退場するとは思いもしませんでした。大森南朋の存在感が光っていただけに悲しみは深く、そして幼い子どもたちを抱え借金返済に追われる母親の姿も痛切です。そんな中救いは、天真爛漫な子どもたち。最近の朝ドラの子役は皆芸達者です。今回の4人も、時代と土地のせいか現代の同年齢より幼い役柄を自然に演じています。沖縄弁も心地いいです。暢子役の稲垣来泉ちゃんは『TWO WEEKS』でも三浦春馬の娘役を好演していましたが、賢秀が『エール』のケンとはにわかに気づきませんでした。幼いながら陰のある戦災孤児は印象的だったものの、ちょっとアホっぽいにぃにぃとは結びつかなかったのです。和彦も『BG~身辺警護人~』でキムタクの息子だった子ですし、ああいうちょっと斜に構えた役が似合っています。 3週目からは時間が経過し子どもたちもそれぞれ成長するようですが、いったいどんな人生を送るのか、魅力的な子役から引き継いで大人の俳優たちがどんな演技を見せるのか、期待して観ていきたいと思います。 『鎌倉殿の13人』(承前) 義経、義仲と次々に重要人物が登場し、いよいよ源平合戦も盛り上がってきました。 そんな中、これまでコメディシーンを担う役回りが多かった頼朝が、上総広常を誅殺する冷徹さを見せました。源氏三代を語るにあたり身内そして御家人間でいくつもの命のやりとりがあったことは避けて通れません。そして『真田丸』で話題になった「ナレ死」ではなく、しっかりと暗殺場面が描かれているのは、この血腥い時代に対する三谷幸喜の姿勢の現れと感じます。 数々の現場には、善児という得体のしれぬ暗殺者の姿があります。ここまでセリフはほとんどなく、表情ひとつ変えず淡々と仕事をこなしますが、その出自は不明です。この大河のテーマのひとつである「パワーゲーム」の実態は、つまるところ「殺し合い」。その鍵を握っているのは、善児なのかもしれません。 今頼朝を支えている鎌倉側の人びとは、最終回の時点でおそらくほとんどいなくなってしまいます。頼朝が死した後も鎌倉殿には流血が絶えませんでした。その方向へ向かわせたのは誰でもない、頼朝自身です。冷酷で残酷な鎌倉初代将軍、大泉洋がどんな頼朝を演じるのか興味深く見守っていましたが、一見とぼけた雰囲気ながら冷ややかな空気をその奥に漂わせているような、彼の持つ二面性が活かされていて非常に新しい頼朝像を見せてくれています。 菅田将暉の義経も実に魅力的です。義経といえば悲劇の美青年というイメージが強いですが、今回の義経にはタッキーのようなはかなさは微塵もありません。破天荒で感情豊かで、いわゆる「天才」ってこんな感じだな、という説得力があります。無骨ながら生真面目で筋の通った義仲もいいですね。退場させるには惜しいキャラクターたちばかりです。 ということで、義時はまだまだ振り回されてばかりの脇役のひとりです。しかしそれで良いのかもしれません。歴史は誰かひとりによって作られてきたものではありませんし、主人公を中心に回っていくドラマはたいてい面白くありませんから。 大勢の登場人物それぞれに魅力を持たせる描き方はやっぱり三谷幸喜だな、と感心します。 歴史年表を知っていても、毎週ワクワクが止まりません。 PR |
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