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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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学生の頃は、ちょうどめまぐるしく世界地図が書き変えられた時期でした。
ソビエト解体、ユーゴスラビア紛争…春に配られた地図帳は使う時にはすでに役に立たなくなっていたこともザラでした。ただ、中学の授業で触れられたのは、地図が変わったという事実のみ。ニュースや新聞をにぎわせる世界情勢について詳しく考える機会はありませんでした。
歴史書が勝者によって都合良く作られていることは周知の事実ですが、リアルタイムで起きている戦争もまた、メディアや権力者によって、善悪の構図を容易に誘導することができます。
それを考えさせられたのは、この作品の舞台でもあるボスニア紛争です。
当時、アメリカはセルビアを悪と認定しました。日本のメディアも同じスタンスで報じました。大学生だった私が受けていた政治学の講義でも、担当教授がそう断定していました。もちろん、セルビアが行ったとされる数々の行為を肯定するわけではありません。しかし戦争とは互いの正義の衝突です。当事者にはそれぞれ大義名分があり、それに基づいて行われるすべては、殺戮であろうが破壊であろうが、彼らにとってはそれが正義なのです。
きっかけとなったのは「悪」側の言い分を聞く機会があったからなのですが、かといって経済的利権だけではない民族間の対立という根深い問題が横たわるこの紛争の実態を、いまだ完全に理解することはできません。
そして、セルビアが掲げた「民族浄化」の被害者であるエスマの思いもまた、理解すると言うにはあまりにもおこがましく、残酷な真実がそこにありました。
生まれもった思想信条が異なるがために勝手に「敵」と認定され、その「憎むべき相手」どもにレイプされ、孕まされ、堕胎する選択肢も与えられず監禁され、「憎むべき相手」のうち誰かもわからぬ子を出産することを強要され、しかし十月十日を経て腕に抱いた命は美しく愛おしく。
エスマにとって、サラは愛そのものでした。娘の出生にどんな背景があろうと、そこには母が娘に与えるべき愛しかありませんでした。たとえエスマの心と身体に刻まれた癒えない傷がどれだけ彼女を痛めつけようと、愛しい娘のためなら不得手な夜の店で働くことも、周囲に金を無心することも厭いませんでした。
しかし、思春期の娘にそんな母心を理解することは困難でした。父親は信仰に殉じて戦死した兵士と教えられ、それを信じて疑わなかった娘は、いっこうに戦死証明を出そうとしない母に疑念を抱き始めます。さらに母の周囲に想い人の影がちらつき始めると、サラは母を愛し求めるがゆえに反抗的な態度を取ります。
娘にとって母は、自分を愛してくれているからこそ何をしても許してくれる寛容な心を持った存在と信じて疑いません。相手もひとりの人間であるという視点をなぜか失うのです。サラははじめてエスマの過去を知りました。まだ幼いサラは、エスマが母でなくひとりの人間として激しい感情をぶつけてきたことに動揺し、衝動的に髪を剃ってしまいます。
それでもサラは修学旅行に旅立ちます。母が自分のために稼いでくれたお金を、無駄にはしませんでした。サラはサラなりに、母の思いを受け止めたのでしょう。自分の出自が耐えがたいものであっても、そこに母の愛があふれていたことは疑いようもない真実だからです。
修学旅行から帰ってきたら、サラはきっと母を母としてでなく、ひとりの人間として接することができるようになっているような気がします。
戦争の犠牲は死者の数のみで語られるものではありません。エスマのように生きてなお苦しみ続ける女性の何と多いことか。もちろん日本においても例外ではありません。
そして、世界から戦争は永遠になくならない。争いがある限り、か弱き者たちの尊厳はこれからも踏み躙られていく。
しかし終わりのない苦しみから救うのは、いつ、どんな世界においても、きっと無償の愛なのだろうと思います。
サラはエスマの愛によって育まれた命ですが、エスマもまたサラによって生かされている命なのだから。
殺戮と破壊をくり返しながらも、人間はそうやって歴史を繋いできたのだから。







