小さい頃に連れていかれたスキー場で転んだ時のあまりの痛さに「もう二度とやらん」と心に決め、実際にその後ウィンタースポーツと無縁の人生を送ってきた自分からすれば、あんなのとは比較にならない痛みや恐怖と戦いながら競技に挑んでいる選手たちには本当に尊敬の念しかありません。女子選手であればなおさらです。
スノーボードハーフパイプでは、冨田せな選手が日本女子ではじめてメダルを獲得しました。演技中のカッコいい姿とニッコリ笑顔のギャップがほのぼのしました。モーグル5位で悔し涙にくれながらも周囲を気遣う言葉を残した川村あんり選手もそうでしたが、自分のことよりサポートしてくれた人々への謝辞が多い印象です。もちろん本心からの言葉なのでしょうが、世の中の風潮が彼ら彼女らにそうさせているのかな…とも感じます。 謙虚な姿勢は日本人の美徳とも言われますが、ネット社会になりいち庶民の声が本人へ容易に届くようになって、よりそれが意識されているように感じます。個性が尊重される社会になっているにもかかわらず、なぜかアスリートだけは自己主張すると叩かれる。もちろん一定層に過ぎないのでしょうが、心に受けるダメージは百のプラスのコメントより大きく響くと思います。ジャンプ混合団体の一件でも、もし日本がドイツなどのように「おかしい」と声をあげていたら、きっとそういう輩がわらわら湧いてきたでしょう。 それを選手みずからが口にするのは、きっとものすごく勇気がいることです。採点競技ならなおさらです。どんなに不満を憶えても涙を呑んでこらえてきた選手を何人も見てきました。言葉にすればもっと不利になるからです。 平野歩夢選手が目指してきた未知の領域、トリプルコーク1440。この大舞台で彼にしか決められなかったまさに最高難度のルーティン。それを目の当たりにしながら、なお80点台を出す審判がいるという事実。実況は言葉を失い、解説も新技をまだ持っているから抑えられたのかもしれないと苦しい想像を述べましたが、観ているだけの素人にはまったく納得がいきませんでした。 しかし、採点に不満を憶えたのは日本人だけではなかったことをあとで知りました。アメリカの解説者は怒りを隠そうとせず、トップだったジェームズ選手の母国であるオーストラリアですらこの低得点を過激な言葉で報じました。それもこれも、選手を国の代表としてではなく、競技を盛り上げていく同胞として見ているからだと思います。これが平野選手でなければ、日本でも同じ風潮が起こったかどうか。フィギュアスケートでも同じようなことが起こりがちですが、被害者が日本選手でなくても我々は怒りを憶えなければならないと自戒させられました。 もちろん、もっとも怒りを憶えたのは平野選手本人のはずです。命を賭けて挑んだ大技を、海外の言葉を借りれば「茶番」にさせられたのです。 ただ、平野選手は偉大でした。競技ラストを飾る3本目。彼は北京の空へ誰よりも高く、誰よりもクールに舞い上がり、その怒りを見事に昇華させました。金メダルという結果以上に、平野選手の3本目は、(この競技にはやや不似合いな形容かもしれませんが)心技体のそろった一流のアスリートにしか成しえない偉業だったと思います。 ただ、「金メダル取れたから良し」で終わらせてはいけないこともまた事実です。平野選手自身がはっきりと「怒り」と口にしただけでなく、会見でも採点の改善を求める発言を述べていましたが、やはり日本人も「美徳」を守るだけでなく、こういった姿勢を貫くことも大切なのではとつくづく思いました。もちろん、スノーボードとその他の競技では選手の立場が違いますし、といって連盟が積極的に働きかけられるかというとそうもいかない事情もたくさんあるでしょう。 ただ、「オリンピックだから」というだけでたくさんの不可解な出来事が起きて、そのオリンピックのために4年間すべてを犠牲にして戦い続けてきた選手たちにたくさん涙を流させるようなことがあって良いものなのか。 いったい誰のためのオリンピックなのか。 オリンピックを見るたびこの違和感が大きくなっていることに、悲しみが募ります。 それとは別にして。現役最後の競技を終えたショーン・ホワイト選手には、観衆とともに大きな拍手を送りました。今回はメダルには届かなかったものの、過去2大会の演技には圧倒されました。海祝選手の思わず声が出るほど大きなエアも、本人の言うように強く記憶に残る瞬間だったと思います。 PR
