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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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「いやー、騙された!」
と、鑑賞後にぽんと膝を叩いて笑ってしまう、それがこの作品のいいところ。
ダー子が恋に熱吹く安っぽい女になりさがるなんて、絶対あっちゃいけないわけですから、ジェシーは「一緒に騙しているつもりで、実は騙されているのだろう」とは予想していたものの、さすが映画です! ドラマ版でも騙しのテクニックはテレビ画面におさまらないスケール感でしたが、これは圧巻でした。
とはいえ、合間のプリンセス編CMでちょいちょいラン・リウ(竹内結子)の姿が出てきたので、あまり考えないようにはしていたものの、あれ気づかれてもおかしくないですね。
この作品のキーマンは、なんといっても長澤まさみです。ダー子の行動・言動は、最初から最後まで嘘なわけです。ボクちゃんはもちろんのこと、ずっと歳上のリチャードや五十嵐もダー子の掌の上、ヤクザの赤星すらも手玉に取って何億も騙し取ってしまうおそろしい女です。それでも天真爛漫に詐欺に邁進するダー子から目が離せない。作品内の人物を好きになるきっかけは、その内面に共鳴することから始まるはずなのですが、本心がどこにあるのかすべてを煙に巻いてしまっているのに、ダー子は実に魅力的です。ダー子のことは何も知らなくていい。ただ騙すさまを見ていたい。騙されていたい。美貌も色気もすべて取り去ってダー子になりきる長澤まさみに、こちらもすっかり騙されてしまっているようです。
赤星とダー子の因縁はまだまだ続きそうですが、江口洋介は毎回痛快に騙されてくれますね。主要キャストにはない色気がたっぷりで、この作品にいいスパイスを与えてくれます。そして目の保養といえば、この映画から登場したジェシーも、恋愛詐欺師らしい立ち居振る舞い。三浦春馬は最近『TWO WEEKS』で沈痛な表情ばかり観ていたので、くしゃっとした笑顔とのギャップには一発ノックアウトでした。騙され後の周章狼狽ぶりも良かったです。

…だからこそ。
悲しくて悲しくて、仕方ありません。
はじめて目にした時から素敵な俳優だと思っていたし、年齢を重ねてもその魅力は増すばかりで、これからもきっといろんな役柄でこちらを魅了してくれるのだろうと信じていました。
見た目はもちろんあらゆる才能を持って生まれて、ただそこにいるだけで自分だけでなくこの世のすべてをキラキラ輝かせていたような人でも、誰にも何にも救われない悩み苦しみのあまりにその決断から逃れられなかったということが、ただただ悲しいのです。
どんな人でも人は孤独で悲しい生き物だということを、あらためて思い知らされたようで。
彼がこの世にいくつも残していったキラキラを見るたび、そのことに思い至らないわけにはいきません。
苦しみながら生きること、その理由を探し続けること。
彼が最後に残していったものは、すべての人に平等に与えられたその命題なのかもしれません。






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