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いかに寝て起くる朝に言ふことぞ昨日をこぞと今日をことしと(小大君)
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いよいよ入院当日。

前回は夕方入りだったのでそのつもりでいたら、朝イチ指定された。夫が仕事のため、ガラガラ荷物をひきずってひとりで入室。
前回は大部屋だったが、とにかく夜が苦痛で仕方なかった。鼻の手術のため術後は盛大にイビキをかくことで気を遣い、夜起きて昼眠っていたのだが、甚だしい騒音公害に隣のベッドの見舞い客が苦笑いしていたのが半覚醒の耳には届いていた。今回はゆっくり眠りたい。というわけで、是非にも個室希望だった。

午後から夫が合流して、再度医師から手術について綿密な説明が行われた。ちなみに医師がいちばん強調していたのが、退院後の性交渉の禁止だった。「大事なことなので二度言いました」とばかりに、この事項を破った場合恐ろしい事態になる(ナカから腸が出てくる)ことをくり返し説明してくれた。確かに大事なことには違いないが、「退院後すぐの週末の夜に多いのです」とまで生々しい話をされると、夫婦そろって沈黙するしかない。しかし医師は「旦那さんが仕事なら入院日の付き添いはお母さんでもいいですよ」と言っていたはずだが、母親を前にしても同じように言われたのだろうか…。夫に半休を取ってもらって本当によかった。

その後はナカの消毒、抗生物質の挿入。シャワーも使えた。昼ご飯と夜ご飯も出た。ヘルシーメニューのため今回も夜食を購入。そして9時消灯。個室だから眠れるだろうと睡眠薬はもらわなかったが、やっぱりぐっすりだった。むしろいつもより眠れた。

翌朝、6時起床。洗顔をすませると看護師がやってきた。
浣腸である。
下剤は飲んでいたが、浣腸もセットなのである。やはりお腹はからっぽにしないといけないということだろうか。
もちろん、初体験だ。「ですよねえー」などと気をまぎらわせてくれる看護師さん。そして効果はてきめん。「もうちょっと我慢できる?」と言われるのを待たずトイレへと走った。腰を下ろしながら、これからいざという時は下剤ではなく浣腸にしよう、と決意した。いざという時はなるべく来てほしくないが。

術衣と着圧ソックスを身につけ、手の甲に点滴を刺され、8時半頃手術室に向かう。
ちなみに前回の入院でも着圧ソックスをもらったが、普段使用しているメディキュットよりだんぜん緩いのですぐに捨ててしまった。今回もやっぱり緩かった。わざわざ履き方の説明書まで渡され、医師からは「履くのに何十分もかかる」と脅されていたのだが…。

手術台に横たわり、あれこれ装着され拘束され痛み止めだか抗生物質だかの薬を投入され、咳き込んで気分が悪くなったうちに麻酔が入り、いつの間にやら眠ったようだ。EXILEが流れていたことだけは憶えている。
そしてまたも「終わりましたよー」で目が覚めて、またもわけのわからぬうちに部屋へ戻され、わけのわからぬうちにもう恥ずかしくもなんともなくなった座薬を入れてもらい、わけのわからぬうちに安い方の個室が空いたからと移動され、寝たり起きたり、汗びっしょりになり、酸素マスクで口元が蒸れてかゆくなり、苦痛しかない意識がやっとはっきりしてきたのは夕方頃だった。
ようやく水を飲めたのもその頃である。夕方には飲めると聞いていたので、時計を見ながらまだかまだかと待ちわびている時間がとてつもなくつらかった。

そして眠れない夜を迎えた。
点滴、心電図、尿の管、酸素マスク、足のマッサージ器とあれこれつけられ落ち着かない。普段横向きで寝るため、仰向けのまま動けないのもつらい。座薬が切れてきて痛みもある。飲み薬をもらったがあまり効かない。尿の管が刺さってチクチクする。昼間寝たり起きたりだったから眠れない。ただ、まわりに気を遣わないで済むことはやはり大きな救いだった。
ポタポタ落ちる点滴を、早く終わってくれー、とひたすら見つめるばかり。翌日、すべての器具がはずされ、起き上がって自力でトイレに行けた時はホッとした。
なにげにいちばんつらかったのが尿の管。身体を動かすとチクチクし、抜く時も痛かった。
看護師さんが身体を拭いてくれたものの、早くシャワーを浴びたくてたまらない。が、まずは歩くことからである。医者からは「人類の進化」と形容されていたが、まさに類人猿からの出発である。背中を丸めお腹を押さえながらトイレ、そして自販機へと歩くことから始めた。
ちなみに昼食から普通食だったので、どんぶり素粥の悪夢は再現ならなかった。もちろん完食。おやつの残りまで食べた。
熱もなく、いたって経過は順調である。







