かすむ夜の光を花とにほふにぞ月のかつらの春もしらるる(二条為明)
クリント・イーストウッド作品はいつも、実話を経緯に沿って淡々と、しかし過度にならない程度に肉付けをして、ラストまで観る者を惹きつけ、最後にはいつまでも感覚として残る味わいを与えてくれる…。
まあ、自分が彼の作風を好きなだけかもしれませんが。
この物語も実在した「クスリの運び屋」である老人が主人公で、監督みずからが演じています。
年老いた者があわせ持つ単純さと複雑さを、見事に体現しています。
デイリリーの栽培という仕事にかまけて家族を顧みることなく邁進してきたアール。しかし昔気質が災いしてデジタル時代についていくことができず、自宅も農園も差し押さえられ、家族にももちろん毛嫌いされて行き場を失ってしまいました。そんな彼に目をつけた孫の友人が、ある仕事を紹介します。それは麻薬の「運び屋」。違法とはわかっていても、見返りの多大な報酬で失ったものを取り返すことにやりがいを見出したアールは、手を引くどころかますますその新たな仕事に熱中していきます。
インターネットを全否定し、携帯電話も使ったことがないというアール。差別用語を悪気なくぶつけ、聞く気のない相手に上から目線で説教します。いつまでも自分の若い頃の価値観を引きずり現代が生み出した文明の利器を拒絶し、輝いていた頃の思い出を後生大事に守り、見境なく若い女を好み、歳下は年長者の言うことを聞くものだと思い込む、いわゆる「老害」の行動に国境は関係ないようです。
しかし、いくら世間から置いていかれようと、死を迎えるその時まで人は生き続けなければならない。
生きるために必要なもの、それは生きがいと居場所。
仕事と自宅、自分の人生そのものだった両方を同時に失ったアールが、無事故無違反という自分のこれまでの人生を買われて仕事を紹介されたことに、悪い気がしないわけがありません。そして失ったものを自分の手で得た報酬でひとつひとつ買い戻していくたび、アールの顔に生気がよみがえっていきます。
歳を取って良いことなんて何にもないけれど、ひとつあるとすれば、たいていのことには動じなくなることです。アールも長く生きて、さまざまな経験をしました。戦争にも行きました。だから、怪しげな仕事にも、怪しげな若者たちにも、自分の運んでいるものが麻薬と知っても、警察に職務質問を受けても、マフィアのボスにさえも怖気づくことはありません。彼らとの約束を破り死が目の前に迫っても、それを受け容れる余地がいつしか心の中にできているのです。現代の価値観にたやすく順応した『マイ・インターン』のベンとアールはまるで正反対の老人ですが、その部分だけは一致しています。
しかし犯罪は犯罪。警察の包囲網は、徐々にアールのもとへ近づいていきます。やがて、アールの第二の人生はついに終わりの時を迎えます。
アールはまたしても生きがいと居場所を失いました。しかし彼の人生はまだもう少し続きます。刑務所の中で、彼は花を育てます。そして毛嫌いされていたはずの娘は、彼の帰りを待っています。アールはまだ生きています。どこにいても、生きがいと帰る場所があれば、人は生きていけるのです。
イーストウッド作品を観ると、人生はひとつの物語なのだと気づかされます。英雄であろうと犯罪者であろうと、誰のものであってもそれは一本の映画になりうる、山あり谷ありの物語。
ひとりの愚かな老人が犯罪に手を染めて、その晩節を汚すことになった。ただそれだけの物語。
それだけの話のはずなのに、アールの人生はいつの間にか心の中に刻まれています。その目、その声、その言葉。とるにたらないような足跡も克明に鮮やかに照らし出すイーストウッドの手腕に、今回もまた唸らされました。米寿を超えてなお映画への情熱はやまないイーストウッドの人生もまた、ひとつの壮大な物語としてまだこれからも続いていくようです。
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『僕のヤバイ妻』という連ドラがこの映画に酷似しているという噂を耳にしてから、いつか観たいと思っていた作品です。が、最初から妻(木村佳乃)がヤバイことを種明かししていて、底抜けにバカな夫(伊藤英明)がその手のひらの上で踊らされる半分コメディーだったドラマとは、噂よりも趣がずいぶん異なっていました。
そして、おそらく男女で感想が分かれてしまう作品だと思います。
物語は、妻のエイミーが失踪するところから始まります。夫であるニックの通報により駆けつけた刑事は、現場の偽装を疑います。まずここで、観る者に「ニックがエイミーを殺したかもしれない」というトラップが仕掛けられています。
しかしニックはエイミーを殺してはいなかった。むしろそんな度胸は持ち合わせていない男です。
ふたりはとあるパーティでたまたま出会って、恋に落ち、仲間の前でプロポーズをして結婚するという平凡な道を歩んできた夫婦でした。やがて夫の仕事が減り昼間からゲームに没頭するヒモとなり下がり、母の病気で夫の実家に戻ることになり、妊活もうまくいかないというどん詰まり状態になります。すれ違った夫婦はどうなるのか。そう、浮気。これもまあ、平凡ななりゆきです。
