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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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「泣ける!」と解説に書いてあるのに、いざ観てみたら「泣ける…??」といった映画が時折あるので、自分の感受性が乏しくなったのか、いやそもそも感性が歪んでいるのかとそのたびに首を傾げていたのですが、「滲む涙を拭う」どころでない、「嗚咽を必死で我慢する」レベルの作品にこの歳になって出会うこともあるのだなあと、作品とは別の感慨に浸っております。
舞台はメキシコのとある町。ミゲルの家は高祖父が家族を捨て音楽家になったせいで、家族総出で大の音楽嫌い。でもミゲルは音楽が大好きで、家族には秘密で伝説的ミュージシャンのデラクレスを敬愛しています。先祖が帰ってくるという「死者の日」、デラクレスが曾祖母の父親と知ったミゲルは、彼の祭壇に祀られたギターを手にしたことから、死者の国に迷い込んでしまいます。
死者の日は日本でいうお盆にあたります。お国柄こそ異なれど、花で祭壇を飾り、家族みんなでご先祖をお迎えする気持ちは同じ。そして好きな音楽を家族に否定され不満を抱えるミゲルにも感情移入しやすく、すんなりと話に入れます。
マリーゴールドの花びらがしきつめられた橋を渡ると、その先は死者の国。ですがそこは仏画にある極楽浄土の風景とはまるでかけ離れた、カラフルでにぎやかでファンキーな空間でした。出国ゲートにはモニターが設置され、あの世の住人の写真がこの世の祭壇に祀られているかを係員がチェックしています。写真が飾られていなければ、この世へ帰ることはできません。あまつさえ、この世の住人に忘れられてしまうと、あの世で二度目の死を迎えることになるのです。
ミゲルが死者の国で出会った奇妙な男、ヘクターもまた、死者の日に家族のもとへ帰ることかなわず、二度目の死を迎えようとしていました。
死者の国で、ミゲルはさまざまな経験をします。はじめて人前で歌ったこと。あこがれのデラクレスに会えたこと。ミゲルの家の祭壇にあった、顔の破り取られた写真の秘密のこと。ヘクターの正体。ミゲルの家に音楽禁止令を強いた高祖母イメルダのほんとうの思い。
そして、ミゲルのあの世とこの世の家族がくれたたくさんの愛。
そのすべてを持ち帰り、ミゲルは曾祖母ココに『リメンバー・ミー』を歌います。ヘクターが娘のココに伝えるはずだった愛を。消えゆくヘクターの魂を救うために。
ミゲルの歌で、記憶を取り戻したココ。そして家族の絆もまた、音楽によってふたたび深く結ばれたのでした。
翌年の死者の日。イメルダ、そして死者の国に召されたココと手をたずさえ、マリーゴールドの橋を渡るヘクターの姿がありました。この世ではミゲルがギターを弾きながら歌っています。歌い、踊り、生と死を超えて家族がひとつになって楽しむ夜でした。
ピクサー作品らしい、少年の夢と家族愛と勧善懲悪。予定調和のストーリーながら、完璧に仕組まれたプロットに見事に嵌りました。また、細部まで作りこまれたキャラクター造形や死者の国の景色が、この作品の質をいっそう高めているのは言うまでもありません。楽しそうな死者の国にワクワクし、むしろこの世の人間よりイキイキしている骸骨たちにクスリと笑い、ダンテの愛らしい動きに頬をゆるめ、高祖父と信じて疑わなかったデラクレスとの戦いに一喜一憂し。
そして、ママ・ココのしわしわの手。その手に祖母の記憶を重ねないわけがありません。ココが記憶を取り戻す場面で、涙腺は崩壊でした。
ここまで全方向満足させられる作品はそうそうないと思います。
悲しいはずの死まで、しあわせに変えてしまう。
ディズニーの魔法にかけられたような気分です。







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