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入院まで一ヶ月を切り、荷物の準備を始めた。
前回入院した時は9月という中途半端な季節だったこともあるが、何を持って行ったのかほとんど思い出せない。


※パジャマ
手持ちのものはボロボロのヨレヨレなウン年選手しかない。これを機会とばかりに買いまくる。やはり前開きが便利だろうとは思うものの、退院してからも使いたいし、もろパジャマなものよりトップスがロングで部屋着を兼ねられるものがいい。そして手術後のお腹まわりは余裕のあるほうがいいような気がする。こんな望みをかなえてくれるのは、マイクローゼットの御用達である某通販サイトの、今まで一度たりとも覗かなかったマタニティのページだった。しかも2枚セットで割引がつく。色違いで2枚買っておいた。そして冬用パジャマを1枚、暑いかもしれないから長袖Tシャツ2枚、イージーパンツ2枚、シャツワンピース1枚。上着には夫のお古のカーディガンをもらった。

※ソフトブラ+ブラキャミ
冬物パジャマでカップ付きはなかなか巡り合えないので、ソフトブラを2枚購入。プラス自宅にあるブラキャミ3枚。

※パンツ
「下着はいつも綺麗なものを身につけなさい!」が、母親の教えであった。「突然事故に遭って病院に運ばれた時にきちゃない下着だとみっともない」というのがその理由らしい。その家訓に従い、そろそろ限界に近づいていた今の在庫をついでに買い替えることにした。しかし術後にはデカパンが必要と指示されていた。生理用品も指示された持ちものだったのでサニタリーショーツでも良かったのかもしれないが、蒸れてかぶれたりすることもあったので普通用デカパン5枚セットを購入。

※靴下
自宅にあるもので間に合わせるつもりだったが、スーパーに行くとたまたま猫柄のぬくぬく靴下が安売りしていたので2足衝動買いしてしまった。自宅にある2足で都合4足。

※タオル4枚・手ぬぐい3枚
パジャマを探すついでに見つけたインコのアクセント入りのタオルがなんだかかわいいので衝動買いしてしまった。忘年会で友人にもらったイノシシ(干支)タオルも持っていくことにした。乾きやすい手ぬぐいもお風呂用やお手拭きに必須である。

※バスタオル2枚
「いざという時」のためにもらいものを取っておいたのだが、ようやく「いざという時」がやってきた。

※ペットボトル用ストロー・蓋つきコップ
前回の入院時はストロー用のコップとストロー(1パック)を持ち込んだが、結局使わなかった。まったく思い出せないが、おそらくペットボトルでそのまま飲んでいたのだろう。ネットで読んだ体験談では便利グッズに入っていたので、万が一起き上がれない時に使おうと思い100均で購入。前回使ったコップは歯磨き用になっているのでこれも100均で購入。ただしストロー用ではない。

※箸&スプーン&フォークのセット
フォークはいらないだろうと思ったが、猫柄のケースがかわいかったので100均で購入。が、開けたら中身はどぎついショッキングピンク色だった…。

※タブレット
母が携帯ショップで店員の口車に乗せられて契約したものの、ほとんど使わないしそろそろ解約したいと言っていたので入院期間だけキャリーケースと一緒に借りることにした。が、充電器がないのでそれだけ買うはめに…。

※本
この日のために読まずにとっておいた『花だより みをつくし料理帖特別巻』『友罪』『墓標なき街(百舌シリーズ)』『翔ぶが如く四(読みかけ)』。

※練り梅
前回の入院の記憶は薄れても、これだけは一生忘れない。あのどんぶり素粥のまずさといったら…!
ちなみに前回の入院時の食事は、このどんぶり素粥と食べられなかった栗ごはんの記憶しかない。まさか手術後4日間3食素粥だったのか…? こまめに記録を取っておかなかったことが悔やまれる。そしておかずありの普通食と米を煮ただけの食事代が同じということにもひっかかる。

※S字フック、ハンガー2本
S字フックは日用品を入れた小さな袋をひっかけておけば身体を動かさずに済むという、入院時の必須アイテムらしいが、前回使うことはなかった。大部屋でパーソナルスペースが狭く少し手をのばせば荷物に届いたし、手術部位が顔面で身体を自由に動かすことができたからだろう。いちおう今回も持っていくことにした。