羽生選手が無事入国。いよいよ男子フィギュアが始まりました。
絶対王者ネイサン・チェンvs4Aに挑む羽生結弦。そんな構図を期待していましたが、結果は意外なものになりました。 21番目に登場した羽生選手。最初の4S、いつもの美しいジャンプが来ると思っていたら、待っていたのは文字どおりの落とし穴でした。その後の4T+3T、3A、スピンやステップはさすがの出来栄えだったものの、要素抜けは痛すぎました。まさかの8位スタートとなります。 そのあとに登場した宇野選手はわずかなミスがあり、それでも前回銀メダリストの貫禄でPBを出しました。そしてシングルでもビックリさせられたのが鍵山選手。最初から最後まで安定感があり、振り付けから表情まで今の鍵山選手にぴったりなプログラムで、終わった後のガッツポーズにも思わず「カワイイ…」とつぶやいてしまうほど、「鍵山優真ここにあり」を示してくれました。宇野選手を超える得点でこの時点でトップに立ちます。 しかしその直後、ネイサン・チェン選手が圧巻の演技であっさり上回りました。平昌では悪夢に見舞われたSP。その記憶を振り払うように、この4年間世界の頂点に立ち続けてきました。その集大成ともいえる今回のオリンピック。あの頃よりもさらに洗練された身のこなしと、追随を許さない高難度のジャンプ構成。ようやく、彼の絶対的なプログラムをオリンピックで堪能することができました。 迎えたFS。 その日の朝、羽生選手が4Aのみならず3A+3Loを構成に入れるというニュースを見た時は正気かと目を疑いました。本調子でない足の状態で滑り切れるのか…とただそれだけが心配で、その日は仕事も手につきませんでした。 結局、4Aは転倒。続く4Sも転倒し、3Aのセカンドは3Loではなく2Tになりました。それでも後半の4回転からの連続ジャンプは成功。 「完璧」にはならなかった『天と地』。しかしそれも、戦いの場に身を置き決して常勝ではなかった上杉謙信の生きざまそのものであり、戦い傷つきそれでも最後まで刀を振るい続けた姿は羽生選手のスケート人生と重なるものがあります。プログラムはスケーターの作品であり、彼ら自身を表現する場でもあります。成功しても失敗しても、羽生結弦のメッセージが誠心誠意伝わってくるからこそ、観る者は彼のスケートに心を揺さぶられるのだろうと思います。 残り3人になっても羽生選手はなお1位。 今季、宇野選手は「攻める」と言い続けてきました。そしてその言葉どおり、4本の4回転を5本組み込む高難度のプログラムに挑みました。平昌で銀メダルを獲得した頃は、まだ少しつかみどころのないマイペースな少年といった雰囲気でしたが、辛い時期を乗り越え、ランビエールコーチとともに北京を目指し、今は挑戦し続けるアスリートの面持ちになりました。得意の4Fでミスをするなどやや失敗はあったものの、得点で羽生選手を上回り、2大会連続メダルとなる銅メダルを獲得。これからも挑戦し続けると強い言葉で締めくくった2度目のオリンピック。宇野選手のさらなる進化は、これからもまだまだ見られそうです。 SPまでは「緊張していない」と言っていた鍵山選手も、さすがにトリ前の演技では緊張感が生まれたのか、やや硬さがありました。それでも、4Loは惜しくもステップアウトするも他の4回転は高さと柔らかさを生かし、きれいなジャンプでまとめました。他の要素も18歳とは思えないほどの完成度で大きなミスなく終え、200点超えでチェン選手を残しトップに。キス&クライで師弟そっくりな顔で喜ぶ姿、お父さんの少し感極まっている様子も印象的でした。 そして、北京オリンピック男子シングル、ラストを飾るのはネイサン・チェン。 4年前とは見違える姿でした。身に着けたのは、絶対王者としての風格だけではありません。ジャンプの安定感も、スケーティングの質も、プログラム全体の密度も、何もかもが素晴らしく、ただただその世界観に酔いしれるだけでした。特に、音楽のわずかな隙間に放たれた4Lz。