しかしその生い立ちは互いに平凡ではありません。
エイミーの母親は、有名な絵本作家でした。「完璧なエイミー」と題されたそのシリーズの主人公は彼女がモデルです。絵本に描かれたエイミーは母が自分に求めている姿であり、「完璧なエイミー」になれないことに彼女はいつもコンプレックスを抱いていました。
母と娘というのは、親子愛以上の感情が混ざりあうと特殊な関係になりがちです。エイミーはいつも母から愛情よりも先に、期待感そして失望感を受け取っていました。そしてエイミーの失踪時も、すぐさま母親は反応してマスコミの前で会見を開くのですが、その行動から行方不明の娘への愛や母としての悲しみは微塵も感じられません。そんな感情に纏わりつかれながら育ったエイミーの精神が正常に保たれるわけがないのです。
トラップを仕掛けたのは、ニックに復讐を決意したエイミー自身でした。
そしてニックもまた、幼い頃に父が出奔し、双子の妹と寄り添うように生きてきました。ただの兄妹よりも強い結びつきを感じさせるふたりの会話、そしてそれを異常とも思っていないふたりの行動には、やや世間とは乖離している感覚が見られます。ブラコンの妹からすれば兄の妻というだけで快く思わない存在になりますし、兄は絶対的な味方がいることで強気に出られます。私は女ですから、ついエイミーの立場から物事を見てしまいます。無職&母が病気だからと実家に帰る(マザコン)&シスコン&パープリンな小娘と浮気して離婚画策中&暴力と、ニックに擁護すべき点がどこにも見当たりません。男のヤスオーは「いくらなんでもニックかわいそう」と言っていましたが。
しかしエイミーの計画もまた、ならず者に有り金を奪われたことで破綻しかけます。すかさず計画変更を企てるエイミーですが、こっそりエゴサーチしたり自分の悪口を言った女のジュースに唾を仕込んだりお金を盗られて悔しがったり、それまで垣間見せていた冷静さはまるで失ってしまいました。なりふりかまわず大胆な罠を仕掛け、そして自分だけの都合で、まるで野菜でも切るかのようにたやすく人の命を奪います。
カレンダーの印から、エイミーは死ぬつもりだったようです。
さらに、お金を失ったことで逃げ道もなくなり、むしろ死へは近くなったように思います。
しかし、死ぬことは選びませんでした。考えをこらし、人を利用し、人の命を奪い、生きる道を選びました。生きて、最後までニックの傍にいることを選びました。
それが人間の、生のエネルギーなのかもしれません。もちろん、決して正しくはないのですが。
生きていくには、何が必要か。
それはエネルギーの源泉となるものです。
エイミーの源は何だったのか。ニックへの愛か。子ども欲しさか。あるいはそのどちらもか。
結局、母親への歪んだ感情がその原点のようにも思います。自分が母のような母親にはならないということを母に証明するために、ニックを使って母親になったのではないかと。ニックは種であり、そして自分を絶対に裏切らないニックを傍に置くことで、ニックのような子にさせないこともできます。
果たして、エイミーのプランCは成功するのか…。
最初から歪んでいた彼女の人生ですから、想像を超える結末が待っているのかもしれません。
6/28~30 vsL ○●●
いつもの西武戦でした。西武相手といえば投手が踏ん張って競り勝つか、打ち込まれて大敗か、良くて1ー2、もしくはサンタテ。なぜ予想を裏切ってくれない。
そもそも吉田正に加えて初戦活躍した頓宮まで離脱して、勝てるわけがない。それでも3戦目はそこそこ安打が出たのですから、やりようによってはひっくり返せてもおかしくはないのでしょうけれど。16安打3点はさすがに恥ずかしいです。
増井もわざわざ直訴までして昇格したのですから、負けていても抑えてくれないと…。
と、いつもの傷心の日曜日の夜を過ごしていたら飛び込んできたトレードニュース。メネセス解雇やら伏見大ケガやらで、「まだかよ! いつだよ!」と待ちわびてはいたものの…いざ実行されたらそれはそれで淋しさがあります。松葉も武田も入団時から見てきただけに…新天地ならきっと実力を発揮してくれるはず。
いっぽう新加入のW松井&モヤ。松井雅といえば、忘れられないのがマレーロ本塁踏み忘れ事件。あの当事者ふたりが同じチームになるなんて感慨深いですね。松井佑のことはわかりませんが貧弱な打線の補強ポイントのはず。そして早くも「令和のブライアント」の期待がかかるモヤ。その頃のことはあまり憶えていませんが、本当にブライアントになってくれるなら…。
ともかくもおおいに活躍を期待します。
7/2~4 vsM ○●○
取ったら取られる山岡もたいがいですが、同点の9回裏に無死満塁になって、「ここでマレーロ!」と拳を握った直後に鈴木昂が打席に立ったのを見た日にゃ。台所にいたから知らなかったのだよ、まさか同点で守備固めしてるなんざ予想もしていませんでしたよ。…ナンデ?