※お手入れセット
ドモホルンリンクルのお試しセット、おまけでもらったお試し化粧水、ルルルンのお試しパック、爪やすり、かみそり、毛抜き、シャンプー・トリートメント・ボディソープのお試しセット。前回は洗面器を持っていったにもかかわらずお風呂の案内がなく、看護師に訊く勇気(というか元気)もなかったので、一週間入浴なしだった…。今回は医師によれば入浴できるそうだ。

※ドライヤー
歳を重ねるごとに言うことを聞かなくなってくる髪の毛。そのままにしておいたらえらいことになる。売店にすら行けない。シャワーが使えるならいちおう持っていこう。

※レンタルWi-Fi
ギガを買うかWi-Fiにするか悩んだが、ツレが見舞いに来た時のことを考えてWi-Fiにした。一週間で送料込み約4,000円。ただ返送は返却日の23:59までにポスト投函するだけなのでギリギリまで使用できる。

※限度額認定証
前回の入院時は夫の扶養だったが今回は自分の健康保険のため、所得区分が一段階下がっている。個室代で割高になるであろうが。






手術までの間、「リュープリン」という生理を止める注射を3回打たなければならなくなった。

生理を止めるためで、疑似閉経状態になることにより更年期障害のような副作用が出るのだそうだ。医師曰く「しんどいかもしれないけど、10年後実際に閉経した時の練習と思って」。

更年期を迎えた母が真冬に扇風機を回していたことを思い出した。更年期障害の症状に遺伝があるのかは知らないが、もともと汗かき体質なので自分もホットフラッシュになるような気がする。まさにこれから寒くなる季節、職場の扇風機はすでに撤去されている。うちわを用意していった方がいいだろうか。しかし周りになんと説明しよう…。

ちなみに一回あたり8,000円ほどする。「保険適用…だよな?」と領収証を二度見した。子宮がん検診代を惜しんでいた頃が懐かしい。

最初の注射を打って数日後、何やら吐き気がする。これも副作用だろうか。しかし「気持ち悪い」と言いながらも、食欲はあるので普通に食事もできるし間食もする。単なる食べすぎだろうか。

一ヶ月後、次の注射の日に術前検査を受けた。内容は胸部X線や血液検査、心電図など、健康診断のようなものである。ちなみに40歳になったら人間ドックを受けるつもりで職場の健康診断をキャンセルしていたので、ちょうどよかった。人間ドックどころではなくなってしまったが。

術前検査では、健康診断にはない呼吸機能検査というものがある。口呼吸だけの状態で、最初は普通に呼吸し、検査技師の合図で強く吸って吐くことで肺活量などを調べるためのものである。前回の入院前、この検査をはじめて受けた時、それまで「はい、吸ってー、吐いてー」と普通にニコニコしていた女性の検査技師が、突如として「はい、吐いてー! 吐いて吐いて吐いてーーー!!」とスポ根ドラマに出てくる鬼コーチのように豹変し、ビックリすると同時に笑いがこみあげてきてうまくできなかった(検査結果には影響なかった)。

今回も物腰穏やかな若い男性の技師だった。
「吸ってくださーい」「吐いてくださーい」
いよいよその時が近づいてくる。

「はいっ、吐いてー! 思いっきり吐いてー! モニター吹き飛ばすくらい吐いてーーー!」

できるかー!

心の準備はできていたものの、今回も息を吐くより笑いをこらえるのに必死だった。きちんと吐き切らないと正しい検査結果が出てこないし全身麻酔の手術を受けることもできなくなるのであろうが、なぜ誰もかれもスポ根系鬼コーチに変貌するのだろうか。廊下にまで響くような大声を出されて、お年寄りや子どもはビビったりしないのだろうか。
ちなみに今回も検査結果に問題はなかった。

ひととおり検査を終え、吐き気について医師に相談すると、「まあ、更年期の症状だからね。将来的にそういう症状が出るのかもね」という回答だった。とりあえず吐き気の薬をもらった。
この日のお会計は注射とあわせて14,000円。oh…。