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幼い頃、迷子になる夢を見ました。たぶん幼子が戦火の中親とはぐれ泣き叫ぶ映画のワンシーンや、『金髪のマーガレット』というお嬢様が町で迷子になる児童小説でトラウマになったせいだと思います。その夢は、今でもはっきり憶えているくらいの恐怖でした。
この映画の主人公も、5歳にして見知らぬ街で迷子になってしまいます。しかもこれが創作ではなく実話、しかもわずか30数年前の出来事というのですから驚きです。
日本とは較べものにならないほど広大な国土、言葉も違えば文化も違い、子どもがひとりさまよっていても誰も見向きもしない、それがインドという国なのでしょう。
そして何よりもこの事件のそもそもの原因は、サルーの家が、子どもが働かねば生活できない暮らしであったということです。
文字の読めない母。幼い妹。石炭を盗んだ金でたった2袋の牛乳を得て喜ぶ兄弟。兄は少しでも稼ぎの良い仕事を探すため夜の電車に乗りました。それが兄の、そしてサルーの運命を変えてしまいました。
たったひとり、故郷から1600キロ離れた街をさまようサルー。不安に満ちた少年の表情と冷たい大人たちのコントラストが、観る者の胸を突きます。言葉が通じないこともありますが、セリフはほとんどありません。唯一声をかけてくれた女性に、サルーはどれだけ安堵したことでしょう。しかし彼女は人さらいでした。危機を察知したサルーはからくもその魔手から逃れます。そして2ヵ月後。彼は警察の保護を経て孤児院に入ることになりました。
いつ道端で野垂れ死んでもおかしくなかった状況で、サルーは生き延びました。たった5歳で、自分の生まれた街の名前も(そして最後に判明する彼の本名も)知らないまま、2ヵ月も生きてこられたのは、ただ「運が良かった」というひとことで片づけられるものではないような気がします。彼は聡明で、強い生命力を備えていましたが、それは彼が母や兄に愛され、そして彼も家族を愛し、まっすぐ育ってきたからではないでしょうか。
そして、彼を引き取ったオーストラリアの養父母もまた、愛にあふれた大人でした。サルーも彼らに欠かさず愛を返しました。同じ施設からやってきた気性の難しい弟にも、父母と同じように愛をもって接しました。
愛に包まれて成長したサルー。かつての故郷のことも忘れかけていたある日、大学の同級生の家で目にしたインドの焼き菓子に、幼い日の記憶がよみがえります。グーグルアースで調べることをすすめられたサルーは、その日から故郷探しに没頭します。後ろめたさから養父母と距離を置くことになっても、恋人と思いがすれ違っても、やめることはできませんでした。
サルーのインドの家族との愛。オーストラリアの家族との愛。愛すれば愛するほど、心は彷徨っていきます。それでもたどりつく場所はいつも同じ。いつだって、無償の愛がサルーを待っている。インドで、そしてオーストラリアで。大きな愛に包まれて、サルーは大きくなったのです。
ようやく見つけ出した、サルーの故郷。
母はずっとその街で、サルーを待っていました。兄はサルーと別れてすぐ天に召されていましたが、母はサルーの帰りを信じて待っていました。
25年の時を経て、愛は家族をふたたび結びつけました。
幾つもの愛が重なりあって起きた奇跡。それでもいちばんの奇跡は、本来なら出逢うことはなかったサルーの実母と育ての母が、サルーを通じてめぐり会えたことのように思うのです。そこにもまた、ひとつの愛が生まれました。
そして、決して大仰でない演出によって、世界にはまだ多くの子どもたちが過酷な環境に置かれているという悲しい現実があることを同時に伝えています。この奇跡は感動的であるけれど、もう二度と起きてはいけない奇跡なのだとも強く思うのです。







そろそろふきんを取り替えようかなと、お店に寄ったついでに新しいのを購入しました。

なんとなく青いアマビエ柄に…。

もうひとつ、パッと目についたのは春めいた黄色のパンジー。

あれ? そういえば、どこかで見たような。

帰って戸棚を捜索すると、出てきました。青いパンジーが!