最後は大城と安達の走塁技術の差でしたかね。さすが安達といったところでした。
勝ったか負けたかよくわからん初戦のおかげで、勝ち越したんだかなんだかよくわからんカードになってしまいました。モヤがいきなりホームランを打った時には「モヤイアント!」と期待に目を輝かせたものの、翌日にはさっそくなんだかイヤな予感がしたのは気のせいですかね…。
ディクソンとエップラーがいい働きをしてくれました。吉田正もDHに入って好調です。ただ、相反するように中川が調子を落としてきました。注目されて対策されたでしょうし疲れも出てくる頃でしょう。そこをカバーしてくれるべき存在がいないのが悲しい…。
いつもの西武戦でした。西武相手といえば投手が踏ん張って競り勝つか、打ち込まれて大敗か、良くて1ー2、もしくはサンタテ。なぜ予想を裏切ってくれない。
そもそも吉田正に加えて初戦活躍した頓宮まで離脱して、勝てるわけがない。それでも3戦目はそこそこ安打が出たのですから、やりようによってはひっくり返せてもおかしくはないのでしょうけれど。16安打3点はさすがに恥ずかしいです。
増井もわざわざ直訴までして昇格したのですから、負けていても抑えてくれないと…。
と、いつもの傷心の日曜日の夜を過ごしていたら飛び込んできたトレードニュース。メネセス解雇やら伏見大ケガやらで、「まだかよ! いつだよ!」と待ちわびてはいたものの…いざ実行されたらそれはそれで淋しさがあります。松葉も武田も入団時から見てきただけに…新天地ならきっと実力を発揮してくれるはず。
いっぽう新加入のW松井&モヤ。松井雅といえば、忘れられないのがマレーロ本塁踏み忘れ事件。あの当事者ふたりが同じチームになるなんて感慨深いですね。松井佑のことはわかりませんが貧弱な打線の補強ポイントのはず。そして早くも「令和のブライアント」の期待がかかるモヤ。その頃のことはあまり憶えていませんが、本当にブライアントになってくれるなら…。
ともかくもおおいに活躍を期待します。
7/2~4 vsM ○●○
取ったら取られる山岡もたいがいですが、同点の9回裏に無死満塁になって、「ここでマレーロ!」と拳を握った直後に鈴木昂が打席に立ったのを見た日にゃ。台所にいたから知らなかったのだよ、まさか同点で守備固めしてるなんざ予想もしていませんでしたよ。…ナンデ?
最後は大城と安達の走塁技術の差でしたかね。さすが安達といったところでした。
勝ったか負けたかよくわからん初戦のおかげで、勝ち越したんだかなんだかよくわからんカードになってしまいました。モヤがいきなりホームランを打った時には「モヤイアント!」と期待に目を輝かせたものの、翌日にはさっそくなんだかイヤな予感がしたのは気のせいですかね…。
ディクソンとエップラーがいい働きをしてくれました。吉田正もDHに入って好調です。ただ、相反するように中川が調子を落としてきました。注目されて対策されたでしょうし疲れも出てくる頃でしょう。そこをカバーしてくれるべき存在がいないのが悲しい…。
●オアシス:★★★★☆
性の対象になり得ない障害者に見せていたヒロインを、途中で普通の綺麗な女に見せ、そういえばこいつも女なんだ、人に関心も持ってもらいたいしセックスもしたいだろうなと自然に思わせるところは感心しましたが、ストーリーはあまり面白くなかったですね。ラストもふわっとしていますし。似たようなテーマの「ジョゼと虎と魚たち」の方が、胸に突き刺さりましたね。
●ルームロンダリング:★★☆☆☆
笑いあり涙ありハラハラドキドキありのストーリーで、どこか心が温かくなる映画にしたいんだろうなあと冷めた目で見ていました。登場人物一人一人の、なぜそういうことを思うのか、なぜそういう行動をするのかという設定や描写が甘いので、理解はできますが感情が動きません。主演の池田エライザを売り出したいんだろうなということだけはひしひしと感じましたが。
●フォックスキャッチャー:★★★★☆
セリフも音楽もあまりなく、淡々とストーリーが進む映画ですが、登場人物の心理描写が丁寧すぎるぐらい丁寧なので、冒頭から何とも言えない緊張感、重苦しさを感じさせ、その雰囲気にゾクゾクしながら観ていました。「ルームロンダリング」もこの映画を見習ってほしいですね。ただ、この映画は宣伝でネタばらしをしているんですが、僕は知らない状態で観たかったですね。
●ナイトクローラー:★★★★☆
道徳観や他人への思いやりはなく、頭の回転も速いし口も上手いし行動力もあるし野心もあるし度胸もあるし車の運転も上手い奴の話です。常に緊張感があり、ラストも全然予想できなかったので観ている間は面白かったのですが、ラストは現実社会と同じく成功して終わりましたね。このオチは映画では意外なんでしょうが、何かスッキリしないですね。
●レディ・プレイヤー1:★★☆☆☆
こういう楽しさだけを追求している映画を、最近真面目腐った作品ばかり撮っているスピルバーグが作ったというのは価値があるんでしょうが、面白くなかったですね。娯楽映画なのでストーリーが単純とか登場人物が紋切り型とかご都合主義な展開とかは目をつぶりますが、バーチャルな世界を描いた映画で、現実世界が大事だよというテーマがとにかく薄っぺらいです。
●グッドナイト・マミー:★★★☆☆
わりと早めに真相に気づくような作りですが、こちらが真相に気づいているからこそエリアスの母への拷問がしんどいですね。エリアスとルーカスがお面を被ったシーンもショッキングでした。映像も芸術性があるし、決して悪い映画ではないんですが、好きにはなれないですね。ラストの、アリアスがルーカスと母と一緒になる妄想で終わるのは、きれいにまとめすぎですね。
●ゴーンガール:★★★★☆