あの時点で心のボルテージは最高潮でした。 フィニッシュポーズの後、少し安堵したような様子もありました。今後は学業に専念するとも噂されているチェン選手のオリンピック、最後が金メダルで、達成感溢れる笑顔で終われて本当に良かったと思います。 もちろん、羽生選手が完璧なプログラムを滑り、チェン選手と最後の一戦を競ってほしかったという気持ちはあります。今後について明言を避けた羽生選手ですが、宇野選手、鍵山選手をはじめ、世界でも若手はどんどん育ってきています。羽生選手が回転不足とはいえ初めて公式試合で跳んだと認定された4A、そのチャレンジャー精神は、きっと後進に受け継がれていくでしょう。 羽生くんがこれからどんな道を選ぼうとも、本人のやりたいようにやってほしいと思います。かつて、浅田真央ちゃんにそう思っていたように。こちらは見守るだけです。ただ、今回も含め、これまでたくさんのしあわせな時間を味わわせてくれたことに感謝を捧げます。
フィギュア団体メダルに気を良くした夜はスピードスケート。
なんと今回5種目にエントリーしている高木美帆選手。初戦の5000mは6位入賞でしたが、最も得意な種目が1500m。最終15組で貫禄を見せてくれるか、楽しみにしていました。 しかし12組に滑ったブスト選手がオリンピックレコードをたたき出すという展開に。出番を待つ高木選手にどれだけプレッシャーがかかったか、想像に難くありません。最終滑走にふさわしいタイムでゴールするも、前回の金メダリストには0.44秒及ばず、今回も銀メダルとなりました。 いや、銀メダルだって素晴らしいのです。世界2位です。なのに本人には悔しさしか残っていないようでした。その目には頂点しか見えていなかったのでしょう。オリンピックに完全に調子を合わせて、最高のパフォーマンスを発揮したブスト選手を讃えるしかないようです。銅メダルに0.1秒及ばなかった佐藤選手も惜しかったです。高木菜那選手も接触ありながら8位入賞、日本人選手はしっかり成績を残しました。 連続メダルに良くなっていた気分が、一気に突き落とされたのがその後のジャンプ混合団体でした。 女子ノーマルヒルで表彰台に届かず、「もう自分の出る幕ではないかもしれない」と悲しいコメントを残していた高梨沙羅選手。女子ジャンプが正式競技になってから8年。ヨーロッパ勢が実力を伸ばしてきて、しかも上位選手が次々入れ替わる厳しい世界で、高梨選手はずっと第一線で戦ってきました。そんな選手は彼女だけに思います。オリンピックのメダルには届かなくても、高梨選手の功績が色褪せることは決してないし、そこは誇りに思ってほしいといちファンは思うのです。 だからせめて、混合団体では笑顔で終わってほしいと願っていました。 こんな結末が待っているなんて、思いもしませんでした。 一本目、大ジャンプを見せてカメラの前でニッコリ笑った高梨選手。良かったと胸をなでおろしたのも束の間でした。いきなり「失格」という言葉が出てきて、実況席は混乱。こちらの頭も混乱してしまいました。その後も有力国から失格者が次々出て混乱はさらに加速、もう辛くてテレビの前から離れてしまいました。 どうしてこうなっちゃうんだろう。どうしてオリンピックの女神は、沙羅ちゃんにその手を差し伸べてくれないのだろう。 心の整理がつかないまま見守った2本目。ゴーグル越しにも泣きはらしたことがわかる顔で跳躍し、着地後うずくまって立ち上がれない高梨選手を、いったい誰が責められるというのでしょう。画面越しにもう泣かないでとその背に手を添えたくなりました。 佐藤選手、伊藤選手は彼女の無念を晴らすかのようにしっかりと跳躍し、最後の小林選手がメダルの可能性すら残すほどの大ジャンプで、日本チームは4位で競技を終えました。実質7人で8人のチームに挑んでの4位です。想像を絶する精神状態で2本目を飛んだ高梨選手含め、全員がチームとして戦った証です。戦い抜いた4人に拍手を送りたいです。 内外からいろんな意見が出て、それらを目にして思うところはたくさんあります。今まで知らなかったルールも多くありましたし、ルールがあってこその競技だとも思います。ただ、ルールは競技をフェアに実施するために存在するのであり、そのルールがフェアに適用されていなかったのであれば、もはやそれはルールじゃない。それだけは強く思います。そしてそれに巻き込まれたのがよりにもよって沙羅ちゃんだったこともまた、悔しいし悲しいです。 強く自分を責めている様子ですが、謝る必要なんかない、そのとおりです。でも本人が謝って楽になるのなら謝ればいい、そんな励ましも目にしました。それもそうだと感じ入ります。ただ、沙羅ちゃんが悪いなんて誰も思ってないんだよ。それだけ伝わればいいなと思います。