数日後、突然上半身がカーッと熱くなるようになった。突然寒くなったのでこたつやストーブを出したため、部屋の温度が上がったせいかなと思った直後にはサーッと寒くなる。これがいわゆるホットフラッシュというやつか。検査日まで症状がなかったので、「ホットフラッシュはありません」と断言してしまったところだ。
しかも12月になると頻度が増えた。部屋干しの洗濯物を乾かすため扇風機を出していたのだが、流れてくる風が案外心地よい。吐き気も夕方になると薬が切れるのかひどくなる。夕食後まで我慢するが、なかなかしんどい。夜中もやたら目が覚めるようになる。吐き気のせいか更年期障害のせいか、単純にトシのせいなのか…。
手術までの我慢(正確には術後1~2ヶ月は続くらしい)と思えば耐えられないことはないが、来たる更年期が怖い。M-1後芸人がほざいた更年期障害発言には殺意が湧くほどだった。





セカンド・オピニオンは大事。
そういうお話です。

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もともと生理の重かった私は、長年薬で軽くして、毎月をやり過ごしていた。
このまま閉経まで飲み続けないといけないのかなあ…と考え始めていた四十路のある月のこと。
それは突然やってきた。

下着を脱ぐなりダム決壊。風呂場はさながら殺人現場。
薬できっちりだった周期が早まったこともさりながら、その量が半端ないのである。

そういえば今月から薬を薬局がすすめてきたジェネリックに変えていた。成分は同じのはずだが、もしかしたら私には効かなかったのかもしれない。

とりあえず薬局に電話をしてみた。
「こんな状態なんで、残りが2か月分あるんですけど元の薬に替えてもらえませんか?」
「ええっ! いや、それはちょっと」
「ダメですか?」
「…………ひとまず上司に確認します」
ちなみにこの行動はあとから夫に「おまえはクレーマーか! 一度出した薬を替えろなんてむちゃくちゃや!」と怒られた。私からすれば同じ服を3枚買ったもののサイズが合わなかったので、未使用の2着を交換してもらうような感覚だったのだが、もちろん薬局は服屋ではないし、購入後一ヶ月も経っているのだから、そんな要求が通るはずないと考えるのが一般的なのだろう。
しかし一般的思考を持たないクレーマーに対し、薬局は無理を通してくれた(いや、クレーマーだからこそなのかもしれない)。
「今回は取り替えさせていただくということになりました…が、病院の診察が必要だと思うので、病院に連絡してみます」
私も念のため診察は受けた方がいいだろうと考えていたのだが、薬局がもらった回答は「診察不要」だった。
やはりジェネリックには、合う合わないがあるということなのだろう。内診の苦手な私は「ラッキー♪」と、厚かましくも差額を払って手つかずのジェネリックを先発品に交換してもらった。

ところが次の月も、そのまた次も周期は狂ったまま&ダム決壊。
薬を飲み忘れた日があったからだろうか。しかし今までは一日飲み忘れたくらいで効かなかったことはないのだが…。
あいかわらず量も多いしなかなか終わらないし、痛みで眠れず睡眠不足が続く。
さすがにこれは何かしら異状が起きているのではないだろうか。
病院に予約を取った。
「薬ですか?」
「それもありますが、診察してほしいんです」

そして予約当日、医師に3ヶ月の現状を訴えたところ、

「じゃ、薬変える?」

( ゚ ω ゚ )

診察は…?
ナカを見ずに薬の話とは…?

「変えたら治るんですか?」
「痛みが強いんなら、今の薬のままがいいかもね」
「変えない方がいいんですか?」
「違う薬もあります、ということです」

…さすがにこれはないだろう、と思った。
通い始めた当初とは病院の方針が自分の目的と異なっていったことも、だんだん態度がぞんざいになっていたことも前からうすうす感じていた。だが新しい病院を探すのも億劫だったし、薬をもらうだけだからと惰性で通い続けていたのだ。
病院探しを面倒くさがった自分と、内診を面倒くさがった医師は、根本的には同じだ。これも自分の落ち度が招いた結果だ。病院がよりカネになる患者を優遇するのはあたりまえなのだ。
だが、患者にだって病院を選ぶ権利はある。

惰性から脱却することにした私は、夫が同僚から「評判いいらしい」と教えてもらった、隣駅の病院に行ってみることにした。
地域では有名らしく、待合室にはたくさんの人が座って順番を待っていた。
ようやく入った診察室で、医師はまず「内診しましょう」と私の待ち望んでいたひとことを言ってくれた。