エイミーはニックの破滅しか考えていないと思ってたら、ニックの出演するTV番組を観た途端、デジーを殺しニックの元に帰りましたね。ニックの精子も精子バンクで保存していましたし、デジーと違いニックには愛があるんですかね。浮気は終わるでしょうが、ニックが妹のマーゴに全幅の信頼を置いているのは許すんですかね。観終わってからも心がざわつく映画です。
●ぱいかじ南海作戦:★★☆☆☆
海がきれいな南の島の青空の下で、現実の嫌な事を忘れて、しがらみのない人達と一緒に獲りたての魚を食べてビールを飲むのは幸せだということはわかりました。それしか言うことないしょうもない映画です。何日間も海でキャンプしているのに、あんな色白のメイクばっちりな女に会ってみたいです。ただ、1つでも感じたことはあるので、少しは観た価値はあるのでしょう。
●サンドラの週末:★☆☆☆☆
同僚とボーナスで、同僚を望む人が半分もいたのがまったく意味不明です。ボーナスが5000円ぐらいなら考えますが、調べたら日本円で10万超えてましたし。ヒロインに人をたらしこめる何らかの魅力があるならともかく、ただの色気のない鬱病患者ですし。パルムドールを2回も受賞したヨーロッパの巨匠が監督している映画ですが、僕には良さはわかりませんでした。
●運び屋:★★★★☆
いいですねこの映画は。主人公のように、僕も91歳だと失うものもないでしょうから、多少リスクを冒してでも金を稼いで若い女と3Pしまくりたいですね。金があっても失った時間は買えないとか、老人になってやっと家族が一番大事と気づくとかのクサいテーマはどうでもいいんです。マイペースに楽しく運び屋の仕事をこなす、怖い者知らずの爺さんがとても魅力的でした。
●マッチスティックメン:★★★★☆
僕は主人公と娘の関係をほっこりした気分で観ていたので、最後のどんでん返しはかなり驚きました。出来は文句なしの映画です。ただ、観終わった後は、どんでん返しの痛快さより、人ってこんなもんだなあという残念な気分が勝ってしまうんですね。僕は人がいいですからね。なのでこの映画が好きかと聞かれたら、いい映画だけどあんまり好きじゃないと答えるでしょうね。
●ほえる犬は噛まない:★★☆☆☆
ヒョンナムと相方のデブ女が、車のサイドミラーを折ってましたね。ヒョンナムが唾吐きババアに託された遺言状には切干大根のことしか書いてませんでしたね。こういうこちらの期待を裏切るシュールな描写は、さすが最近パルムドールを獲った監督ですね。ただ、決して面白い映画ではないですし、「グエムル」の時も言いましたが韓国の風刺は日本人の僕にはわかりません。
●スマホを落としただけなのに:★★☆☆☆
若い警官やバカリズムは明らかにミスリードを誘っていますし、連続殺人鬼の正体は早めにわかります。麻美名義の借金があって美奈代本人名義の借金がないのは不自然で、麻美が美奈代に入れ替わったと言われても疑問しかありません。ミステリーとしては脚本も演出もクソですが、北川景子はこの役にぴったりの美人でしたし、スマホを落とすことに対する恐怖は感じました。
●アンフレンデッド:★★★★☆
全編PC画面の映画です。前に観た「search 」と違って、この映画はPC画面で話が展開する意味があります。ホラーとしてはストーリーはオーソドックスですが、幽霊がアカウントを作ってチャットに参加してくるのは不気味で怖かったですからね。自殺した子もそんなにいい奴ではなさそうなところもリアルでいいです。世間の評価は低いですが、僕はこの作品は好きですね。
●her 世界でひとつの彼女:★★★★☆

いい頃の思い出ばかりうじうじ引きずって離婚届に判を押さない主人公が、AIのサマンサによって本当の愛を知り、最後分かれた嫁に手紙を書くという話です。いや言いたいことはわかりますよ。恋愛経験値の低い男なんてこんなもんです。ただ僕はこういうのは期待していないんです。主人公はサマンサとの別れを受けいれてほしくなかったです。素晴らしい映画なんですけどね。
性の対象になり得ない障害者に見せていたヒロインを、途中で普通の綺麗な女に見せ、そういえばこいつも女なんだ、人に関心も持ってもらいたいしセックスもしたいだろうなと自然に思わせるところは感心しましたが、ストーリーはあまり面白くなかったですね。ラストもふわっとしていますし。似たようなテーマの「ジョゼと虎と魚たち」の方が、胸に突き刺さりましたね。
●ルームロンダリング:★★☆☆☆
笑いあり涙ありハラハラドキドキありのストーリーで、どこか心が温かくなる映画にしたいんだろうなあと冷めた目で見ていました。登場人物一人一人の、なぜそういうことを思うのか、なぜそういう行動をするのかという設定や描写が甘いので、理解はできますが感情が動きません。主演の池田エライザを売り出したいんだろうなということだけはひしひしと感じましたが。
●フォックスキャッチャー:★★★★☆
セリフも音楽もあまりなく、淡々とストーリーが進む映画ですが、登場人物の心理描写が丁寧すぎるぐらい丁寧なので、冒頭から何とも言えない緊張感、重苦しさを感じさせ、その雰囲気にゾクゾクしながら観ていました。「ルームロンダリング」もこの映画を見習ってほしいですね。ただ、この映画は宣伝でネタばらしをしているんですが、僕は知らない状態で観たかったですね。
●ナイトクローラー:★★★★☆
道徳観や他人への思いやりはなく、頭の回転も速いし口も上手いし行動力もあるし野心もあるし度胸もあるし車の運転も上手い奴の話です。常に緊張感があり、ラストも全然予想できなかったので観ている間は面白かったのですが、ラストは現実社会と同じく成功して終わりましたね。このオチは映画では意外なんでしょうが、何かスッキリしないですね。
●レディ・プレイヤー1:★★☆☆☆