本当に始まるの? というくらい、事前報道が少なかったのもむべなるかな。それどころではないという状況も事実ですし、実際にコロナのせいで辞退を余儀なくされた海外選手もいます。それでもチャン・イーモウ監修の美しい開会式を目にしたら、いつもと同じオリンピックの昂揚感がよみがえってきました。
すべてを忘れてテレビの前で熱くなっています。 日本のメダル第1号は今回も男子モーグルでした。平昌では金メダルを期待されながら表彰台に上れなかった堀島選手が、今回は攻めた滑りで銅メダルを獲得。滑り終わった後得点を確認し、うれしいというよりホッとしたような表情を見せたのが印象に残りました。己が成し遂げた喜びより周囲への感謝を口にする謙虚なインタビューに、どれほどのプレッシャーを背負ってこの4年を過ごしてきたのだろうと胸の塞がれるような思いがしました。 そして金メダル1号はスキージャンプ。平昌以降、彗星のように現れ圧倒的な成績を残してきた小林陵侑選手でしたが、その実力は4年を経てもなお健在。予選では4位と余力を残して進出した決勝で、1回目でトップに立つと、2回目も安定した飛距離と着地で金メダルを確信しました。真っ先に飛びついてきたのがお兄さんの潤志郎選手というのもドラマチックな一場面でした。長らくヨーロッパ勢に席巻されてきたジャンプ競技、金メダルはなんと長野以来なのだとか!(というか、あれもう24年前…?)新たな歴史がここに刻まれました。 ペアが実力を上げたことで上位進出が見えていたフィギュア団体。女子SPに登場したのは樋口選手。初のオリンピックに緊張を隠せないコメントを出していましたが、スタートについた時とても良い表情をしていたので少し安心しました。3Aは回避したものの、持ち味の表現力を充分に見せてワリエワ選手に次ぐ2位という好成績。個人戦にも弾みをつけました。 そして驚かされたのが鍵山選手。これまた初めての大舞台とは思えない好演技で、208点台をたたき出しました。男子は個人戦まで日程がないこともあり、若い鍵山選手がFSに抜擢されたのだと思いますが、そのプレッシャーをものともしない強心臓ぶりを見せつけてくれました。 さらに特筆すべきは、りくりゅうペア。唯一3回連続出場となった木原選手ですが、三浦選手も同じくらい落ち着いて見えました。あまり演技を観たことがなかったのですが、投げ技もジャンプも息がぴったりで、ふたりの年齢差を感じさせない相性の良さは本物で、ようやく日本にも世界と戦えるペアが出てきたのだと、ワクワクしてきました。 アイスダンスの小松原カップルのSAYURIの世界も美しかったです。これからもかなだい組との争いによるアイスダンス界の底上げは続いていくでしょう。海外勢と互角に戦えるようになれば、もっともっとフィギュアは盛り上がっていきます。その時が楽しみです。 そしてトリを飾ったのは坂本選手。メダルは確定していたとはいえ、プレッシャーは隠しきれませんでした。それでも、しっかりと滑り切ってワリエワ選手に次ぐ2位を確保(もう《絶望》は仕方ない…)。個人戦ではいつものスピードと迫力を見せてくれると思います。 ROC・アメリカの牙城を崩すのは困難だろうとわかっていましたが、銅メダルも見事な結果です! 全員が「つなぐ」という言葉を口にしていたのが印象に残りました。笑顔あふれるキス&クライも、他国の演技に拍手を送るところも、団体戦ならではのいい風景がたくさん見られて楽しかったです。
『愛しい嘘 優しい闇』