「あー、ポリープがありますね。これのせいですね」

やはり。苦痛をこらえながら、予想が当たってホッとしている自分がいた。

「悪性かどうか調べるので、子宮がん検診していいですか?」

( ; ゜Д゜)oh…

がん検診は自治体の指定病院ならば2,000円で受けられるが、この病院は市外なので自費、5,000円はかかる。
しかし四の五の言っている場合ではない。
生理が重かったのはポリープのせいだったのだ。ひとまず、原因がわかったことに安堵した。原因不明がいちばん困るのだ。鼻中隔彎曲症も判明するまで一年以上不定愁訴に悩まされ、不安で仕方なかった。

悪性なわけないと根拠のない自信を持っていたとおり、検診結果は良性。いったん薬を中止して翌月の様子を見ることになったが、やはり量も痛みも変わらない。

「紹介状書きますので、総合病院で内視鏡検査を受けてください」

(((( ;゚д゚))))…なんかおおごとになってきたぞ?

しかし「内視鏡検査」「ポリープ」などで検索すると、むしろ超音波より痛みがなく、小さいものならその場でサクッと取り除いてくれるらしい。
「なーんだたいしたことないじゃん」とノンビリ構えて、紹介状を携え総合病院へ向かった。

総合病院の医師はひとまず超音波で様子を確認すると、逆三角形の内臓の絵の真ん中にマルを書き、「ここにポリープか筋腫ができています」と教えてくれた。
実物大でほんの1センチちょっとだが、内臓のナカを塞ぐように生っている。それで出血が止まらないらしい。

「今後妊娠を考えているならこれだけ取り除くこともできるけど、再発することが多いんです。閉経が近い患者さんなら、子宮を摘出することをすすめるのだけど」

( ゜Д゜)

て き し ゅ つ だ と ?

予想を超えた内容に一瞬思考回路が固まったが、はっと我に返った。
毎月その日が来るたび、「もう嫌だ。もう取ってしまいたい」とぼやいていた。「おまえはアンジェリーナジョリーか。あれは遺伝的なガン家系で取る必要があったからや」という夫のツッコミまでがセットであった。

☆☆ピコーン!☆☆

私にもついに必要ができた!

「摘出して、何か不具合が出ることはないのですか?」
「卵巣は残るので大丈夫です」
「妊娠できるかできないかだけの話ということですか?」
「そうです」
「じゃ、摘出で!」
「え! いやでも、あなたまだ若いし…」
がぜん乗り気になった私を諌めるように、医師は言った。
「MRI検査を受けてもらうので、その結果が出るまで旦那さんとよく相談してください」

MRI検査は人生二度目だった。一度目は不定愁訴の原因を探るため10年前に脳の検査をした時である。狭い空間にもぐってガンガン音を聞かされた。今回はお腹の撮影なので頭半分はみ出していて圧迫感はないし、お腹が固定されているので何やら落ち着く。よって眠くなってくる。ガンガンうるさいのは相変わらずだが(医療技術は10年前より向上しているはずなのに、なぜこれはそのままなのだろうか)何度も寝落ちしかけた。おかげで風邪をひいた。

夫は摘出に反対した。
「本当に必要なのか? ポリープだけ取ればいいんじゃないのか?」とまた聞きの診察内容に懐疑的であった。「生まれつき在るものを取るべきではない」というのが彼の持論であり、私の下手なプレゼンでは納得してくれそうになかった。仕方ないので結果説明に連れていった。

MRIによる診断結果は「子宮筋腫」だった。
世の女性の三人に一人は子宮筋腫があるという。実際まわりでも耳にした。しかし摘出したという話は聞いたことがない。発症場所が問題のようで、外にできたら気づかないうちに大きくなってしまうこともあるが、私のように内部にできてしまうと、小さくてもすぐ影響が出てしまうのだそうだ。
「本当に再発するのですか?」という夫の質問に、医師はきっぱり答えた。
「半年から三年で再発します」
「じゃ、摘出で!」

医師のわかりやすい説明は私の百の説得よりよほど有効だった。夫があっさり態度を翻したおかげでとんとん拍子に話は進み、手術は年末と決まった。






●万引き家族:★★★★★

疑似家族の人達の温かい繋がりと崩壊を描いただけの映画なんですが、家族一人一人の性格や心情、「家族」への思いが丁寧に描写されているので、全員に感情移入できます。だからこそ、後半の崩壊が胸に突き刺さりますね。この家族の形が良かったのか悪かったのか、両方に解釈できるところがこの映画の良さです。だからこそ余韻が残りますからね。