こういう楽しさだけを追求している映画を、最近真面目腐った作品ばかり撮っているスピルバーグが作ったというのは価値があるんでしょうが、面白くなかったですね。娯楽映画なのでストーリーが単純とか登場人物が紋切り型とかご都合主義な展開とかは目をつぶりますが、バーチャルな世界を描いた映画で、現実世界が大事だよというテーマがとにかく薄っぺらいです。
●グッドナイト・マミー:★★★☆☆
わりと早めに真相に気づくような作りですが、こちらが真相に気づいているからこそエリアスの母への拷問がしんどいですね。エリアスとルーカスがお面を被ったシーンもショッキングでした。映像も芸術性があるし、決して悪い映画ではないんですが、好きにはなれないですね。ラストの、アリアスがルーカスと母と一緒になる妄想で終わるのは、きれいにまとめすぎですね。
●ゴーンガール:★★★★☆
エイミーはニックの破滅しか考えていないと思ってたら、ニックの出演するTV番組を観た途端、デジーを殺しニックの元に帰りましたね。ニックの精子も精子バンクで保存していましたし、デジーと違いニックには愛があるんですかね。浮気は終わるでしょうが、ニックが妹のマーゴに全幅の信頼を置いているのは許すんですかね。観終わってからも心がざわつく映画です。
●ぱいかじ南海作戦:★★☆☆☆
海がきれいな南の島の青空の下で、現実の嫌な事を忘れて、しがらみのない人達と一緒に獲りたての魚を食べてビールを飲むのは幸せだということはわかりました。それしか言うことないしょうもない映画です。何日間も海でキャンプしているのに、あんな色白のメイクばっちりな女に会ってみたいです。ただ、1つでも感じたことはあるので、少しは観た価値はあるのでしょう。
●サンドラの週末:★☆☆☆☆
同僚とボーナスで、同僚を望む人が半分もいたのがまったく意味不明です。ボーナスが5000円ぐらいなら考えますが、調べたら日本円で10万超えてましたし。ヒロインに人をたらしこめる何らかの魅力があるならともかく、ただの色気のない鬱病患者ですし。パルムドールを2回も受賞したヨーロッパの巨匠が監督している映画ですが、僕には良さはわかりませんでした。
●運び屋:★★★★☆
いいですねこの映画は。主人公のように、僕も91歳だと失うものもないでしょうから、多少リスクを冒してでも金を稼いで若い女と3Pしまくりたいですね。金があっても失った時間は買えないとか、老人になってやっと家族が一番大事と気づくとかのクサいテーマはどうでもいいんです。マイペースに楽しく運び屋の仕事をこなす、怖い者知らずの爺さんがとても魅力的でした。
●マッチスティックメン:★★★★☆
僕は主人公と娘の関係をほっこりした気分で観ていたので、最後のどんでん返しはかなり驚きました。出来は文句なしの映画です。ただ、観終わった後は、どんでん返しの痛快さより、人ってこんなもんだなあという残念な気分が勝ってしまうんですね。僕は人がいいですからね。なのでこの映画が好きかと聞かれたら、いい映画だけどあんまり好きじゃないと答えるでしょうね。
●ほえる犬は噛まない:★★☆☆☆
ヒョンナムと相方のデブ女が、車のサイドミラーを折ってましたね。ヒョンナムが唾吐きババアに託された遺言状には切干大根のことしか書いてませんでしたね。こういうこちらの期待を裏切るシュールな描写は、さすが最近パルムドールを獲った監督ですね。ただ、決して面白い映画ではないですし、「グエムル」の時も言いましたが韓国の風刺は日本人の僕にはわかりません。
●スマホを落としただけなのに:★★☆☆☆
若い警官やバカリズムは明らかにミスリードを誘っていますし、連続殺人鬼の正体は早めにわかります。麻美名義の借金があって美奈代本人名義の借金がないのは不自然で、麻美が美奈代に入れ替わったと言われても疑問しかありません。ミステリーとしては脚本も演出もクソですが、北川景子はこの役にぴったりの美人でしたし、スマホを落とすことに対する恐怖は感じました。
●アンフレンデッド:★★★★☆
全編PC画面の映画です。前に観た「search 」と違って、この映画はPC画面で話が展開する意味があります。ホラーとしてはストーリーはオーソドックスですが、幽霊がアカウントを作ってチャットに参加してくるのは不気味で怖かったですからね。自殺した子もそんなにいい奴ではなさそうなところもリアルでいいです。世間の評価は低いですが、僕はこの作品は好きですね。
●her 世界でひとつの彼女:★★★★☆
いい頃の思い出ばかりうじうじ引きずって離婚届に判を押さない主人公が、AIのサマンサによって本当の愛を知り、最後分かれた嫁に手紙を書くという話です。いや言いたいことはわかりますよ。恋愛経験値の低い男なんてこんなもんです。ただ僕はこういうのは期待していないんです。主人公はサマンサとの別れを受けいれてほしくなかったです。素晴らしい映画なんですけどね。
『腐女子、うっかりゲイに告る』
安藤と三浦は、まるでフレディ・マーキュリーとメアリー・オースティンのよう。
三浦は実に誠実で、正直な女の子でした。ゲイを隠していた安藤に怒りをぶつけるのはごく自然な反応ですが、安藤を否定することは彼に恋した自分を否定することでもあります。三浦は三浦なりに、現実のすべてを受け止めようと決意します。そして今の自分の立ち位置から、安藤に歩み寄り、苦悩する彼に手を差し伸べました。
あくまで三浦は三浦であり、腐女子であることが彼女のアイデンティティ。恥ずかしいもの、見下されるべきもの、そう信じ込んで隠し通してきた自分自身ですが、壁を作ることが誰かにとっての悲しみであるならば、そんなものはとっぱらってしまえばい。アイデンティティは隠すものではないし、恥ずべきものでもない。
そしてそんな自分が恋した安藤がゲイだったからといって、何も間違ってなどいない。
そんなメッセージが三浦の屈託ない笑顔から伝わってくるのでした。