最近こういうの多いなあ…。

まあ、腐るもんじゃなし。と自分に言い聞かせています。







『麒麟がくる』(最終回)
今まででいちばん心揺さぶられる、本能寺の変でした。
信長に義昭を殺せと命じられ、いよいよ追い詰められた光秀は、ついにその言葉を家臣たちに告げます。
「我が敵は、本能寺にある。その名は織田信長と申す」
その両瞳は、悲愴感に満ちていました。革命という言葉に込められる回天の希望や未来への期待は微塵も感じられません。帰蝶の言葉どおり、信長というモンスターの始末をつけることがそれを生み出した己の義務であると覚悟を決めたのでしょう。
しかし、信長を弑することは、光秀が今まで信じて行ってきたことすべての否定でもあります。その選択に至るまでの光秀の苦悩はいかばかりであったでしょうか。
運命の早暁。
急襲の相手が明智勢と知り、信長は目に涙を滲ませながら笑います。
「そうか、十兵衛か。であれば、是非もなし」
信長もまた、この始末をどこかで望んでいたのかもしれません。
父の、母の、妻の、友の、帝の喜ぶ顔が見たい。ただその一心で、天下を目指してきました。そのために多くの犠牲を生み出すことになっても、信長の願いはただそこにのみありました。しかし天下に近づけは近づくほど、人の心は離れていきました。愛を求めるがゆえに自分自身にも歯止めがきかなくなった衝動を、もがき苦しみ続けたこの人生を、誰かに止めてほしかったのかもしれません。
明智兵に応戦する信長は、矢に射られ血を流しながらも、まるで楽しんでいるかのような微笑みを浮かべていました。これが光秀の命を賭けた決断であることを、信長はその魂で受け止めたのでしょう。
光秀自身は門前でことの次第を見守っていましたが、その心は信長のそばにありました。若き頃からの思い出の旅路をともに辿っていました。
ずっとすれ違い続けたふたりの思いは、ここに来てようやく通い合ったのです。
炎にまかれた部屋の中、信長は息絶えました。その死に顔は穏やかでした。胎児のように丸まって、あらゆる渇きから解き放たれ、彼はようやく安寧を手に入れたのかもしれません。
信長という悪を討ち、自分が「麒麟を呼んでみせる」と伊呂波太夫に告げながら、その表情は晴れませんでした。みずからの行いに始末をつけただけのこの謀叛では麒麟を呼べないことを、光秀はわかっていたのではないでしょうか。そしてその後の身の破滅も、もしかしたら悟っていたのかもしれません。
光秀は麒麟を呼ぶことはできませんでした。
しかし後年、家康が彼の託した思いを実現しました。
麒麟は、もしかしたら光秀自身だったのかもしれません。

過去の大河で描きつくされてきた本能寺の変にいったいどんな新解釈の余地があるのか、放送前からそれだけが気がかりでした。
結果的にこの主従の行く末は、長谷川博己と染谷将太の魂と魂がぶつかり合った、大河史に残る一幕でした。
光秀は生きているのかも…と思わせるラストカットも、一年以上主人公の人生に寄り添ってきたものとしては、それはそれで感慨深く余韻が残りました。
終盤展開が駆け足ぎみだったことは残念ですし、暗躍する秀吉や細川の苦悩ももっと観たかった気はしますが、いろいろ(本当にいろいろ)あったこの大河ドラマの結末が満足できるもので良かったと思います。

来週からの『青天を衝け』も、渋沢栄一という地味な題材に最初は惹かれませんでしたが、キャスティングが決定するごとにがぜん興味が湧いてきました(イケメンが多いから…だけでは決してありません)。毎週続きが楽しみになるような、アグレッシブな展開を期待します。






『おちょやん』(承前)
富田林→道頓堀→京都→道頓堀と、千代の人生は2ヵ月でやたらスピーディです。まさか当初のスケジュールどおり3月で終わるなんてことはないよね…?
あさイチゲストにテルヲ(トータス松本)が出ると聞き、これは一発大逆転のエピソードが生まれるかと思いきや、その週も逆転どころか火に油を注ぐ展開で終わってしまいました…。プレミアムトークも実に微妙な雰囲気に。テルヲは本当にどうしようもないクズ親父です。救いようがないです。もう撮了していて再登場もあるようですが、今後千代やヨシヲへの愛を見せる場面がどれだけあっても、評価が覆されることはないでしょう(キッパリ)。しかしトータス松本の浮世離れした雰囲気が、このダメ人間っぷりに実にハマっているのですよね。
そしてテルヲに縛られ続けざるをえない千代の心情にも胸が痛みます。どんな人間でも父であり、娘であり、その関係が変わることはありません。どんなクズでも、会いに来たら追い返せない。娘をかばうような発言を聞いたら嬉しくなる。あとでどれだけ傷つけられることになっても、ふたたび顔を合わせれば同じことをくり返してしまう。この解決法は、テルヲがこの世から去るくらいしか見当たらないのですが…。それでチャラになるなんてことにはならないでしょうね、少なくとも視聴者の中では。
高速展開の中でも、芝居の中ではマヤ(ガラスの仮面)的才能の片鱗を見せている千代ちゃんですが、そろそろじっくり、鶴亀家庭劇でもまれて成長する姿を見たいです。今のところ周囲に振り回されてばかりでガヤな一面しか印象にない千代ちゃんも、初恋をあきらめ女優になると決心したのですから、そろそろ地に足つけた大人の雰囲気にチェンジしてもらいたいものです。
ようやく一平と同じ舞台に立つことになり、ふたりの関係にも新しい展開が生まれるでしょう。成田凌も憂いある表情と着流し姿がさまになっています。脇を固める喜劇役者や女形の俳優たちも、これからの見せ場に期待。千之助の貫禄が良いスパイスになりそうです。喜劇王・万太郎とどう絡んでいくのかも楽しみです。




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