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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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『凪のお暇』
原作は1巻だけ読みました。絵柄は昭和風ですが、空気を読みすぎてパンクする主人公はSNSに振り回される現代の若者そのもの。そして自分らしくありのままに生きようとする流れも昨今ありがちですが、古風なタッチのおかげで逆に新鮮に感じました。
そんな凪に空気を吸えなくしたのが元彼の慎二ですが、面と向かっては凪を追い詰めるようなことしか言わないくせに本当は好きで好きで仕方ないという、好きな子をいじめる小学生男子そのもの。そして不思議系隣人・ゴンとの三角関係もこの話の見どころでもあるようです。
この主人公が今風美女だったら嫌味にしか映りませんが、黒木華という絶妙なキャストのおかげで楽しんで観られます。黒髪ストレート女子アナ系OLとくるくる天パぶかぶかTシャツのギャップも、黒木華のナチュラルな質感でどちらも魅力的です。
慎二役が高橋一生と聞いた時には、少し年嵩すぎやしないか? と疑問に思いましたが、モラハラ全開時の冷たい両目と、凪の家を号泣しながら去る情けない背中のギャップに、不覚にも萌えてしまいました。慎二に魅力がないとただのド最低男になってしまいます。確かにこの二面性を演じられる俳優は高橋一生だけかもしれません。
そしてリア充陽キャ的風貌ながら凪の心にすっと寄り添ってきたゴンも、中村倫也のイメージではないなあと思いきや、これまたすこぶる萌えました。『半分、青い』の正人と同じく、ふんわりした羽のような柔らかさを持ったタラシ男は今や中村倫也の真骨頂。『闇金ウシジマくん』でサイコパスを演じていたのが嘘のようだ。慎二とゴンの配役がそれぞれ逆でも面白かったと思いますが。
「自分らしく生きるって素晴らしい!」というメッセージはありふれているので、三角関係を絡めてひと味違うテイストで最後まで楽しめたらいいなあと思います。

『蛍草 菜々の剣』
最近すっかり実力派若手女優として名をあげた清原果耶。CMでもよく見かけるようになりましたが、たたずまいだけで醸し出す透明感に、ついつい目を惹かれてしまいます。『あさが来た』の頃よりも演技力がずいぶん上がりましたし。
風早家の高潔な雰囲気が素晴らしいです。町田啓太がこんなに時代劇にハマるとは思いませんでした(『西郷どん』は印象に残っていない)。谷村美月も武家の奥方らしい芯の強さを感じます。演技を良いと思ったことがあまりなかったのですが、死の間際に正助ととよに呼びかける時のトーンの違いは、思わず涙を催されました。
つつましくもあたたかい、心に秘めた人の情と繋がれる縁の糸。全体的に藤沢周平の世界観をしっかり構築しているように思います。
展開も含め、なかなか見ごたえのある時代劇です。

『いだてん』(承前)
田畑政治のあわただしさに少し疲れるところはありますが、しっかりした構成ながら失われないスピード感に毎週目が離せません。
前半の主役・金栗と異なり、政治は時代の先頭に立ち人びとを引っ張っていきます。新聞社という世界情勢をいち早く察知できる環境にいることで、これからの日本の姿を誰よりも先に明確なものとして思い描いていたのかもしれません。彼はまさにファーストピングインでした。超がつくほどマイペースで強引で、周囲にいたらたぶんお近づきにはなりたくないであろう大変な男ですが、国のかたちを作っていく人というのは、こういう性格でないと不可能なのかもしれません。
明治維新から60年と少しの日本はまだまだ不完全な状態。オリンピックを通して、日本は世界を知り、そして世界もまた日本を知ります。さらに、世界の一員となった証のように、日本は否応なく世界を覆ってゆく戦禍に巻き込まれていきます。この根っからポジティブで陽気な男がいったいどのように不穏な時代を生き抜いていくのか、またクドカンが戦争をどう描くのか、興味深くもあります。
そして志ん生一家もいかにしてなめくじ長屋を抜け出すのか…。彼を支えるおりんの夏帆が実に良い。つつましやかだった当初のおりんからだんだん噺家の妻らしい気っ風の良さが出てくる変化を魅力的に演じています。長じてからのりんと瓜ふたつなのも驚きです。
それにしても、皆川猿時はやっぱりプールサイドにいるのね…そのうち「あーまーのーーー!」と叫び出しはじめるんじゃないかと錯覚を起こしてしまいます。阿部サダヲとの阿吽の呼吸はさすがです。

『なつぞら』(承前)
いい最終回だった…と一瞬錯乱してしまう結婚式でした。まだ残り2ヶ月あるよね?
相手はやはり一久さんでした。ノブさんはいつの間にか結婚しとるし…どういうこっちゃ。しかし中川大志が何とも愛嬌ある一久さんを演じてくれているので、なつとはいいコンビのようです。
一久さんのモデルは高畑勲なのだとか。そして宮崎駿は神地。なるほど、彼らもまたいいコンビネーションを見せています。登場時から異彩ぶりを発揮していた神地ですが、ヘンゼルではなくグレーテルに行動力を持たせるなど、ジブリ作品の下地を思わせるイマジネーションにわくわくしました。今後、高畑勲と宮崎駿のように独立してジブリを立ち上げる場面も出てくるのでしょうか。そうなると、なつのお話よりこっちの方が面白くなってしまうな…。
千遥のエピソードは今後の再会を匂わせて終了しました。清原果耶をあてて、出会うことなく終わりということはないでしょうし…終盤のクライマックスとなりそうです。
苦労したという割に長じては戦災孤児という背景をあまり感じさせないなつですが、彼女がそういう健康的な女性に成長できたのは、松嶋菜々子演じる母親の愛あってこそなのだろうと自分を納得させています。彼女との出会いを「奇跡」と言った時や千遥が訪ねてきた時など、感極まって涙ぐむ場面は本当に素晴らしかったです。一瞬でなつの心に寄り添い自然に涙があふれてきてしまう、それは彼女に同情や憐みなどでは決してない、母親としての無償の愛を注いできたからこそなのだろうと。
もちろん、おんじの涙も胸に響きました。十勝の面々が魅力的すぎて、また東京編に戻ると物足りなくなってしまいそうなのも困りものです。











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