ただ、終業式での一幕は、ややできすぎの青春創作モノの感がありました。安藤とのあれこれを暴露しすぎではないか? なぜ最後に三浦は安藤にキスを求め、安藤はそれに応じたのか? 視聴時はあれこれと気になることがありました。しかし三浦にとっても腐女子カミングアウトは勇気のいることであったろうし、むしろそれくらい堂々としていないと安藤の壁はとっぱらえないし、受け止められないと思ったのかもしれません。ひとことでいえば若気の至りの暴走なのかなと。
また、男女のキスというと自然に恋人関係を想起しますが、三浦と安藤はそうではありません。しかし安藤にとって三浦は、彼女となら「普通」の男性としての人生を送れるかもしれないと思うくらいの存在です。恋人にはなれなくても、親友、いや家庭を持つという点でもしかしたらそれ以上の関係になりえたのかもしれません。性的な意味を持たない男女のキスが、そんなふたりならできるのかもしれない。これはおそらく、安藤と同じ性的指向を持つ作者だからこそ描けたシーンのような気がします。作者と、そして安藤と三浦にしか理解できない、恋人同士ではない男女のキスが、きっと存在するのだと思います。
ふたりの仲は三浦が大阪に発つ安藤を「フる」ことでいったん終わりを迎えますが、関係が切れたわけではありません。それこそフレディとメアリーのように、生涯寄り添っていくのかもしれません。三浦のおかげで、安藤はマコトのように蝙蝠にはならない生き方を選んでいくかもしれません。
金子大地と藤野涼子の透明感ある演技のおかげで、非常に質の良い作品になったと思います。一話30分という短い尺でテンポ良く最後まで緊張感を持って鑑賞することができました。脚本も演出も、さすがLGBTを数々扱ってきたNHKならではの充実度だったと思います。
『パーフェクトワールド』
「恋が生まれる→うまくいく→反対されたりライバル出現したり→いったん別れる→やっぱりくっつく→めでたしめでたし」という想像を超えない話運びでしたが、「やっぱり王道がいちばん」…でした。ちゃんとドキドキできて、イライラもして、最後は泣けましたから。
昔でいえば対立するお家同士であったり、人種や宗教の問題であったり、恋するふたりにはさまざまな試練がありますが、この物語における樹の障害は、それをあえて父親が声高に反対する理由にしてしまうことで、記号的な障壁にしかなっていませんでした。つまり障害を扱う話にありがちな偽善的結末でない、「ただのありふれたラブストーリー」だったのです。樹が一度は恋を諦めた理由も、葵のつぐみに対する発言も、晴人の卑屈さも、つぐみの父の頑なな反対も、すべてが至極もっともだし、だからこそつぐみの一途な想いがすべての人の心を変えていく展開に胸を打たれたのです。
つぐみと樹のカップルが美しく爽やかだったことが感情移入を催したのはもちろんですが、晴人としおりも印象に残りました。原作はまだ続いていて、つぐみたちの体外受精の話になっているようですが、このふたりはどう展開していくのか、そちらの話も気になります。スペシャルで続編してくれないかな?
『いだてん』(承前)
視聴率の低さばかりが注目されていますが、やはり戦国や幕末と違って「次に何が起きるかわかっていない」ことが従来の大河視聴層にはアウトだったのかなと感じます。いくら主人公が無名でも、教科書に載っている歴史のおおまかな年表自体は変わりません。ドラマの質以前に、「先に何があるかを知っている」という安心感が、これまでの大河の一年という長丁場の視聴を支えていたのかもしれません。
しかしこのドラマにおいては、金栗の「これから」を知っていたら、面白さは半減していたと思います。あえて番宣は見ず、金栗四三や田畑政治や志ん生のことも調べずに臨みました。だからこそ、四三の二度のオリンピックの結果にやきもきしましたし、東京への誘致がどう進んでいくのかわくわくしています。
第一部の金栗編が終わりました。アクの強い脇役たちに囲まれて今ひとつ存在感のなかった金栗ですが、最後までヒーローにこそなりきれなかったものの、「日本人初のオリンピック出場選手」という肩書を得て、それまでのマイペース風から日本の陸上界を牽引していくという自信と覚悟に満ち溢れた表情に変わっていったのが印象的でした。あまり歌舞伎役者らしさを感じない素朴な演技が、金栗をより人間味ある存在に見せていたと思います。
第一部のクライマックスは関東大震災でした。『あまちゃん』ではジオラマを使って北三陸の被災を語らせたクドカンでしたが、今回は変わり果てた東京のありさまを伝えたのは孝蔵の落語でした。森山未來の軽妙な語り口とその内容の凄まじさの乖離がよりいっそう事態の大きさを感じさせる、素晴らしい演出でした。
自然災害によって齎される人びとの喪失感は、過去と現代で変わったりはしません。そして悲しみから力を合わせて立ち上がり未来を見据える、そんな人間の本来の侃さもまた、過去からくり返してきた日本人の営みなのです。
クドカンは坂道を駆けあがるように、その営みを描き出します。
熊本に帰ってきた四三を一喝する幾江の言葉。いだてんの本当の意味。物資を背負いかつての姿を失った東京を駆けまわる四三と仲間たち。こんな時こそと運動会を企画する嘉納とそれに真っ当な理由で反対する体協の面々。観る者も家族のように思っていたシマの死。焼け出された清さんや小梅たちのたくましさ。そして、スポーツと笑いの力。最後にクスリと笑わせる志ん生のサゲ。
笑いと涙が絶妙なバランスで交錯する、クライマックスに向けてため込んでいたかのようなクドカンの力量が溢れ出す第一部最終回でした。
だからこそ、森山未來とたけしの落差がな…。自分の目にフィルターがかかってしまっているのか、当時を回想する志ん生から何の思いも伝わってこなかったんだよな…。
『なつぞら』(承前)