原作漫画の無料立ち読み分だけ読んで興味をそそられたのと、キャスティングが魅力的で脚本家も実力者なので間違いはなかろうと思い録画してみました。 中学の同窓会から事件は始まり、どうやら謎の転校生と当時仲間たちが犯した「罪」が絡んでいる様子。ひとりひとりのキャラクター含め、次々に命を落としていくという展開もありがちなのですが、ひっぱり方がうまいのか真相が気になって見入ってしまいます。 転校生の名前は「中野幸」で、字面だけなら女子生徒というミスリードができそうなのに、回想では男子姿で「中野くん」と呼んでいるところからみるに、普通に男子で正解なのでしょうか。 中野くんの正体と、望緒が忘れている(のか、無関係だったのか)罪がいったい何だったのか、今後の展開に期待です。 『妻、小学生になる。』 1話のラストに涙し、原作漫画を少し立ち読みしてみると、スタートから登場した万理華が貴恵の過去のエピソードをまくしたて、数コマにして生まれ変わりという奇跡を圭介と麻衣があっさり受けいれていたので拍子抜けしました。ドラマでは1時間もかけていたのに…。もっとも実際の人間が動いて話して葛藤する展開に感情移入するのがドラマの醍醐味ですから、漫画でそれをされても面白くはないでしょう。さまざまなエピソードを重ねた1時間があったからこそ、ラストの奇跡に感動し、次回も観ようと固く誓えたのです。 陰も陽も演じられる堤真一の、妻と再会する前後の変貌ぶりは当然として、悲しみと喜びの繊細な振り幅を表現する蒔田彩珠にも泣かされました。そして何より、『おちょやん』の好演ぶりも記憶に新しい毎田暖乃の芸達者ぶりときたら。 冒頭の貴恵がステレオタイプな陽キャで、石田ゆり子にしてはずいぶん大袈裟な演技だなと思っていたのですが、あとから暖乃ちゃんが演じるためにわざとそうしていたのだなと納得しました。しかし、それでも実際に10年しか生きていない女の子が、中身=40歳であるように見せるには相当な演技力が必要とされます。脚本や演出、相手俳優の力を借りていたとしても、本当に圭介の妻であり麻衣の母であり友利の姉であるように見えるのですから、驚きしかありません。 「18歳になったら結婚しよう!」と圭介は言いますが、果たしてそんな最終回を迎えることができるのでしょうか…。 そして万理華の母親の存在と、家庭環境も気になるところです。万理華には貴恵でなかった10年間があったわけで、貴恵は麻衣の母であると同時に、千嘉の娘でもあるのです。母娘の関係性をこれからどう解消し、新たに築き上げていくのか。そしていわば貴恵に奪われた万理華の自我。もしかしたら、貴恵は圭介と麻衣のあかるい未来を見届けた後、その身体を千嘉と万理華に返すことになるのでは…と思わないでもありません。 『カムカムエヴィリバディ』(承前) たった1週間(というか5分)にして判明したひなたの父親…。 舞台が京都に移ってからは怒濤の展開。ずっとそばで見ていたとはいえ6歳時の記憶だけで《たちばな》のあんこを再現できるものなのか? という野暮な疑問はあるにせよ、《回転焼き屋大月》を無事開店させ、想像どおりトランペット以外はすべてポンコツのジョーに苦笑いし、昭和レトロから和装にファッションチェンジしたベリー改め一子にも助けられ、幼少期の愛らしさはどこへやら父親そっくりになった吉右衛門ちゃんや「キレの良い」酒屋さんなどご近所さんにもめぐまれ、るいの新しい生活はひなたの道を歩むことになりそうです。 竹村夫妻やトミーが退場して淋しくなるかと思いきや、次々物語が展開するので、淋しがっている暇がありませんでした。 「風間俊介の出演があれで終わりなわけあるまい」と予想していたのに、見事に裏切られました。佐々木希も思えば贅沢な使い方でした。恋愛のいざこざで物語をゴタゴタさせる余裕はないのでしょう。勇やベリーはいわば当て馬ですが、身の引き方も落とし前のつけ方もそれぞれご都合主義にせずきっちり描いていたので、見事な脚本だと思います。 それにしても回転焼きが食べたくて仕方ありません。近所に回転焼き屋も御座候もないので悲しいです。そういえばウチは「回転焼き」でした。夫家は「今川焼き」だったそうです。 |
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