●殺人の告白:★★★★☆

この映画はすごくもったいないです。ストーリーは本当に素晴らしいです。時効成立後に犯人が出てきてイケメンだからアイドルになるというつかみが面白いですし、終盤明らかになるその理由にも納得です。しかし、時々出てくる韓国映画のしょうもないコメディのノリと、ダラダラとしたカーアクションが、この映画の価値を下げていますね。

●プリデスティネーション:★★★☆☆

映画の中でも出てくる「鶏が先か、卵が先か」のジレンマを描いているんですね。主人公は父でもあり母でもあり子でもあり、自分を産むし自分を殺します。そんな斬新な話を破綻なくわかりやすく描いており、完成度はすごく高いですね。SF好きにはたまらないと思います。しかし僕みたいな文系のおっさんには「よくできた映画だなあ。」で終わってしまうのが悲しいですね。

●へレディタリー/継承:★★★☆☆
 
この映画は怖いですよ。僕はホラー映画で怖いと思う映画は少ないので、いい映画なんでしょうね。前半は数々の不愉快で謎めいた描写で気持ちを不安定にさせて、後半はどんどん謎を明らかにして真実に気づかせて怖がらせるパターンですね。ただ、兄が悪魔に乗っ取られて終わりというラストは、何の捻りもなかったですね。それが家族の宿命と言われればその通りなんですが。

●ゾンビランド:★★★☆☆

バカバカしいタイトルでくだらないストーリーですが、何かいいですねこの映画は。登場人物もみんな魅力的ですし、明らかにこれは絶対絶命だろという場面でもご都合主義な展開で全員生き残るんですが、全員生き残って素直に良かったと思えますからね。テンポも良く、退屈もしません。この監督は「ヴェノム」の監督ですね。良かったですね才能が認められて。

●ボヘミアン・ラプソディ:★★★★★
 
映画のテーマは家族や仲間というとてもベタなものです。構成も成功から挫折、復活というありがちなもので、ストーリーも陳腐です。僕は洋楽は聴かないのでクイーンに何の思い入れもないですし、ゲイやエイズなどの社会問題についても興味はありません。しかし、最後のライブシーンはむちゃくちゃ感動してしまいましたね。世間の人もきっとそうなんでしょうね。

●ダンサー・イン・ザ・ダーク:★★★☆☆

事件後から主人公の息子が出ません。ラストで主人公の友人が、息子の手術が成功したと眼鏡を渡すのですが、失明でも眼鏡は不要になるし、あの場面では嘘もありえるから、本当に成功したかがわかりません。なので母の息子への献身的な愛情を描いた映画と素直に思えないところが、この監督の良い意味で狂っているところです。しかし、間違いなく心に残る映画ですね。

●パッドマン 5億人の女性を救った男:★★★★★

この映画も「ボヘミアン・ラプソディ」と一緒で、ストーリーや構成はシンプルなんですが、終盤の主人公の国連での演説シーンは理屈抜きで感動してしまいましたね。僕のような女性蔑視で、生理に対する理解もない男は、この主人公のような生き方は絶対にできないので、より感動は大きなものになります。ただ、僕なら苦労を共にしたパリーと一緒に生きていきますけどね。

●ブラインドネス:★★☆☆☆
 
設定は面白いのですが、設定が面白いだけで、話の展開もテーマも詰めが甘くて消化不良でしたね。目が見えないことにより人間同士が心が通じ合うように神が試練を与えたとしても、収容所から脱出して歩いている時に普通にはぐれた奴いましたしね。目が見える主人公は収容所で王のような存在になれるはずなのに、チンピラになすがまま犯されるのも意味不明です。

●ブロークバックマウンテン:★★★★★
 
「ライフ・オブ・パイ」の監督ですね。この監督は何とも言えない余韻を残すのが上手いです。今回もすごくいい映画のような気がしました。騙されているような気もしますが。ただ、僕は同性愛には全く興味がないし、むしろ軽蔑の対象ですが、そんな人間の心にも何かを残してくれるのは間違いないですね。ヒース・レジャーは死んじゃいましたが演技が本当に上手いですね。

●ディセント2:★★★☆☆
 
1と同じく洞窟という閉塞感のある空間の中での独特の緊張感が面白いですし、ラストで急にジジイが出てくるところもびっくりしましたが、今回は1と違い洞窟の中に化け物がいるのをこちらが知っていますから、どうしても1よりインパクトが弱くなってしまいます。やっと洞窟を出て病院のベッドで寝ている主人公が、もう1回洞窟に入る展開も強引すぎましたね。
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