舞台が変わると印象が変わってしまうのは仕方ないことかもしれませんが、このドラマにおいても十勝と東京の差が激しくて少しトーンダウンしてしまった感があります。十勝パートではエピソードひとつひとつに泣けて、じいちゃんはじめ濃いキャラぞろいだったこともあり、東京の面々にあまり魅力を感じません。とくに咲太郎は重要キャラのはずなのに、軽薄さが前に出すぎていて感情移入しづらいのも、今ひとつ入りこめない原因です。十勝の照夫兄ちゃんが超優良兄(あさイチに登場するまであんなにイケメンとは不覚にも気づかなかった)だっただけに…。
また、なつがお洒落をしたことで十勝の頃の雰囲気を失ってしまったことも残念です。モデルの女性アニメーターも毎日違う服装をしていたそうですが、あのファッションのせいで広瀬すずのきつめの美貌が際立ってしまい、あつかましい(by夕見子)キャラが愛嬌になっていないのがもったいないです。美女でも損をすることがあるのだな…。
それにしても、次から次へとイケメン登場。なんだこの大渋滞は! 仲さんなんてもはやモブというくらいなつの周りはイケメンぞろいの選び放題(なつが)。本命だった天陽くんは東京へ行くなつに実質お別れを告げた(しかも結婚するらしい)ため婿候補から脱落。雪次郎はよくあるヒロイン幼なじみ枠から逸脱しそうにない(うえに夕見子のことが好きそうだ)し、やはりオープニングから出ていた信さんか? と思わせておいての坂場さん登場。この「初対面は印象最悪」は恋愛フラグなのだが…。坂場か? やはり坂場なのか? 信さんメッチャいい人なのに…?
放送はまだあと半分残っているのですが、ここで千遥との再会というヤマ場を迎えるようなので、中盤以降はなつのアニメーターとしての成長と結婚話でしょうか。十勝は絡んでくるのかな…。盛り上がれるのかな…。
安藤と三浦は、まるでフレディ・マーキュリーとメアリー・オースティンのよう。
三浦は実に誠実で、正直な女の子でした。ゲイを隠していた安藤に怒りをぶつけるのはごく自然な反応ですが、安藤を否定することは彼に恋した自分を否定することでもあります。三浦は三浦なりに、現実のすべてを受け止めようと決意します。そして今の自分の立ち位置から、安藤に歩み寄り、苦悩する彼に手を差し伸べました。
あくまで三浦は三浦であり、腐女子であることが彼女のアイデンティティ。恥ずかしいもの、見下されるべきもの、そう信じ込んで隠し通してきた自分自身ですが、壁を作ることが誰かにとっての悲しみであるならば、そんなものはとっぱらってしまえばい。アイデンティティは隠すものではないし、恥ずべきものでもない。
そしてそんな自分が恋した安藤がゲイだったからといって、何も間違ってなどいない。
そんなメッセージが三浦の屈託ない笑顔から伝わってくるのでした。
ただ、終業式での一幕は、ややできすぎの青春創作モノの感がありました。安藤とのあれこれを暴露しすぎではないか? なぜ最後に三浦は安藤にキスを求め、安藤はそれに応じたのか? 視聴時はあれこれと気になることがありました。しかし三浦にとっても腐女子カミングアウトは勇気のいることであったろうし、むしろそれくらい堂々としていないと安藤の壁はとっぱらえないし、受け止められないと思ったのかもしれません。ひとことでいえば若気の至りの暴走なのかなと。
また、男女のキスというと自然に恋人関係を想起しますが、三浦と安藤はそうではありません。しかし安藤にとって三浦は、彼女となら「普通」の男性としての人生を送れるかもしれないと思うくらいの存在です。恋人にはなれなくても、親友、いや家庭を持つという点でもしかしたらそれ以上の関係になりえたのかもしれません。性的な意味を持たない男女のキスが、そんなふたりならできるのかもしれない。これはおそらく、安藤と同じ性的指向を持つ作者だからこそ描けたシーンのような気がします。作者と、そして安藤と三浦にしか理解できない、恋人同士ではない男女のキスが、きっと存在するのだと思います。
ふたりの仲は三浦が大阪に発つ安藤を「フる」ことでいったん終わりを迎えますが、関係が切れたわけではありません。それこそフレディとメアリーのように、生涯寄り添っていくのかもしれません。三浦のおかげで、安藤はマコトのように蝙蝠にはならない生き方を選んでいくかもしれません。
金子大地と藤野涼子の透明感ある演技のおかげで、非常に質の良い作品になったと思います。一話30分という短い尺でテンポ良く最後まで緊張感を持って鑑賞することができました。脚本も演出も、さすがLGBTを数々扱ってきたNHKならではの充実度だったと思います。
『パーフェクトワールド』
「恋が生まれる→うまくいく→反対されたりライバル出現したり→いったん別れる→やっぱりくっつく→めでたしめでたし」という想像を超えない話運びでしたが、「やっぱり王道がいちばん」…でした。ちゃんとドキドキできて、イライラもして、最後は泣けましたから。
昔でいえば対立するお家同士であったり、人種や宗教の問題であったり、恋するふたりにはさまざまな試練がありますが、この物語における樹の障害は、それをあえて父親が声高に反対する理由にしてしまうことで、記号的な障壁にしかなっていませんでした。つまり障害を扱う話にありがちな偽善的結末でない、「ただのありふれたラブストーリー」だったのです。樹が一度は恋を諦めた理由も、葵のつぐみに対する発言も、晴人の卑屈さも、つぐみの父の頑なな反対も、すべてが至極もっともだし、だからこそつぐみの一途な想いがすべての人の心を変えていく展開に胸を打たれたのです。
つぐみと樹のカップルが美しく爽やかだったことが感情移入を催したのはもちろんですが、晴人としおりも印象に残りました。原作はまだ続いていて、つぐみたちの体外受精の話になっているようですが、このふたりはどう展開していくのか、そちらの話も気になります。スペシャルで続編してくれないかな?
『いだてん』(承前)
視聴率の低さばかりが注目されていますが、やはり戦国や幕末と違って「次に何が起きるかわかっていない」ことが従来の大河視聴層にはアウトだったのかなと感じます。いくら主人公が無名でも、教科書に載っている歴史のおおまかな年表自体は変わりません。ドラマの質以前に、「先に何があるかを知っている」という安心感が、これまでの大河の一年という長丁場の視聴を支えていたのかもしれません。
しかしこのドラマにおいては、金栗の「これから」を知っていたら、面白さは半減していたと思います。あえて番宣は見ず、金栗四三や田畑政治や志ん生のことも調べずに臨みました。だからこそ、四三の二度のオリンピックの結果にやきもきしましたし、東京への誘致がどう進んでいくのかわくわくしています。
第一部の金栗編が終わりました。アクの強い脇役たちに囲まれて今ひとつ存在感のなかった金栗ですが、最後までヒーローにこそなりきれなかったものの、「日本人初のオリンピック出場選手」という肩書を得て、それまでのマイペース風から日本の陸上界を牽引していくという自信と覚悟に満ち溢れた表情に変わっていったのが印象的でした。あまり歌舞伎役者らしさを感じない素朴な演技が、金栗をより人間味ある存在に見せていたと思います。
第一部のクライマックスは関東大震災でした。『あまちゃん』ではジオラマを使って北三陸の被災を語らせたクドカンでしたが、今回は変わり果てた東京のありさまを伝えたのは孝蔵の落語でした。森山未來の軽妙な語り口とその内容の凄まじさの乖離がよりいっそう事態の大きさを感じさせる、素晴らしい演出でした。
自然災害によって齎される人びとの喪失感は、過去と現代で変わったりはしません。そして悲しみから力を合わせて立ち上がり未来を見据える、そんな人間の本来の侃さもまた、過去からくり返してきた日本人の営みなのです。
クドカンは坂道を駆けあがるように、その営みを描き出します。
熊本に帰ってきた四三を一喝する幾江の言葉。いだてんの本当の意味。物資を背負いかつての姿を失った東京を駆けまわる四三と仲間たち。こんな時こそと運動会を企画する嘉納とそれに真っ当な理由で反対する体協の面々。観る者も家族のように思っていたシマの死。焼け出された清さんや小梅たちのたくましさ。そして、スポーツと笑いの力。最後にクスリと笑わせる志ん生のサゲ。
笑いと涙が絶妙なバランスで交錯する、クライマックスに向けてため込んでいたかのようなクドカンの力量が溢れ出す第一部最終回でした。
だからこそ、森山未來とたけしの落差がな…。自分の目にフィルターがかかってしまっているのか、当時を回想する志ん生から何の思いも伝わってこなかったんだよな…。
『なつぞら』(承前)
舞台が変わると印象が変わってしまうのは仕方ないことかもしれませんが、このドラマにおいても十勝と東京の差が激しくて少しトーンダウンしてしまった感があります。十勝パートではエピソードひとつひとつに泣けて、じいちゃんはじめ濃いキャラぞろいだったこともあり、東京の面々にあまり魅力を感じません。とくに咲太郎は重要キャラのはずなのに、軽薄さが前に出すぎていて感情移入しづらいのも、今ひとつ入りこめない原因です。十勝の照夫兄ちゃんが超優良兄(あさイチに登場するまであんなにイケメンとは不覚にも気づかなかった)だっただけに…。
また、なつがお洒落をしたことで十勝の頃の雰囲気を失ってしまったことも残念です。モデルの女性アニメーターも毎日違う服装をしていたそうですが、あのファッションのせいで広瀬すずのきつめの美貌が際立ってしまい、あつかましい(by夕見子)キャラが愛嬌になっていないのがもったいないです。美女でも損をすることがあるのだな…。
それにしても、次から次へとイケメン登場。なんだこの大渋滞は! 仲さんなんてもはやモブというくらいなつの周りはイケメンぞろいの選び放題(なつが)。本命だった天陽くんは東京へ行くなつに実質お別れを告げた(しかも結婚するらしい)ため婿候補から脱落。雪次郎はよくあるヒロイン幼なじみ枠から逸脱しそうにない(うえに夕見子のことが好きそうだ)し、やはりオープニングから出ていた信さんか? と思わせておいての坂場さん登場。この「初対面は印象最悪」は恋愛フラグなのだが…。坂場か? やはり坂場なのか? 信さんメッチャいい人なのに…?
放送はまだあと半分残っているのですが、ここで千遥との再会というヤマ場を迎えるようなので、中盤以降はなつのアニメーターとしての成長と結婚話でしょうか。十勝は絡んでくるのかな…。盛り上がれるのかな…。
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